The Duelist Force of Fate 20
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第二十話「渡航者の来訪」

 

満月の夜。

私は衛宮邸にある土蔵の中で二つの魔方陣を描いていた。

描き終わった魔法陣の外周には幾つかの供物として宝石が置かれている。

「よし。これで完成っと」

最後の一行を書き込んで私は額の汗を拭う。

魔法陣に書き込む文言に一字一句として間違いが無いよう確認する。

「なぁ、遠坂。本当にやるのか?」

私の横で作業を見つめていた衛宮君が不安そうな顔で尋ねてくる。

「これから先、あいつがいないまま戦わなきゃならないとすれば、この方法が一番戦力アップとして手っ取り早いんだからやってみる価値はあるわ」

「だけど、剣以外だと投影の精度がかなり落ちるのは遠坂だって知ってるだろ?」

「ええ、だから、こうやって実験してるんじゃない。もしも、これが上手くいけば・・・衛宮君もかなりの戦力になるはずだしね」

「・・・分かった。やるからには必ず成功させるよ」

「がんばんなさい。桜! イリヤ!」

「あ、はい。姉さん・・・こっちは魔力供給出来てます」

「確認したわ。魔法陣に問題はない。後はおにーちゃん次第よ」

桜とイリヤが二つの魔法陣を検分して魔力を封入し終わった事を確認する。

「士朗。貴方なら出来る」

セイバーが衛宮君の肩に手を置いて頷いた。

魔法陣が少しずつ輝き出し、満月の夜に相応しく輝く粒子を立ち上らせていく。

「行くぞ。遠坂」

「ええ、いつでもいいわよ」

二つの魔法陣の中間へと立った衛宮君が瞳を閉じた。

魔法陣にはそれぞれの中央に物品が置かれている。

一つはデュエルディスク。

もう一つはフィールド魔法『決闘者の作法』(ルール・オブ・デュエル)。

【投影(トレース)】

魔法陣の輝きに土蔵内部が染め上げられていく。

【開始(オン)!!!!】

(ここから・・・ここから始まる・・・絶対、生き残って見せるわ・・・あんたが帰ってくるまで・・・)

生き残る為の力が確かに目の前で息づいた事を私は確信した。

(これが私達の答えよ・・・)

少しだけ笑う。

あいつが驚く姿が・・・きっと、そんな日が来ると信じて・・・。

 

【ドロー】

たったそれだけの言葉にアルクェイドは己の肉体が動かないという事実を確認した。

廃工場周辺を赤い暴風で吹き飛ばしたにも関わらず、彼は無傷。

アルクェイドがギチギチと筋肉を断裂させ、全身の骨を粉砕骨折させ、血飛沫を上げながら、赤子が歩くような速さで彼に迫る。

普通なら死んでいる傷は負った先から修復されていた。

【カードを一枚セットしてターンエンド】

『面白いわ!! でも、人の自由を奪う奴って嫌いなのよね!?』

自由を取り戻しての速攻。

時速数百キロの突撃。

しかし、どんな攻撃だろうとも彼の罠(トラップ)発動の方が一足早い。

【罠(トラップ)カード発動(オープン)『緊急脱出装置』】

ボンと彼の足元が爆発し、今正に爪で切り裂かれようとしていた彼の体が虚空へと舞い上がる。

再度攻撃を掛けようとしたアルクェイドが再び戻る拘束に牙を向いた。

空中でクルクルと回転しながら器用に着地した彼が埃を払う。

何人たりとも敗れないルール。

モンスターの攻撃は一ターンに一度。

二度目の攻撃宣言を行えるような能力でもない限り、連続した攻めは不可能という現実。

彼が今まで戦ってきた者達ならば、それはありえた。

魔術ならば攻撃は続行できただろう。

技を極めた末に三度の攻撃を行う者もいる。

宝具を使い、魔術具を使い、己の限界以上に攻撃し、相手を破壊する者と彼は渡り合ってきた。

しかし、彼の目の前にいるのは吸血鬼だ。

世界にただ一人残った完全な真祖。

あらゆる存在を超えるデタラメな力と能力を持つ故に研鑽や努力とは無縁の存在。

【対象の能力を確定。相手フィールドに存在する攻撃力の最も高いモンスターの攻撃力を必ず100上回る。フィールド上から離れた時、自分のデッキ・手札・墓地・除外にあるこのカードをフィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。このカードの効果はカードの効果では無効化されない。自身の効果で特殊召喚された時、戦闘ダメージ及び効果ダメージを受けた時、相手フィールド上に存在する最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力分のライフを回復する】

あまりの性能・能力。

普通ならば打つ手無し。

死しか見えない敵。

しかし、彼は動じない。

何故なら彼は【決闘者】だからだ。

あらゆる敵を前にして、暴力を前にして、ただ己のデッキだけを頼りに進む者だからだ。

人が生み出した娯楽の象徴。

人類を滅ぼしもすれば、救いもした遊戯。

その【最終決闘者(アルティミット・ワン)】たる彼は絶望的な能力を前にして、静かにカードをドローする。

『一つ教えなさい』

彼の有り様に目を細めた真祖の姫が問う。

『シエルが言ってたわ。私の魂を貴方は欲しているって・・・あれと戦ってはいけないって・・・一体貴方何なの?』

「・・・・・・」

『教える義理はないですって? 上等じゃない・・・殺される前に吐けば楽に殺してあげたのに』

「・・・・・・」

『変わらないなって何よ? 貴方と会った事なんて一度も無いわよ』

「・・・・・・」

『いつか出会う事もあった? 変な事言うのね・・・貴方』

彼が会話を終え、己の手札を見つめる。

あらゆる意味で無敵に近いアルクェイドの能力に対して唯一攻撃力が届くかもしれない一枚があった。

禍々しい気配。

使えば、使用者そのものを蝕む諸刃の剣。

『邪神アバター』

それを出す術が彼のデッキにはある。

しかし、それでは倒すことが出来ないと彼は結論する。

競合する絶対の力の行き着く先は両者の消滅。

だが、アバターは復活する能力を備えてはいない。

彼が把握する限り、デッキにアルクェイドを破壊できるモンスターはいない。

シンクロ、融合、エクシーズを極めてすら、たぶん戦闘で勝利する事は出来ない。

―――――――――。

それでも彼は脳裏にカード達を思い浮かべる。

可能性は無限大。

カードとカードを繋ぎ、点と点を線とし、勝利への道を描き出す。

その手を伸ばす限り、届かない夢はない。

限界とは諦めない限り必ず突破出来るものだと彼は知っている。

 

信じ続けた先にこそ、奇跡は開闢する。

 

「!!!」

彼が再び目を開いた時、アルクェイドは僅かに気圧されていた。

『―――何か名案でも考え付いたみたいだけど、無駄よ。今日は満月・・・シキだって私を殺す事は出来ないんだから!!』

アルクェイドの叫びに彼はプレイングで応えた。

【魔法カード『愚かな埋葬』を発動。デッキから墓地にモンスターを一体送る】

続けざまにカードを発動されていく。

【永続魔法カード発動『強者の苦痛』相手モンスターはレベル×100攻撃力がダウンする】

『へぇ、こっちの力を殺ぐ作戦?』

自分の力が劇的に落ちた事を感じてアルクェイドが強者の余裕を取り戻したように嗤う。

【モンスターを一枚セット。罠魔法ゾーンに二枚セット。ターンエンド】

再び自由の戻った体の具合を確かめ、アルクェイドが全身に魔力を漲らせる。

『いいわ。本気を見せてあげる・・・』

アルクェイドが腕を広げ、吼えた。

瞬間、遥か上空に輝くものが出現し落下し始めた。

夜だというのにまるで太陽。

空想具現化。

終末の景色に侵蝕された世界に落ちる最後の審判がアルクェイドと彼を飲み込んだ。

【罠(トラップ)カード発動(オープン)『スターライト・ロード』フィールド上のカードを二枚以上破壊する効果を無効にして破壊する。エクストラデッキから『スターダスト・ドラゴン』を特殊召喚。シューティング・ソニック!!!】

『なッッ!?』

全てを呑み込む破滅の輝きが地上から溢れ出した星屑の煌めきに切り裂かれる。

虚空に描き出された道を登る『スター・ダストドラゴン』の一撃にアルクェイドが呑み込まれた。

『やるじゃない』

ブレスの中から楽しげな声。

彼が目を細める。

破壊からの蘇生。

攻撃力の増加。

ライフの回復。

無効化系効果への耐性。

どれもこれもが彼の戦術を悉く覆していく。

赤い暴風が周辺を染める煌めきを割くように彼へ迫った。

彼の前にセットされたモンスターが破壊され、消滅する。

爆風に彼が吹き飛ばされた。

効果による破壊ではなく。

単純な攻撃による一撃。

しかし、その攻撃力は明らかに最初よりも増していた。

「―――」

彼がゆっくりと立ち上がる。

頭上に降臨したスターダストがアルクェイドに吼えた。

『いいわ。幻想種だろうと殺してあげる!!!』

ジャスト一分。

【ドロー】

彼がドローしたカードを見る。

『金華猫』

召喚成功時に墓地に存在するレベル1モンスターを特殊召喚する効果モンスター。

前のターンに破壊されたカードが彼の墓地には眠っている。

『救世竜セイヴァー・ドラゴン』

レベル1チューナーにして彼の切り札の一つである『とあるシンクロモンスター』をシンクロ召喚する為に必要不可欠な存在。

【『スターダスト・ドラゴン』を守備表示にしてモンスターを一枚セット。ターンエンド】

本来ならシンクロモンスターの一撃を叩き込む絶好の機会にも関わらず、彼は『金華猫』をセットしてエンドした。

目の前のアルクェイドに対しシンクロで勝つ術はない。

どれだけ強力なモンスターを持ってこようと勝ち目の無い戦いは無意味と彼はシンクロ召喚を放棄する。

『打つ手無しみたいね? なら、こっちはコンスタントにやらせてもらおうかしら』

『スターライト・ロード』を警戒してか。

大技から堅実な攻めに切り替えたらしいアルクェイドの腕に膨大な魔力が集まる。

『行くわよ!!!』

不意にその姿が消えた。

彼が次にアルクェイドを視認したのはスターダストの真下。

爪の一撃が翼を堕とし、巨躯を遥か上空へと打ち上げる。

苦鳴を漏らしたスターダストが虚空で爪によってズタズタに切り裂かれていく。

『あははははははははははははははは―――』

断末魔を上げたスターダストが嗤い声の中、消滅した。

「・・・・・・」

すまないと彼が呟く。

能力を生かし切れずに壁として使うしか出来なかった故の謝罪だった。

【ドロー】

彼がカードを見つめ、まだ最後のピースが揃っていない事に拳を握る。

いつまでも相手がこの状況をそのままにしておくとは彼には思えなかった。

相手の隙を突くならば次が最後のターン。

【モンスターを一枚セットしてターンエンド】

彼のセットにアルクェイドは万策尽きたかと目を細めた。

『守りを固めれば、どうにかなるなんて甘い考えなら此処で死ぬわ。貴方』

アルクェイドは未だに体が重い事を自覚しながらも勝利を確信した。

相手のモンスターが出ている時ならば、自分の能力は必ず相手を上回る。

相手が強ければ強い程に能力は上がる。

相手の戦力が多ければ多いだけ攻撃力は飛躍的に伸びる。

そして、その全ての能力を攻撃力【ではなく】足へと集中させればどうなるか?

『さよなら』

最後の一戦。

言葉尻が彼の耳に届いた時にはセットされた『金華猫』が破壊されていた。

爆風に彼が抗う。

そんな姿を嗤いながらアルクェイドの爪が再びセットカードに攻撃を仕掛けている。

二枚目のモンスターの破壊と同時に彼が叫ぶ。

【キラートマトの効果発動。戦闘破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を特殊召喚する】

『無駄よ!!』

デッキから彼を守るように黒い顔のあるトマトがフィールド上へと現れる。

しかし、アルクェイドの一撃が再度キラートマトを破壊していた。

フィードバックされたダメージが彼を襲う。

強者の苦痛の効果により下がったアルクェイドの攻撃力は必ず相手攻撃力を百上回る能力によって支えられている。

ダメージは最小限の100に留まった。

再びキラートマトの効果が発動し、二体目のキラートマトが現れる。

アルクェイドの攻撃は止まらない。

再度のリクルートから一秒すら経たず二体目のキラートマトも破壊された。

三体目のキラートマトが再び壁としてアルクェイドの前に立ちはだかるも四度目の爪が易々と引き裂く。

『しつこい!!!!』

さすがに五連続攻撃とまではいかないのか。

アルクェイドが次のモンスターが出てくる前に跳び下がった。

【キラートマトの効果発動。戦闘破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を特殊召喚する】

『もう諦めなさい。どんな幻想種を持ってきても私には勝てないわよ』

彼が微かに唇を歪めた。

「・・・・・・」

『諦めたら其処で試合終了? 諦めない人間にこそ運命は微笑む? 随分と貴方ロマンチストなのね』

呆れた様子のアルクェイドを尻目に彼がキラートマトによって最後のモンスターを特殊召喚する。

【デッキから『堕天使(だてんし)ナース−レフィキュル』を特殊召喚!!!】

彼の前にデッキから一体の女性型の堕天使が降臨する。

『堕天使?・・・ナースって看護婦さん? あ、あはははは、貴方って笑いの才能あるわよ』

彼は何も言わなかった。

ただ、最後の一分を笑いながら勝利を確信する為に使ったアルクェイドを見つめていた。

【・・・ドロー】

彼が静かに最後のカードを引き抜く。

もはや余裕の笑みを崩さないアルクェイドは己の勝利に酔いながら吸血衝動に身を任せ、堕天使をズタズタに引き裂き、彼を食い千切る事で頭を一杯にしていた。

「・・・・・・」

『最後に言っておきたい事がある? 何かしら、内容によっては聞いてあげてもいいわ』

「・・・・・・」

『君はまだ人間を本当には理解してない? だから、勝てる?・・・寝言は寝てから言いなさい』

アルクェイドの眼光が彼を射抜く。

【魔法カード発動『ソウル・テイカー』 相手フィールド上モンスター一体を破壊して、相手ライフを1000回復する】

アルクェイドの前に突如として腕が出現した。

『!?』

腕が胸へと突き込まれて引き抜かれる。

『ッッッ!? 何!?』

アルクェイドが驚愕に顔を引き攣らせた。

【アルクェイド・ブリュンスタッドを破壊して相手ライフを1000回復する】

腕に掴まれていた輝き・・・魂が握り潰される。

ビクリと震えてアルクェイドが吐血した。

しかし、それでもアルクェイドは倒せない。

レフィキュルの効果で回復をダメージに変えたとしても・・・蘇生能力がある限り、次のターンまで彼のライフが持つ事はない。

そのはず、だった。

【チェーン。罠(トラップ)カード発動(オープン)!!! 『リビングデッドの呼び声』対象は墓地の―――】

最後まで残っていた罠カードが開かれ、彼の最後の攻撃が始まる。

即座に生き返ったアルクェイドは・・・その光景に初めて自分が【恐怖を覚えている】のだと悟った。

 

 

【―――『オシリスの天空竜』 特殊召喚!!!】

 

 

最強の伝説が今甦る。

 

絶する咆哮。

 

射殺す眼光。

 

終焉の雷を纏う竜が虚空へと解き放たれる!!!

 

【『オシリスの天空竜』効果発動。表側攻撃表示で召喚・特殊召喚されたカードの攻撃力を2000下げ、攻撃力が0になったモンスターを破壊する】

『こんなの!!!!』

アルクェイドが回避行動を取ろうとしたものの間に合わなかった。

【召雷弾!!!!!!】

『強者の苦痛』によって攻撃力を劇的に下げられたアルクェイドはそれでも攻撃力を相手よりも100ポイント上回る能力によって戦闘で破壊される事は無い。

しかし、攻撃力1000であるオシリスとレフィキュルを前にしてはアルクェイドの攻撃力は『常に破壊圏内』となる。攻撃力が常時100上回る能力だろうと瞬間的な0を記録する限り、オシリスの能力から逃れることは出来ない。

『!!!?』

オシリスの一撃にアルクェイドの全身が爆砕した。

瞬時に死を抜け出したアルクェイドが己の異変に気付く。

(回復・・・しない!?)

はっと気付いた時には遅かった。

アルクェイドは自分が馬鹿にしていたレフィキュルがニタリと嗤うところを見た。

【相手の特殊召喚を確認。『オシリスの天空竜』効果発動。召雷弾!!!】

 

アルクェイドの無限蘇生能力と回復能力。

レフィキュルの回復逆転能力。

オシリスの召喚反応破壊能力。

引き金となったソウルテイカー。

四つの力によって導き出された答えは一つ。

 

自身の効果を組み込まれた無限バーンを前にしてアルクェイド・ブリュンスタッドは完全に敗北する。

 

オシリスの召雷弾が全てを焼き尽くしていく。蘇生する程にダメージを負っていくアルクェイドが生死の狭間を行き交いながら雷の先にいる彼を見つめた。

 

その瞳は何故か。

 

アルクェイドを初めて殺し尽くした人にそっくりで・・・何処か悲しい目をしていて・・・。

 

(どうして私をそんな目で見るの?)

 

【1000+1400×7=10800ダメージ】

 

ライフ0。

 

「・・・・・・」

 

アルクェイドは最後の召雷弾を受けたと同時に倒れ臥した。

 

『――――――』

 

魔力の枯渇。

無限蘇生能力すらDuelが完全に終了するまでは行われない。

勝利者が得る僅かな空白時間。

焼き滅ぼされ、消し炭となったアルクェイドがまだ蘇生していない事を確認して彼が近づいた。

【勝利1。アンティールールに基づきレアリティー最上位カード一枚を接収する】

相手の宝具を接収する彼の能力が発動する。

デュエルディスクの墓地にあった『ソウルテイカー』から球状の輝きが吐き出されて弾け、虚空でカードとして凝集した。

『赤い月』

アルクェイドから接収したカードには文字通り真っ赤な月が描かれている。

「・・・・・・」

彼が微かに顔を曇らせた。

それでも一応の成果を得た彼は傍らの死体に一枚のカードを張り付ける。

『緊急テレポート』

一瞬でその体が消え失せた。

安堵の溜息。

分の悪いDuelに勝利した彼が辺りを見回す。

もう周辺には静寂が戻っていた。

近辺はどこもかしこも瓦礫の山と化していて、激戦の様子も生々しい。

「?」

街中で派手に暴れたせいで遠くから警察車両のランプと消防のサイレンが近づいていた。

幾つかのカードを取り出した彼は何処か浮かない顔をしながら逃げるでもその場を離れるでもなく事態の収拾へと向う。

「・・・・・・」

未だ、彼の目的は果たされていなかった。

 

―――まだ、足りない。

 

そんな彼の呟きだけが夜空へ解けて消えた。

 

 

翌日、様子を見に来た路地裏同名+一匹が目にしたのは元通りの廃工場の床でスヤスヤ寝ている彼と掃除をするメカメイドと耳尻尾付きの少女という何とも反応に困るものだった。

 

 

三咲の地に広がった波紋が新たな客人を招くのはそれから数日後。

 

赤い髪の女が一人、久しぶりに踏む故郷の匂いに顔を綻ばせ呟いた。

 

「さ、お仕事お仕事♪」

 

第五の魔法使いが新たな決闘の風を呼ぶ。

 

To be continued

説明
雷が、その無限を焼き尽くす。
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