九番目の熾天使・外伝 〜改〜
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「「キーラさん!?」」

 

支配人とげんぶがヘリポート広場に駆けつけると、そこではキーラと竜神丸が対峙していた。キーラは右腕から血を流しており、竜神丸の右手に出現している((神刃|カミキリ))には彼女の物と思われる返り血が付着している。

 

「!! あなた達…!?」

 

「おやおや、これまた面倒な時に…」

 

キーラと竜神丸も支配人達の存在に気付き、特に竜神丸は鬱陶しそうな表情を見せる。

 

「竜神丸!! お前、自分の姉に向かって何してやがる!?」

 

「さぁ? この女の処遇を一体どうしようと……私の勝手でしょう!!」

 

「!? く…!!」

 

竜神丸の左手に持っていたナイフ状の刀剣((毘沙門・礫|びしゃもん・つぶて))が飛来し、キーラの右足を貫く。転倒するキーラだったが、右足の痛みに耐えながらもどうにか立ち上がる。

 

「アル…」

 

「私をその名で呼ぶなと、昨日も言った筈ですが?」

 

「ッ!?」

 

毘沙門・礫がキーラの左肩に命中するも、キーラは倒れずにどうにか踏み留まる。

 

「今更、私の所にまで来て一体何を考えているのかは知りませんが……まぁ良いでしょう。こうなればいっその事、ここであなたを消してしまうのも悪くない」

 

「ッ…そんな事させるか!!」

 

「竜神丸、テメェいい加減に…ッ!?」

 

割って入ろうとしたげんぶと支配人はすぐに立ち止まった。何故なら、キーラ自身が彼等を手で制止させたからだ。

 

「ッ…すまないが、余計な事はしないでくれ……これは私と、アイツだけの問題なんだ…!!」

 

「いや、しかし…」

 

「邪魔はさせねぇぜ?」

 

「「!?」」

 

突如、キーラと竜神丸の周囲に巨大な結界が出現。げんぶと支配人を無理やり外に追い出してしまう。

 

「悪いな、二人共。大人しくそこで見ていてくれねぇか」

 

「「ガルム!?」」

 

結界を張ったのはガルムだった。げんぶと支配人の隣に降り立つと同時に、支配人が彼の胸倉を掴む。

 

「おいガルム、どういうつもりだテメェ!? 今すぐ結界を解きやがれ!!」

 

「邪魔はさせないと、二度も言わせないでくれよ? こうなるよう頼んできたのは他でもない、キーラさん自身だ」

 

「!? キーラさんが…!?」

 

「とにかく、俺達は見守るしかねぇのさ……安心しろ、万が一の時はちゃんと解いてやっから」

 

「…チッ!!」

 

ガルムの胸倉を離し、支配人は舌打ちしてから再びキーラと竜神丸の方を振り向く。

 

「はぁ、はぁ…」

 

「何のつもりかは知りませんが……とっととくたばって貰いましょうか!!」

 

「!?」

 

竜神丸の((神刃|カミキリ))が投擲され、そのままキーラに向かって飛来するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((楽園|エデン))、とある部屋…

 

 

 

 

 

「……」

 

ベッドの上に、デルタが無言のまま腰掛けていた。部屋の家具は全てがメチャクチャに壊されてしまっており、彼が相当荒れていた事が分かる。

 

 

 

 

『デルタ、親友のお前だろうと容赦はしない』

 

 

 

 

「…クソッ!!」

 

デルタは苛立ちのあまり、近くの椅子を思い切り蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた椅子は壁に激突し、見事に粉砕される。

 

「何故だ……何故俺を旅団に加えたんだ、クライシス…!!」

 

ベッドに寝転がり、デルタは右手で目元を覆う。

 

(俺は管理局に復讐する為に、この旅団に加わった……アイツもそれに賛同してくれた……なのに、そんな俺の思いすらも利用したってのか…!!)

 

「イラつくよなぁ…クソッタレがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

デルタは募っていた怒りが爆発し、ただ大きく叫ぶ事しか出来ないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…?」

 

 

 

 

 

その時の叫び声を、二百式は遠くでほんの僅かに聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、ヘリポート広場…

 

 

 

 

 

 

 

「キーラさん…!!」

 

いつの間にか、現在起こっている事態のギャラリーも増えてきていた。支配人、げんぶ、ガルム、朱音、Unknown、ロキ、ディアーリーズ、ディアラヴァーズ、ハルトなどのメンバーだ。

 

「おいおい、ドクターの奴どういうつもりなんだ!?」

 

「それよりキーラさん、なんて無茶な事を…!!」

 

「全員ウダウダ言うんじゃないぞ。これは彼女の覚悟なんだ、邪魔しちゃいけない」

 

「…!!」

 

ガルムに諭され、何も出来ない事の悔しさを噛み締めるディアーリーズ達。そんな彼等の前では、既にかなり傷付いているキーラと、両手に何本もの毘沙門・礫を出現させている竜神丸の姿がある。

 

「ッ…」

 

「まだ向かって来ますか……無駄に厄介です、ね!!」

 

「あぐっ!?」

 

また一本の毘沙門・礫が命中する。キーラは危うく倒れそうになるも、それでも竜神丸に向かって歩き続ける。

 

「理解不能ですね。何故そこまでして、私の所に向かって来るんですか?」

 

「…私、は…お前に謝罪したい…」

 

「何?」

 

キーラの告げた言葉に、竜神丸は眉を顰める。

 

「機関にいた時も……お前は、私の事を大事にしようとしてくれていた……だが私は、その思いを蔑ろにしてしまった……怨まれて当然だ…」

 

「…今更、罪悪感を感じたと?」

 

竜神丸は鼻を鳴らす。

 

「だから何だと言うんですか。今更そんな事を言われて、私がそれを許せると思いますか?」

 

「許されようなど、思ってはいない…」

 

キーラは特に傷の酷い右足を引き摺るように、少しずつ竜神丸に歩み寄って行く。

 

「私が謝ったところで、それが過去を変える訳でもない……ましてや、お前の私に対する恨みも、到底消えはしない…」

 

「ならば、どうしたいと言うんですか?」

 

「…消してくれ」

 

「!?」

 

「そこまで憎いのであれば……お前のその手で、私を消せ」

 

「ッ!?」

 

「な、何を言ってるんですかキーラさん!?」

 

ディアーリーズ達が驚いている中で、これには流石の竜神丸も動揺を上手く隠し切れなかった。

 

「あなた、正気ですか? 何でいきなりそんな事を…」

 

「お前をそこまでの化け物に変えてしまったのは、他でもない私だ。お前のその手で消されるというのならば……それでお前の苦しみが消えるのであれば……私は、それでも構わないのかも知れない…」

 

「ッ…!?」

 

キーラが告げる言葉で竜神丸は更に動揺し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あぁそうですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時に、その態度が気に入らなかった。

 

「そこまで言うのならば……お望み通り消して差し上げましょう!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

竜神丸の周囲に、無数の((神刃|カミキリ))が出現し始める。これにはディアーリーズ達も流石に焦り始める。

 

「ちょっと、いくら何でもアレは多過ぎじゃない!!」

 

「逃げて下さい、キーラさん!!」

 

ディアーリーズ達が叫ぶ中、それでもキーラはその場から逃げようとしない。

 

そして…

 

「消え失せろ…((毘沙門・叢|びしゃもん・むら))!!!」

 

「ッ!? が、ぅ……あ…ッ…が…!!」

 

無数の((神刃|カミキリ))が、キーラに襲い掛かった。その鋭い刃はキーラの肉体を斬り裂き、流石の彼女も声にならないような断末魔が上がる。

 

「い…嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「キーラさん!! キーラさぁん!!!」

 

このあまりに惨過ぎる光景にはみゆきも両手で顔を隠し、ディアーリーズ達も流石にこれはマズいと結界に殴りかかる。

 

「おいガルム、今すぐ結界を解きやがれ!! いくら何でもアレはやり過ぎだろうが!!」

 

「…いや、まだ駄目だ」

 

「テメェ、いい加減にしやがれ!! キーラさんを死なせる気かぁ!?」

 

支配人が再びガルムの胸倉に掴みかかるも、ガルムはそれでも結界を解こうとしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ…」

 

全ての((神刃|カミキリ))を投擲し終えた竜神丸は息を整えつつ、キーラがいるであろう煙の方を見据える。

 

(これで…ッ!?)

 

煙が晴れた先には…

 

「―――ゲホ……ハァ、ハァ、ハァ…」

 

全身が血まみれになっているキーラが、煙の中から姿を現した。身体中の斬り傷から血を流して髪も短く斬られており、着ていた服もズタボロ。本来なら即死する程の傷だ。

 

「ッ……何故だ…!! 何故そこまでして、立とうとするんですか…!!」

 

「…どう、し…た…? 私、を……消し…たいん、じゃ…なか…った……の、か…?」

 

「…ッ!!」

 

斬られた右目から血が流れている状態にも関わらず、キーラは左目だけで竜神丸を見据え、そのズタボロの身体をフラフラながらも竜神丸の方へと歩き続ける。

 

「ッ…あぁそうさ……かつては私も、あなたを大事に思っていた。守ろうとも思った……そんな私の手を払ったのが、私にはとても許せなかった……本気だった私の思いを裏切ったアンタが、私にはとても許せなかったんだ!!!」

 

(!? 敬語がなくなった…!!)

 

怒りの爆発した竜神丸はとうとう敬語すらなくなり、今なお歩み寄って来るキーラに怒鳴りつける。

 

「アンタが悪いんだぞ!! 私が一体何の為に、あの過酷の実験中で耐え続けてきたか!! 私がどれだけ…ッ!!」

 

怒鳴り続けていた時、竜神丸の言葉が一瞬だけ途切れる。

 

「私が、どれだけ…ッ……アンタを助けたいと思ったのか…!!」

 

「ア、ル…」

 

竜神丸の前まで来た所で、体力が尽きる寸前だったキーラはとうとうその場に膝を突く。

 

「ゴホ…ハァ、ハァ………ならば…私、は……尚更…許される、筈が…無い、だろう……な…」

 

「ッ…当然だろう……許せるものか…この私が、アンタ如きを…!!」

 

竜神丸は微かに震えている右手に((神刃|カミキリ))を出現させ、膝を突いたキーラの頭部にその刃先を向ける。

 

「そう、だ…それで、良い……それで…お前の、苦しみが…晴れるの、なら…」

 

「私、は…ッ!!」

 

竜神丸は((神刃|カミキリ))を振り上げ、そのままキーラの頭部に振り下ろそうとする。

 

「「「「「キーラさぁんっ!!?」」」」」

 

(…!!)

 

ディアーリーズ達が叫ぶ中でキーラはゆっくり目を閉じ、これから来るであろう痛みを待つ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――?)

 

しかし、何時まで経っても痛みは来なかった。キーラがゆっくり左目を開けると…

 

「ッ……ぅ、く…!!」

 

キーラの眼前で、振り下ろされる筈だった((神刃|カミキリ))が停止していた。((神刃|カミキリ))を掴んでいる竜神丸の手も、震えているままそれ以上動かない。

 

「「「「「…え?」」」」」

 

「……」

 

目の前の光景を見てディアーリーズ達が唖然としているのに対し、ガルムはやっぱりと言う感じの雰囲気で見据えていた。

 

そして誰よりも一番驚いていたのは、殺されると思っていたキーラ自身である。

 

「な、ぜ……殺さ、な…い…?」

 

「…何故だ…」

 

竜神丸が口を開く。

 

「何故、今になって私の前に現れたんだ……どうしてこんな私に対して、そんな事を言うんだ…!!」

 

「…ア、ル?」

 

竜神丸の声は震えていた。震える右手に持たれていた((神刃|カミキリ))も霧散して消滅、彼はそのままキーラの目の前でゆっくりと膝を突く。

 

「私にそんな事を言ってくれるな、私を迷わせるな……これならいっその事…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の事など、嫌ってくれた方がまだ割り切れた…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アル…」

 

初めて聞けた弟の本音に、キーラは小さく笑みを浮かべる。

 

「嫌い、に…なる訳が無い…」

 

「…!?」

 

キーラの傷付いた右手が、竜神丸の左頬に触れる。

 

「お前は、私…の…弟だ……私は、ずっと……お前を、愛してるから…」

 

「ッ…!!」

 

唇を噛み締めたまま俯く竜神丸を、キーラは両手で引き寄せてから優しく抱き締める。血で汚れる事も忘れ、竜神丸は彼女の胸元に頭を寄せたまま彼女の温もりに包まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キーラさん……竜神丸さん…」

 

「…ふぅ」

 

今までに竜神丸が折れる場面を見た事が無かったからか、ディアーリーズ達は目の前の光景を見て驚愕せざるを得ない状態だった。一方でガルムは緊張の糸が解けた為か、その場に座り込んでから大きく息を吐き捨てる。

 

「驚いたな。竜神丸の事だから、あのまま本当に殺しちまうのかと思っていたが…」

 

「いや、それは無いな」

 

支配人の言葉を、ガルムがハッキリと否定する。

 

「? どういう事だ?」

 

 

 

 

 

 

「アイツは、キーラさんを殺す気なんて無かったんだよ。始めから」

 

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

ガルムの言葉に、一同は更に驚愕の表情を見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ…!!」

 

竜神丸を抱き寄せていたキーラだったが、突然意識が薄れ始めた。

 

「!? アンタ…」

 

「あぁ……流石、に…そろ、そろ……限界、か…」

 

流石に体力の限界が来たからか、キーラは横に倒れそうになったところを竜神丸に受け止められ、そのまま意識を失ってしまった。

 

「あ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、お前が一騒ぎ起こすとは珍しいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

キーラを抱きかかえた竜神丸の前に、突然クライシスが姿を現した。

 

「な、何故あなたが…!!」

 

「ガルムから話を聞かせて貰った。お前も随分と、意地を張り続けたものだ」

 

「…余計な事を」

 

ガルムがいるであろう方向を睨みつける竜神丸を他所に、クライシスは小さく溜め息をついてからキーラに杖を向ける。

 

「さて、そんなお前に罰を与えるとしよう……彼女の傷は、君が責任持って治療したまえ」

 

「!?」

 

「分かったな?」

 

「…はい」

 

一瞬驚く竜神丸だったが、もちろん団長のクライシスには逆らえない。小さい声で了承してから、竜神丸はキーラを抱きかかえたまま転移するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ!? 何で団長がここに…!?」

 

まさかのクライシスが現れた事で、これには支配人やディアーリーズ達だけでなく、竜神丸の心情に薄々勘付いていたロキやげんぶですらも驚きを隠せなかった。

 

「あぁ、俺が話を通したんだよ」

 

始めから全てを知っていたガルムが告げる。

 

「このまま仲違いが続くよりかは、ちゃっちゃと仲直りさせた方が良いだろうと思ってさ。俺だけで決めるのは流石にマズいから、団長にも協力を頼んでおいたのさ」

 

「だが、それでよく協力して貰えたな…」

 

「協力を頼む時に『このまま喧嘩させてたら、((楽園|エデン))の被害がデカくなるかも知れない』って言ったらすぐに協力してくれたよ」

 

「「「「「あぁ確かに」」」」」

 

実際、ヘリポート広場は((神刃|カミキリ))が原因でだいぶ破壊の限りを尽くされてしまっていた。これには支配人達も割とすぐに納得する。

 

「…しかし、何で竜神丸がキーラさんを殺さないって分かったんだ?」

 

「あぁそれ? そもそもアイツがキーラさんをあそこまで拒絶する理由について、色々考えてみたんだけどさ。その理由は、ただキーラさんを恨んでいたからじゃないかも知れないって思ってさ」

 

「? じゃあ、何で拒絶してたんだ?」

 

「多分……“過去のトラウマ”が原因だと思う」

 

「「「「「過去のトラウマ?」」」」」

 

「そう、トラウマ」

 

ガルムはそう言いながら、((神刃|カミキリ))で抉られた地面を歩く。

 

「アイツは過去に、自分が助けようとした姉に拒絶されてしまった。その時の拒絶がかなり大きなショックになって、それがアイツにとってのトラウマに繋がってしまったんだろうよ。だからこそ、そのトラウマを忘れたいが為に、キーラさんを避けていたんだ」

 

「え、でも、昨日は容赦なく攻撃しようとしてましたけど…」

 

「それは多分、俺達がいたからだ」

 

「俺達がいたから?」

 

「あぁ。近くに俺達がいたからこそ、アイツは俺達が勝手に止めるだろうと予測した上で攻撃を仕掛けたんだろう」

 

「…そういう事だったのか」

 

ガルムの説明を受けて、一同は何となくそれっぽい説明に納得する。

 

「けれど、それだけで彼がトラウマ持ってるなんて気付けるのかしら?」

 

「うん。そこがイマイチ自信が無かったんですよね……昨日、アイツから話を聞いてた時に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私には、到底理解不能ですよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その時、アイツの眼には憎しみという物が感じられなかった。それでもしやと思って、キーラさんに提案してみる事にしたんだ」

 

「あのなぁガルム、そういうのは俺達にもちゃんと話は通しておいてくれよ。見ているこっちはすっげぇヒヤヒヤさせられたぞ」

 

「うん、それじゃあ駄目なんだよ」

 

「え?」

 

「アイツも勘はかなり良い方だからさ、皆に話してたら気付かれてたかも知れない。それにアイツとキーラさんを仲直りさせるには、キーラさん一人で挑ませなきゃ駄目なんだ。だからこそ団長にだけはその事を説明して、皆には黙っておいたのさ」

 

「ッ…そうか」

 

「…分かるっちゃ分かるが、結構むず痒いな」

 

ガルムの言う通り、今回の件についてはキーラ一人で思いを伝える必要があった。もしUnknown達が対策を打とうとしていたら、竜神丸はそれを察知して余計に話をしようとしなくなっていたかも知れないのだ。

 

「まぁとにかく、アイツにはキーラさんに対する恨みはそんなに無かったのさ。自分が血まみれになろうとも、化け物のようになろうとも、守ろうとした姉だ。憎もうにも憎み切れなかったんだろう……その証拠に」

 

ガルムは地面に落ちている物に気付き、それを拾い上げる。

 

「もしアイツが本気でキーラさんを恨んでたんなら……こんな器用な事もしちゃいなかっただろうよ」

 

「「「「「…あ!」」」」」

 

支配人達は目を見開いた。何故ならガルムのその手には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紐が切れているだけで、それ以外は無傷のペンダントがあったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後、時間帯は夕方…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ん」

 

医務室にて、キーラはうっすらと目を開けた。頭や右目には包帯が巻かれており、((神刃|カミキリ))で斬られた筈の金髪は元通りの長さに戻っている。

 

「ここ、は…」

 

「目覚めましたか」

 

「…アル?」

 

キーラが寝ているベッドには、竜神丸が背を向けたまま腰掛けていた。彼の手には操作中のタブレットが掴まれており、彼女が目覚めるまで作業中だった事が分かる。

 

「アル、私は…」

 

「傷が完治するまでに数日はかかります。それまではここで安静にしていて下さい……姉さん」

 

「!」

 

竜神丸は自身の口から、初めてキーラの事を“姉さん”と呼んだ。それを聞いたキーラは数秒間だけ目を見開いてから、笑みを浮かべつつ痛む身体をゆっくりと起こす。

 

「そうか……私はまだ……お前の“姉”として…生きて良いのだな…」

 

「今更、ウイルスの研究をやめるつもりはありませんよ。今の私は既に、堕ちるところまで堕ちているのだから」

 

「…構いはしない」

 

「?」

 

「私も既に、許されない罪を犯している……もう、お前を一人にはさせない」

 

「!?」

 

竜神丸の後ろから、キーラが優しく抱き締めてきた。自身の首元に彼女の両手が回されてきた事に思わず驚く竜神丸だったが、拒絶はせずに彼女の抱擁を受け入れ、彼女の手を優しく握る。

 

「今度こそ、ずっと一緒にいよう……これから先は、共に堕ちて行こう…」

 

「…お好きにどうぞ」

 

抱き締める時、キーラの笑顔からは憑き物が完全に消え去っていた。竜神丸も空いている左手でタブレットの電源を切り、彼女の抱擁を受け入れた状態で長い時間を過ごす。

 

この時、ベッドの枕下に置いてあったペンダントは、窓から射している夕日によって綺麗な輝きを見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉弟の手は、今度こそ繋がってみせるのだった。

 

説明
姉弟の温もり・繋がる手
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コメント
次話、更新しました(竜神丸)
トラはなぁ…特筆すべき能力がメダル摘出だけだから…。でもシャウタに比べれば扱いはましだと思うんです…トラは強化メダル出たし(ディアーリーズ)
よかったな、トラ(kaito)
とらwww(デルタ)
途中経過:撤回、やっぱりトラメダルにも出番はあった(ぇ(竜神丸)
やってしまったか(kaito)
あ、おはようございます(デルタ)
ついにやらかしたか、俺ぇ・・・・・・(デルタ)
途中経過:デルタさん、とうとうやらかしました(竜神丸)
ウヴァさん乙(aws )
ウヴァ乙(kaito)
途中経過:そして散々な目に遭うウヴァさん←(竜神丸)
トラメダル乙(kaito)
トラァァァ!!!(ディアーリーズ)
途中経過:初っ端からハブられるトラメダル←(竜神丸)
旅「・・・・・・」(タブレットを操作している、なにかの設計図(デルタ)
途中経過:旅竜神丸&キーラ、まさかの実年齢(竜神丸)
ふむ… それならわかりやすく(レギュ1.15)アクアビットマンにWコジマパンチにWコジマキャノンとAA強化装置でいくか。(Unknown)
Unknown:正直に言いますと、あまり描写は無いと思います(※ACの機体についてはあまり詳しくない)(竜神丸)
THE/決戦兵器って感じだよね。マスブレードよりロマンある。 左腕犠牲にしてその動力であのデカブツチェンソー動かすんだもんww(二百式)
ちなみにコジマカーニバルダヨッ!!の機体構成ってどうなってます?(Unknown)
武器はグラインドブレード、やっぱアレが一番好きだから、あと、これで俺好みの「むせる」機体作って乗せたいから(旅デルタの本性現したから)(デルタ)
OW使用します、但し、シレラ・ヴィルヴェルヴィントのようにコジマパワーで繰り出すのではなく、史実と同じ熱エネルギーで(デルタ)
アン娘さんの『コジマカーニバルダヨッ!!』について:二百式さん&ロキさんの二人が団長さんと対面している最中、アン娘さんは某次元世界にて機体に乗って『コジマカーニバルダヨッ!!』を実行していた事を、デルタさんが朱音さんから聞かされる……という感じでいこうかと(竜神丸)
此処は没OWの大和なんてどうだろうか?(Unknown)
グラインドブレード熱いよねーーww 左手吹っ飛ぶけど(二百式)
今までのACのサイズが10m以上だったためACfAまでのノーマルAC及びハイエンドノーマルと5〜6mサイズのV系ノーマルの区別のためでもわかりやすくするためにVACといいます。(Unknown)
アーマードコアV及びVDのACのことをV(ファイブ)ACといいます。(Unknown)
ACVの場合はOWは使うんですか? (二百式)
パーフェクトだ、竜神丸さん!最高じゃないか!!(Unknown)
…汚染の無いVAC?(←正直よく分かってない)(竜神丸)
……わ……の………き…………………我が世の春が来たぁァァァアアアアアアアアアアア!!!!(Unknown)
今回、シレラ・ヴィルヴェルヴィントが大破したため次のアセンを考えねばならない、其処で質問、次のアセンは身体のことを考えずネクストでいくか汚染の心配のないVACで行くか、どっちがいい?(デルタ)
おかえりなさい(kaito)
デルタさん、お帰りなさいませ(竜神丸)
というかコジマについてはアレです。近い内に二百式さんの旅団加入経緯を書こうと思ってるんですが、その時にアン娘さんは次元世界で『コジマカーニバルダヨッ!!』をやっていたという設定にしようと思っていたのですが(竜神丸)
ただいま戻りました(デルタ)
Unknown:はい?(竜神丸)
まずは管理局に捕縛される→エネミーコントローラー!→旅団相手に潰しあうもよし、わざと被害を出させてから捕縛することにより管理局の名声が上がるもよしで解放→コジマカーニバルダヨッ!!→さてどうすればいい?(Unknown)
竜神丸さん!私が大手を振りかざしてコジマをつかえる方法を思いついたぞ!!(Unknown)
竜神丸:キュリオス了解。アイツか。?「ハーッハハハハハ!ようやくオレ様の出番だ!!」うっさい!眠いんだよ。寝かせろ! というわけでノシ(支配人)
・・・・次の任務はまだか・・・・いい加減暴れたくて仕方がない(二百式)
旅)う〜ん…もしかしてキーラさん、今までの反動で…若干、ブラコン気味?あ、スタッフさんたち、今のところは僕が立て替えておきますよ(ディアーリーズ)
医務室前にて…  スタッフ1(おい、早く入れって!修理費を支払って貰わなきゃなんねぇんだから!) スタッフ2(そりゃ無理だよ!?だってあの光景見てみろ、入れる雰囲気じゃねぇだろ…!) スタッフ3(畜生、あんな美人姉ちゃんに抱き枕にされるとか羨まし過ぎる…!!)   以上、なぜか医務室に入れないスタッフ達であった(竜神丸)
旅)あーこりゃあ基礎まで逝ってるなぁ・・・しゃあない!基礎から直してくぞ!修理費?張本人の竜神丸にたかっとけ!(okaka)
キーラ「スゥ、スゥ…」(←熟睡中)  旅)…何故でしょうか、イマイチ寝付けませんね(←未だ、キーラの抱き枕になってる真っ最中)(竜神丸)
支配人:恐らく、キュリオス(竜神丸)
旅)(げんぶの手を蹴り飛ばし、本人も蹴り飛ばす(キリヤ)
旅)うわぁ血だらけでやんの・・・(補修前段階の洗浄中)(okaka)
さて、残りの誰だ?エクシアか?キュリオスか?ティエレンか?はたまた面倒くさがりなウタウタイか・・・(支配人)
旅)・・・終わったか?・・・終わったっぽいな・・・よし、ヘリポート修復作業にかかれ!(基地設備保全隊に指示)(okaka)
旅)おおう、粗ぶってるなぁ、げんぶ(支配人)
「今回の件についてはキーラさん一人で思いを伝える必要があった」  のさんは要らない。(支配人)
【速報】次のコンプリートセレクションはカブトゼクター。繰り返す、次のコンセレはカブトゼクター(okaka)
ヒャッハー!コンセレロストドライバーとファングメモリ、ついでにオマケのT2ジョーカーが届いたぁぁぁぁぁぁぁ!(okaka)
旅)(まぁ良いや、面倒臭いし)…姉さん、顔が近いのですが?  キーラ「ん〜…気の所為じゃないか〜…?」(←意図的に自身の顔を近付けてる)(竜神丸)
旅)おお、げんぶよ。死んでしまうとはなさけない(kaito)
旅)…上の階がやかましいですね『ソラさん、少し黙らせられますか?』(←テレパシーでソラに連絡。話を受けたソラがすぐさまげんぶを止めるべく拳骨を喰らわせる)(竜神丸)
イーリス「羨ましい…」(←リバインズ姉弟の様子を見て羨ましがるも、その気持ちを押し殺して仕事に集中する)(竜神丸)
デルタ:行ってらっしゃいませ(竜神丸)
旅)?全く、げんぶさんもいちいち口うるさ…ッ!?(←キーラによって無理やりベッドに寝かされる)…姉さん、これはどういう事ですか?  キーラ「一日くらい、一緒に寝たって構わないだろう?もう少しだけ、お前の温もりを感じていたいんだ…」  旅)…もう好きにして下さい(←とうとう諦めて、一日キーラの抱き枕状態になる)(竜神丸)
あ、これから自分送別会に参加しなければいけないので・・・・・・多分9時くらいになると思うけど・・・・・・(デルタ)
あぁ、仲のいい姉弟を見て嫉妬しているイーリスが目に浮かぶようだ(デルタ)
途中経過:支配人さんの仲間キャラ、三人目登場(竜神丸)
旅「・・・・・・時空管理局に告ぐ、これより貴様らを全滅させる・・・・・・一切の慈悲もなく、一切の希望も見出させはしない・・・・・・貴様らの判決は・・・・・・死だけだ」(即席で組んだアリーヤ(コジマ未搭載)で管理局の大部隊を殲滅開始、その姿はまさしく疾風の殲滅者、数分後、其処には管理局員だったものの死体しか存在していなかった(デルタ)
旅)『…余計なお世話です』(←キーラに抱きつかれてる中、げんぶにテレパシー)(竜神丸)
悪いなぁ!!支配人よぉ!!ww    …さっき「…ッチ」って書いてなかった…?(ガルム)
竜神丸:燃え尽きたぜ、真っ白にな… ってなってたまるかっての!? (支配人)
キーラ「お前は忘れていようとも、私はしっかり覚えているぞ……たまには、一緒に寝てみるか?」  旅)…勘弁して下さい。私はもう子供じゃない  キーラ「フフ…♪」  (眼鏡を外された竜神丸が視線を逸らす中、キーラは楽しそうに抱き締め続ける)(竜神丸)
キーラ「久しぶりだ……昔はこうして抱きついたまま、一緒に寝た事もあったな…」  旅)それは孤児院にいた時の話でしょう?そんな事まで、私はいちいち覚えていませんよ…ッ!?(←突然、後ろからキーラに眼鏡を外される)(竜神丸)
旅)兄さんも不器用ながらに支えてくんねぇかなぁ……支えるのはむりか(キリヤ)
旅)いいもんだな。不器用ながらに繋がる家族って……(キリヤ)
旅)自分の姉もあんな感じだったらどんなに良かったことか・・・グスッ(kaito)
ディア:フヒヒwwサーセンwww(竜神丸)
旅)これが姉弟の絆と言うものですかね…。僕には分からない…でも、分からないからこそあの絆は僕にとって輝いてみえる…羨ましいな。家族がいるって(ディアーリーズ)
取れなかったー!竜神丸さん本人に取られたー!!(ディアーリーズ)
旅)最悪も考えられた博打だったが…どうやら俺の勝ちだったみたいだな。(ガルム)
2コメ取れましたかね!(ディアーリーズ)
今回の一番コメ:FALKENさん(立て、立つんだ支配人!!)(竜神丸)
1コメ!(ズサー)(ガルム)
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