真・恋姫†無双 〜胡蝶天正〜 第三部 第04話
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この作品は、北郷一刀の性能が上方修正されています。はっきり申しましてチートです。

 

また、オリジナルキャラクターやパロディなどが含まれております。

 

その様なものが嫌いな方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

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「お勤めお疲れ様です、お兄さん」

「いやはや、とんだ災難だったようですな」

風。あえて"お勤めご苦労様"と言う定型句を捻ったのは俺に対する嫌味か何かなのだろうか。

華琳の陣からやっとの思いで自陣まで戻ってくると、既に撤収の準備が大方終わっており、手持ち無沙汰になったのであろう風と星が俺を労いに来る。

精神的にどっと疲れた俺は、そんな二人につい愚痴を洩らしてしまう。

「本当に災難だったよ・・・・・・。ああなった華琳は必要以上に妙な勘繰りを入れてくるからね」

「主・・・。これに懲りたのでしたら、少しは周りの女性の気持ちに対する配慮というものを学ばれては如何ですかな?」

「ですねー、お兄さんにはそう言ったところが決定的に欠けていますしー」

「・・・・・・面目次第も御座いません」

二人から駄目だしされて更に凹みそうになる。

だが、いつまでもウジウジとして居られる状態ではない。

俺は気を取り直して現状の話に話題を切り替えることにした。

「そんな事よりもこれからの話をしようか。陣の撤収具合はどんな感じ?」

「大方の撤収準備は既に終了しておりますな。あとは稟の最終確認が終わり次第、いつでも出立する事が出来ますぞ」

「そっか、じゃあ水関攻略の件は稟が終わり次第話し合うとするか。他に何か変わったことはあった?」

「そうですねー、袁紹さんの所から使いの人が来てましたねー。"水関攻略の作戦を持ってきた"と言って書簡を置いていったのですが・・・」

風のその報告を聞き、俺は嫌な予感が頭を過ぎる。

何と言ってもあの麗羽が作戦を立てて持ってきたと言うのだから。

「麗羽の作戦か・・・・・・碌な事が書いてない気がするけど、中身はもう読んだの?」

「主が戻ってきてからの方が良いと思いましたので、まだ検めてはおりませぬ」

「なるほどね。風、ここまで持ってきてもらえるかな?」

「はーい、分かりましたー」

風はそう返事をするとトコトコと歩いて書簡を取りに向かう。

彼女が戻ってくるのを待っているうちに、陣の撤収確認をしていた稟がこちらへとやって来た。

「おや?お戻りになられていたのですね」

「ついさっきだけどね。稟の方は撤収の最終確認をしているって聞いたけど、もう終わったのかな?」

「ええ、今しがた終了したので風達二人に報告に来たところです」

「風には今、麗羽のところから来た書簡を取りに行ってもらっているところだよ。折角だし風が戻ってきたらこのまま水関攻略の算段もまとめちゃおうか」

「ですな。馬上で話をするのも落ち着きませぬし、この場で話をまとめた方が良いというものだ」

などと二人と話していると、風が書簡を手に戻ってくるのが視界に入り、そちらへと意識を向ける。

「ただいま戻りましたー」

「お帰り、風。稟も戻ってきたし、ここで水関の事も決めてしまおうって話になったよ」

「おおぅっ。風がいない束の間にそこまで話が進むとは、物事の移り変わりはかくやと言うものですねー」

「そんな大した事でもないけど・・・・、とりあえず、麗羽の作戦ってのがどんなのか見せてもらえるかな?それ次第で水関の動きも変わってくるわけだし」

「はーい」

返事とともに風はそれらしい大層ご立派な書簡を俺へと渡してくる。

鬼が出るか蛇が出るか、俺は覚悟を決めて書簡を紐解いて中身を確認した。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「主?」

「お兄さん?」

「一刀殿、一体何と記されていたんですか?」

書簡を広げた後、すぐさま書面から眼を逸らし黙したまま遠くを見つめる俺を不思議に思ってか、星たちは中身を確認すべくこちらへ声を掛けてくる。

俺は一言も発すること無く、彼女たちにも見えるように書面を裏返して見やすい高さにそれを掲げた。

その書面には唯一文、この様に書かれているだけだったのだ。

『優雅に、華麗に戦い、一刀さんを援護するように』

それを見た三人もあまりの内容に唖然とするばかり。

暫しの間、空いた口が塞がらないといった感じだったが、いち早く正気を取り戻した風が辛辣な一言を口にする。

「本当にろくでも無い内容でしたねー・・・・・」

「全くだ、こんな上物の紙を使って何を伝えるかと思えば・・・・・。袁家の者は気が狂っているとしか思えませぬ」

「星の言うとおりですね、それにこの内容では・・・・・一刀殿」

どうやらいち早く稟は察したようだ。

この書簡に書かれた事が何を意味するか、何故俺が書簡から眼を逸らして現実逃避みたいなことをしてしまったのかを・・・・。

「まさか総大将自ら先陣の首を絞める真似をするとは思いも寄らなかったよ」

「ふむ、どうやら主はこの馬鹿さ加減だけで眼を逸らしていた訳ではないようですな」

「簡単な理屈だよ。優雅に戦えって書いてあるけど、考え方によっては好き勝手に戦っていいと読み解く事も出来る。そして俺達を援護しろと書いてあるのだから」

「なるほど、援護という名目で手柄だけ横取りしに来るということですかな?」

「その通り。しかもそれを総大将が太鼓判を押しているんだから、そうする事こそが正義。各々の諸侯が挙って来るだろうね」

星も事態を察した様で、苦虫を噛み潰したような顔で書簡へ視線を向ける。

当然だろう、こちらが命を賭けて上げる戦果を横から掠め取りに来る輩が現れる。

その原因が総大将の送って来たこの書簡なのだから、敵を見るような目になっても仕方ないというもの。

「まぁ、作戦の方向性だけは決まったな。水関を守備する将と関そのものの攻略を同時行ない、且つ諸侯からの介入を許す暇も無いような電光石火の作戦がね」

「しかし主、こと攻城戦に置いて短期決戦に持ち込むのは困難ですぞ」

「ですねー。相手も防衛戦に徹してくるでしょうし、かなりの奇策を用意しなければいけないかとー」

「そうだねぇ・・・・・・。水関の将は華雄将軍だったね?」

「はい。己が武勇に誇りを持つ猛将と言われてます」

諜報部隊からの報告が無いところを見ると、相手の将の配置に変化は無い。

華雄将軍、正史では水関での戦いの折、関羽に討ち取られた将だったな。

確か前の世界でも関羽に負けていた筈、ただ今回も同じように水関から出てくるという保障も無い。

それならば・・・・。

「自らの武に誇りがある将ならばそこを突いて挑発してみるのも手だね」

「主・・・戦の勝敗を左右する関をそんな易い挑発で捨てる将が居ると本気で御思いか?」

「まぁ俺もそんなんで絶対に出てくると思っては居ないよ。そこで、華雄将軍が関から出てきた時と出てこなかった時、どちらになっても対応出来る様に甲と乙、二つの策を立てようと思うんだ」

「なるほどなるほど。ではお兄さんの策というのはどんなものか、聞かせてくれますかー?」

「ああ、先ずは華雄将軍が挑発に乗って出てきた場合だけど・・・・・」

 

 

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両側に崖がそびえ立ち、その谷間を抜ける様に通る道を遮るようにそびえ立つ水関。

その上部に用意された天守閣にある、関の眼下全体を見渡す事が出来る物見台に一人の女傑が佇んでいた。

この水関を守る猛将、華雄その人である。

彼女は遠方より土煙を上げて関へと迫る敵の大軍勢を眺めながら、董卓軍の軍師である賈?の命令に不満を感じていた。

「むぅぅ・・・・・。あのような烏合の衆など私が出れば一瞬で蹴散らす事が出来るというのに・・・・・」

この戦、こちら側から攻め込んでも何ら意味の無いこと事態、華雄自身も承知してはいるのだが彼女は元々攻めの将。

城に篭っての戦は不得手であり、それならばいっそ自らが打って出て敵を攪乱した方が良いのではと考えていたのだ。

無論、そんな案は率いている将の数で圧倒的に劣り、水関に華雄以外の将を送る事が出来ないのを理由に即却下されたのは言うまでも無い。

「申し上げます、敵先陣が姿を現しました!その数約三万!」

「ほう?中々の数を揃えた将が先陣のようだな。何処の将だ!?」

「はっ、蒼の牙門旗に仲の一文字。雍州の司馬懿ではないかと」

「な゛に゛いいぃぃっ!!司馬懿だとおぉぉぉっ!!!」

相手の将が誰かを耳にした瞬間、先程まで篭城戦ということで腐っていたとは思えない程の闘気が華雄の全身から発せられる。

その闘気はあまりの強大さに伝令に来た兵士が思わず退いてしまうほどであった。

司馬仲達、直接の面識は無いが華雄はその名に赤っ恥を掻かされている為だ。

「先の黄巾との戦で受けた借り、忘れてはおらんぞっ!!奴の所為で私の軍は地方の太守にすら劣ると言う風潮が出回ってしまった!この恥辱、この((大戦|おおいくさ))で晴らしてくれるっ!!」

そう華雄が息巻いていると敵の先陣から将と思われる者が一人、前に出てくるのが彼女の眼に入る。

どうやら口上を述べる為に敵将が姿を現したと見え、鼻息を荒くしたままではあるが、ここは相手の出方を見る事にした。

「エーエーエー、アーアーアー。マイクテス、マイクテス」

訳の分からない言葉が若い男の声で水関全域に木霊する。

何かの呪いかと警戒していると・・・・・・。

「俺は雍州の州牧、司馬仲達。自称大陸一の猛将、華雄に一騎打ちを申し込む」

「なっ!!」

敵先陣の大将から一騎打ちを申し込まれ、思わず面食らってしまう。

彼女自身、自分を誘き出す為に何らかの手を打ってくる事は予想していた。

多少の挑発などはして来るだろうと読んでいたのだが、まさか先陣の大将が自ら一騎打ちを申し出るとは思っても居なかったのだ。

何せこの戦の初戦ともいえる状況に置いて、遠征軍である相手の大将の一人が易々と討ち取られては、軍全体の士気に影響する。

もし一騎打ちを申し込んでくるのならば手持ちの将から出すのが定石と言えるが、その過程を全てすっ飛ばして大将自ら出て来たのだから、華雄が唖然としたのは当然と言えよう。

「来いよ華雄、水関なんか捨ててかかってこい!・・・・・篭城戦で楽に殺しちゃつまらんだろだろう」

「くっ・・・・州牧如きが偉そうに・・・・・」

「か、華雄将軍?」

隣の兵士は華雄が憤慨し始めている事に気が付く。

華雄という人物は己の武に誇りを持っているのもそうだが、沸点が高くないのも周知の事実。

そんな人物が、最近名を上げてきてるとは言え武官でもない者に一騎打ちを申し込まれて黙っていられる訳が無い。

「得物を突き立て、俺が苦しみもがいて死んでいく様を見るのが望みだった、そうじゃないのか華雄?」

「貴様を殺してやる・・・・・・・」

「華雄将軍。ど、どうか落ち着いて・・・・」

兵士が何とか華雄を宥めようとするも、その声は彼女の耳には届いていない。

華雄の意識は全て眼下にいる自分に恥を掻かせた一人の男に向けられてしまっている。

こうなってしまっては、もうここに居る兵士達ではこの女傑を諌める事は叶わないだろう。

「さぁ門を開け放て、一対一だ!楽しみをふいにしたくはないだろう?・・・・・来いよ華雄!怖いのか?」

「ぶっ殺してくれる!水関など必要ない!フッフッフッフッフ。水関にはもう用は無い!近衛兵も必要ないわっ!フッフッフ・・・・誰が貴様など!貴様など怖くは無い!((やろおおぶっくらっしゃああああぁぁぁぁぁーーーーっ!!|野郎ぶっ殺してやる))」

「しょ、将軍ーーーーーーっ!!」

物見台より飛び降り、激情のあまり何かに取り憑かれた様な形相で門へと一目散に駆けて行く華雄。

それに至る一部始終を見ていた兵士の悲痛な叫びが虚しく木魂する。

もしこの場に彼女を諌める事が出来た人物が居たとしても、その者は傍観して只一つこう思ったに違いない。

駄目だこいつ、早く何とかしないと・・・・・・。

 

 

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「稟よ。主はああ言っておられたが、このような挑発でおいそれと出てくると思うか?」

一刀が挑発をしている先鋒より後方、関から出てきた敵軍に対応するにはやや離れた場所に兵を置いている星と稟。

二人は敵の出方に気を配りながら一刀の立てた策について議論をしていた。

「幾ら先陣の大将が目の前に居たとしても、まともな将ならば八割方出て来ませんよ」

「ならば、本命はやはり将が出てこなかった場合の乙の策という事になるか」

「そうですね、乙の策も普通の攻城戦と比べてかなりの時間を短縮できる悪くない策です。こちらの兵の疲労も溜まりますが一刀殿が育てた精兵なら問題ないでしょう」

「うむ、では策の通り兵を動かすとしよう」

星が次の策に移行するために兵に指示を出そうとした、その時・・・。

「報告!水関の門が開け放たれ、華雄と思われる将が一騎突進してきました!それに釣られて関を守る兵も出てきた模様!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

伝令からの報告に二人は声も出ない。

「篭城戦で将が単騎で突出、敵とは言え眼も当てられない状況ですね」

「勇猛と蛮勇を履き違える者が大将では、敵兵が不憫でならんな」

「ですがこれは好機、甲の策ならば諸侯が介入する暇もない。上手くいけば一日で水関を攻め落とせる」

「全く、主の慧眼には恐れ入る」

そう言いながら二人は当初の策の通り兵を動かし始める。

こうして、諸侯が凌ぎを削る群雄割拠の乱世。

その始まりとも言える虎牢関の戦いの初戦、水関攻防戦が幕を開けた。

 

 

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「お、出てきた出てきた。これなら早々に水関を落とせるな」

開け放たれた水関の門。

その虎穴の様な門からこちらへと向かってくる者を眺めながら、俺は手に持った((毎孔|マイク))を袖の中へ仕舞う。

泰平妖術の書に記された人身掌握の為の妖術を使った拡声器だったのだが・・・。

「戦の口上を述べるのにも十分使えるな」

そんな事を考えていると華雄は眼と鼻の先まで来ており、間も無く俺と接敵する言うところだったのだが・・・・。

「やっばっ!」

華雄の姿勢、鞍に跨らず上にしゃがみ込む様な奇妙な体勢で馬に乗ってるのを見て、俺は瞬時に馬を捨てるように右へと飛び降りる。

「はあああぁぁぁぁーーーっ!」

ズバンッ!

ドグォオオオオオーーーンッ!!

飛びのいた瞬間、俺が乗っていた馬は胴体を真っ二つに両断され、地面には大きく陥没するほどの斬撃が叩き込まれる。

大きく地が抉れたその場所には、先ほどまで馬上に居た敵将華雄が馬の鮮血がこびり付いた戦斧を手に佇んでいた。

彼女は間合いに入る前の刹那、馬の背から俺の頭上へと飛んで己の体重と馬の速度を生かした渾身の一撃を叩き込んだのだ。

あと少し飛び降りるのが遅ければ、今頃俺は斧で割られた牧の様に真っ二つになっていたことだろう。

「ほう!?ただの州牧かと思っていたが、伊達に一騎打ちを申し出るだけの事はある!」

「有無を言わずに仕掛けてくるとは性急だなぁ、君が華雄かな?」

「そうだ。司馬懿、貴様から受けた屈辱!今ここで晴らさせてもらうぞ!」

「屈辱?一体何のこと?」

思い当たる節が無く、警戒しつつも俺は彼女にどういう事なのかを問い返す。

「惚けるな!黄巾の砦の事だ!よくも私を出し抜いて砦を落としてくれたな!」

「ああ、あれか・・・」

華雄の言葉で俺も何の事か漸く思い出す。

別に惚けていた訳ではなく、只単に華雄と司隷で落とした黄巾の砦が繋がらなかっただけだ。

正直な話、あの砦を落とすために向かっていた官軍の将の事など対して気にしていなかった。

官軍より先に敵の砦を制圧してその風評を流す事が重要だった為、将が誰かなど天下無双の呂布でも無い限り大した意味の無いこと。

まぁ、恥を掻かされた本人にとってはそうもいかないだろうが・・・。

「なるほど、それなら俺を見た途端に仕掛けてくるのも道理だね。それじゃあ・・・・・・お相手願おうか」

そう言い放ち、相手を見据えながらやや腰を下げて左手を鞘に、右手を柄に添えて居合いを構える。

得物を抜かない俺に対して華雄は舐められているのかと思い、一瞬憤怒の表情を見せるがそれも直ぐに収まる。

恐らく華雄は本能的に察したのだろう。

舐めているのではなくこれは既に構え、無策で飛び込めば瞬時に斬られると。

「変わった剣技だな。だがそんな奇妙な構えが、この私に通じるものかっ!!」

一喝とともに手に持った戦斧で左切り上げを放つ華雄。

こちらの構えから太刀筋を読んだ上での、最も受けづらい角度から斬撃。

それに俺も即座に対応、相手の間合いギリギリ半歩後ろに下がり戦斧の一撃をかわす。

返しの刃が来る前に反撃に移るべく、前へと出ようとしたその時、下からの殺気で背筋に悪寒が走り咄嗟に上体を反らす。

反らせたのとほぼ同時、頭の在った位置を何かの棒の先端が通過して行き、それが斧を使った石突だと判断するのに暫し時間が掛かったほどだ。

上体を反らせたことで体勢が崩れた俺は、追撃で放たれた横一閃を後ろに飛び退きながら紙一重でかわし、着地に掛かる全荷重を右腕一本で支えながらばく転をする形で立て直す。

「危うく顎から頭蓋を砕かれるところだったよ」

「当然だ、我が斧は天下無双。貴様のような田舎の州牧如きに負けるものか!」

「天下無双ねぇ・・・。悪いけど、そんな事を口にしているようじゃあ十年たっても俺に勝つことは出来ないな」

そう言い終えると俺は再び居合いを構え、閉めにかかる。

「避けてばかりの奴が何を偉そ・・・う・・・・・・に」

華雄の言葉はそれ以上続かない。

構えこそ先ほどと変わらぬものの、柄に添えられる二指を用いた握り、そこから発せられる尋常ならざる殺気を感じ取った為だ。

これから放たれる俺の初太刀を防ぐことに全神経を集中させる華雄。

最初に構えた時もそうだが、やはり彼女は危険を察知する能力にはかなり長けている。

それ故に惜しい。

「武人としての心構え、勝負勘は共に申し分ない。将として兵を率いる威厳もそこそこある・・・・・・だけど」

語りも早々に疾風の如く間合いをつめる。

「それらの才能を生かす研鑽が」

キイィン

放たれた神速の居合いを華雄は自らの戦斧で受けるが、俺の狙いは彼女が手にする得物そのもの。

斧は手にした部分から二つに両断され、見ていた兵たちは勝負が着いたと思ったに違いない。

否、俺と華雄の攻防はまだ終わらない。

こちらが正宗を完全に振りぬき、次の斬撃が来るまでに刹那の間があると読んだ華雄。

ここで決めねば敗北すると見て、手斧ほどの長さになった戦斧を左手で振り下ろし、俺の頸を刈り取りに来る。

だが・・・・・・。

「乏し過ぎるっ!!」

ゴギァ!

戦斧が振り下ろされるよりも早く、入子鞘で放った右薙ぎが華雄の右胸部へと突き刺さる。

肋骨が折れるのに十分な感触。

華雄は苦悶の表情を浮かべる間もなく、地を転がりながら吹き飛ばされていった。

「ぐっ・・・・・がはっ!」

胸部を打たれたことで上手く呼吸が出来ないのか、華雄は地に這い蹲りながら口から血反吐を吐く。

そんな華雄を見下ろす形で、俺は彼女に語りかける。

「君が俺に勝てない理由は二つ、一つは天下無双という称号は自分から口にするものじゃない、同じ道を志す他者が決めるものだ」

自分から天下無双などと口にする事は慢心以外の何ものでもない。

それが生んだ鍛練の不足が彼女が今、地を舐める結果となったのだ。

その事を口にしながら俺は華雄へゆっくりと歩を進める。

頸を刎ねられると思ったのか、華雄は死に体に鞭を打って何とか立ち上がると打たれた箇所を押さえながら逃走を計る。

しかし、俺はそれを許さない。

「そしてもう一つは、武に限らず力とは目的を達する手段であって目的そのものではない。正、今だ!!」

「は、はいっす!」

俺の合図とともに、茂みに偽装した箱を使って接近していた諜報員と正が姿を現す。

そして正の手には先端に四つの分銅が付き、中間部に引き金が付いた筒状のからくり。

俺が正に作らせていた秘密兵器の試作品。

ネットランチャーが華雄に向けて放たれた。

バシュゥゥン!

発射された分銅は華雄に向かって四方に拡散し、分銅に取り付けられた網が広がっていく。

負傷している華雄はそれをよける事が出来ない。

網は当たると分銅の遠心力が働いて巻きつき、彼女は簀巻き状態となってその場に倒れこんだ。

「な、何だこれは。う、動けん・・・・」

まるで蜘蛛の巣に捕らわれた獲物。

網は幾重にも彼女の体に巻きついており、最早刃物で切らなければ抜け出す事は出来ないだろう。

俺は網に巻かれたまま動けなくなっている華雄に近づいて彼女を抱え上げると、袖から毎孔を取り出して声高に叫ぶ。

「敵将華雄!西園八校尉が一人、司馬仲達が召し捕ったっ!」

「──────────ッ!!!!!!!」

連合軍の兵達の歓声が水関に木魂する。

そんな中、華雄は身をくねらせながら俺に向かって声を張り上げる。

「貴様、一度ならず二度までも私を辱めるか!敵の手に落ちるなど武人として最大の屈辱だ!一思いに殺せぇっ!」

「嫌だね、捕まえた捕虜をどうするかは俺の自由だ。君にはこのまま俺の陣地にまで来てもらうよ」

歓声が鳴り止まぬ中、俺は風が指揮する自軍の本隊へと凱旋する。

華雄という障害が無くなり、水関を抜ける事が容易と見た諸侯が、手柄を掠め取る為に動き出すだろうがもう遅い。

左右に展開した星と稟の部隊を確認しつつ、俺は華雄を抱えたまま後退した。

 

 

説明
消費税増税まであと1ヶ月となりましたが皆様は駆け込みで何かを購入されますか?
私は昨年事故でロードバイクが大破したので新しい物を今月中に購入する予定です。
雪の関係で外を走れるのは2ヶ月は先ですが室内でローラーを回して楽しもうと思います。

それでは第4話、お楽しみください。
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コメント
華雄さん一刀に、お持ち帰りされたー! 一刀の下で調教と言う名の進化ですね!(ぇ(howaito)
これぞ、ザ・駄名家ww しかし、かゆうまさん。 もうちょっと……ほんのちょっとでいいから理性的になれば、勇将なのになぁ(神余 雛)
さすがコマンドー式ネゴシエーションwwwさすがやwww(ロードスネーク)
コマンドーキタコレwww(exam)
華雄さん一刀陣営に参入、地獄の特訓の果てに本当の天下無双になれるのか!?、次回が楽しみです。(黒鉄 刃)
うん。安定の猪っぷりだな。猪突猛進とは、この事だったんだね・・・・・・。しかし、華雄は成長しないな・・・・・。(Kyogo2012)
一刀に『非常の人、超世の傑』と評を贈ります。(いた)
華雄さん「やろうぶっ殺してやる」ってw相変わらず猪だったw(nao)
一刀の兵と兵装が時代を超えたwwww(アサシン)
あ〜、うん・・・華雄さん、確かに恥をかいたのかもしれないけども、そりゃ逆恨みってもんじゃないかなww? 一刀は安定の戦闘力で華雄を召し捕り水関も落としましたが、麗羽も安定の迷家っぷりですねww(本郷 刃)
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