義輝記 雷雨の章 その拾七
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【 軍師『颯馬』 ついに出陣 の件 】

 

?虎牢関 董卓陣営内にて?

 

颯馬「今こそ反撃の時!! 鶴翼の陣を編成し、袁紹軍を三方包囲せよ! 号令があり次第、矢を射かけるため準備!!」

 

虎牢関より出陣!!

 

右翼……織田信長、明智光秀 約五千人

 

中央……武田信玄、信廉、上杉謙信、山縣昌景 約五千人

 

左翼……島津歳久、家久 約五千人

 

後詰め…天城颯馬、足利義輝、華雄、張文遠 約五千人

 

虎牢関留守隊…島津義久、郭奉孝、陳公台 約二千人

 

虎牢関左岸……『姜伯約』約千五百 

 

虎牢関右岸……『百地三太夫』約千五百

 

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信長「皆、『竹槍』は持ってきたか!? 同じ大きさの長さに調整してあるから一直線に並んで、袁紹軍の侵入を阻め!!」

 

光秀「人数の都合、二段の列しか出来ませんが、無理に切り替わらなくてもいいです! 必ず断続的に二回程、火矢を放つ事は忘れないように!!」

 

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家久「『火矢』を二回必ず射って! その後、『竹槍』を突き出して下さい!! 向こうの槍よりは長いから、安心してね!?」

 

歳久「今の所は袁紹軍のみですが、直に颯馬の策を見破って、残りの部隊を投入してくるかもしれません!! 早めに決着を!!」

 

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華雄「……………………………私が実際に戦うのは、かなり久しぶりな気がするのだが?」

 

霞「ウチも……そうやったけど、もうえぇ……」

 

華雄「?」

 

霞「関羽とあれだけ遣りおうたからなぁ……今までのウサは晴らした………!! 今は、目の前の戦に奮戦するまでや!!」

 

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謙信「……敵は十万以上、我らは約二万………」

 

信玄「怖いのですか…景虎? 貴女のように『軍神』と称される者が戦巧者が…… 「あぁ……ハッキリ言って怖い!」…なっ!?」

 

謙信「……前は、戦を怖がる弱気などなかった。 『我は《毘沙門》の化身! この身朽ちれば天に帰るのみ!!』と考えていたさ。 

 

だが……今は怖いのだ! 颯馬の傍に……居られなくなるかもしれない『理(ことわり)』が! 

 

颯馬と言葉を交わす事も、颯馬の温かさを感じる事も、颯馬と結ばれる事も………二度と出来なくなる!! それが堪らなく怖いのだ!!!」

 

信玄「……私は…颯馬を守れれば、それでいいと思っていますよ?」

 

謙信「なにっ!? 良いのか? 本当にそれで─────?!」

 

信玄「落ち着きなさい、景虎。 仏門に入っていた割には、精神修養が足りませんね。 

 

………私は、『ここ』に来る前は…今日明日まで生きれるか判らない病人でした。 

 

ですから、日の本に残り…絶筆の兵法書と最後の言葉を残した『竹中半兵衛』に共感を覚えます。 自分が亡くなっても……颯馬が健在でその『想い』の中で生きて居られれば、それで幸せではないかと」

 

謙信「──────────────!!」

 

信玄「人の命は、天命により定められた朝露のような存在。 朝に生まれ、昼前には消えてしまう儚きもの。 

 

確かに、颯馬と結ばれる事は、私も欲する願いであり、誰にも負けたくありません!!!

 

………ですが、それに捕らわれて、肝心な勤めを忘れ、最悪の事態を招いた時……颯馬の喜ぶ事か悲しむ事か、貴女でも判ると思いますが………!?」

 

謙信「……………感謝する!! 『死なんと思えば生き、生きんと戦えば、必ず死するものなり』の訓、しかと心に刻もう!!!」

 

信玄「ボソッ(……私も甘いですね。 ですが…ここで景虎が失敗、もしくは戦死すれば、颯馬が悲しみます。 決して仲間意識で動いた訳ではありませんから…… )」

 

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信廉「姉上………」クスン

 

昌景「うむうむ! 仲良きことは美しく哉ですな!」

 

★☆☆

 

麗羽「文醜さん、顔良さん……! 今、ここで申し渡します!! 」

 

猪々子「──何すかぁ!? 姫!! こちらも囲まれて大変なんだぁ!! 要件は手短にお願いしますよぉ!!!」

 

斗詩「姫ぇ!! 変な用事ならお断りしますよ!! 手が離せないんですからぁぁぁ!! 」

 

麗羽「───袁家の名において、我が真名に誓い申し渡します。 貴女達二人を袁家より将軍職を剥奪し『解雇』を命じます!!! 早急に、此の場所より────立ち去りなさい!!!」

 

猪々子・斗詩「「  なっ!?  」」

 

麗羽「─────聞こえませんでしたの!? 早く……!!」

 

猪々子「姫ぇぇ!! 何を寝ぼけた事ほざいてるんですか!!」

 

斗詩「孫子に曰わく『君命に受けざるところあり』! そんな命令は却下しますよ!!!」

 

麗羽「この戦いは、半分は私の欲! 貴女達まで付き合う必要はありません! 幸い董卓軍は三方包囲して、一方を開けています! そちらから逃げる兵に紛れ込めば…………!!」

 

猪々子「あぁぁ! 煩い!! アタイら二人はそれで良いと言ってるんですよ!! いい加減分かんないのかねぇ、姫ぇぇ!!」

 

斗詩「まだ、諦めないで下さい!! 曹孟徳様が必ず援軍に来てくれますから!!! それとも、『天の御遣い』様を諦めるつもりなんですかぁ!?」

 

麗羽「──────なんでぇ、それを!?」

 

猪々子「アタイら、護衛も兼ねてるんですよ! 姫が護衛兼用でアタイらを薄給で雇うからさぁ!!!」

 

斗詩「これに懲りたら、お給金の値上げ、お願いします!!!」

 

麗羽「…………グスン 分かりましたわ! ……但し、無事三人とも生き残れたらですわよ!!!」

 

猪々子・斗詩「「 アラホイサッサ〜!! 」」

 

◆◇◆

 

【 不吉なる軍勢 の件】

 

?虎牢関 周辺にて?

 

董卓軍が攻めかかる直前、前方より砂塵を確認する。

 

牙門旗は『曹』、『孫』……。

 

華琳「間に合ったようね!!」ハァ− ハァ−

 

雪蓮「そうねぇ!」ハァ− ハァー

 

桂花「か、華琳様!! 大変な事がぁ─────!!」

 

華琳「桂花!? どうしたの? 」

 

桂花「はいっ!! 伝令で送った者から報告がぁぁ!!!」

 

華琳「────────────────!!!!」

 

雪蓮「━━━━━!! 『卑怯な真似』を!!!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

颯馬「………間に合わなかったか……」

 

義輝「颯馬、例の策を実行するべきでは………?」

 

颯馬「いえ! まだ、後衛が動きま────?!」

 

★☆☆

 

曹孟徳、孫伯符双方の部隊より……後方か砂塵を巻き上げてくる大部隊あり。 ……しかし、牙門旗は何故か…ただ一旗………のみ!!

 

──『劉』──エン州刺史『劉岱』の牙門旗のみがはためいていた。

 

そして、先方には…………縄で縛られた曹孟徳配下の『楽文謙』『李曼成』『于文則』の三将及び袁、曹、孫の負傷兵。

 

そして、白い装束に顔まで隠した男の将が二人……『袁公路』とその配下『張勲』を捕縛したまま歩く。 

 

曹孟徳の将、三人は顔も身体も傷だらけ。 かなり抵抗した様子だが、抵抗虚しく捕らわれた様子。

 

『張勲』も美しき顔が何度も殴られたらしく、痛々しげに腫れ上がり、口元の血も拭くことも出来ず、力無く歩き続ける。 

 

袁公路だけは、白装束の将にお姫様抱っこで運ばれるが………顔に暴行された後が明らかに残っていた………………。

 

その異様な軍勢は、董卓陣営と連合陣営が対陣するところまで近寄り、大声で叫ぶ!!!

 

***   ***   ***   ***

 

劉兵「洛陽董卓軍及び反董卓連合陣営に次ぐ!! 速やかに戦を止め『新たに降臨された天の御遣い様』に従うがいい!!!

 

さもなければ、新たに編成し直した天の御遣いの軍『真・劉岱軍』十万以上が、お前達を殲滅しよう!! 

 

今の内に我らの仲間に入るのなら命を助けて、尚且つ『劉岱』様に仕える名誉を与えてやる!!

 

もし、拒むようなことあれば…………この通りだ!!!」

 

***   ***   

 

捕らえられていた諸侯の負傷兵が数人、連れてきた。 後ろには刃を持った劉岱兵が……………

 

一例に並べたと思えば、煌めく刃を掲げ……振り落とす!!

 

曹兵「ギャャアアァァァーーー!!」 

 

孫兵「グワッ!!」

 

袁兵「い、命だけ助けてくれ───グガァァアアァァァ!」

 

***   ***   ***   ***

 

《 曹操陣営 》

 

春蘭「おのれぇぇぇぇ────────!!」グゥ! ダッ!

 

華琳「止めなさい! 春蘭!!」

 

一人の敵将に向かう夏侯元譲!! 

 

近くにいた兵に『張勲』を渡すと、腰の大剣を抜き、ユラリと立ち向かう!

 

??「──────クッカカカカ! 活きの…いい女だ……あ!」

 

ザシュ─────!! 

 

春蘭「ぐあぁぁ────っ!!」

 

春蘭が左目を押さえて、後ろに退く!!

 

秋蘭「姉者!!!」  

 

春蘭「だ、大丈夫だぁーーーぐぅ!!」

 

***   ***   ***   ***

 

《 孫策陣営 》

 

雪蓮「腹立たしい! 憎らしい!! 殺しテやル!!!」

 

冥琳「雪蓮!! 頼む、押さえてくれ!!! 奴の武技は、曹孟徳配下の夏侯元譲殿の武を上回る!! お前も二の舞だ!!!」

 

雪蓮「ぐっ、ぐううぅぅぅーーーーー!!!!!」

 

***   ***   ***   ***

 

《 袁紹陣営 》

 

麗羽「クッ! ───卑劣、下劣な行為を、ただ指を咥えて眺めるだけだなんてぇぇぇ!! 許せない事ですわぁぁぁ!!!」

 

猪々子「だけど…………斗詩と二人で行って勝てるかわかんねぇぐらいの奴を……くそっ! くそっ!! くそっ!!!」

 

斗詩「うん…………もの凄く悔しいし、これほど腹立たしい事も…始めて…………!!!」

 

***   ***   ***   ***

 

颯馬「……………………………………!」ググゥ!

 

光秀「……………ダメ! ………行かないでぇ!」

 

信長「……光秀。 主(ぬし)の火縄を貸せ! あやつを撃ち殺し、人質を解放する!!」

 

光秀「………これは、私用に調整した火縄銃! 如何に信長様でも標準が狂ってしまい、無辜の兵や将に当たる可能性が!!」

 

信長「───チィ! 今の主に、任せる訳にはできんし…!!」

 

***   ***   ***   ***

 

《 劉岱陣営 》

 

陣営より一人の変わった身なりの男が現れた。

 

顔は包帯で巻かれ、衣服は白い『制服』……………。

 

曹孟徳陣営の『天の御遣い 北郷一刀』と同じ『聖フランチェスカ学園』の制服を着用していた。

 

劉岱「儂は、『天の御遣い 劉岱』だ!! 導師『于吉』に神託が下り、儂こそが相応しいと『御遣いの装束』と『二人の僕』を授かり、この地に再臨した!! ────見よ、この者どもを!!!」

 

劉岱は、二人の僕を促して、白き被り物を外させる。

 

夏侯元譲を退けた将の顔を見た者は、一様に驚きを隠せない! 

 

その者の額には、直径一寸近い『穴』がポッカリと!!

 

辺允「俺は………『辺允』……賊だ。 『天水の夜戦』……殺され…たが『天城』……恨みがあり………コイツの……味方だ!」

 

***   ***   ***   ***

 

《 董卓軍 》

 

颯馬「そ、そんな………!」

 

光秀「…………間違いないですね。 私が撃ち殺した憎き将!」

 

***   ***   ***   ***

 

《 劉岱陣営 》

 

もう一人が被り物を取ると………連合陣営がどよめく!!

 

麗羽、華琳「「 袁伯業(さん)!! 」」

 

姓は袁、名は遺、字は伯業…………元山陽太守、別働隊の総大将だった人物。 数日前に……天水守備の部隊に討たれた将が………!

 

天の御遣いを語る劉岱の僕として、付いている。

 

別に変わった所は…………見当たらない。 強いて言えば…顔色が生前より青白くなっている。 端正な顔付きだけあり、更に美形を際立ったせていた………。

 

***   ***   ***   ***

 

劉岱「さ〜〜て、御披露目も終わりだ! 今の愚将の行動は、初回ゆえ目を瞑ろう。 二度目は、幾ら寛容な儂でも許す事はできん!

 

儂は皇帝の血も引いているため、このまま洛陽に行き、現皇帝より禅譲にて帝位を譲り受け、新たなる『天の代理人』となる。 

 

『天の御遣い』にして『漢王朝の皇帝』と言う前代未聞の皇帝と民より讃えられる事になるのだ!!!」

 

劉岱は、包帯の隙間から見える口から、一方的に喋りまくった後…………満足げに笑う。

 

歳は六十路を越える肥満太りの人物が、白い『制服』を着用し顔を包帯で巻き上げた上に、『天の御遣い』と『皇帝』になると宣言するのだから、かなりの爆笑物。 

 

しかし、その背後には………二人の僕、十万を越える軍勢が控えている。

 

先の火計により、袁紹軍等より離れた者達が、多数参加しているようで、各国の鎧兜が見え隠れしている。

 

 

笑えば…………『死』は確実に、降りかかって……………

 

 

『アーッハッハッハッハッハッハッ!!』

 

……相変わらず、空気を読まない人物が一人………

 

信長「そのように仰々しい態度のわりに、やることが小悪党過ぎてつまらん! 我らと戦いたいのなら、早く掛かってこい!!」

 

劉岱は、少し信長を睨みつけた後、大声で笑い出す!!

 

劉岱「儂をコケにして、更に挑発をするとは下劣な御遣いよ! だがな、こちらには、人質がいる事を忘れているのではないか?」

 

信長「そちらこそ、忘れているだろう! 私達と連合陣営は敵同士。連合陣営の人質が何故、私達が気に掛ける必要があるのだ?」

 

連合陣営は、信長と劉岱のやり取りをハラハラしながら、見ている、というか見ているしかない………。

 

劉岱「ふむ………一理ある。 それでは…こうしよう! 話に聞けば『天城颯馬』なる軍師は『神の拳』を操ると聞く。 そして、人質の楽文謙も類い希な素手の武技を誇るというではないか?」

 

劉岱は、さも良い案が浮かんだように振る舞い、董卓軍に向かい叫ぶ! 

 

劉岱「………『天城颯馬』と『楽文譲』との死合を申し渡す!! 『楽文謙』が勝てば人質を解放しよう! 『天城颯馬』が勝てば、人質は全員殺す。 勿論……勝負を拒否しても、全員殺すがな!」

 

信長「───────!!」

 

凪「……………………!!」

 

***   ***   ***   ***

 

《 董卓軍 》

 

光秀「颯馬!! 行かないで! この戦い受けても───!!」

 

颯馬「……いや、ここは俺が行く。 行かなけば、『天の御遣い』としての風評が落ち、洛陽の皇帝陛下や月様達に迷惑を掛ける!」

 

謙信「……軍師殿、私達に出来る事は?」

 

颯馬「それでは、準備をして待っていて下さい。 最後の策を…」

 

謙信「……………必ず、生きて戻れよ! よいな!?」

 

颯馬「………はい!!」

 

***   ***   ***   ***

 

    ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ

 

颯馬「…………久しぶりだな、楽文謙殿!」

 

凪「天城様………!!! 申し訳ありません!! 貴方様の負担を軽くするつもりが、更に負担を増やす行為をしてしまい……! ですが、私も負ける訳にはいかないのです!!! 」

 

颯馬「わかっているよ。 あの子達の姿が見えるから……。 だけど、俺も簡単にはやられないよ!?」

 

凪「……………それに、こんな時に不謹慎ですが、天城様に私の修行の成果を見ていただきたいのです!! 貴方に勝つための!!」

 

颯馬「…………」

 

董卓軍、連合軍、劉岱軍が見守る中、闘いが開始された!!

 

◇◆◇

 

【 追い求めた末の決着 の件 】

 

?虎牢関 付近にて?

 

楽文謙と天城颯馬は、それぞれ構えを作り、様子を見る。 

 

楽文謙は、あくまで颯馬と対等に戦いたいと、鉄甲を外す。

 

凪(『気弾』は、周りにも被害を被る可能性があるから…撃てない。 それならば………………)

 

接近戦に持ち込むため駆け寄ると、颯馬も駆け足で接近する。

 

あまり近付き過ぎると『投げ技』や『関節技』に掛けられる可能性があるため、少し手前に止まりて、拳打等を打ち出し合う。

 

  ガッガッガッ! シュッシュッ! トン! ガン!

 

少しの間、互いに互角に打ち合うが、体力的な面は颯馬が劣るため、速さに陰りが生じるのを見た楽文謙が勝負に出る!

 

      シュッー!    トッ!

 

颯馬「!?」

 

楽文謙の胸を狙い打ち出した拳が、楽文謙の右手で払われ空を切らされた!

 

楽文謙が、払った拳に左手を添えて更に受け流して、颯馬の上半身を引き込み重心を崩す。 尚且つ、その動きを利用して、身体を回転しつつ左足踏み出し『震脚』し、颯馬に背中で打撃を喰らわす!

 

   ドン!!   ドオォォン!!  「フン!」

 

颯馬「ぐぅ─────!!」

 

颯馬が顔を苦痛に歪め、仰け反り返った! 

 

楽文謙は、『鉄山靠』を放った後に左回転で転回して、颯馬の左側に足を踏み込み、そのまま後方上空へ跳び上がり、身体を右側に捻る!

 

     『覇王蹴撃!』  ガコッ!!

 

回転して勢い付いた楽文謙の蹴り技が炸裂し、颯馬の頭に入り込んだ…………!

 

★☆☆

 

が、楽文謙殿に、拳を受け止められた後、な、何があったか、正直分からない……!! 体当たりから戸惑い、前方を見れば、既に居なく…いつの間にか……強烈な蹴りを…………ぐぅぅぅぅ───!!

 

ふと、見れば……仲間達の固い顔の表情が見える。 光秀が大きく目を見開き…………両手で口を覆っている。

 

謙信殿は、まばたきもせず………無表情で俺を見つめて………。

 

そして、当の楽文謙殿……涙を流しながら……此方を見ている…か。

 

油断したつもりは………無かったが、まさか……貂蝉の教えてくれた技を使ってくるなんて………予想外過ぎだ。

 

このままじゃ、負けて誰も救われない! 何とか…手を……!!

 

痛む頭を押さえ、知識を動員させ反撃を考えると、楽文謙殿の近付く足音が…………!

 

  ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

 

 

凪「……天城様! これで………最後です!!!」

 

震える声で叫ぶのを聞き……俺は意を決し……急いで…グッ…立ち上がり……貂蝉に教えてもらった『武術』を試す事に……した。 正直、不安だが………何もせずに、やられたままは……ごめんだ!

 

★★☆

 

凪「─────えっ!!」

 

颯馬「………」

 

楽文謙は……颯馬が、今まで見た事も聞いた事構えで対峙して、非常に戸惑ってしまう………!

 

上半身は、正面に迎えるように動かし、下半身のは左側(凪から見ると右側)方向を向ける。  今まで握っていた拳は、指を開いて開掌をなり、楽文謙に一方は向けられ、もう一方は腰の側に。

 

颯馬「………………」フラフラ

 

凪「天城様……! 意識無くして尚立ち上がる態度、お見事です! でも! これで…終わりです。 お覚悟を!!」

 

楽文謙が、右拳を打ち込みと颯馬の左手が急に伸びてきて、その攻撃を受けきった。 同時に左足も一歩踏み込みつつ…………。

 

凪「?!」

 

楽文謙は、驚きながら左手に攻撃を移行する。 ……だが、その前に颯馬が楽文謙の右拳を掴みつつ側面に移動、右足を軸に回転し左足を楽文謙の後方に進める!

 

颯馬「……八卦掌『反背捶』………」

 

   グオッッッ  ボコッ!! 

 

凪「キャッ!!!」 ゴン!

 

回転した時に伸ばしていた、左拳が凪にぶち当たる!!

 

予想外の行動に、楽文謙も受け身が取れず、頭から落ちて意識を失う。 颯馬も、その様子を見に行こうとしたか、二、三歩歩くが、崩れるように倒れ臥した……………。

 

◇◆◇

 

【 翻弄される御遣い の件 】

 

?虎牢関 周辺にて?

 

劉岱「………ふん! 引き分けに終わったか。 勝ち負けでの条件を示し、引き分けの条件は無かったな………よし! 引き分けは……」

 

『全員、皆殺しとする!!!』と、声高らかに宣言する!

 

劉岱が手を軽く上げると、劉岱に元から仕えていた兵が、『弩』を携え一直線に並ぶ!! 『狙いは、董卓軍と連合軍! 理由? 儂の意にそぐわなかった…これ以上の罪科はあるまい!!』と劉岱は嘯く。

 

片膝を付いて『弩』を身構える者、立ったまま『弓』を身構える者が、数百人以上で並ぶ!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

辺允「つ……まらん! 俺……獲物だっ………『天城』!」

 

袁伯業「直に………面白く……なる! あの『愚物』……に、教えて無いが………………………………………と、言う事……だ」

 

辺允「………ほぅ、楽しみだぁ…! クックックックックックッ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

連合軍側は、反撃しようにも人質が居るため動けず、さりとて何百の弩や弓を防ぐ術も無し。

 

唇を噛み締め悔しがる者、口汚く罵る者、絶望して天を仰ぎ見る者、

それでも最後まで希望を持ち、思考を巡らせる者………。

 

董卓軍の将兵は、ただ目を瞑り黙っている。 何かを待つが如く…

 

劉岱「一斉にい─────────!」

 

??「おっさん……! アンタ、悪戯(おいた)が過ぎたね……!」

 

劉岱は驚き、声をした方に振り向いた。 そこには、一人の劉岱軍の

兵士。 虎牢関に向かう途中の道で、自分に罠を浴びせた憎き奴!

 

劉岱が殺そうとしたが、すでに逃亡されて復讐が出来なかった。 今ここで………この顔の償いを受けさせようと、腰の得物を抜く!

 

……だが、服装は同じだが………中身は別人。

 

??「そんなんだから、配下の兵士に裏切られるんだよ。 『不倶戴天の御遣い』サマ?」

 

劉岱「儂は、儂は…『天の御遣い』にして『皇帝』になる定まった男だ! 無礼極まりないぞ!! 貴様!!!」 

 

 ブウゥゥンンン!!   スカッ!

 

??「『天の御遣い詐称』でも重いのに『皇帝陛下詐称』まで唱えるなんて………ね。 今の聞いたかい、曹孟徳殿?」

 

華琳「確かに聞いたわ! でも、私達は動けない。 その『詐欺師』のせいでね。 我らが同朋を惨いめに合わせた…許せない奴だけど!!」

 

 

??「じゃあ、動いてもらうよ!!」 パチン!

 

 

ムクッ…  ムクムク……! 

 

────スタッタッタッタッ!

 

────クルッ! …………スチャ!

 

( 斬られたハズの、各諸侯の兵が動き出し、他の偽劉岱兵と共に三太夫の下に集まる! そして、諸侯に弓、弩を向けていた兵達が劉岱に一斉に向けられた!)

 

偽劉岱兵「三太夫様! 人質及び天城颯馬様、楽文謙殿の保護及び治療終了いたしました!!」

 

三太夫「うしっ! ご苦労さん!! お前らは、すぐに虎牢関に戻れ!! ここが悲惨な戦場になるからな!?」

 

偽劉岱兵「はっ!!」 ダッダッ!!

 

劉岱兵の弓、弩の兵も陣列を解き、虎牢関に向かって行く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

華琳「なっ!」  

 

雪蓮「………どうなってるの!?」

 

麗羽「────説明なさい!!!」

 

劉岱「………偽装兵! まさか、弩や弓を持つ兵もか!?」

 

三太夫「おっ? ちょっと違うね。 ……元々居たアンタの兵さ!」

 

劉岱「  ……………………… 」

 

三太夫が………問い質す者達に説明をする。 

 

特に……………劉岱には、皮肉と嘲笑を込めて………………。

 

『俺が、《水関》に兵を送ったら、アンタんとこの兵が逃げて来るって報告が入るじゃないか! で、保護して聞くと、アンタの人望の無さがだだ漏れでねぇ……

 

それなら、内部の情報も手に入れやすいと思い、配下の兵を入れたらさぁ、重要機密扱いの今回の策が、愚痴と一緒に出てきたと報告を受けたんだよ! 

 

もう、ホント苦笑いするしかなかったよ(笑)。 

 

だから、こんな機会をくれた《おっさん》のために、《配下の忍び達》を更に送り込んで《化敵の術》を仕掛けるように命じたんだ。 

 

アンタの兵や曹、袁、孫の兵装を準備して、足りない物は、幾つか死体や負傷者から拝借してさせてもらいながらね…………。

 

斬られた奴も斬った奴も、俺の配下達だ。 なかなか迫真の演技だったろ!? 本当の負傷兵は、別の位置に待機してもらったよ………。

 

そんな訳だ。 ……………これで、分かっただろう? 

 

アンタには《天の御遣い》や《皇帝陛下》を名乗ろうする割には、人望が無い、資格も無い、ついでに言うと、そんな天命も無い!! 

 

そんな輩が上に着かれても民草が迷惑なだけだ!!! 』

 

納得した者達とは別に、顔を赤らめ三太夫に怒鳴り散らす、身の程を弁えない(わきまえない)者も居る。

 

劉岱「五月蝿い(うるさい)、五月蝿い、五月蝿い!!! 人望も資格も無いだと! そんなもの、今の世では分かるまい! 

 

遥か後世の民草が、それを断じるだけだ! それに、天命ならあるぞ!! この《御遣いの装束》や《二人の僕》を与えてくれた于吉が託宣を下した─「嘘だな……」───何? 儂は直に!!」

 

 

三太夫「おっさんの話が嘘って訳じゃなくて、そいつが《嘘付き》だと言う話だ。 哀れな『ただのおっさん』! その証拠に………今まで俺達の動き……知っていたのに、見逃してくれたようだね? 『お二人さん』」

 

袁伯業「……気付いて……たの…俺一人…だ。 別に損…では……無いから………寧ろ、有り難い…!」

 

辺允「クックックッ……同じ……だぁ!! 強き……奴……俺の……手でぇぇぇ!!!」

 

劉岱「なっ───何だぁぁとおぉぉぉ!!!」

 

真実を告げられ……愚弄され続けた事に憤怒の表情を浮かべる劉岱。 

 

三太夫「それじゃ、カッコ良く決まったところで、報いを受けろよ? おっさん!!」  シュッシュッ!

 

劉岱「黙れえぇぇぇ────────!!!」  キン! キン!!

 

その劉岱に手裏剣を投げるが………悉く防がれた!

 

 

◆◇◆

 

【虎牢関 最終戦 の件】

 

?虎牢関 周辺にて?

 

華琳「麗羽! 直ぐに陣を立て直して!! 私達も行動を起こすわ! あの男……よくも春蘭の顔に傷を付けて!!!」

 

春蘭「か、華琳様………」ウウッッッ…

 

秋蘭「姉者! 早く治療を………!」

 

??「お前達!! まだ我らと対峙するつもりか!?」

 

華琳「!」ビクン

 

信長「今、我らが最後の秘策を行動に移す。 そんな中、主(ぬし)達が入り込めば、巻き込まれて終わりぞ!!」

 

華琳「し、しかし…「しかしも案山子も無いわ!!」……」

 

??「おい、信長……。 あまり怖がらせるな、まだ未熟と言えど『覇王』だぞ? 成長すれば、お前を凌駕するかもしれん!」

 

信長「……すれば良いではないか!! お前が居れば、敵対しても怖い事は無いぞ!! …………颯馬?」

 

華琳「あっ!」

 

颯馬「こんな格好で申し訳無い。 正式に挨拶したいのですが、そろそろ策を発動したいので……是非、後ろにお下がり下さい。

 

大丈夫ですよ。 危害は一切加えませんから………ほら、行くぞ!」

 

信長「…颯馬の言い分、分かったならば、早く全軍下がらせい!!」

 

華琳「………分かったわ。 全軍、虎牢関まで前進!!」

 

麗羽「華琳さん!!」

 

華琳「お願い、麗羽。 今は下がって!! 」

 

麗羽「………貴女が、気弱な言葉を発するなんて………分かりましたわ! 全軍、虎牢関に向け進軍ですわ! 」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただきありがとうございます!

 

前々作で少し大口をたたいたものですから、前作の評価が、非常に気になっていました。

 

そうしたら、意外な賞賛の言葉をいただき、驚きと共に改めて御礼申し上げます。

 

後で考えれば、穴だらけの策なんで、批判もあるんじゃないかと心配していたんですが、いつもコメント戴く方や新たに戴く方から、まさかの絶賛だったので恐縮しています。

 

この話は、話の展開上、戦極姫>恋姫とレベルに上下があります。

 

戦極姫は、ゲームクリアー後、恋姫世界に入った設定ですので、戦極姫がレベルが上になります。

 

ご不快かもしれませんが、よろしくお願いします。

 

次回が、虎牢関戦での最後の策『翻竜鳳翼の陣』と言う戦術でいくつもりです。 名称は、作者が付けましので探しても、見つかりません。

 

ついでに、凪が使用しました背中の体当たりが、八極拳『鉄山靠』、背中側での蹴り業が蟷螂拳『騰空外擺蓮』、颯馬は本文の名称通りです。 関係者の方々、お力添えありがとうございます。

 

次回もよろしければ、読んでください。

 

説明
義輝記の続編です。 今回は虎牢関戦、最後の敵登場となります。 また、よろしければ読んで下さい。
7/12……文章修正しました。
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コメント
naku様 大変嬉しいコメントありがとうございます! 結構投稿しましたが今でも恋姫達の口調や感情があっているのかなと。 本作クリアして数年やってないままですので。 漫画等は好きで見てますけどね。 これからもよろしくです。(いた)
禁玉⇒金球様 御意見ありがとうございます! 一応皇帝陛下等の判断等考えていますが、納得させる理論武装が希薄なため、是非参考の上で作品に掲載したいと思います。 ……作者の見解等も入るので納得いかない場合もあるかもしれませんが、その時はお許しを。(いた)
↓連合自体が「反乱軍または憂国の士集団」の両方の見方出来ますからね。何進が言ってた通り自称御遣いの齎した利害で裁断すればいいかと思います。御遣いを捏造した各諸侯の責を問うた上で評価を与え更に個人の罪を公開羞恥刑や諸々の”資格や証”を剥奪、後は切り捨て可能な死人に口無しでしょうか。(禁玉⇒金球)
これがどうなる事に。 後、劉備や一刀も曹操配下ですので、必然的に曹操軍も………となりますね。 その辺どうしようかな………。(いた)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 今回の話は、あまり良い出来とはいえないな…と思いつつも、次作に続く話だったので出した物ですので、評価低いからコメントいただけ無いかなと心配しておりました。 さて、御遣いの服ですが確かに礼装です。 ですが、前のコメントでちょっと書きました着用の礼装、于吉作の少し上半身きつめで制作してあります。(いた)
劉岱が卑怯ではなく連合の甘さが露呈した。御使い僭称が罪=一度国賊認定で減刑されてる一刀は更に有罪、皇帝僭称=親族を豪語して憚らない劉備=ヤヴァイ。連合諸君発言には気を付けなさい。(禁玉⇒金球)
漸くコメしようと思った矢先に更新とかsですね作者様。おっさんの学ラン姿ではなく海軍礼装と思えば可笑しくはない、御遣い服の価値ってそんなものなのですねorz。(禁玉⇒金球)
次回が最終戦になる予定です。 結果は当然ながらお分かりですが、最後の秘策をどう表現しようか悩んでおります。 ご期待に添えればいいのですが………。(いた)
naku様 コメントありがとうございます! 今回かなり悩んだ末の展開で、受け入れられるか心配でした。 確かに状況は洛陽対連合と変わりはありません。 ただ単に恋姫の将を切り離しただけですが。(いた)
ふかやん様 コメントありがとうございます。 確かにその通り。 『水はよく舟を浮かべ、またよく覆す』 支えてもらっている事を忘れていると、『天罰』が下ります。 …強烈なのが……(いた)
人の上に立つのであれば治めるべき民草や臣下の事を考慮した政をしなければならない。しかして劉岱!愚者の讒言を疑いもせずに従って己が無二の皇帝とほざき、将兵の命を平然と切り捨てる貴様に皇たる資格はないと知れい!!!!(ふかやん)
雪風様 コメントありがとうございます! 袁伯業…実はちょっと悪知恵持たせようと、思案中です。(いた)
敵を騙すにはまず味方から・・か・・。そして袁伯業・・冥符の者となっても良い人すぎる・・。ある意味惜しい人を失ったよ・・。(雪風)
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