大人と子供 |
●生きがい
ぼくは失敗作らしい。
なにをやってもだめらしい。
これからどうなるんだろう。
ねえ、おしえてよ。
でも、ママはこたえてくれない。
なんのためにぼくは生まれたのだろう。
カラスがホウホウと鳴いている。
アパートの窓からそれをみていた。
ぼくよりカラスのほうが生きている気がして。
カラスがとてもうらやましいものに思えた。
●最愛の人へ
小さな光に出会った。
しわくちゃに出会った。
幼い子供に出会った。
少女に出会った。
女性に出会った。
今日で出会いも終わりだね。
あなたに花束を。
おめでとう。そして、ありがとう。
●思春期
成長したね。
そんな気分だ。
きっとそうなの。
でも、変化はない。
変わったのは私の心。
変わらないのは私の体。
外見は昨日と変わらない。
それでも、私は変わったの。
子供の私と、さよならしたの。
大人の私に、初めましてしたの。
でも、もう成長できなくなったね。
大人になるってそういうことらしい。
子供ってなんなのかって、考えてみる。
成長し続けることがきっと子供なのかな。
これで最後って思うとなんだか感慨深いや。
さよなら私。よろしく私。がんばってね私。
大人になって子供の力になっていけるかな。
不安な私と、大丈夫と思っている私がいた。
両方あるけど、これが大人ってことなんだ。
よくわからないけど、わかっちゃったんだ。
●歪曲
ねえ、君は何を見ているの?
目の前の私を透かしてる。
私はここにいるんだよ。
私の後ろにあるのはベッドだけ。
私の言葉も、想いもね。
全部通り過ぎて行くんだよ。
抱き寄せて、私が君を見つめても。
きっと交わらないね。
皮肉だね。
大人になった私達は、まだ子供なんだね。
●ジェネレーション
うるさい大人がそこにいる。
ただしい子供がそれをみる。
子供はそれを真似てしまう。
真似るとなかなかやめられない。
大人になるまでに治るのかな。
皆が皆うるさくなっちゃうのかな。
それは嫌だなって私は思った。
携帯で文字を打ちながら。
隣の人も、その隣の人も。
これって、ただしいことなのかな。
大人に教えて欲しかった。
●大人未満成人以上
大人になんてなりたくない。
子供のままでいたかった。
なんで僕は大人なんだろう。
自信がない。
なんで自殺しなかったんだろう。
そうすれば子供のままだった。
首筋に鋏を突きつけて。
血みどろの中で死ななかったんだろう。
大人と子供って何が違うの?
大人なんだからって言われたくないんだよ。
子供を免罪符にしたいんだ。
まだすがっていたいんだ。
子供にさよならしたくない。
時計の音が日が変わったことを告げる。
また一歩、子供から遠ざかって行く。
時間は平等で。それでいて残酷なんだ。
●僕から君へ
君は美しい。
太陽が沈む夕焼けの中。
稲穂の海の中に君はいる。
楽しそうに笑って、長い髪を揺らしながら。
微笑む君の顔を僕はじっと見つめている。
悲しいのか嬉しいのか。
僕は涙を流していた。
夢の中で会えた君に。
さよならを言えなかった君に。
大人になれなかった君に。
改めてお別れを言わないと。
『 』
『……僕もだよ。でも、さよならだね』
彼女は笑って頷いて、夕焼けに溶けていった。
●私から君へ
『久しぶりだね』
私はそう言って君に話しかけた。
でも君は答えてくれなかったね。
君は変わってしまったね。
でも、面影は残ったままなんだよ。
ちょっとおどけてみせても。
君の顔は苦しそうだね。
笑顔でいて欲しかったよ、でも。
私が逆の立場でも、そうなると思うの。
だから、私だけでも笑っているんだ。
『会えて嬉しかったよ』
『 』
君は答えてくれたね。
それだけで、嬉しくて。
悲しさなんて何もないって言い聞かせて、私は彼の前を去った。
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