義輝記 雷雨の章 その拾参
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【 馬防柵を破壊せよ! の件 】

 

?虎牢関 前衛にて?

 

前衛の将が苦戦する中、前衛の部隊に袁本初より『二枚看板』が援軍に訪れる。 袁家の武将『顔良』、『文醜』である。

 

猪々子「何をこんなに、ノロノロ攻撃仕掛けているんだ? これじゃ…洛陽に辿り着くのに、何日掛からせるつもりなんだか………」ハァ

 

斗詩「────そんな訳で、お手伝いさせていただきますね!」ペコ

 

王匡「俺等が苦戦しているこの柵を、アンタら二人で何とか出来るのか!!!」

 

虎牢関の前に『横十三列』に並ぶ馬防柵。 

 

遠距離攻撃の援護もなく、逆に相手からの隙が無い弩や弓の攻撃を受けつつ、柵を破壊するなど無理な話だった。

 

猪々子「あぁ、アタイら二人だけじゃ少し手間取るか…」

 

王匡「そらみろ!!」

 

猪々子「勘違いするな、出来ないんじゃねぇ! 後『二人』来れば、サッサッと終わらせてやるさ!!」

 

兵「文醜将軍! 曹孟徳様にお願いされました『お二方』が来援されました!」

 

李衣「いっちー! ボクらに頼み事って!?」

 

猪々子「おう! 良く来てくれた! きょっちー!!」

 

斗詩「流琉ちゃん、ありがとう!」

 

流琉「いえ、とんでもないです! ……私もカチンときていますので、董卓軍に一矢報いて挙げたくて! 」

 

斗詩「何か………あったの?」

 

流琉「はい…実は、諸候のお一人が毒料理を浴びて、重傷を負ったと聞いたんです! 民の皆さんが一緒懸命作られた作物を、そのような愚劣な行為に使うなんて!! 私、許せないです!!」

 

猪々子「その心意気大いに乗ったぁ! 斗詩! 流琉のその熱き思い、アイツらにぶつけてやろうぜ!!」

 

斗詩「ちょっと気に掛かる部分もあるけど…うん! 頑張ろう!!」

 

季衣「ボクも頑張るからね!! 食べ物を大事にしない奴は許せないよ、流琉!!」

 

流琉「うん!!!」

 

《この四人は、文醜と許緒の力比べから始まった喧嘩より仲直りをし、それぞれ真名を預け合う仲になっている》

 

四人は、相談の上で配置に付く。 

 

楯を持っている兵士を前面に出して、完全防御を取って。

 

***         ***

 

春蘭「むぅぅぅ〜〜〜〜!?」 

 

愛紗「くぅぅぅぅぅ〜〜〜!」

 

一刀「何を二人で、唸っているんだい!?」

 

春蘭「……あぁ、一刀か? 何故か流琉と季衣から思いっきり、罵倒されているような気分になってな。 私は二人にどんな悪い事をしたか、考えていたのだが………思いつかなくて……」ハテ?

 

愛紗「私も、流琉と季衣に謝らなくてはならない!!……と考えているのですが、その謝らなくてはいけない理由が判らないので、こうして悩んで………………」ウーン?

 

一刀「本人達に会ってみれば、判るんじゃないかな?」

 

***         ***

 

許緒は、近くの大岩に近寄り…ポテポテと触り、一カ所に見当をつけて、そして、自分の愛用武器『岩打武反魔』を取り出した。

 

季衣「どおおりりゃゃああぁぁぁ──────!!」

 

   ドドォォゴゴゴォォォンンン!!

 

大岩の一つが粉々になった……。 それでも、大人一抱え分の岩を片手で持ち上げて、典韋に放り投げる。

 

李衣「流琉! お願い!!」

 

流琉「うん! 任せて!」

 

典韋は大岩を預かると、文醜と顔良の傍に投げる!!

 

流琉「斗詩さん! お願いします!!」

 

斗詩「了解!!」

 

顔良は、典韋より投げつけられる岩を、次々と片手で受け取ると傍に置く。 それを見て、文醜が楽しそうな笑顔を浮かべて、やっぱり片手で岩を取り軽く振った。

 

猪々子「よぉしよーし! 手頃な大きさ、操り易い重さ! いいね!いいね!! それじゃ────いってみようかぁぁぁ!!!」

 

  ブゥ────ン!! 

 

  バキャッ! ゴキャッ!!

 

文醜が投げた岩は、『一段目の馬防柵』を破壊した!!

 

味方からは歓声が!! 馬防柵から衝撃音が!! 

 

………敵である信長は……上掛けを翻し、虎牢関への退却を命じた!

 

信長「引けえぇぇ! 無駄死には許さぬ! 引けえぇぇぇ!!!」

 

大音声で呼び掛け、兵士を虎牢関に導く!!

 

猪々子「逃がすかぁぁ!!」

 

文醜が岩を投げつける! 

 

先程よりも速度が乗り威力も加わる岩が、信長に当てるべく、定めて投擲された─────!!

 

信長は、素早く振り向き…腰の得物を抜き払い、中段に構える。

 

だが…岩は目の前!! 上段に上げる間も…避ける間も無し!!!

 

信長『たぁぁわぁぁけぇぇがぁぁぁ!!!!』

 

  ギッシャァァ─────ン!!  …ボトッ! ……ボトッ!!

 

……信長は………岩を『押し切り』にして…切り捨てた!!

 

シィ──────────────ン

 

その出来事を見た者共の時間が……止まった。 

 

一人だけ除けば……………

 

信長「何を呆けている!! 早く虎牢関に戻れ!!!」

 

敵、味方の時間が流れ出した…………

 

信長「おい!! そこの敵将!!!」

 

猪々子「………な、何だぁ!! 」

 

文醜は、少し怯えながらも返答をする。

 

その姿を見ながら信長は、薄く笑い…………言い放つ!

 

信長「良い攻撃だ!! 機会あれば…また相手をしてやるぞぉ!!」

 

『ア───ッハッハッハッハッハッ!!』と、高笑いを上げて…虎牢関の門を潜っていった。 

 

◇◆◇

 

【 各々の反応 の件 】

 

麗羽「何ですのぉ! 何ですのぉ!! わたくし達は、敵の策を破ったのですのよぉ!! 負け惜しみですわぁ!!!」キィ─!

 

★☆☆

 

華琳「………………………………」

 

一刀「いやぁ、凄かったな!! って、華琳! どうした!!」

 

華琳「……フッ、フフッ、フフフフフッ!!

 

流石『覇王』より上の『魔王』の称号を持つ将よ!! 覇気に当てられ、一瞬と言えど動けなかったなんて………… 」

 

一刀「………か、華琳さん?」

 

華琳「ぜっったいに超える! 超えて眼下で見据えてあげるわ!! 見ていなさい! 『織田信長』!!!」

 

★★☆

 

雪蓮「凄い! 凄い!! 凄い!!! 冥琳! アレ! アレ!!」

 

冥琳「……………敵将を賞賛するのも、将の大器を魅せる要件だが…お前のそれは、童が興味を示す事と同じだ!」ハアー

 

蓮華「でも……私も、あれほどの器量があれば……………」

 

祭「権殿……奴の器量は奴の持ち味、権殿の持ち味は権殿にしか出せません! 努々忘れてはいけませんぞ!?」

 

★★★

 

美羽「ピィ───────────!! 怖すぎる!! な、な、七乃!!! 一緒に寝てたのもぉぉぉ───────!!!」ブルブル

 

七乃「お、お嬢様! 私…からも、お願い…します!!」ガタガタ

 

 

◆◇◆

 

【 于吉の策謀 その弐 の件 】

 

?劉岱軍陣営にて?

 

于吉「貴方様を、皇帝の玉座へ導くために参上致しました……!」

 

劉岱「わ、儂をだと……!?」

 

于吉「貴方様が、先程申していらしたではないですか? 『皇帝にさえ成れる男』…と。 私は貴方様が相応しいと思い、お近付きしたのですが…。 まぁ、私の見込み違いなら申し訳ない…この話無い 」

 

劉岱「ま、まて!!! 本当に…儂が成れると?」

 

于吉「勿論、そのために二つの『道具』と一つの『策』を御用意してあります。 まず、『道具』を拝見頂きたい!」

 

パチィン!!  ───スゥ!

 

于吉が指を鳴らすと、傍に白い衣装、白い覆面を被った『男』が二人現れる。 一人の男は、『白い衣装』を大事そうに持っている。

 

于吉「まずは、この『御遣いの衣装』です。 大きさは、既に劉岱様に合わせてありますので………」

 

劉岱が着用した事が無い『衣装』が、目の前に置かれる。 

 

劉岱は知らないが、この服は『ポリエステル製』で出来ている。

 

于吉「………それと、この『二人』を従者として、お使い下さい。こちらは、武なら曹孟徳配下の夏侯元譲を上回り、もう一人は文武両道ですよ。 貴方様の力になってくれますよ!」ククク

 

劉岱「ふむ…!? まさか………貴方は!!!」

 

于吉「おや? 意外と聡い…コホ、鋭いですな? 貴方様の知り合いの方ですが、大丈夫ですよ。 知らせが直ぐに来ますが、この方は亡くなっているのです。 天水の者達の手により……」

 

劉岱「う………ぐぅ……………!」

 

于吉「それに、この二人は片言しか喋れませんし、主人には忠実ですので、命じれば…どのような事もやりますよ?」ニヤニヤ

 

劉岱「─────────!!」

 

于吉「どうです? 納得されれば『道具』をお渡して、策を伝授しますよ? 貴方様が皇帝に成れれば、私は何も言いませんし、要求も致しません。 ………………如何でしょうか?」

 

◇◆◇

 

【 ー予感ー の件 】

 

?虎牢関にて?

 

猪々子「こえぇぇ────!! こえぇぇ───よぉ! 斗詩!!」

 

斗詩「私だって!!!」

 

季衣「流琉──! あ、あの人………!!」

 

流琉「季衣も!? 華琳様より怖かった〜〜!!」

 

猪々子「………………だけど、アタイ達が行動しないと、先にすすめられない! それに、姫にドヤされる!!!」

 

斗詩「うん…! 二人共…怖いだろうけど…」

 

李衣「大丈夫! これでも華琳様の将だもの!! 行くよ、流琉!」

 

流琉「うん!!」

 

四人は…再度『岩投げ』の作業を繰り返し、馬防柵を粗方破壊した!

 

残った馬防柵は、虎牢関の門傍付近の二段のみ。

 

辺りは…散らばった竹の破片、竹から流れ出る『臭き濁った水』、岩の塊が転々と………………。

 

猪々子「よぉしぃ──!!! これでアタイ達の役割は終わりだ!」

 

季衣「でもさぁ……何か変な臭いしない?」

 

流琉「何かな? どこかで嗅いだ事が……あっ!! み、皆さん、退いて下さい!! 早く、早く!!!」

 

斗詩「え? え!?」

 

四人は流琉の言葉を聞き、脱兎の如く逃走する!

 

─────バタバタバタバタッ!!

 

ザザザザザザザッ──────!!!

 

そして、横を───前衛部隊が通り抜けて行く!!!

 

流琉「だめぇぇ━━━━!!! 戻ってぇぇぇ━━━━!!!」

 

流琉が力一杯叫ぶが、将兵ともども聞く耳を持たず………

 

王匡「我々の勇猛さに、曹孟徳の将が吠えよるわぁ!! 全軍! 手柄を立てるのは今ぞ!! かかれ!!」

 

兵『ううおおおぉぉぉーーーーーーーーー!!!』

 

孔ユウ「抜かるでない! 我々こそ先攻第一の手柄を立てるのだ!」

 

兵『突撃いいいぃぃぃーーーーーーーーーー!!!』

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

鮑信「あの二将が疲れた時に、俺が入れば漁夫の利…! 指示があるまで待機せよ!!!」

 

兵『はっ!!!』

 

虎牢関の傍に、約二万人近い兵士達が、溢れ返っていた。

 

☆☆★

 

光秀「敵が接近してきます! 弓部隊『火矢』を用意! 『竈』(かまど)の火入り口を狙いなさい! 放てぇ!!!」

 

光秀の指示で、三十程ある『竈』に火矢が射られる。 信長が矢を射掛けている時に、準備をしていた『釜』が、竈の上に乗っている。(勿論、蓋は外してある)

 

そんな『釜』の中から、中をくり貫いた『竹』の棒が馬防策に支えられるように斜めに倒れ、連合軍側に向かって煙を吹きだす。

 

異様な光景に驚き、先程の勢いを落としてユックリ進む連合軍。

 

一人の兵が、興味本位で『竹』を覗こうとした……その時!!

 

  パチィン! パアァン! シュッポ!!

 

竹の棒より、途轍もない勢いで飛び出して出てきた『物』がある!

 

その兵は、運良く当たらなかったが…後方の兵の顔に当たり、呻き声を上げて倒れたり、『何か熱い物が飛んできた!!』と慌てふためき近くの兵を巻き込む者等、被害が続出した。

 

信長「ハッハッハッハッハッ! 『栗の実』が爆ぜただけで怯えるなど、連合軍には宦官しか居らぬと見えるな!! おなごの将の方が、まだ働きが良いぞ!? ハッハッハッハッハッ!!」

 

それを聞いた将兵達は………憤怒の表情で果敢に攻めたてた!!

 

王匡「必ず落とすのだ!! 落とせ! 陥落させよ!!」

 

孔ユウ「意地でも、抜いてしまえ!!!」

 

鮑信「我々も加勢するぞ!!!」

 

風評が大事なこの時代に『『栗の実』が弾けて驚き、大慌てをして怪我をした!』などと悪評が流れでもしたら、死活問題!!

 

しかも、洛陽側で名高い『伏竜の軍勢』『天水に降り立った天の御遣い』が批評したとなれば……………身の破滅!!!

 

 

兵『ウウウオオオォォォォォーーーーーー!!!!!』

 

  

ドオオォォ━━━ン! 

 

 

ドオオォォ━━━ン!

 

 

 

二万の兵が、残った馬防柵に手を掛けて、破壊を開始すると……銅鑼の音が鳴り響いた!!!

 

 

◆◇◆

 

 

【 焔の舞台 踊り子は… の件】

 

?虎牢関 門前にて?

 

先程の馬防柵の残骸より、かなり離れた場所に…四人は息を切らしながら……立ち止まっていた。

 

流琉「だめぇ! だめぇー! 早く其処から離れて──!!!」

 

流琉は…前衛の兵達に声を枯らしてまで呼び掛けるが、全く気付く様子はない。 寧ろ、無視している様にも見えるが…………

 

季衣「流琉!! どうして逃げるの!?」

 

猪々子「アタイもサッパリ分かんないぜ? 斗詩は分かるか?」

 

斗詩「………私も分かんないよ。 流琉ちゃん、どうして……!」

 

ドオオォォ━━━ン! ドオオォォ━━━ン!

 

季衣「銅鑼の音?」

 

☆☆★

 

 

?虎牢関 道の上にて?

 

三太夫「………おっ? 合図だな! お前ら!! 行動開始だ!!」

 

忍び「はっ!」

 

最後備より少し離れた場所に、投げられる『竹筒』(少し切り込み入れて)。 他にも『素焼きの壺』の壺口に縄を付け、クルクルと何回も回し、遠心力を利用して遠くに投げる!!

 

ガチャン! バキャ! バキィ! 

 

ドロッ、ドロッ〜

 

連合軍兵前衛「なんだぁ!?」

 

連合軍兵前衛「前に詰めろ!! 当たるぞぉ!!」

 

三太夫の合図で、藁を球体に丸め、竹で周囲を止めた『玉』が幾つも現れる。 眼下には、虎牢関に張り付く将兵達……!!

 

配下の忍びが、『玉』に火を着けた!

 

ボオッ!! ボッボッボッボッボッ!

 

三太夫「よし! 落とせ!!!」

 

両側から連合軍の頭上より…複数の『火球』が転がり込んだ!!

 

グラッ………コロコローーーーゴゴゴゴゴ! 

 

 

グシャン!! 

 

『火球』が下の岩に当たり、予め(あらかじめ)中に入れてあった竹筒が破片と共に飛散らかる!! 勿論、この竹筒にも『燃える水』が入っている。

 

   ━━━━━━━━━━!!!!

 

馬防柵の破片、中から流れ落ちた『黒き水』が……『火球』から別れた炎に更なる活躍の場を与え、虎牢関門前を舐めつくす!!!

 

前は『虎』、左右は『壁』、後は『炎』………

 

兵『━━━━! ━━━! ーーー!』

 

将『───! ──! ーー! ー!』 

 

━━虎牢関の門前━━━将兵合わせて約二万━━━

 

━━『焔の舞台』で━━『死の踊り』を━━━

 

━━『披露』する事に━━━━なった━━━!!

 

☆★★

 

 

   バアァァフウゥゥゥ━━━━━!!

 

季衣「あっ、熱━━━━━ぃ!!!」

 

流琉「!!!!! は…早く…に、逃げな…きゃ─!!」 

 

猪々子「ぐっ!! 熱風が──!?  クソッ━━━! 斗詩!! きょっちー達を連れて、この場を離れるぞぉ──!!」

 

斗詩「分かった!! 流琉ちゃんは私がー!!」

 

ガッ! ガッ!   

 

ダッダッダッダッダッダッ!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

?曹操陣営内にて?

 

華琳「顔良、文醜………臣下の命を救ってもらい、礼を言う。 本当にありがとう! 貴女達が居なければ、この子達は………!」

 

顔良「とんでもない!! 命を救われたのは私達の方です!!」

 

猪々子「あぁ…。流琉が、アタイ達を急かして、場所を移動する様に言ってくれたお陰で…助かったんだよ。 …理由が分かんないけど」

 

華琳「…そう。 今日の戦も終わりね。 ……夜の帳(とばり)がユックリと下りてきたわ。 今は貴女達も体を休めて頂戴。 麗羽には伝令を送って知らせ「必要ありませんわ!!」!?」

 

カッカッカッカッ!

 

麗羽「猪々子さん! 斗詩さん!」

 

猪々子「はいっ!!」 斗詩「はい!!」

 

麗羽「貴女達は、貴女達は────────!!!」

 

 

ガバッ!! 「「  !!  」」

 

 

麗羽「無事でぇ! 無事でぇ良かったですわぁぁぁぁ!!!」

 

 

★★★

 

この後、典韋は許緒に、手を握りしめて貰いながら…気付いた理由を語った。

 

『私が……皆と柵を壊す作業を行っていたとき、季衣が変な臭いがすると言い出したんです。 それで、私も嗅いでみたら……《燃える水》の臭いだったんですよ!! 』

 

『その《燃える水》とは? 流琉は、どうして知っているの?』

 

『はい。 この前…陳留の裏道で食材を探していましたら、露天商のおじさんが《燃える水》を売っていたんです。 それは、名前の通り水みたいにドロドロしているんですが、火を着けると…かなりの勢いで燃えだすんですよ!』

 

『………わかったわ。 その臭いを嗅いだときに思い出し、火計を使われたら危険と判断して、皆を誘導した……というわけね』

 

『あの………華琳様……虎牢関に向かった将や兵士さんは……?』

 

…………フルフル

 

『………………………そうですか。 私が……もっと早く気付いていれば………』

 

『違う! 流琉は悪く無い!! ボクは知ってる…流琉が大きな声を出して止めた事。 ボクは見てる……そんな流琉を嘲り向かっていたアイツらを! だから、だから……流琉は、悪くなんか無い!!』

 

『………季衣…………ウワワァァァ──────ンンン!!!』

 

◇◆◇

 

【 颯馬の思惑 の件 】

 

?虎牢関 董卓軍内にて?

 

いつ、何時見ても………この風景は………慣れない。

 

自分が誘い(いざない)導いて陥った敵兵達。 

 

虎牢関の門は…近付くだけで熱く、多数の焼死した者共の遺体と肉と骨と脂が散乱している。

 

焼き焦げた人肉の臭いが濃密に漂い…その臭いに釣られてか、近くで狼の遠吠えが聞こえる…………

 

☆★☆             ☆★☆

 

今回の策の要は、『馬防策』だった。 

 

普通、馬防柵は耐久性も考えて『木材』を使う。 信長も馬防柵と三段打ちで、強敵を撃破したと自慢し、信玄殿も謙信殿も材質の点で納得がいかないらしく、木材に変えるべきだと進言してくれた。

 

だけど、今回の馬防柵は『耐久性』は不要。 必要なのは『空洞』、『非耐久性』、『可燃性』の三つ。

 

その材質に適していた『竹』を刈り取り、数日干す。

 

その後、竹の空洞の中に『燃える水』を注入する。 

 

最後に、その竹を束ねて剛性を持たせた。 

 

 

干して『非耐久性』、『可燃性』を実現。 『空洞』に燃える水を入れ、馬防柵を作り上げる。 これが、虎牢関に備えた馬防柵の正体だ。

 

 

***   ***   ***

 

虎牢関の最後に置いてあった竈(かまど)と釜は、一緒に入れてあった『竹筒』の中の『栗の実』を弾けさせる為の一連の道具だ。

 

連合軍が『栗』だと気が付かないのは、今が普通の栗は成らない時期だから。 俺は、日の本に居た当時、『年に三度栗の実がなる木』がある事を知り、この大陸にあるか調査してもらった。

 

そうしたら、西涼にあると聞いたので、お願いして用立てていただいた次第。 ……戦が終われば、食糧不足の所で苗木を栽培して貰えば、解消に役立つだろう。

 

***   ***   ***

 

そんな苦労の末に出来た物だが、殆どお遊びみたいな『兵器 勝ち栗砲』。 これをどう扱うか………かなり悩んだ。 

 

そのため、信長ならと期待して渡したが、まさか…挑発に使うとは恐れいる。 光秀も補佐してくれたお陰もあるんだろうな………

 

***   ***   ***

 

そんな中、連合軍の先発隊が到着して、馬防柵を攻撃してくれるのだが……なかなか破壊してくれなくて………正直困った。

 

だが、別の援軍の将が来てくれたらしく、この将達で難なく破壊を終了してしまった。 俺がひと抱えしないと、持てそうもないある岩を、片手で渡しながら投げるなんて………怖すぎるぞ!

 

まぁ………そのお陰で馬防柵が破壊されて、『燃える水』や『竹』が散らばり、三太夫の『火玉』が落ちて、燃え広がったわけだ………

 

この盛大な火計は、『警告』であり『戒め』であり『見せしめ』である。 攻めれば……お前達がこの様になるという……

 

それでも……来るのであれば、宣言通り叩き潰すのみ!!!

 

 

☆★☆             ☆★☆

 

火計の効果か……反董卓連合軍は、これ以上攻めてこなかった。

 

俺は、忠勝殿や恋を伏兵任命を解いて呼び戻し、休んで貰うようにお願いした。 …………明日は、どうなるか判らないから。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

眼下の様子を見ながら、静かに手を合わせると……口から経文が流れでた。 俺が日の本に居た頃から、敵味方問わず行ってきた行為。 

 

天に上がるか地に下るか……死んだ者達への、良き道標になればと思い実行している……終わった後に、静かに一礼を行う。

 

多分無理だと思う。これだけでは終わらないだろうと判断しているが、それでも……俺は明日に思いを馳せる!

 

どうか……これ以上の犠牲が出ない事を─────!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

作者はチキンですので、この作品書いてて少し気分が悪くなりました。 書いた張本人がどうよ? と言われそう………。

 

次回の策も、火計ですが…やり方が異なりますので、楽しんでいただけると思います。 来週の日曜日までに投稿できるか微妙ですが。

 

また、宜しければ読んで下さい。

 

説明
義輝記の続編です。 今週、こちらの都合で忙しくなりそうですので、早めに投稿を。 虎牢関の策は、こうなりましたので、宜しければ読んで下さい。
2/26 猪々子の台詞修正しました。 一部修正しました。
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コメント
こちらとしては問題はありません。 ちょっと早いネタバレしましたが、勘の鋭い人なら気付くでしょうですし。 またの感想、待ってますので!! (いた)
↓削除しました、自分の安全対策の怠慢でした。なにやら他にもやらかしていた様なので謝罪に追われてます(禁玉⇒金球)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます。 良かったです! どう応えようかと色々悩みましたが…こちらも良き勉強をさせていただきました。 そのままでも、削除してもどちらでも良いですよ。 ご判断にお任せ致しますので……(いた)
下記の「洛陽の〜」のコメントはログインしたまま放って置いた私の端末を友人が悪乗りして書き込んだモノと判明しました、作者様に大変失礼と不快な思いをさせてしまい申し訳ございません、。削除したいので許可を願います。 (禁玉⇒金球)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 設定が甘くて申し訳ないです。 袁術は孫呉独立の基盤作りを行うため。 袁紹は……二人の将(後一人入れるかどうか思案中)を送り込むため、勢力の調整です。 一人は既に名前が出ています『司馬仲達』です。(いた)
次策も火計の予定です。 『火計なんか、どう手加減するんだ?』と言われそうですが、まぁ…それなりに考えています。 取りあえず、両袁家の兵は減らします。(いた)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 予定になかった事を始めてしまったので、『生贄』臭が酷くなる劉岱。 まさか、こうなるとは作者も考えていませんでした。 ちなみに『衣装』は于吉の手作り。 若干、脇が窮屈と要らない設定が入っています。(いた)
祭「権殿、貴女の器量は尻です!!」、流琉が傷心ですが君の兄様はさらにエゲツナイのですよ、禍根を残さない戦はないならば叩き潰すのも一手、時と場合に寄りますが。颯馬は犠牲を少なくしたいようですが今戦の犠牲は連合のチンコ痔得であり淫芽凹包を教えるべく手加減無用でいきましょう。(禁玉⇒金球)
御使いの衣装って実は肌触り悪い上にしょぼいんですよね、なにやら劉岱からキツメのスケープゴート臭が致します(良かったね総大将)。王匡孔ユウ 鮑信の戦死は漁夫の利の発想は良いが結果が出せなかった自業自得でしょうか、敵方が数段上手とはいえ被害続出で自陣だけが大事な一刀君の明日は外道一色だ(禁玉⇒金球)
naku様 再コメントありがとうございます! そこを切り取る事は、影の主人公を斬る事になりますのでしません。  …実は、信長の台詞に「『一物』切り落として、出直して来い!」と入れようかと投稿直前まで悩んでいました。(いた)
結果的に「天の御遣い」は死にます! 物理的にバッサリと逝って貰う事、確定事項です。(いた)
雪風様 コメントありがとうございます! この戦いの大風呂敷、出したからには仕舞わなければなりません。 結果の話は出来ていますが、そこまでの過程が大変です。(いた)
naku様 ご返事ありがとうございます。 猫耳「あの種馬より男臭い汗臭い精○臭い輩に人権なんか無いわよ!!」(いた)
戦いは五分の勝ちをもって上とし・七分の勝ちを中とし・十を下とす・・有名な信玄のお言葉ですが・・・この外史の決戦は如何に(雪風)
この時更にエグイ行為は火矢&矢の斉射・・それを伏龍勢がしたかは定かではない・・・との噂。by陳寿(恋姫):そして、伏龍勢は何分の勝ちを求むか興味がある。(雪風)
次回も策にも食べ物使おうかなと思案中です。 栗じゃないですよ? 偶に挑発に使う食べ物です。(いた)
naku様 コメントありがとうございます! 確かに絵が無い分、描写は詳しくないと臨場感が成り立ちません。 作者としても、この場合はむさいオッサンより心の綺麗な可愛い女の子を応援しますよ。 (いた)
mokiti1976-2010様 労りの言葉ありがとうございます! 想像するとグッタリです…急ぎで作ったもんですから疲労も…… 二回目も火計で『玉』使用ですが、これが本来の忍術となります。(いた)
確かに人が燃える様は気分が良い物ではないですね…戦だからといえばそれまででしょうが。それはともかく、二回目の火計がどうなるか期待しております。(mokiti1976-2010)
天龍焔様 コメントありがとうございます! 二回目の火計は、今回と少し違う物にしますので。よろしくお願いします。 (いた)
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