機動戦士ガンダム異聞〜旭日の旗の下に〜第12話
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これまでのあらすじ

 

 後世世界U.C.0079年1月3日、地球から最も遠い宇宙都市、サイド3とサイド4は、ジオン公国、プラントを名乗り、地球連邦政府に対し独立戦争を挑んできた。開戦から1か月間の間に、両陣営は総人口の約半数を死に至らしめた。

 

 人々は、自らの行為に恐怖した。

 

 ジオン軍とザフトは、開戦当初から巨大人型兵器「モビルスーツ」を投入し、戦局を有利に進めてきた。

 

 この状況の中、大日本帝国は独自の戦術理論に基づき、MS開発計画「V作戦」を発動した。

 

 これとほぼ同時期に、連邦軍も「G計画」と宇宙軍再編計画である「ビンソン計画」を発動、反撃の狼煙を上げた。

 

 戦況は、膠着状態に陥り、一年近くが経とうとしていた12月8日、サイド7「ヘリオポリス」で開発中の連邦軍新型MSがザフトに強奪される事件が発生、さらに、この時の戦闘により、ヘリオポリスは崩壊、オーブ代表ウズミ・ナラ・アスハは責任を取り、辞任を発表した。

 

 これと同じ頃、プラントでも攻撃を行ったクルーゼ隊に対し査問委員会が開かれたが、審議の結果、クルーゼ隊は不問となったものの、アークエンジェル討伐は、シャア大佐率いるラグナレク分艦隊に引き継がれた。

 

 一方、紺碧艦隊は、新旗艦「轟天号」の最終試験航行中に、ユニウスセブン宙域にてアークエンジェルと遭遇、これを追尾していたが、アークエンジェルは味方救援のために進路を変更、轟天号もこれに続いたが、これは、シャアがアークエンジェルをおびき出すための陽動作戦だったのである。そして、アークエンジェルに赤い彗星の魔の手が迫っていた。

 

 世界は、かつての第2次大戦同様の三極構造にあった。だが、その構造は、火薬庫の上の蝋燭のように、脆く、危険な状態であった。

 

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第12話 轟天号

 

 シャアの接近は、アークエンジェルのレーダーも捉えていた。

 

「よりにもよって赤い彗星だなんて…」

 

 艦長椅子でマリューは冷や汗をかいていた。彼女も馬鹿ではなく、シャアの活躍は耳にしていた。

 

 

 

 ジオン軍は、ルウム戦役において数多くのエースパイロットを輩出したが、シャアはその中でもさらにずば抜けており、ルウム戦役でキンメル中将指揮下の第4艦隊を翻弄し、5隻のマゼラン級がシャア一人の手によって轟沈されたのである。このシャアの活躍は後に「シャアの五艘跳び」と呼ばれ、伝説となるのである。その戦いぶりは、連邦の兵士たちを恐れさせ、「背中に目がある」、「実はザビ家が作り上げたサイボーグ」などという馬鹿馬鹿しい噂が連邦軍内に広まっていたのである。尚、余談ながらこのシャアを目の敵にしたキンメルは、彼を名指しして「地球連邦最大の敵」と呼び、彼を討った者には100万ドルの懸賞金を渡すという戦意高揚のスピーチを行ったという。

 

 

 

「艦長!シャアは本艦ではなく、ストライクを狙っています!」

 

 CIC(戦闘指揮所)のナタルがシャアのゲルググの推定コースと狙いを報告を聞いたマリューは、直ちに行動に入った。

 

「フラガ大尉のメビウスは艦隊の救援を優先!マッケンジー中尉のエンゼルキャットはストライクの援護に回りなさい!本艦は敵艦隊を牽制します!全砲門発射用意!」

 

 アークエンジェルのその華麗な船体から、数多くの武装が展開された。

 

「敵を牽制します!ゴットフリート照準!てぇっ!」

 

 そして、アークエンジェルの主砲である225mm高エネルギー収束火線砲「ゴットフリートMk71」が、ジオン艦隊に襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 その頃、戦況を分析していた轟天号は静観しつつも、敵の行動を読んでいた。

 

「何ですと!では司令は、連邦艦隊への奇襲は陽動というのですか!」

 

「そうだ。」

 

 そう返すと、前原はモニターに陣形地図を展開した。

 

「恐らく、シャアはアークエンジェルの予想航路を通りかかる連邦の哨戒パトロール艦隊を襲撃し、アークエンジェルをおびき寄せる。餌に釣られたアークエンジェルは救援として当然機動部隊を出撃させる。そこでシャア自らが出撃し、艦隊ごと殲滅させるという魂胆だろう。言うなれば、アークエンジェルは餌に惹かれたマスだ。だが、シャアは一つ誤算を犯している」

 

「と、言いますと?」

 

 入江は首を傾げると、前原はニヤリとして答えた。

 

「我々とこの轟天号だよ。艦長」

 

 それを聞いた入江は、成程と相槌を叩いた。

 

「さて、同じく餌に釣られてしまった我々は、こうして黙って観ていることしか出来ないがな」

 

 前原は腕を組むと、艦長椅子に座った。

 

 

 

 

 

 

「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」

 

 シャアの先行量産型ゲルググは、通常機を上回るスピードで漆黒の宇宙を駆け抜けていた。それを可能にしたのは、機体背面に搭載されたB型バックパックの存在であった。

 

 

 

 MS-14「ゲルググ」シリーズは、機体背面のバックパックの換装が可能であり、高出力ビームキャノンを搭載したC型バックパック、機動性と運動性の底上げを目的としたB型バックパックなどがある。無論、こういったバックパック無しでもゲルググは只でさえ高性能であり、こういった換装用バックパックは、むしろエースパイロット用として少数生産されたオプションパーツであった。尚、ゲルググと同じ特徴を持つ機体として、アークエンジェルのストライクのストライカーパックもあるが、これは単に汎用性の高いストライクを局地での戦いを想定して開発された物であり、開発思想が全く違うのである。更に言えば、このバックパックは、同じMS-14系列であるMS-14J「ゲルググ・イェーガー」や海兵隊用のMS-14F「ゲルググM(マリーネ)」と互換性は無いという欠点を持っているのである。

 

 

 

 ストライクのコックピットで、キラはビームライフルの照準をシャアのゲルググの向けていた。

 

『キラ君!今はマッケンジー中尉との合流を優先しなさい!貴方一人で赤い彗星と戦うのは無謀よ!それに敵は新型のモビルスーツよ!後退しなさい!』

 

「やります!相手がジオンなら、コーディネイターじゃないんだ!僕だって!」

 

 キラはマリューの警告を無視し、エールパックのバーニアを吹かし、速度を上げ、距離を詰めると、ビームライフルのトリガーを弾いた。ストライクのビームライフルから緑色の光弾がシャアに迫るが、シャアはスピードを維持したまま、その光弾を避けた。

 

「避けた!そんな!」

 

「当たらなければどうという事は無い」

 

 シャアはゲルググのビームライフルの照準をストライクに定めると、そのままトリガーを弾いた。

 

「くっ!」

 

 キラはコーディネイター故の反射神経でゲルググのメガ粒子ビームを避けると、すかさず牽制のイーゲルシュテルンをゲルググに放つが、ゲルググのルナ・チタニウム製のシールドに阻まれてしまう。

 

「(どうやらGのパイロットは本当にコーディネイターのようだな。更に機体性能はゲルググと互角か…だが)」

 

 シャアはストライクの性能を先程の攻撃で自分なりに分析すると、次の手に映った。B型装備ならではの高機動性と運動性を用いた格闘戦に移行したのである。B型バックパックのバーニアの出力を上げ、一気にストライクとの距離を詰めたのである。

 

「!!!!」

 

 その一瞬の動作にキラが驚くと同時に、ゲルググはストライクの胴体に蹴りをいれた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 蹴りの衝撃がキラの身体を襲うが、直様ストライクの姿勢をAMBACで立て直した。

 

「くっ!このぉ!」

 

 キラはストライクのビームを乱射させるが、照準の定まらないビームの弾幕をシャアは苦も無くかわしていった。

 

「コーディネイターだが、パイロットは素人か」

 

 仮面から露出している口がニヤリと、暗躍するかのような表情をとるが、その時、ラグナレクのドレンから緊急連絡が入った。

 

『大佐!緊急事態です!デニムの分隊が木馬に接近しています!』

 

「何!どういう事だ!」

 

『どうやら、ジーン伍長が突出したようで…』

 

ドレンの報告を聞いたシャアは、少し己を恥じた。

 

「若さゆえの過ちだな…了解した。デニムに通達!そのまま木馬を攻撃し、木馬の対空兵装を破壊せよ!」

 

『了解!』

 

 交信を終えると、シャアはストライクがライフルを捨て、バックパックからビームサーベルを引き抜きながら迫ってくるのを見た。

 

「ほぉ、勇敢だな。だが、それだけだ」

 

 シャアはそう言うと、右手のライフルをシールドに格納すると、腰に装備されたビームナギナタを引き抜いた。

 

 

 

 

 

 

 その頃、轟天号は戦況の詳細を伺うため、アークエンジェル後方3kmの地点まで接近していた。

 

「どうやらジオンの新型は連邦の新型と互角のようですな」

 

 リアルタイムで戦況を洞察する轟天号の乗員達は、ジオン軍の技術も日本同様に、2,3年早まっている事を再確認した。

 

 

 

 後世世界は、20世紀の第2次、第3次大戦において前世とは比べものにならない程技術が発達した。ワルター推進機関を始めて実用した紺碧艦隊初代旗艦イ-601潜富嶽号や旭日艦隊旗艦超戦艦日本武尊を始め、海中要塞鳴門、潜伊3001潜亀天号、超潜伊10001潜須佐之男号、武御雷型戦略空母、空中戦艦富士など、様々なオーバーテクノロジーが戦場で使用されたのである。だが、これは日本に留まらず、アメリカでは超々重爆撃機B-32フライングデビル、ドイツでも様々なオーバーテクノロジーで開発された兵器たちが出現し、現代戦を作り上げたのである。そして、宇宙世紀を迎え、人類はミノフスキー粒子を発見し、様々な兵器を開発し、その過程で、新たな兵器「モビルスーツ」を誕生させたのである。

 

 

 

「閣下、電探に感あり!スカート付き3機がアークエンジェルに接近しています!」

 

「先程の乱戦を抜けた機体か!」

 

「はい!どうやら、突出した1機の機体を追うように2機が抜けたようです」

 

 前原は潜望鏡を使ってアークエンジェルの方を見ると、アークエンジェルの周囲をリックドムUが飛び回っていたのである。

 

 嫌な予感がする…前原がそう思った、その時、前原の脳裏に、再びビジョンが浮かび上がった。それは、ジャイアントバズを構えたリックドムUであった。

 

「(いかん!)艦長!回避運動!面舵15!」

 

「えっ!りょ、了解!おーもかーじ!」

 

 入江は復唱すると、轟天号は右に進路を変えた。その時、リックドムUから放たれたジャイアントバズの流れ弾が、轟天号の右舷に直撃した。

 

「うっ!状況報告!」

 

「右舷に被弾!第1装甲版が凹んでおります!」

 

「それだけか!」

 

「待ってください!先程の直撃弾の影響で、本艦の光学迷彩に支障が出ます!」

 

 やられた。前原は心の中で舌を打った。これにより、轟天号の存在が両陣営に判明してしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 事は、数分前に遡る。ラグナレク隊のデニム分隊のジーン伍長が、手柄欲しさに無謀にもアークエンジェルへの攻撃を敢行したのである。

 

「待てジーン!我々の目的は敵艦隊の足止めだ!木馬の攻撃ではない!貴様命令違反を犯す気か!」

 

『シャア大佐だって!戦場で手柄を立てて出世したんだ!』

 

 ジーンのリックドムUは、速度を緩めぬまま、アークエンジェルへ向かっていた。

 

「くっ!仕方あるまい、スレンダー!来い!ジーンを止めるぞ!」

 

『了解しました!曹長殿!』

 

 この、突貫する3機のリックドムUは、当然アークエンジェルの赤外線レーダーが捉えていた。

 

「リックドム3機、こちらに接近中!」

 

 報告を聞いたマリューは、的確に指示した。

 

「バリアント1番2番、てぇーっ!」

 

 アークエンジェルの主翼下方両脇に搭載された110mm単装型リニアカノン「バリアントMk.8」の砲弾がリックドムUに放たれるが、その特有の機動性で楽々回避し、ジャイアントバズの射程に捉えた。

 

『やってやる!やってやるぞデカブツめぇっ!』

 

 照準が定まらないまま、ジャイアントバズの砲弾が発射される。発射された3発の弾は、1発はアークエンジェルの対空CIWSに阻まれ、1発は虚空の中に沈んだ。そして、最後の1発が、流れ弾として轟天号に直撃したのである。

 

 

 

 

 

 

 偶然が災いを呼ぶ…この時前原は決断の時を迎えた。このまま静観かそれとも…この時の前原は、既に腹をくくっていた。

 

「艦長、一発派手にやるか?」

 

 その言葉に、入江は直に頷いた。

 

「良し!」

 

 この頃、被弾箇所はノイズ化しており、その様子は、既に捉えられていた。

 

『曹長殿!木馬の左下方3kmの地点に光学迷彩のノイズを確認!』

 

「何!まさか連邦の新造艦か!」

 

 スレンダーの報告を聞いたデニムは、モノアイを望遠モードにし、スレンダーが示した方向を見ると、確かにノイズらしきものが確認できた。もし、連邦の新造艦であるならば、この事をシャア大佐に報告せねばならない。そう思ったデニムは、ジーンに接触回線で通信を行った。

 

「ジーン!木馬の左下方3kmの地点に光学迷彩らしきノイズを確認した!我々はこの事をすぐに知らせる必要がある!木馬への攻撃を中止しろ!」

 

『離してください曹長!俺は手柄を立てるんだ!』

 

 ジーンの態度に対し、デニムは遂にぶち切れた。

 

「いい加減にしろジーン!お前のその身勝手な行動で味方を全滅させる気か!」

 

 この説教には、流石のジーンもたじろぎ、その場を去ろうとした、その時だった。

 

『そ、曹長殿!ノイズが!』

 

 スレンダーの言葉に、ようやく我を取り戻したデニムは、先程のノイズの方を見ると、なんと、ノイズが高速で移動を始めたのである。これにデニムは直様バーニアを加速させた。それにスレンダーとジーンが続いた。そして、彼等は見た。

 

「な、なんだあの馬鹿でかい潜宙艦は…」

 

 それは、漆黒の潜宙艦、そして、最強の剣、遂に、轟天号が火を噴く時が来たのである。

 

「どうやらジオンの兵達は轟天号に肝を潰してますな」

 

 そうだな、と前原は呟いた。この時、前原はここで轟天号の戦闘評価試験(ぶっつけ本番の実戦)を行う事にしたのである。

 

「よーし!魚雷室!70式魚雷の装填状況知らせ!」

 

『こちら魚雷室!装填完了!いつでも撃てまっせ!』

 

「機関室!出力を維持しろ!」

 

『機関室諒解!』

 

「砲術長!主砲はいつでも撃てるようにしておけ!」

 

「砲術長諒解!」

 

 各部署の報告を聞いた前原は、決断した。

 

「よぉし!艦首空間魚雷発射管開け!目標!ジオン艦隊!但し!当てるなよ!」

 

「了解!おーもかーじ!一杯!」

 

「おーもかーじ!一杯!」

 

 航海長が復唱し、舵を右に傾けると、轟天号の艦首がジオン艦隊に向けられた。

 

「撃ちー方ー始めー!」

 

「撃ちー方ー始めー!」

 

 水雷長が復唱すると、艦首の空間魚雷発射管8門から、70式空間魚雷が同時発射された。そして、その魚雷は直ちにジオン艦隊のレーダーに捉えられた。

 

「ドレン大尉!3時の方向より魚雷接近!スピードから見て、ワルター魚雷です!」

 

 

 

 ワルター魚雷とは、ワルター推進システムを宇宙用に仕様変更した「スペースワルター推進システム」を使用した空間魚雷である。従来の空間魚雷を遥かに上回るスピードを有し、その高速性は、敵の対空防御をスピードでかわすのである。

 

 

 

「なんだと!弾幕を貼りつつ回避行動!」

 

 艦隊から熾烈な弾幕が張られるが、70式空間魚雷はその恐るべきスピードでそれを切り抜けていった。

 

「駄目です!恐ろしく速いです!」

 

「くそ!全艦!衝撃に備えろ!」

 

 艦橋の全員が何かにしがみつき、ドレンは冷や汗をかき、魚雷がそれるのを願っていた。だが、魚雷は艦隊をすり抜け、そのまま虚空の彼方に消えていったのである。

 

「ど、どういう事だ…?敵は我々を撃つ気はないのか…?」

 

 ドレンが安堵しつつも、その不可解な行動に疑念を持った。その頃、ジオン艦隊の動きを居た前原は、次の行動に移った。

 

「砲術長!前方のムサイを狙え!」

 

「砲術長諒解!軸合わせ良し!」

 

 轟天号の両舷に装備された20サンチ2連装メガ粒子砲が、ラグナレクの近くのムサイに照準を合わせた。

 

「主砲!撃ち―方ー始め―!」

 

「撃ち―方ー始め―!」

 

 砲身から螺旋状に回転する青白いビームが、ムサイの砲塔を襲い掛かった。

 

「スワメル被弾!第1主砲がやられています!」

 

「なんだと!どこから撃ってきた!」

 

 ドレンがオペレーターに確認を取らせる。

 

「先程の魚雷と同じ方向です!」

 

 オペレーターの報告を聞くと、ドレンは直に行動に入った。

 

「デニム隊を呼び戻せ!3時方向に対潜宙艦爆雷を射出しろ!」

 

 勿論、この様子は轟天号の79式超高感度電探が探知していた。

 

「電探に感!先程のMS隊がこちらに向かってきています!」

 

 報告を聞いた前原の行動は早かった。

 

「良し!ミラージュコロイド再度展開!S7発動!」

 

 

 

 S7とは、「戦術S7」の略称である。この戦術は、第2次大戦において紺碧艦隊が行った「戦術G7」の宇宙仕様である。この戦術で使用されるS7魚雷には、炸薬の代わりに潜宙艦特有の熱波を発する特殊装置を内蔵しており、発射からある一定の距離を離れると、熱波を放出、自艦の位置を騙したり、敵艦のソノーブイを無効化し、敵艦を殲滅するのが、戦術S7である。

 

 実は、前原は先程の魚雷攻撃で、70式の中にS7魚雷を混じらせて発射していたのである。

 

 

 

「ドレン大尉!ソノーブイが敵潜宙艦の反応を捉えました!敵は我が艦隊の後方です!」

 

 オペレーターの報告を聞いたドレンは、豆鉄砲を喰らったかの如く驚いた。

 

「なんだと!これでは我々は退路を断たれたも同然ではないか!くそ!急ぎ大佐に報告せよ!」

 

 ドレンは、直様回線を開いた。

 

 

 

 

 

 

 その頃、シャアはストライクと死闘を繰り広げていた。この段階で、シャアはストライクを圧倒していた。両者の決定的違いは、パイロットとしての技量だった。更に、ストライクのバッテリーも、既に限界がきており、最早シャアの勝利は確定的であった。

 

「ふっ、その程度か。そろそろ終わりにさせてもらう!」

 

 ゲルググがビームナギナタを振り回し、ストライクに襲い掛かろうとしたその時、ストライクとゲルググの間を一筋のビームが通り抜けた。

 

「むっ!」

 

 シャアはすかさず脚部のバーニアで急停止すると、一旦距離をとった。ビームが北方向を向くと、そこにはエンゼルキャットが向かってきていたのである。

 

「日本機のライセンス品か。だが、運が無かったな!」

 

 シャアはそう言うと、シールドに格納していたクラッカーを投げつけ、エンゼルキャットを攪乱すると、ナギナタからビームライフルに持ち直し、照準をエンゼルキャットに合わせようとしたその時、ラグナレクから緊急要請が入ってきた。

 

『大佐!我が艦隊は謎の潜宙艦の攻撃を受け、スワメルが被弾、更に後方を突かれました!』

 

 ドレンの報告を聞いたシャアは、左方向からメビウス・ゼロが向かってくるのが見えた。潮時だな。シャアはそう感じると、直様指揮を行った。

 

「了解した。ドレン!撤退信号を上げろ!今日はここまでだ!」

 

 指令を聞いたドレンは、直様撤退を告げる信号弾を上げた。

 

「(命拾いしたな。連邦のコーディネイター。だが、次は無いぞ)」

 

 シャアはゲルググのバーニアを吹かし、その場を去っていった。

 

「逃げた…それとも…見逃してくれたのか…」

 

 キラは、ジオンの突然の行動に疑問を抱いたが、疲れ果てていた彼には、すでにそれを考える力は無かった。

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、その引き際は轟天号でも目撃されていた。

 

「鮮やかな引き際ですな」

 

「うむ、だが、ここに留まるのも、危険だな。機関室!出力最大!第3船速で現宙域を離脱しろ!」

 

『機関室諒解!』

 

 轟天号のノズルが白く光り、他の船の追従を許さぬ速度でその宙域を脱した。

 

 

 

 

 

 

数日後、ルナツー紺碧艦隊宇宙基地

 

『しかし報告を聞いた時は私も驚いたよ』

 

 数日後、轟天号は迂回コースを取りつつ、ルナツーへ帰港していた。そして、高野へ今回の報告をしていたのである。

 

「はっ。申し訳ありません。みすみす轟天号の存在を公にしてしまう行動に出てしまいました」

 

『謝ることはない。幸いにも、今回の君たちの行動はあくまで事故として取り扱う事になっている。なにせ“歌姫”を守ったのだからな』

 

 その事を聞き、前原は首を傾げた。それを見た高野は、穏やかに話し始めた。

 

『実はあの数時間後、我が軍の哨戒艦隊にアークエンジェルのモビルスーツが接触を図ってな、ある民間人を保護してほしいと言ってきたのだ』

 

「ある民間人とは?」

 

 高野はファイルから、ある1枚の書類を出した。

 

『プラント最高評議会議長シーゲル・クラインのご令嬢、ラクス・クラインだ』

 

 それを聞いた前原は、驚愕の顔を隠せなかった。

 

「確かなのですか!」

 

『事実だ。既に彼女はツクヨミ経由で、プラントに帰国したがね』

 

 それを聞いた前原は、心の中で安堵した。高野の話は続いた。

 

『それと、今回の戦闘報告で、ようやく新艦隊の新旗艦の建造に着手出来そうだ』

 

 モニターに艦隊旗艦のデータが表示された。形からして、これまでの艦隊旗艦には類を見ない新しい艦隊旗艦であった。前原はこのデータを見ると、何かを察したように問いかけた。

 

「新艦隊!とすると、あの艦隊を再結成するのですか!」

 

 高野は頷くと、ファイルを見ながら説明した。

 

『既に大石中将が艦隊の人員を編成中だ。この艦隊が誕生すれば、ようやく我が国の“陽”と“陰”が揃う訳だ』

 

「我が紺碧艦隊が“陰”とするなら、その艦隊はまさに“陽”!」

 

『そうだ、日本を守る、「旭日艦隊」の復活だ!』

 

 

 

 U.C.0079は暮れ、新たな年、U.C.0080が始まろうとしている中、この後世世界の戦いも、熾烈を極めるのである…

 

 

 

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キャラ設定

 

プラント

ラクス・クライン

初出:機動戦士ガンダムSEED

概要

 プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの御令嬢。プラントの歌姫で、国内外問わず、コロニー圏では屈指の人気を持つ。

 

説明
第12話です。ここらで1クールくらいたったかな?因みに文中で変な展開がありますが、そこは脳内変換でお願いします。
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コメント
旭日艦隊キターーーーーーーー!!!やっぱ陰陽揃ってこその艦隊シリーズっしょ!(プロフェッサー.Y)
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