【獣機特警K-9UG】戦慄へのカウントダウン【交流】 |
ラミナ市最大の商業施設・9 to 10U…。
いつもは大勢の人々でごった返すこのビルだが、今日はやけに様子が違っていた。
ビルの周囲には立入禁止のロープがしっかり張られ、人々は9 to 10Uを固唾を呑んで見守っていた…。
「一体何があったんです?」
ラミナ警察署長、エルザ・アインリヒトが、ビルの管理をしている茶トラ猫形ファンガーの女性に訊ねる。
管理人は重い表情で答える。
「ええ、ビル内部に爆弾を仕掛けたという電話がありまして…」
さらに、隣にいた女性…このビルの中で料理店を営む、花房蘭が続く。
「そんな脅迫信じるかって言ったんだけど、そしたらあいつ隣のビルの爆弾を爆発させたらしいんだよ」
蘭の夫、ギルン・キトナも同調する。
「頼む!このままじゃ商売にならない!それどころか、大勢の市民が犠牲になる…!」
「わかりました、我々に任せてください…。さて、聞いての通りだ。これよりわがK-9隊はビル内に仕掛けられた爆弾を回収、および解除にかかる。犯人の予告だと爆破予定時刻は今から1時間後。爆弾の数は15個だ。気を引き締めてかかれ!」
「了解!!」
エルザの合図で、次々に入っていく警官隊。K-9隊も例に漏れず、この作戦に参加していた。
「…ったく、犯人もハデにやってくれるじゃないスか!」
と、筑波未来はやり場のない怒りを募らせる。
「この爆弾がいっせいに爆発したら、窓は確実に吹き飛ぶ。仮に怪我人が出なかったとしても、しばらく営業できなくなる恐れもあるわ」
と、冷静な分析をするのはイシス・ミツザワ。
「ひどい!9 to 10Uはみんなが楽しく過ごせる場所なのに…こんなことするなんて許せないわ!!」
と、煌月空。
三人がしばらく進んでいくと、イシスの特殊探知センサーが何かを発見した。
「…爆弾発見。これより解除に移ります」
イシスは手際よくカバーを外すと、回路の分析を行い、そのまま信管を丁寧に取り外していく。
「おぉっ!さすがイシスさんスね!」
「そりゃそうよ。ダテに長いこと警官やってたわけじゃないもの…こちらイシス。1個目の爆弾は解除しました」
…残り時間、50分。
5階・婦人服売り場…。
特殊な防護スーツに身を包んだ女性が二人、手に特殊探知機を持って爆弾の捜索に当たっていた。
生活警備課のミウ・カワグチとテムナ・ツルハシも、今回の任務に駆りだされることになったのである。
「いやぁそれにしても、わざわざスーツ用意してくれはって、エルザ署長はホンマええ人やわ」
「油断しちゃダメだよテムナ。確かにこのスーツは爆弾テロ対策用の頑丈な服だけど、私たちはロボットでもサイボーグでもないのよ。ヘタしたら命にかかわるんだから油断しない!」
「へぇへぇ…ん!?」
テムナの持っていた探知機が反応する。
「ミウ、爆弾あったで!!あの試着室の前や!!」
「よし!すぐに解除に移ろう!!」
ミウも爆弾の解除方法は熟知していた。カバーを外して、慎重に信管を切断する。
「よし。止まった…!こちらミウ。爆弾を解除しました!」
残り時間、45分…。
8階…書店などが並ぶ専門店街では、本庁からの出向組であるシーナ・ヴァイスとタム・カワグチが捜索に当たっていた。
「はぁ、アンタはいいわよね。あたしみたく重いスーツ着なくても大丈夫なんだもんね」
「そうでもないわよシーナさん。この作戦に参加している警官は全員が命がけ。機械の身体になったとはいっても、それは変わらない事実なんだから」
すると、ヴァイスの持っていた探知機が作動する。
「レコード店よ!!急ぎましょ!!」
地下1階・食料品売り場。
「こちらソウ!鮮魚売り場付近に爆弾を発見!!」
三沢颯の掛け声で集まるのはナタリア・天神・フタロイミツィと宮ノ陣竜矢。
「さすがソウ先輩!よく見つけましたね」
「へへ、こう見えて物を探すのは得意なんだよね!」
「じゃ、解体はわたしに任せてください!」
ナタリアは爆弾の解除作業に移る。
35階・レストラン街では…。
「こちらジョニー!厄介なところに爆弾がありますぜ!!」
ジョナサン・ボーイングが発見した爆弾は、事もあろうに配電盤のすぐ近くである。
もしこの爆弾を止められなければ電力の供給ができなくなり、営業に支障が出るだろう。
爆発の威力によっては、電気・複合火災が起きる可能性も懸念された。
「よし、よく見せてみろ。…くっ…ダメだ!手が届かない!!」
久遠・ココノエは爆弾を取り外そうとするが、あと一歩というところでクオンの身体は隙間には入らない。
すると、ベルタ・カシイ・アインリヒトがクオンのもとへ歩み寄り言った。
「隊長!あたしにまかせて!!」
「ベルタ…」
「そうか、ベルタの体格なら入れるはずだ!」
「ベルタ。爆弾の解除方法は署長から聞いているね?」
「うん!まかしといて隊長!ジョニーのあんちゃん!」
ベルタは小さな隙間にもぐりこんでいくと、そのまま手早く爆弾のタイマーを解除していった。
こうしている間にも各階では爆弾の捜索・発見が続き、発見しだい次々に解除されていく…。
だが、ここで問題が起きていた。残り20分の段階で解除できた爆弾は15個中11個。
残る4個の所在がつかめないのだ。
「なんだって!?まだ見つからないのか!!」
クオンは通信越しにひたすら声を上げる。
『さっきから探しちゃいるんですけど…ダミーが多くて…』
と、通信の向こうではミウの声。
『くそー!またニセモンや!』
テムナの叫びが、一筋縄ではいかない状況を克明に表していた。
『こちらヴァイス!またニセモノよ!!』
『こちらイシス!45階もダミーです!』
「くそっ…犯人め、考えたな!!」
歯を食いしばりながら走るクオン、ジョニー、ベルタ。
1分、また1分、時間は無情にも過ぎ去っていく。気がつけば残り時間は8分をきっていた。
「…もうダメか…このまま爆発するのを待つしかないのか!!」
と、床に拳を叩きつけるソウを、ナタリアが必死に励ます。
「あきらめないでソウ君!まだダメって決まったわけじゃ…!」
「そうだな…最後の最後まで探し出してみせなきゃ…」
しかし、探せども探せども爆弾は見つからない。
そうしているうちにいよいよ、残り時間は5分を切ってしまった!
「…これまでか!?冗談じゃない…こんなところで!!」
と、クオンが絶望しかけたそのときだった。
ビルの全館のスピーカーから、一人の男の声が響き渡った。
「はっはっはっは…警察諸君、ご機嫌はいかがですかな?」
それは誰もが聞き覚えのある声。特に警察官であれば一度は耳にしたであろうあの男の声だ。
その声に真っ先に反応したのは…。
「か、怪盗ノワール!?何しに来たのよ!姿を見せなさいよ!!」
…ヴァイスだった。その声に、ノワールの声がさらに響く。
「おやおや、これはヴァイス警視正…残念ながらそれはムリです。私が姿を現せばあなた方諸共吹き飛んでしまうじゃありませんか」
どうやら、館内にあるすべてのマイクが入っているらしく、ノワールにヴァイスの声は聞こえていたようだ。
クオンがノワールに向かって吼える。
「ノワール!一体何しに来たんだ!もう爆発まで5分を過ぎてるんだぞ!?どこにいるのかはわからないがこのビルから離れろ!!」
「ええ、ですがその前にひとつ確認しておきたい。爆発までの残り時間はあと2分30秒。動いている爆弾の数は4つ。間違いありませんね」
「何を…何故お前が爆弾のタイムリミットと個数を知って…」
「それでしたらクオンさん、あなたの目の前に窓があるはずです…ラミナ川のほうをご覧ください。あと45…44…43…」
ノワールが秒読みを始める。
「ちょっとアンタ!こんなときに秒読みなんかしてる場合じゃないわよ!!」
「せやせや!アンタも吹っ飛んでまうかも知れへんのに…アホか!?」
ヴァイスが、テムナが吼える。
「まさか、爆弾を仕掛けたのは…」
「それは違うな。ノワールはそんなことをする男じゃない」
「でも、だとしても…自分まで吹っ飛ぶかもしれないのに何をのんきなことを…!!」
動揺する警官隊の言葉をよそに秒読みは続く。
「3…2…1…ゼロ」
ノワールが、ついに最後のカウントを終えたそのときだった。
…強烈な爆音とともに、ラミナ川の上に巨大な水柱が上がる。
「な…!?」
クオンは突然の出来事に目を疑わずにいられなかった。
「…おい!おい!みんな無事か!?」
『こちらヴァイス。何でかしらないけど爆発は起きてないわ』
『こちらイシス。建物内部の爆弾の反応がすべて消えているとの報告が…』
『こちらミウ!一体何がどうなっちゃってるの!?』
すると、ラミナ川にかかる高速道路橋の支柱の上に、ノワールの姿があった。
「…諸君。この怪盗ノワールの鮮やかなる魔術はごらんになりましたかな?」
「ま、まさか…!?」
「そうです。諸君らが探していた残りの爆弾はすべて私が発見し、ラミナ川という安全な場所に隔離しておいたのです」
息を呑む警官一同。ノワールはさらに続ける。
「じつに厄介な事件ですよ…この爆弾を仕掛けた連中は、あのブラッドファミリーと密約を交わしていた建設会社でした。しかもあの爆弾は諸君らが見つけたものよりも数段威力が高い。つまり…」
その言葉に、ソウとミライが思わず声を上げる。
「…わざと発見しにくい場所に本命を仕掛けてたってことか…それにたった4個であの威力…」
「い、今計算してみたけど…9 to 10Uのビルを崩すには十分すぎる破壊力だよ!?ってことは、奴らの目的は…」
その言葉を受けてノワールが答える。
「このビルを爆破し、跡地にファミリーの資金源となるカジノを建設する計画だったのでしょう」
「そんな!あんまりだわ!!」
ソラが眼に涙を溜めながら叫ぶ。
「…やれやれ。結局のところ、またアンタにおいしいとこ取られちゃったってワケね」
と、ヴァイスはため息をつく。
「おや、お気に召しませんでしたかなヴァイスさん」
「うーるーさーいー!助けてもらったことには感謝するけど、あんたはぜーったい逮捕してやるんだから!いつか覚えてなさいよ!!」
「おっと。生憎ですが早々簡単には捕まりませんよ…では、これにて。アデュー!」
「あ、待ちなさいよー!ノワールゥゥゥ!!」
かくして、9 to 10Uのピンチを救った怪盗ノワールは、どこへともなく飛び去っていった。
…ただひとつ、ヴァイスの心に執念だけを残して。
…後日、爆弾を仕掛けた犯行グループに対し、ラミナ警察署は強制捜査を敢行。
事件にかかわった人物のほとんどは、次々に逮捕と相成った。
さて、9 to 10Uは事件のあった翌日から全館で営業を再開。
まるで昨日の事件などなかったかの様に、人並みで溢れかえっていたのだった。
…地下1階・カチャーシー。
「ふぅー。ご馳走様でした蘭さん、お代ここに置いときますね」
と、支払いを済ませようとするクオンに、蘭は話しかける。
「ああ、そのお代なんだけどね…」
「ん?」
「あんた達はこの9 to 10Uを救ってくれたからね。今日は半額でいいよ」
「え、でも…」
「いいんだよ。ほんのお礼さね!」
そのやり取りを見ていた常連客からも、次々に声が上がる。
「そうそう!クオンさんたちの活躍がなかったら、俺たちもう二度とここの料理が食えなくなるとこだったんだから!」
「9 to 10Uの救世主に乾杯!」
「かんぱーい!」
「いやぁ、照れるなあ…」
…クオンの頬はいつしか、誰が見てもはっきりわかるほどに紅潮していたのだった…。
説明 | ||
こちら(http://www.tinami.com/view/552751 )でなにやら事件が起こった様子。 タイムリミットが刻一刻と迫る…的な緊迫感がでてればいいんですが。 あと、最後のおいしいところをやっぱりあの男が盗んでいきますw ■出演 K-9隊の皆さん エルザ:http://www.tinami.com/view/551405 ミウ:http://www.tinami.com/view/610063 テムナ:http://www.tinami.com/view/610065 花房一家(TG):http://www.tinami.com/view/529004 ヴァイス(TG):http://www.tinami.com/view/389550 タム:http://www.tinami.com/view/650958 怪盗ノワール:http://www.tinami.com/view/579183 |
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コメント | ||
今回の一番の功労者です。間違いなく。(古淵工機@スマホ) こういう事件もあるんです。ええ。(古淵工機) 久々の商業ビル…。(ノエルザブレイヴ) 大通りを歩いていた人にも被害が出ていたかもしれません。ノワールがいてよかった!(古淵工機) いつかはこういう事件が起こると思っていた超高層ビル、しかしこういうオチが待っていたとは! もしノワールがいなかったら、警察側に多数の死傷者が(((( ;゚Д゚)))(Ν) |
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