英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク
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ルークがツァイスから去った後、レンはカシウスが手配した遊撃士と毎日連絡をとりつつ、ロレントに戻る機会を考え込んでいた。

 

〜ツァイス市内〜

 

(ふう……アーシアお姉さんの話だと未だに、異常なし……ね。別にいいんだけど、ママの危険は早く取り除きたいわ。まあ、アーシアお姉さんとフレンお兄さんがパパの手配のお蔭でロレントにいるから、大丈夫だとは思うけど……)

依頼を終え、ギルドに戻る道を歩きながら全く進まない現状にレンは溜息を吐いた。

「あ――!レンじゃない!久しぶり〜!ジャンさんからルーク兄はツァイスを離れたってことと、レンも、もしかしたらロレントに帰ってるかもしれないって聞いた時、一緒に仕事ができなくなって残念と思ったんだけどレンはまだいたんだ〜。」

するとその時聞き覚えのある元気そうな声がレンの背後から聞こえ、声を聞いたレンが振り向くとそこには自分にとって馴染み深い二人がいた。

 

「あら、エステルとヨシュアじゃない。ツァイスに来たという事は二人はルーアンの推薦状が貰えたようね。うふふ、レンがお兄様と一緒にロレントを起ってからまだ数週間程度しか経っていないのに、もう3枚も推薦状をもらうなんて、やるじゃない。」

「ふふん、ま、あたしがちょ〜っと本気を出したらこんなもんよ。」

レンに感心されたエステルは自慢げに胸を張り

「何が本気をだしたらだよ……こっちは今までヒヤヒヤさせられる事がいっぱいあったからよく、推薦状を貰えたなと思っているよ。」

エステルの様子を見たヨシュアは今までの出来事を思い出し、呆れた様子で溜息を吐いた。

 

「あ、やっぱりその様子だとエステル、何かとんでもない事を仕出かしたんだ。」

「レ〜〜ン?”やっぱり”ってどういう意味よ〜〜?」

「え?だってエステルだし?」

ジト目のエステルに睨まれたレンは当然と言った様子で悪びれもなく首を傾げて答え

「な〜にが、『エステルだし?』よ!失礼しちゃうわね!それよりレン!あんたのせいでリンデ号ハイジャック事件の時、王国軍から詳しい情報が貰えなくて滅茶苦茶苦労したんだからね〜!」

悪びれもなく答えたレンの様子に顔に青筋を立てたエステルはレンを睨んだ。

 

「え?何で軍から情報がもらえない事とレンが関係するのよ??」

「レンも知っていると思うけどあの事件が起こったのはボースだったからね。事件を担当していた王国軍の一番上の人がハーケン門のモルガン将軍だったんだ。それでモルガン将軍は大の遊撃士嫌いでね……こっちに情報を廻さなかったんだ。後でわかったことなんだけど、将軍の遊撃士嫌いは父さんが軍をやめて遊撃士になったこととレンが将軍直々の勧誘を蹴って遊撃士になったことが一番の原因だそうだよ。」

エステルから訳のわからない話を聞かされ、首を傾げているレンにヨシュアは苦笑しながら説明をした。

 

「モルガン将軍……ああ、あの闘技大会の決勝で戦った元気なおじいさんね。うふふ、それは悪かったわね、エステル。でも、そんなのはっきり言って唯の嫉妬で私情に走ったモルガン将軍の方が悪いと思うのだけど。」

「ハハ、まあそうなんだけどね……」

軍のトップを何の躊躇いもなく全面的に悪いと指摘したレンの正論を聞いたヨシュアは苦笑いをしていた。

 

「それより2人共、依頼か何かでどこかに行くんじゃないの?」

「あ、いっけな〜い。忘れてた!早く工房にいこ、ヨシュア!」

「わかったよ、エステル。じゃあまた後で会おう、レン。」

「ええ、2人ともがんばって。」

2人を見送った後レンはギルドに依頼達成の報告をし、ラッセル家に戻った。

 

〜ラッセル家〜

 

レンがラッセル家に戻ってくるとそこには誰もいなく、機械の作業音だけが聞こえていた。

(あら、博士は帰っていたんだ……研究に没頭しているようだし、リビングで待たせてもらおうっと。)

機械の作業音を聞き、ラッセル博士が何かの研究をしている事に察しがついていたレンは勝手知ったるキッチンで湯を沸かし、紅茶を入れて休憩していた。

 

そしてしばらくすると玄関の扉が開き、ティータとエステルとヨシュアの3人が入って来た。

「えへへ、こちらがわたしの家です。」

「あら、ティータ。おかえりなさい。エステルとヨシュアはいらっしゃいかしら?」

「あ、レンちゃん、ただいま。」

「へ……なんでレンがティータの家にいるのよ!?しかも普通にくつろいでいるし!」

予想外の人物がティータの家にいる事にエステルは驚いて声を上げた。

 

「あ、実はですね。ルークさんとレンちゃんにはツァイスにいる間は家に泊まってもらっているんです。」

「そういうことよ。だからレンがティータの家にいるのは当然の事よ。」

「全くもう、この娘ったら……そういう大事な事はさっき会った時に教えなさいよね。」

「後で博士に兄さん達がお世話になったお礼を言っておかないとね。」

ティータとレンの話を聞いたエステルは呆れた様子で溜息を吐き、ヨシュアは苦笑した。

 

「それより二人とも。ここに来たって事はもしかして博士に用があるのかしら?博士なら工房にいるわよ。」

「っと、そうだったわ。”アレ”の件について聞くんだったわ。それじゃあ早速挨拶させてもらいますか。」

その後エステル達は工房の中に入り、ラッセル博士と出会ったが研究に夢中の博士になりゆきで実験を手伝うことになり、実験が終わった頃にはすっかり夕方になり、それぞれが落ち着くと互いの自己紹介をようやくした。

 

〜数時間後〜

 

「わはは、すまんすまん。すっかりお前さんたちを中央工房の新人かと思ってな。ついコキ使ってしまった。」

「ったく、笑いごとじゃないわよ。コーヒーだけじゃなくさんざん手伝いをさせてさ〜。レンも気付いていたのなら手伝いなさいよね〜。」

人違いをしたにも関わらず豪快に笑うラッセル博士を呆れた様子で見つめたエステルは優雅に紅茶を飲んでいるレンを責めるような視線で見つめた。

 

「うふふ、悪かったわね、エステル。2人の邪魔をする訳にもいかないと思ってね。その代りこうやってみんなのお茶を入れているじゃない。」

「まあまあ、貴重な体験をさせてもらったと思えばいいじゃない。新型オーブメントの起動実験なんて滅多にあるもんじゃないんだし。それにレンの入れてくれた紅茶もおいしいし、それで許してあげようよ。」

「ふう……しょうがないわね。今度からは手伝いなさいよね。」

「ええ。」

「あう〜ごめんなさい、エステルさん、ヨシュアさん。なんだかわたしも、実験に夢中になっちゃって……」

「あ、ティータちゃんは謝る必要はないんだからね?はあ、”導力革命の父”とかいうからどんな凄い人かと思ったけど……ここまでお調子者の爺さんとは思わなかったわ……」

ティータに謝罪されたエステルは苦笑した後、自分達を扱き使ったラッセル博士を呆れた様子で見つめた。

 

「わはは、そう誉めるでない。しかし、お前さんがカシウスとレナさんの娘か……顔はレナさん似だが目元など細かいところはカシウスに似てるのう……」

「あ、やっぱり博士って父さん達の知り合いだったんだ?」

両親の容姿を知っている様子のラッセル博士にエステルは自分達がラッセル博士を尋ねた理由を思い出し、納得した様子になった。

「うむ、結構前からの。あやつが軍にいた頃からじゃから20年以上の付き合いになるか。あやつとレナさんの結婚式は見物じゃったぞ。あの血気盛んなカシウスが石のように緊張してたからな。」

「へ〜、あの不良親父でも緊張することがあったんだ〜。ねえ、博士。もっと詳しく聞いていい?」

「レンも興味あるわ。特にママのウエディングドレスとか凄く綺麗だったんでしょうね♪」

両親の過去話がラッセル博士の口から出るとブライト家の娘達はそれぞれ目を光らせ、興味深そうな表情になった。

 

「まあまあ2人とも。父さん達の話は時間がある時に聞こうよ。それよりエステル、今日の目的のためにここに来たんだろう?」

「むう、しょうがないわね。」

「あっと、いけない。そうね、ヨシュア。博士、実は………」

ヨシュアに促されたエステルは自分の持ち物から黒いオーブメントを出し、ここに来た目的を説明した。

 

その理由とはボースで起こったハイジャック事件解決後、ギルドに自分達宛てに送られてきた黒いオーブメントと手紙があった。

 

その手紙の内容とは”K”というイニシャルの人物から預かり”R博士”へ届けるようにとの内容であったが、”R博士”に心当たりがない二人はわからず、とりあえず預かる事にし、リベールを廻っていた。

 

そしてルーアンで起こった放火事件の真犯人を取り押さえる時犯人が隠し持っていたアーティファクトの力で体が動かなくなり、絶体絶命かと思われた時、黒いオーブメントが光り、アーティファクトの力がなくなり、紆余曲折があったとはいえ、無事犯人を逮捕できた。

 

この件を不思議に思った2人はルーアンのギルドの受付―――ジャンからラッセル博士なら詳しいことがわかるかも知れないと聞き、ラッセル博士を尋ねたことを説明した。

 

 

説明
第18話
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