恋姫?夢想 ━━一人乙女━━  《参》
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――――――徐州、下?城城下町の酒場。

 

 

現在時刻はお昼を回っており、住民達が昼飯を食べに来店していた。

この店、普段は酒場であるのだが、出される飯は美味く、なにかと近隣の住民達から好かれているちょっとした有名店でもあった。

普段は住民達のみが集まっている店なのだが、今回は人一倍に目立つ者達が来店していた。

 

「はぁ〜・・・! ここのメンマは実に素晴らしい! この色つや、このメンマ特有の形をよく捉えた形、そしてなにより・・・味ッ! ん〜、よく漬かっている!」

 

男が一名、女が三名、それぞれ北西南東を描くようにして座っており、その中の一人、北に座る女性はラーメンなどの具材で使用されるメンマを、これでもかという程に敬愛しながら食しており、

白い衣を身に纏い、谷間が見えるほどに豊かな胸は、男性客の目を釘付けにしていた。

 

「ハァ・・・星、貴女のメンマ好きにはとこっとん呆れ果てますよ」

 

西に座る女性は、少し笑いが混じったため息を付きながら、北に座る女性を星と呼び、彼女のメンマ好きに少々呆れを覚えていた。

 

「でも確かに美味しいですからねぇ〜、そこらへんは無礼講ということで、許しちゃいませんか〜?」

「はっはっはっ! 俺も長年医者の旅をしながら各地の料理を食べていたが、この酒とメンマの組み合わせはなかなかいいと思うぞ、良い酒のつまみだ」

 

南に座る女性・・・というよりも少女は、何とも器用な事か、棒付き飴を銜えながらラーメンを啜っていた。

そして最後に東に座る男性、メンマを褒めちぎる星に便乗しての事か、メンマを酒のつまみにして飲み食いしており、少しほろ酔い状態になっていた。

 

星 「そうであろう、そうであろう! いや〜、 風と華陀殿は本当に話が分かる! そこの頭の硬いメガネとはまさに雲泥の差、月と鼈(スッポン)だ!」

「はっ・・・はははっ・・・どうせ私は石頭の頑固メガネですよ、 メン魔人が・・・」

風 「どーどー、稟ちゃん、こういうのは諦めた方がいいですよ〜」

星 「風もよく分かっている。 風は良き軍師になれるぞ〜」

 

そう言いながら、 風の頭を優しく撫でる。

 

風 「星ちゃんに言われると、柄にもなく自信が付いてきますね〜」

稟 「ハァ〜〜〜・・・! (あぁ〜ダメだぁ〜・・・! 私の周りには、まともな人間が居ないッ・・・!)」

 

そんな約一名を除いた談笑が飛び交う酒の席が続く。

この星・風・稟・華陀の両名は、この徐州で今日会ったばかりであるのだが、

初対面という割には、同窓会か忘年会のようなテンションとノリでスッカリ意気投合しており、傍から見ても仲の良い旅人達だという認識が強く感じられた。

 

「ズ・・・ズズズ〜・・・ (五月蠅いなぁ・・・もう少し食事のマナーぐらい慎めってーの・・・)」

 

そんな人一倍賑やかにしている四人に対して、 ラーメンと炒飯を食べながら心の中でブツブツと呟いている例の青年の姿があった。

彼女も、この店に来店しており、きっかけは酒屋というのにラーメンの匂いに誘われた結果、こうしてラーメンと炒飯を食しているのだが、星達の他の客に交じって聞こえる大音量の声でやや不機嫌になってしまっていた。

基本、彼女は静かに食べる方を好む方で、賑やかに食べるのは自分の知っている身内ぐらいなものだった。

 

華陀 「それにしても、このメンマの出来。 徐州という豊かな土地だからこそ出来る物なんだろうな」

星 「そうであろうな。 他の州も陶謙殿のような善政をしていれば、これほど賑やかになるであろうに・・・」

稟 「漢王朝の腐敗は、 そんな生易しいものでは無いでしょう」

風 「そうですね〜、 これほどの善政を行えるのは徐州という余裕がある土地と陶謙さんの地位が王朝内でも、 かなり高い位置にあり、 陶謙さん自身が自分の権力を決して振りかざしていないおかげなんでしょうね〜」

 

徐州は、 元々は作物が実りやすい豊かな土地であり、 人の行き来も他と比べると良く見える所である。

そして徐州の統治をしている陶謙は、 こんな時代にも拘らず民に対して中々の善政をしていた事もあり、 反乱などといった大きな出来事は起きてはいなかった。

 

―――だが、 しかし。

 

そんな豊かな土地だからこそ争いが起きることもある。

 

「オラオラァッ! 黄巾党の御通りだぞ!!」

「どきやがれってんだよ!」

「じ、ジャマなんだな!」

「天下の黄巾様だぜ!」

「殺されたくなかったら引っ込んでな!」

 

その怒鳴り声に近い大声は店内に響き、 全員出入り口に目を向けた。

『黄巾党』 突然やっていて、 そう名乗る彼らは、 ドカドカと入ってきて適当な席を見つけて座る。

その瞬間、 賑やかだった店内が一気に静かになり、それと共に他の客はそれぞれ、彼らと目を合わせないようにと目を背けていた。

 

「おい、 店主! この店で一番いい酒を出しな!」

「まずいもん出したら承知しねーっぞぉっ!」

「料理も大盛りもってこい!」

「は、はい、では、先にお勘定を」

 

この店では、食い逃げ防止の為に客には先にお金を払ってもらっている。

今回もいつも通りの接客で店主がそう言うが・・・

 

「あぁん? 俺達から金取ろうってか?! 冗談も休み休み言いやがれってんだ!!」

「俺たちは、 テメーら民のために身を粉にして働いてんだぞ!!」

「その俺達から金取ろうってのか!? おいっ!」

「ゆ、許せないんだな!」

「この州はいずれ俺達のものになるんだ! 殺されたくなかったら、 とっとと飯持って来い!!」

「ひいぃッ!!」

 

実に図々しい、そこいらの賊と何も変わりない態度を取る彼らに客達は不愉快な気分でいっぱいとなり、箸が止まる。

 

星 「・・・ふー・・・。」

 

星は、 鼻でため息をついた後、 自前の槍を手に取り席を立とうとする。

 

風 「行くのですか〜?」

星 「うむ、 せっかく気分が良かったのに、 水を差されて苛立った。 少し憂さを晴らしてくる」

華陀 「ほどほどにしといてくれよ、 医者としては死人が出るのは見たくないからな」

星 「心得てい―――・・・」

 

そう星が言い切り、 立ち上がろうとした、その時だった。

 

”バァンッ!!”

 

―――店内から、 一発の銃声が鳴り響き、小さな閃光が一瞬だけ店内を照らした。

 

「なっ・・・?」

 

黄巾党の一人が、 眼前の現状に呆気を取られた。

先ほどまで調子に乗っていてヘラついていた仲間の一人の顔が半分吹き飛び、店の床に肉片と血を流していた。

発砲した者の方を見ると、マグナムを構えた例の青年が立っていた。

その顔は怒りを見せていないが、いつぞやの時に見せた無表情の顔だった。

 

「身を粉にしている―――ねぇ・・・じゃあ、もっと頑張って粉々になって貰おうか?」

 

そう言って空いている片方の手を開くとスッ・・・とサブマシンガンが喚び出された。

そして構えると共に面子の中で一番痩せている黄巾党の一人に銃口二つを向けた。

”バンバンッ! バララララッ・・・!”

そして発砲をし始め、痩せた黄巾党の一人はみるみる内に縮んでいき、最終的には手足の掛けた穴だらけの死骸へと変貌した。

それを見た客と店主達は突然のグロテスクな光景に嘔吐し始め、店から逃げていく

星と華陀、そして風、稟は目の前の現状に衝撃を受け、言葉を失っていた。

 

「て・・・てめぇ!! 俺達に手を出す―――・・・」

 

”バンッ!!”

その発砲音が鳴り響き、怒鳴りつけてきた黄巾党の男は頭半分を失って絶命した。

どんどん死んでいく仲間達、自分等にとっては突然の理不尽であり、残りの3人は怒りに震え、剣を取り出した。

 

「う・・・うおおおおおおおおっ!!!」

「このやろぉぉぉぉぉぉ!!!」

「く・・・くたばるんだなぁ!!!」

 

一斉に跳びかかろうとしたが、その寸前に自分等の足元に何やら一つの缶らしき物が転がってきた。

眼を動かして確認しようとした瞬間、それは”パンッ!”という小さな音と共に破裂し、そこから大量の煙が上がる。

発煙手榴弾だ。

 

「な、なんだ!? ゲホゲホッ!」

「前が見え―――・・・」

 

”バンッ!”

 

銃声が鳴り響く。

 

「んなっ!?」

 

さらにそこからマグナムの銃声と閃光が起き、黄巾党で一番肥った男の腹はグチャグチャに穴だらけになり、胸に大きな穴が開いていた。

 

「う・・・お・・・ぉお・・・」

 

ズシーン・・・という音と共に倒れ込み、その風圧もあってか視界を覆い隠していた煙が少し晴れた。

視界が見え始め、彼女探す最後の黄巾党の一人の前にユラリと人影が見えた。

「しめた!」と思った男はすかさず突きでその人影を刺した。

手ごたえを感じ、ニヤリと笑う男だったが、改めて見上げるて顔を見た瞬間青ざめた。

それは最初に殺された仲間、男は仲間の死骸に向かって剣を突き刺していたのだ。

 

「そ、そんな・・・」

 

囮(デコイ)にまんまと騙された男は挿している剣から手を離し、ゆっくりとふらつきながら後ろへ下がる。

数歩後ずさった頃だろうか、突然頭に硬い物が当った。

嫌な予感がして、顔を振り向かせると、そこには仕留めたと思っていた彼女がこちらに向かって銃を構えている姿があった。

 

「ひっ・・・!」

「馬〜鹿っ」

 

最後の銃声が鳴り響き、これで店に入り込んできた黄巾党の男達は全員死亡した。

コートをパタパタして煙を払うと共に先ほど自分が座っていた席に戻り、残っているラーメンと炒飯を見てみる。

・・・両方とも、先ほどの戦闘の影響で煤(すす)だらけになっており、とても食べれる代物ではなくなっていた。

その現実に彼女は落胆しながら、器をテーブルに置き、しぶしぶと勘定を済ませようと財布片手に店主が居る店のカウンターにまで近寄る。

その時だった。

 

星 「はぁっ!!」

 

突然、星が槍を彼女に向けて突き出し、カウンターに大きな穴が開く。

幸い、店主が居るポイントとは離れており、彼女も星の攻撃が逸れたおかげで無事だった。

 

星 「なっ・・・!?」

「どういうつもりだ? 傍観者決めこむに飽き足らず、今度は私と戦いたいと? 冗談はよしてくれ」

星 「そうは行かぬ、主のその武器は何だ? そして、一番の問いだ・・・何故、何故今もそうやって無表情で立っていられるのか!」

 

星も人を殺めた事はある、どうしても許せない者が居た時、容赦なく槍で八つ裂きにした経験もある。

他の者の殺しも見てきた、その者に限っては必ず何らかのリアクションを取る、笑う、泣く、悲しむ、苦しむ・・・どんなに優れた武力を持った人間でも、こればっかりはどうしようもなく付いてくる。

戦争でもそうだ、平然としていられる者なんて居るわけがない、殺しの反動は必ずやってくる、それはすぐにやってくる。

だが、彼女はなんの感傷も無ければ、それが日常だと理解しているような素振りを見せた。

それが星にとって気味が悪く、これほどまで胸糞の悪い物は無かった。

 

華陀 「星、やめるんだ! そいつは―――・・・」

星 「華陀殿、すまぬが危険ゆえに表に避難を、これからここは・・・荒れますゆえに・・・」

 

星の殺気立った声に華陀は少し驚いたが、他の二人を連れて店の入り口まで退避した。

それを目で見ずとも気配で確認した星は深く一息吹くよう吐いた。

その目付きは鋭くなっており、覚悟を決めた眼となっていた。

そんな星を見た彼女は浅いため息をつき、店主が居るポイントに凭れかかる。

 

「おい店主、裏口あるんだろ? そっから逃げろ、あとお代は幾らだ?」

「ひっ・・・い、要りません! あんたらさっさと出て行ってくれ・・・!」

「言われずもがな。 だけど、あの女が返さねぇよ・・・」

 

会話を終え、店主はキッチンへと中腰で走り込み、そこから裏口へと避難した。

それと共に二人の目線がハッキリと合った。

 

星 「・・・一戦まみえる前に、名を聞こう」

「そういう時は先に名乗るのが礼儀じゃないのか?」

星 「我が名は趙雲! 放浪の旅をしている者だ!」

 

その名を聞いた瞬間、青年の頭の中で覚えのない記憶が浮かび上がる。

それは本が勝手にページを開くよう、趙雲という名の人物に関して知識が思い浮かんできた。

誕生は不明であるが、229年没。

中国後漢末期から三国時代の蜀漢にかけての将軍であり、字は子龍(しりゅう)。

今の中国人民共和国の河北省石家荘市正定県である冀州常山郡真定県の出身であり、封号は永昌亭侯、諡は順平侯、子は趙統・趙広、父と兄の名は不詳とされている。

数々の武力を見せつけ、蜀軍の主戦力の一人となった人物であり、その戦績も眼を配るものがある程だ。

・・・しかし、記憶にある人物は男であり、女の筈が無いと思われるが、事前に依頼主からこの世界は三国志がモデルとなっており、その中で登場する著名人は殆どが女人であるというトンデモ事実を聞かされており、「ああこういう事か」と改めて彼女は実感していた。

あと、彼女の頭の中ではもう一つ浮かび上がっており、これは彼女個人が知っていた知識なのだが、趙雲子龍というプロレスラーであり、彼女には全然関係ないようで関係あるような気がしてならなかった。

 

星 「さぁこちらは名乗ったぞ、そちらも名乗られよ!」

「はいはい・・・そうせかすな大声出すな喧しい・・・」

 

そういうと共に彼女は凭れていたカウンターから離れた・・・次の瞬間だった。

彼女は勢いよく星に向かって跳び、それと同時にいつぞやの霧が彼女の全身を覆い隠す。

 

星 「なっ・・・!? くっ! 卑怯な・・・!」

 

なんとか突き刺そうと槍を構えて思いっきり突き出した、だがそれはすり抜け、霧から紅い刃がこちらに目掛けて迫ってきた。

その勢いと素早さは恐ろしく速く、たった一回の混じり合いなのに星の顔には冷や汗が流れていた。

 

星 「・・・ッ!? (今のは不味かった! 運が悪ければ死んでいた!)」

 

だがその考えている暇さえ隙だった。

まだ彼女は星の前に居り、空中で半円を描くように蹴りを決めてきた。

その蹴りだけは見事に当たり、星はテーブルにぶつかり、体を打った。

 

星 「あぐっ!!」

「一つ良い事を教えてやる、戦いに礼儀なんて存在しない、道理も道徳も存在しない、あるのは殺意と意思のみ」

 

完全に霧が晴れた彼女の姿は先ほどと一変しており、

紅色の甲冑と衣を纏い、赤き刃を持った黒い蛇がとぐろを巻いている装飾が施されている槍を持っていた。

その姿は差ながら戦国時代の武将、戦場に立つ戦乙女のようだった。

 

「私の名はリント、これで名乗りは終りだな、それじゃあ続きと行こうか」

 

その台詞と共にリントは踏み込んで槍を突き出した。

まるで弓矢の矢のように、高速で放たれた槍の一矢は星の右目に向かって飛んで来ていた。

星は全神経を回避に集中させているのもあって、すぐに自分の身に攻撃が来る事を察知していた。

素早く回避し、さらにそこから彼女の懐へとすり抜けるように潜り込もうとする

しかしリントはそれに対応するよう伸ばした腕を紐を引くよう振るい、槍を自分の位置まで戻した

まだ星は彼女の懐に潜り込めてはいない、星も嫌な予感がして足を踏み留めた。

予想は的中しており、そこから全身を横に一回転すると共に槍を振るい、槍を元の手元に置いた。

 

ここまで両者とも睨みあいを決め、いつ動いてもおかしくない状況だった。

一時的な沈黙から動いたのはリント、星の前まで近づき槍を後ろに構え、間を待たずに突きを繰り出す。

その一撃を星は防御した、だがそれだけでは終わらない、リントはさらに星の周辺を回り込むように幅跳びで動いては突きの連打。

まだ防げているが、次第にペースが上がり始め、最終的には防御が間にあわず、攻撃をかすり始めた。

すると途端にリントはフェイントを掛ける、幅跳びでいつものように跳ぶが、そこから素早く小さく跳び攻撃の方向を変えて放つ。

その一撃は見事星に当たり、小さく苦痛の声を挙げながら後ろに跳ぶ

それに喰いつくようにリントも同じく接近し、槍の連撃を見舞う。

突き、斬り、突き、斬り・・・先ほどの単純めいていて複雑な攻撃とは打って違い完全に何処から攻撃を浴びせてくるか分からない攻撃を星は受け続ける。

 

華陀 「不味いな、完全に翻ろうされている・・・!」

風 「あのリントという方、不思議な戦い方をしますねぇ〜まるで獲物を逃さんとする蛇です」

稟 「呑気に解説している場合ですか!? このままだと、星がやられてしまいますよ!」

 

そんな会話の間にも一方的な攻防が続き、リントの回し蹴りで星は再び吹き飛んだ。

グチャグチャになったテーブルとイスに埋もれ、星の身体は擦り傷と切り傷、果てには打ち痕まである始末だった。

 

星 「はぁ・・・!はぁ・・・! (なんだこの御仁は・・・!? 先の読めぬ攻撃、何より威力が桁違い過ぎる!)」

 

そして一番に驚いたのは、リントには一切ダメージが入っていない事。

攻防の中、少々だが反撃の一矢は出すけれどもそれは回避される事もなく、まるで槍が彼女を傷つけたくないと言わんばかりに勝手に逸れてしまう。

そう考えている内にも、リントの攻撃がやってくる。

刃の無い逆の部分で突き、さらにそこから衣服に絡めると共に天井に放りあげ、そこから横に一回転を決めて店にある柱に星の身体を打ちつけた。

 

星 「ぐはっ!!」

 

今の衝撃は強烈で、打った瞬間に腕の骨がミシミシしなる感覚と音が聞こえた。

さらにまだ衣服に絡まっている槍を放りあげ、ハンマーを振り下ろすように星を地面に叩きつけた

 

星 「がぁぁっ!!! 〜〜〜〜ッ!!」

 

あまりの激痛に涙が出始め、言葉にならない悲鳴を挙げ始める。

それでもリントの猛撃が止まらず、少し助走をつけて走り、星の近くまで寄ると共に槍を床に突きさし、そこから三日月を描くように跳び、星の胸に膝が落ち、そこからメリメリと鈍い音を立てながら全体重を掛けてくる。

 

星 「ああああああああ!!!」

 

腹の底から響く叫び声が店の中に響いた。

その状況に三人は苦い顔を見せ、ついに華陀が動く。

その間、リントは最後の止めと槍を構えている。

 

華陀 「おおおおっ!!!」

 

華陀は自前の針を手にリントに向かって針を突き出す。

その腕と針は黄金に輝いており、強い氣が感じられた。

しかし。

 

リント 「餓鬼の玩具が・・・」

 

リントが槍を華陀の針に向かって突き出し、槍の先端と針の先端が合わさる。

まさに数ミリ単位ともいえる相打ち。

だが、リントはそこが狙いだった。

”ゾワゾワ・・・”

そんな音が小さく鳴り始め、すぐに気付いた華陀は何だという顔で音がする方へと顔を向ける

音が聞こえてきたのは現在相打ちになっている槍と針の所、なんと黄金に輝いていた針の周りに赤黒いオーラが蛇のようにとぐろを巻きながら段々華陀の方へと侵食し始めてくる

それを見た瞬間、華陀は針を素早く弾くように手放した。

弾かれた針は床に落ちた途端にパキッと小さな音を立ててシャーペンの芯のようにペッキリと折れてしまった。

 

リント 「チッ・・・勘付くの早ぇな・・・」

 

華陀の顔は冷や汗でズブ濡れになるほどに濡れており、息も荒くなっていた。

 

華陀 「はぁ・・・!はぁ・・・! (なんだ今のは・・・理屈では理解できない、だが感覚では解る! もう少し触れた状態を継続していれば俺の腕はあの針のように炭の様になって粉々に砕けていた・・・!)」

 

それと共にこの武器は存在してはいけないという想いが生まれ、それは瞬時に強くなった。

華陀は先ほどの事が無いように慎重に行こうと予備の針を取り出し、構えた。

だが、リントの顔を見た瞬間、ギョッとした。

彼女の顔が一変していた、冷静さが目立つ無表情から心から嫌そうな顔に変貌していたのだ。

顔を見れば一目瞭然だ、「まだ立ち向かってくるのか」「心底面倒くさい」そんな感情が読みとれてしょうがない。

リントは顔を沈め、3秒ほどで顔を挙げた。

最初の無表情に戻ったが、殺気が感じ取れ、その殺気はビリビリと肌を突くほどだった。

次の瞬間だった。

 

風 「いけない! 華陀さん、避けて!!」

 

その声が届いた時には遅かった。

少し離れた位置に居たリントは華陀の懐前に居り、槍を今放つ瞬間だった。

 

華陀 「・・・!!?」

リント 「・・・チッ・・・」

 

だが、放たれたのは空気をも貫く一撃。

先ほどまでの殺気も一瞬で消えており、槍からも赤黒いオーラが見られなかった。

それでも華陀を地面に伏せるぐらいの威力があり、ガードしながらでも受けた華陀の身体は吹き飛び、壁にめり込むように激突した

 

店内にはすっかり動かなくなった二人、そしてその二人の間に立つリント・・・。

ため息をつきながら槍を軽く振るうと槍は黒い風のようなものを出しながら消えていった。

頭を掻きながら店の正面入り口から堂々と出ていき、顔を鎮めながらその場から何も言わずに立ち去っていった。

その様子を風と稟は見ていたが、自分等では太刀打ちできないと理解しているのもあり、稟はその場に崩れるように座りこんだ。

リントが去った後、風と稟は星と華陀が起きるのを待ち、三十分経過した頃に華陀が咳き込みながら起き上がった。

外傷は打撲ぐらいで済んでおり、最後の一撃もガードしていたのが幸いして大事には至らなかった。

それからすぐに重体の星の治療をする為に針を取り出し、氣を溜め込む。

 

華陀 「はぁぁぁぁ・・・! これか? いや、 違う・・・これじゃない・・・、・・・ッ! 見えた! 貴様ら病魔など、 この鍼の一撃で蹴散らしてやる! はああああああああああ!! げ・ん・き・に・なれええええええええええ!!!」

 

”ピシャコーーーン!!!”

・・・何処かで雷が落ちたような音がした。

これも立派な治療法なんだろうが、傍から見るとどうしても格好が悪く、こっ恥ずかしいこの上無かった。

しかし、そんな奇妙な治療法にも関わらず、先ほどまで全身傷だらけで血もそれなりの量を流していた傷口が綺麗さっぱりに消えている。

一体どんな原理なのか・・・?

その場を見ていた者達全員が疑問を浮かべ、少し考える。

そうしている間に星の意識が戻り、華陀と同じく咳き込みながら目覚めた。

 

華陀 「気分はいかがかな? 星殿」

星 「えほっ!えほっ! あ゛ぁ・・・ずまない・・・げほっ! ・・・あ〜・・・この感じ、もしやゴ・・・ゴドべ・・・」

華陀 「ゴッドヴェイドーだ」

星 「あーそれだ。 改めて凄まじいですな・・・五斗米道(ゴトベイドウ)―――・・・」

華陀 「五斗米道(ゴッドヴェイドー)だ!!!」

星 「す、すまない・・・」

 

華陀の真顔からの怒鳴り声に少し戸惑いと恐ろしさを隠せない星だった。

 

稟 「それにしても・・・なんなの? あの化け物・・・あっという間に店内を血の海に変えて・・・」

風 「野蛮の度合いを通り越してますね〜・・・」

星 「野蛮どころではないぞ・・・風・・・あれは・・・あの女は・・・」

 

 

 

――――――正真正銘の化け物だ。

 

 

 

―――――――――――――――・・・

 

――――――――――・・・

 

―――――・・・

 

 

リント 「おっちゃーん、 中華まんくれ。 8個ほど」

 

そんな会話の種にされているリントはというと、あれほどの惨事が起こしたにも関わらず、半端で残してしまったラーメンと炒飯を悔やむ感じで出店で肉まんを注文していた。

格好は先ほどの甲冑と違い、以前の傭兵の衣装のままだった。

 

「あいよお待ち!」

リント 「はい代金、ありがとね」

「毎度あり! またどうぞ!」

 

すぐに出店から立ち去り、歩きながら中華まんを食べ始めた。

コンビニの肉まんと大差代わりないが、それでも食べれることには食べれた。

リント自身は、カレーまんやピザまんを好んでいるが、この時代にそんな洒落た食べ物なんて存在するワケがなく、少し肩落ちしていた。

そんな中、先ほどの勝負の中で思い浮かぶ人物が一人。

針を獲物にこちらに戦いを挑みにきた男、華陀だ。

 

まず、華陀という男は何者か・・・

彼は、若くして医に長じ、医術や薬の処方に詳しく、

現代医学に必要不可欠な麻酔を最初に発明した医学界では大変有名な著名人であり、麻沸散と呼ばれる麻酔薬を使って腹部切開手術を行ったこともある人物である。

曹操の頭痛を針治療一回で全治せしめ、後年、曹操は彼の医術を独占しようと、侍医に採用しようとするが、華陀は妻の病気を口実に故郷へ帰り、曹操の招きに応じなかった為、曹操の怒りを買う結果になり、あえなく処刑されてしまった。

なんとも理不尽で呆気ない最期を迎えた彼・・・

あの時、記憶の中にこの知識が脳裏に浮かばなければ、あの瞬間にリントは葬ってしまっていた。

 

リント 「・・・・・・。 (あんな賑やかに騒いでた男が、 たった一人の馬鹿の我が儘で殺される羽目になるとはねぇ・・・)」

 

そう思いながら、 早くも8個あった肉まんをぺロリと完食してしまう。

 

リント 「・・・・・・。 (この世界の曹操に出会ったら死なない程度に痛めつけたろっと)」

 

 

 

――――――だが彼女は予想し得なかった、これから暫く後に彼女と対峙し、程無くして彼女の命を救うきっかけになるとは。

 

 

 

 

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●【リント変身図鑑】

 

《舞姫武装・世界蛇》

 

 

(小話)

今回、二人を相手した衣装。

ネーミングが良いの思い浮かばなかったです・・・

戦闘シーンの際、どう動かそうかと悩んだ挙句こうなりました。

色々と頭が疲れて二度目は無いだろうと言わんばかりの衣装です。

実は当初、これが最初の没衣装だったのですが、何を思ったのかこの衣装を没から復活、そこから採用という形になりました。

でも、今回っきりです、あんまり能力底上げすると色々とバランス崩れる・・・。

 

 

●【今話のバトルBGM】

 

(今回の戦闘シーン:星との戦闘シーン。)

 

戦闘曲:{乱れ四華花} (龍が如く -維新!- 戦闘BGMより)

 

《小話》

当初は戦国BASARAXのBGMにしようかなっと思いましたが、なんか合わないのでチェンジしました。

龍が如くシリーズで、このゲームは未プレイなのでそこまで言えませんがプレイ動画を見る限り面白そうなのでPS4を手に入れるきっかけがあり次第、これも購入してみようかなっと思ってます。

とりあえず言えるのはここまで、ほんとこのゲームやったこと無いんです・・・PSVITAと連動出来るとかは聞いた事あるけど・・・

 

 

●【あとがき】

 

どうも私です。

今回のお話は戦闘シーンが個人的に無茶あったなと反省しています。

でも、私の頭ではこれが限界でした・・・。

次回はこんな戦闘は控えるようにしたいです、脳がしんどい・・・

 

今回のお話でやっと恋姫無双キャラと遭遇出来たリントちゃん。

でも、どういうわけか戦う羽目に・・・

次は共闘のお話となります。

星達と対峙し、町から去って何処吹く風と言わんばかりに旅を続けるリント、そこに誰が現れかは次回のお楽しみ

 

では!

説明
《酒場のガンマンと蛇》
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コメント
しょっちゅう違法行為している上に自己中の星にだけは人の道とか人倫とか説かれたくねえな、星は好きだけどね。(禁玉⇒金球)
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長編小説 恋姫†無双 オリ主 なんかもう・・・ごめんなさい・・・ 

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