英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク
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〜ブライト家〜

 

「「…………………」」

ルークが語り終えると二人は黙り込み

「―――それでルーク君。今の話を聞く所、君は既に死んだように聞こえるが……」

やがてカシウスが口を開いてルークを見つめた。

 

「その事についてなんだが、俺もサッパリわかんねえんだよ。てっきりオリジナルのアッシュに吸収されて消えると思っていたのに何故か切ったはずの髪は伸びているし、全然知らねえ世界にいるしとか、他にも訳のわからない事だらけだよ。」

「そうか………」

「―――ルーク君は元の世界に帰りたいと思わないの?」

壮絶な過去を聞いて悲痛そうな表情をしたレナは自らの命を捨ててでも世界を救った若き”英雄”を見つめて尋ねた。

 

「いや、別に。俺は元々消える覚悟をしていたから自分の世界に心残りはもうねえよ。それに多分だが”オリジナルのルーク”のアッシュが俺の世界に帰還しているだろうし、そこにレプリカの俺が帰ったら大爆発(ビッグバン)が起こって良くてどっちかが消え、最悪はどっちとも消えるからな。むしろこうして生きているだけでも嬉しいよ。それに……――――レプリカの俺のせいでオリジナルのアッシュに迷惑をかけまくったからな。滅茶苦茶嫌な野郎だったけど、これ以上迷惑をかける気はねーよ。」

「……………………………」

どことなく陰りのある笑顔を見せるルークにレナは何も言えず

「……君はこれからどうするつもりだい?」

目を伏せて考え込んでいたカシウスは目を見開いて目の前の罪深き”業(カルマ)”を背負う者であり”英雄”でもある青年に尋ねた。

 

「――――遊撃士、だっけ?それになって人助けをするつもりさ。傭兵に似た職業だけど国に縛られず、多くの人達を助けられる職業なんだろう?剣しか取り柄のない俺にはちょうどいい仕事だよ。(まあ、あの後試してみたら譜術もできたけど、ティアやジェイドたち程じゃねえしな。)」

「それも君が背負ったという”罪”を償う為か?」

「ああ。何も知ろうとせず、ただ師匠(せんせい)だけを信じていた馬鹿な俺のせいで死んだ人達の為にも、俺は俺が生きている限り一人でも多くの人達を助けなきゃならない。それが俺ができる唯一の”償い”であると同時に”義務”だ。」

「ルーク君……………」

「……………………」

何者にも消すことはできない熱き決意を持つ”英雄”をレナは辛そうな表情で見つめ、カシウスは目を閉じて黙り込んでいた。

 

「ふむ…………――――ルーク君。うちの子にならんか?」

そして目を閉じて考え込んでいたカシウスは目を見開いて驚愕の提案をし

「ハ……?」

「まあ!それはいい考えね、あなた。」

突然の提案にルークは目を丸くし、レナは嬉しそうな表情で手をパンと叩いて頷いた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!?何でいきなりそんな事を!?」

一方我に返ったルークは慌てた様子で尋ね

「子供を持つ一人の親として君をほおっておけないからだ。第一、話を聞く限り、君の実年齢は7歳じゃないか。うちの娘と大して変わらない年齢の子供をほおっておけんよ。」

「いや、確かに実年齢で換算したら7歳だけどよ……そういう問題か?それ以前に俺は”レプリカ”だぞ。」

カシウスの話を聞き、表情を引き攣らせた後真剣な表情で2人を見つめて言った。

 

「―――君は立派な一人の”人間”だ。そんなことを言ってはいけない。」

「そうよ。それに私達はルーク君の言う”オリジナル”?だったかしら。その人の事は知らないし、この世界にはルーク君しかいないのでしょう?だったらルーク君もこのゼムリア大陸に生きる立派な”人間”よ。」

「……………あ、ありがとう……………その………これから、よろしく………”父さん”、”母さん”…………」

”偽物の存在”と知っていながらも”本物の人間”として言った親友ガイ・セシルと自分にとって初恋の少女であるティア・グランツと同じ言葉を口にした心優しき夫婦に心を打たれたルークは一筋の涙を流しながら頭を下げた。

「ああ。よろしくな、ルーク。」

「ふふ、エステルもきっと喜ぶわ。」

こうしてルークはブライト家の養子になった。

 

「まさかルークにあんな壮絶な過去があったとはな………”レプリカ”か。人が生み出す知識は本当に恐ろしいな………」

自分達の寝室に戻ったカシウスは重々しい様子を纏って考え込み

「いつかあの子に幸せが訪れてほしいわね……」

新しくできた息子の己の身を省みない事を心配するレナは辛そうな表情で呟いた。

「必ず訪れるさ。自らの命を奉げてまで世界を救うという偉業をこなしたんだ。”空の女神(エイドス)”もきっとルークを……俺達の息子を見守ってくれているさ。」

「フフ、そうね。」

夫の心強い言葉にレナは優しげな微笑みを浮かべた。

 

「――――レナ、俺はもう軍人をやめて、ルークと同じ遊撃士になることに決めた。」

「あなた?」

カシウスの突如の提案にレナは目を丸くし

「今回の事で痛感した。軍人では身近な存在は守れない。もしルークがいなければ、お前達の身もきっと無事ではなかった。―――だから今度こそお前達を近くで守る為に遊撃士になることに決めた。」

「フフ、わかりました。あなたがそう決めたのなら私はそれに従います。」

自分に相談する事もなく突如職を手放す夫を反対もせず、笑顔で応援した。

 

その後、カシウスは周囲の反対を押し切ってリベール王国軍を退役して更には剣を捨て、棒を新たなる得物として遊撃士になった。また、ルークもカシウスと共に研修を終了して準遊撃士になった後、わずか半年で全ての地方から推薦状をもらい、正遊撃士になり、更にはカシウスの紹介によって、”剣仙”と称えられる老剣士ユン・カーファイに鍛えられて新たなる剣術――――”八葉一刀流”の剣技や奥義も習得し、更なる強さを手に入れた。後に炎が燃えているかのように赤い髪をなびかせ、真紅のコートを身に纏っている事から”焔のルーク”の異名で呼ばれる事になり、トップクラスの正遊撃士の一人として数えられる事となった。

 

そして”百日戦役”から数年後、西ゼムリア大陸全土を巻き込んだ幼児誘拐の大事件の解決の為に各国の軍部や警察機構に加え、”七耀教会”からは”星杯騎士”を派遣して連合を組む事となり、その指揮をカシウスが執る事となり、また正遊撃士の中でもトップクラスの実力を持つルークも参加する事になった。

 

 

 

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第4話
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