英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク |
〜ブライト家〜
「よいしょ……っと。」
エステルと共に家の中に入った青年はレナをベッドの上に乗せ、エステルが布団をレナにかけた。
「これで一安心だな。―――そう言えば親父さんはどこにいるんだ?」
規則正しい寝息を立てて眠っているレナの状況を見て安堵の溜息を吐いた青年はエステルに尋ね
「わかんない……お父さんはあたし達が住んでいる国からエレボニアを追いだす為に戦っているって、お母さんが言ってた。」
「そっか、親父さんはこの国の軍人か。ん?”エレボニア”??(そう言えばさっき殺した軍人共もそんな事を口にしたな。世界中を周ったけど、そんな国はなかったぞ??)えっと、一つ聞きたいんだけどよ、”キムラスカ”か”マルクト”って国は知っているか?」
「きむらすか?まるくと??この国は『リベール王国』だよ。」
聞き覚えのない国に首を傾げたエステルは青年にとって驚愕すべき事実を口にした。
「ハアッ!?ちょ、ちょっと待て!ま、まさかとは思うが”ローレライ教団”も知らないのか!?世界中で有名な宗教だぞ!?」
「??シュウキョウって、なんなの??」
「え、え〜と確か一般的には神様に祈る団体?だったと思うぜ。」
「神様って”空の女神(エイドス)”様の事?だったら違うわよ。”空の女神(エイドス)”様にお祈りしている神父さんやシスターさん達は”七耀教会”だから。」
「なっ!?オイオイオイ!?じゃあ俺は”オールドランド”とは全く違う世界に来たのか!?一体どうなってんだよ!?」
自分が知る常識とはかけ離れた世界にいる事に青年は混乱し
「知らない世界??お姉さん?ってヘンな事を言ってるわね。声や口調もなんか男の人っぽいし。」
エステルは首を傾げて尋ねた。
「誰が女だ!?俺は男だ!」
「ふえ?でも、髪がお母さんみたいにすっごく長いわよ?」
「え――――なっ!?」
エステルに指摘された青年は呆けた後自分の背にまでなびかせる炎が燃えているような赤い髪に気付いて驚いた。
「切ったはずの髪まで伸びてやがる……まさか俺がアッシュを吸収したのか?いや、でもアッシュの記憶は俺にはねえし。つーか、さっき戦っている時はよく確認していなかったけど、よく見たら”ローレライの鍵”まであるし……!あー、もう!どうなってんだよ!?」
次から次へと判明した驚愕の事実に青年は片手で頭をガシガシかいて混乱していた。すると青年の声に反応するかのようにレナは目覚めた。
「う……ん……?ここ……は……?」
「お母さん!」
目覚めたレナに気付いたエステルは嬉しそうな表情でレナが眠っているベッドに近づいた。
「お母さん、大丈夫!?どこも痛くない!?」
「え、ええ。でも一体どうして…………瓦礫に埋もれたのに、傷がどこにもないし……しかもここは私達の家??」
「あのね。あそこのお兄さんがお母さんを助けて、ここまで運んでくれたの。」
「お兄さん……?」
レナはエステルが指を刺す見覚えのない青年に気付いた。
「えっと私を貴方が?確か私はエステルを庇って、瓦礫に埋もれたのですが。」
「ああ。俺が瓦礫をどかした。」
「あのね。お兄さんが凄いケガをしていたお母さんにお薬を飲ませたの。そしたらお母さん、元気になったんだよ!」
「薬……?」
「ああ。滅多に手に入らないけど、効果は抜群な薬だからもう安心していいぜ。」
「……………そうですか。何はともあれ貴重な薬を使ってまで私の命を救って頂いた上、家まで運んで頂き、本当にありがとうございます。」
「ありがとう、お兄さん!」
青年の説明を聞いていくつか疑問があったレナだったがひとまず気にしないようにし、エステルと共に自分達を救った青年に笑顔を浮かべてお礼を言った。
「ハハ、どういたしまして。――――そんじゃ、俺はそろそろ出て行くよ。」
そして青年が部屋から出ようとしたその時
「待ってください。どこに行くつもりですか?」
「街に戻ってできるだけ多くの人を助けるつもりだ。」
「?もしかして遊撃士の方ですか?」
「いや、だからその遊撃士って何なんだっつーの。え〜と、エレボニア帝国?だったか。さっき何度か戦ったその国の軍人達もそんな事を言ってたけどよ。」
「ふえ?お兄さん、ユーゲキシを知らないの?みんなが知ってるジョーシキなのよ?」
「うぐっ。本当に知らねえんだから仕方ねえだろ……」
エステルに痛い所をつかれた青年は表情を歪めてエステルから視線を外して答えた。
「もしかして遊撃士協会もない遠く離れた田舎からロレントを観光しに来られたのですか?」
「へっ!?え、え〜と、そんな所だぜ、ハハ………」
レナに尋ねられた青年はおよそ”田舎”とは無縁の故郷を思い出しながら苦笑いをして答えを誤魔化した。
「―――でしたらしばらく家に泊まっていってください。助けて頂いたお礼や薬のお礼もまだですし……」
「い、いいって、お礼なんて!俺が勝手に助けただけだから!薬の事も気にすんなって!」
レナの申し出に青年は恐縮した様子で答えた。
「ですがこの戦争が起こっている今の状況でどうやって泊まる所を探すつもりですか?ロレントのホテルは使えませんよ?」
「いざとなれば野宿でもするさ。これでも長い間旅をしていたから、野宿にはなれてるし。」
「まあ!だったら、是非私達の家に泊まっていって下さい。命を救って頂いた方をこの危険な状況で野宿させる訳にはいきませんし。」
「え、でも迷惑じゃ……」
レナの提案に青年が戸惑いかけたその時
「エステルもいいでしょう?」
「うん!お兄さん、よろしくね!」
(な、何なんだよ、この親娘は!押しが強すぎねえか!?)
既に親娘の中では自分が親娘のお世話になる事が決定している事に青年は大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「あ、そうだ。お兄さんの名前をまだ聞いていなかったよね?あたしはエステル。エステル・ブライトよ!」
「エステルか。そういや俺もまだ名乗っていなかったな。―――――ルーク・フォン・ファブレだ。」
こうして青年――――ルークはブライト家に滞在する事になった。
そして数カ月が立ち、のちに”百日戦役”と呼ばれる戦争が終結した……………
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