第十三章 憤慨 |
妖しく微笑むシーナに青年は舌打ちした。
「私が名を名乗ったから、次はボウヤが名乗りなさい?」
「ボウヤだと!俺の名は左慈だ!!」
ムキになった左慈と名乗る青年にクスっと笑うシーナ。
「あらあら…ムキになって可愛いこと」
「クッ!!馬鹿にするなぁ!!」
左慈はその場でジャンプしてシーナ目掛けて飛び蹴りを食らわせようとした。
「はっ!」
シーナは左慈の蹴りに蹴りで防いだ。着地と同時に次の攻撃を出ようとしたが、先にシーナの蹴りが炸裂した。
「うぐっ…」
左慈は腹を抑えながらバックした。
「先に攻撃させてちょうだい?レディーファーストよ」
「なめるなぁぁ!!」
頭に血筋を立てて左慈はシーナに向かっていった。
「今のうちお二人は…」
コーウェンが月と詠を誘導しようとしたが、左慈の背後にいた白装束の連中に囲まれてしまった。
「董卓、正しき歴史のためにここで死んでもらおう!!」
白装束の連中が武器を手にして叫んだ。月は泣きそうになり詠が月を守るように月の傍に立った。
「やれやれ…か弱い2人に厳しい物は見せたくないのですが…仕方ありません」
そう言ってコーウェンの左右の手の指先から白い光が出現した。
「くだらん…貴様もろともまとめて仕留る!」
白装束の数人がコーウェンと月に襲い掛かった。
「飛び斬れ、子風(こかぜ)達」
命令したようにコーウェンが指先の光を払うように連中に向けて放った。その光は連中の周りを飛んで役目を終えたかのように消えた。
「貴様の技など歯痒いわ!!」
「死ねぇ!」
白装束の連中が何事も無いように襲い掛かるが…
『パカァァン』
その瞬間、襲い掛かろうとした白装束の連中はまるで鋭利な刃物で斬られたかのように腕や足、上半身そして首が斬り落とされた。だがその遺体から血が全く流れなかった。
「やはり若返るというのは良いものだ…」
肩を回しながら白装束の連中に向かって歩き出した。
「さて…命知らずの愚者を退治しますか!」
再び指先から光を出してコーウェンはニヤリと笑った。
一方ミノルとアキラは息を切らせながら辺りを見回す。2人の周りには白装束の連中が血達磨になって倒れていた。
「どうやら片付けたみたいだな…」
「そう…みたいだね」
息を整えた2人は月達のもとに行こうとした時、生き残った白装束の1人が立ち上がった。
「クックック…無駄だ…」
「あ、仕留め損なったか?」
ミノルは振り向くが、アキラは振り向かず立ち止まった。
「結果は変わらない…歴史を変えようと既に董卓の死は確実だ…どうあが…」
白装束の一人が言いかけたその瞬間アキラが居合いでそいつの首を切り落とした。そして首が宙に浮いた時、顔は刻まれ肉片になった。
「続きはあの世で言え…」
若干豹変しそうになるも直ぐに冷静になるアキラにミノルは周りの気配に疑問を抱いた。
「アキラ…屋敷内の兵士達の気配がない…」
「何っ!?」
「月ちゃんと詠とコーウェンとシーナの気配はあるが、こいつらとは別の気配もある」
屋敷内の気配を感知したミノルの言葉にアキラは冷や汗をかいた。
「あの2人は強いからいいとして月ちゃん達が危ないな」
「行こう!!」
「ああ!!」
2人は屋敷へ走って入っていった。
一方、屋敷内の王室の間ではシーナは左慈より圧倒していた。
「くそっ!何故だ…」
息を切らせながら左慈が悔しがる。
「あら随分早いわね?私はまだ物足りないわよ?」
「おのれぇ!」
シーナの言葉に左慈が唇を噛み締めて走り出し、シーナに向かって蹴りを中心に連撃を繰り出すもシーナは手で蹴りを払い隙を突くかのように掌テイや蹴りなどをカウンターの容量で反撃した。だが彼女は手加減していた。
「何故本気を出さない…」
左慈が手で口を当てて血を拭いながらシーナに言うと彼女はクスクスと笑った。
「簡単よ?ビックマウスのボウヤをいたぶってるだけよ?本気なんて出さないわ?」
「このアマ…だが…俺ばかり構っている程余裕なのか?」
「どうゆう事…」
一方、コーウェンは前方周辺に白装束の連中の死体が転がっているが、連中の数は減ってはいるがまだいる。
「キリがないな…仕方ない」
さっきコーウェンの指から出てきた光が今度は手から出現して一本の武器に変わった。左右に青龍エイ月刀と同じ形の刃が付いている特殊な薙刀をコーウェンは掴んでそれを回した。
「長柄双刀・鎌鼬…これでやるしかなさそうだ」
そう言ってコーウェンは白装束の連中を片っ端から斬り倒した。そして自分の周りにいた白装束の連中は全滅したと思ったコーウェンだったが…
「キャ−!!」
「月!!」
コーウェンとシーナが悲鳴がした方を見ると白装束の数人が月と詠を人質にしていた。
「月殿!詠殿!!」
「動くなよ?動いた瞬間に合図を出して董卓を殺す」
「クソガキが…」
左慈の行動にシーナが険しい顔になって呟いた。
「月を離せ!!」
ジタバタする詠に白装束の一人が彼女の頬を殴った。彼女の口から血が流れた。
「詠ちゃん!」
「ふん!形勢逆転だな!!」
そう言って左慈が合図のように腕を振り上げ、白装束の一人が月に刃で刺そうとした瞬間だった。
詠を殴った奴以外の連中の動きが止まった。そして崩れるかのように倒れた背後には月と詠が知る二人が立っていた。
「間に合ったみたいだね…」
「ああ…」
そこにはアキラとミノルが剣を持って立っていた。
「アキラ様!ミノル様!?」
一同が驚いている間にミノルが静かに残った白装束の一人の前に立った。そして詠の顔とその一人の拳に付いている血を見た。
「お前か…詠を殴ったのは?」
残った一人の顔を左手一本で鷲掴みして持ち上げるミノル。その顔には血管が浮き出ていて怒っているのが目に見えている。
「女の顔に傷をつける奴は…たとえ男だろうが女だろうがな…」
そう言って掴んだ手を離して右拳を強く握り締めた。
「許せるかぁぁぁぁ!!」
ミノルの渾身の右が顔面に直撃して地面にめり込んで動かなくなった。
「特に可愛い顔した女の顔なら尚更だ…」
そう言って詠を見るミノル。
「ク…クソッ!!紅き戦人と蒼き戦人が同時にそろうなんて…」
ミノルとアキラの姿を見て焦りを見せる左慈。そしてミノルとアキラは左慈を見た。
「テメェがこいつらの親玉さんかな?悪いが外にいた連中は皆始末した」
「あとは貴様だけだ…」
ミノルとアキラの言葉にさらに焦る左慈。
「貴様等がやっている事はわかっているのか?董卓はこの戦で…」
「敗北を喫してその後味方に殺される…だろ?」
ミノルの返答に少しでも焦りを消そうとする左慈。
「だがここの歴史は貴様等や僕達が知っている正史じゃなく、並行世界のはず。なのに何故そこまで正史にこだわる?」
「ふん!簡単な事だ…たとえここが並行世界の三国志でも歴史どおりに進まなくてはいけない。たとえそいつが董卓でも死ぬのは必然なんだよ」
「何ですって!?」
左慈の言葉にシーナは少し険しい顔になった。
「だいだい…こんな貧弱な小娘が董卓である以上、死ぬのは当然なんだよ!!」
「そ…そんな…」
左慈の非道な言葉にショックを受け涙を浮かべる月。
「ふん!くだらない涙を流すのはこれで最後だ、どの道董卓は死…!!」
左慈が言い終わろうとした瞬間アキラが左慈を殴ったのだ。
「まったく…どいつもこいつも寝事や独り言をペラペラと…」
「クッ…」
殴られた頬を抑えながら立ち上がる。
「貴様は劉備と同じだ。目の前の現実を直視しない大馬鹿野郎だ…」
「現実を…」
「勝てるのか?自分の前にいる俺達という脅威の現実に…」
左慈の前には紅き戦人と蒼き戦人と自分を苦しめた女と自分の部下をほぼ全滅に追い込んだ男。左慈は知った…これが無謀だと。そしてアキラが鞘から剣を抜いて歩き出した時、左慈の横からメガネを掛けた男が突如として現れた。
「左慈、ここは退きましょう」
「干吉…」
干吉という男はミノル達を見つめた。
「初めまして…私の名は干吉と申します」
「左慈の仲間…らしいな?」
ミノルは剣を手にかけた時、干吉は手を前に出した。
「私は左慈を連れて引き上げるだけです」
「干吉!?」
干吉の言葉に反発する左慈。
「外と中は全滅、残っているのはあなたと私の2人だけです。私の言う意味、わかっていますね」
「クソ!!」
左慈が悔しがっている間に干吉がワープホールのような物を召喚した。
「董卓の抹殺は諦めましょう、ですが…」
干吉が指をパチンと鳴らした瞬間、屋敷の所々から爆発し始め一気に火が発生した。
「生き残れば…ですけど」
「お前…綺麗な顔してやる事は惨いな?」
不適に笑う干吉にミノルは苦い表情で言い返した。
「それでは…縁があったらまたお会いしましょう」
そう言って干吉と左慈は穴に入り、消え去った。
「出来れば二度と会いたくねえよ」
ミノルがそう呟くが瞬く間に火の手が上がりつつあった。
「とにかくここから脱出しましょう!準備は出来ております」
「さっ!こちらです!!」
ミノル達はコーウェンとシーナの後に続いた。
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こっちも更新をしないと…(笑) 最新作のプロローグを書いてる場合じゃなかった…ついつい夢中に『オイッ!』 |
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コメント | ||
『正しい歴史』って左慈君、君はまるで某国等の使者ですか。超番外編でシーナと左慈の『有閑マダムと美少年』とか、いえなんでも無いです(禁玉⇒金球) | ||
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