英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク
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〜リベール王国・ボース市内〜

 

「………!?(今の黒髪の人は一体……?)」

ボース市内で腰までなびかせる黒髪の若い女性のメイドは突如襲って来た頭痛と共に頭の中には黒髪の少年―――リオンの顔が浮かび上がり、立ち止まった。

「……マリアン?どうしたのかしら?」

その時女性ながらボース市長を務めるメイベルが心配そうな表情でメイドを見つめた。

 

「いえ、今何かを思い出しかけた気がしたんですけど……気のせいでした。」

「そう………失った貴女の過去の記憶が少しでも戻ったらよかったのにね。1年前、屋敷の前に倒れていた貴女は自分の名前―――”マリアン・フュステル”しか覚えていなかったし………」

「はい……私を拾って頂き、そのまま私を雇って頂いた事には今でも感謝しております。それよりメイベル様、早く屋敷に戻らないとリラさんにまた怒られますよ?」

「ふふっ、そうね。」

そしてメイド―――マリアンはメイベル市長と共にどこかに向かった。

 

更に数日後、ヨシュア達が去った廃村にイオンとアリエッタがシスター服を身に纏い、ヨシュアと同じ漆黒の髪を腰までなびかせ、琥珀の瞳の女性と共に訪れていた。

 

〜数日後・エレボニア帝国南部・廃村〜

 

「え……………」

花束を持つ女性は墓石の前に置かれた花束を見つけて呆け

「花束、ですね。」

「花は………”ライムの花”ですか。しかし一体誰がこの”祖国から抹消された”村の存在を知り、花束を………」

イオンは花束を置いた主の正体を考え込んでいた。

 

「もしかしてレーヴェかヨシュアが………?ハーメルに住んでいた人達の中で”ライムの花”が好きなのは私だけですし………」

「それは……………」

女性の言葉を聞いたイオンは真剣な表情で女性を見つめ

「確かに可能性は高い、です。特にヨシュア・ブライトは、エステル・ブライト達の目の前から、姿を消した、ですから。」

「全てを思い出した彼が貴女――――カリンの墓参りをしたという訳……ですか。」

アリエッタの推測を聞き、真剣な表情で考え込んでいた。

 

「ヨシュア…………………」

一方女性――――カリンは悲痛そうな表情になり

「―――すみません。いつか貴女の事を思い出したその時に会わせようと思っていたのですが……裏目に出てしまいました。」

イオンはカリンを見つめて頭を下げた。

 

「そんな!イオン様が謝る事はありません。あの子が記憶喪失でも幸せに過ごしているのなら、辛い記憶を蘇らせる”原因”になるかもしれない私がヨシュアの記憶が蘇るまで会わないと希望しましたし……何よりイオン様が起こした”奇蹟”―――”聖痕(スティグマ)”の力でこうしてこの世に蘇らせてもらったのですから、今でもとても感謝しています。」

「カリンの言う通り、です。”ハーメル”の事を知り、イオン様とアリエッタが、墓参りに来た時に、イオン様、カリンを蘇らせた、ですから。」

「フフ、あの時貴女を蘇らせる事ができたのはこの世に強い未練を持ちながらも清浄な魂を保ち、この場所に留まり続けた貴女自身だからできた事ですよ。あのような”奇蹟”は今後2度と起こせないでしょうね。」

恐縮するカリンの様子とアリエッタの言葉を聞いたイオンは微笑みながらカリンを見つめた。

 

「………姿を消したヨシュアや”結社”にいるレーヴェはこれからどこで何をするのでしょう………?」

「―――ケビンが手に入れた情報によると記憶が戻った彼は自分を操っていた人物――――”白面”の”計画”を阻止する為に姿を消したとの事ですから、恐らくリベールのどこかで活動しているのでしょう。」

「更に”剣帝”が情報部にいた所を考えると、”剣帝”も、再びリベールに姿を現す可能性は高い、です。」

「じゃあヨシュアとレーヴェは……!」

イオンとアリエッタの推測を聞いたカリンは真剣な表情で二人を見つめた。

 

「ええ、二人とも必ずリベールに現れるでしょう。―――行きましょう、”身喰らう蛇(ウロボロス)”の者達が集いし混迷の大地―――リベールへ。」

そしてイオン達もそれぞれの目的の為にリベールへと向かった。

 

〜王都グランセル・封印区画・最下層〜

 

かつてのクーデター事件の最終決戦となった封印区画。そこにクーデター事件解決の功労者の一人であり、クーデター事件解決を機に中尉から大尉に昇格したユリア大尉が先頭に立って、ケビンを案内していた。

 

「ふ〜、それにしてもほんまゴツイとこですねぇ。いい加減、足が疲れましたわ。」

「ふふ、安心するといい。ここが『封印区画』の最下層だ。」

「わお、ホンマですか!?は〜、あと半分とか言われたらどないしようかと思いましたよ。」

ユリア大尉の話を聞いたケビンは最下層に来るまでの道のりの長さを思い出し、それも終わる事に喜んだ。

 

「フッ、ご謙遜を。神父殿が、あのアリエッタ殿のように聖職者にしてはかなり鍛えてあるのはお見通しだ。そうでないと君達の役目はなかなか務まらないだろうからね。」

「あいた、かなわんなぁ。まーええですわ。と言ってもアリエッタさんみたいな大先輩と比べたら新米のオレなんて、まだまだですわ。リベール王家とウチのところは昔から縁が深いみたいですし。そや、大尉さん。例の市長さんのアレですけど……」

「ああ、『封じの宝杖』だね。………盟約に従い、指定された方法で厳重に保管させてもらっている。いつでも手渡せると思うよ。」

「おおきに、助かりますわ。。………それより、例のブツ、見せてもらえますか?」

「ああ―――こちらだ。」

そしてケビンとユリア大尉はクーデター事件の最優決戦場であった最深部に向かった。

 

〜封印区画・最深部〜

 

「こいつはまた……」

ケビンは最深部にあるバラバラになったトロイメライを見て呆けた。

 

「七耀教会もさぞかしこれらの扱いには困るだろう。超弩級(ちょうどきゅう)と言ってもいい古代遺物(アーティファクト)だろうからね。」

「………………………………。……ちょいと調べさせてもろてもええですか?」

「もちろんだ。陛下の許可も下りている。どうか我々に知恵を貸していただきたい。」

今まで目にした事もない古代遺物(アーティファクト)の登場に驚いたケビンはユリア大尉の許可をもらった後すぐに調べ始めた。

 

「こいつが報告書にあった『環の守護者』っちゅうヤツか。カルバードで出土した巨像に雰囲気は似とるが……。うー、動いているところをこの目で確認したかったわ〜。後でアリエッタさんに連絡してどんな風に動いていたのか確認しないとな………それと……」

トロイメライを調べていたケビンはゴスペルを設置した装置に目を付けて近付いた。

 

「古代ゼムリア文明末期……1200年前の代物やな……。装置としての機能は不明ながら遺跡全体の中枢であるらしい……」

「アーティファクトの解析は現代の技術では不可能らしいな。同じ導力として稼働しながらもオーブメントとは異なる機械体系……。そうラッセル博士が仰っていたよ。」

「『早すぎた女神の贈り物』―――そう教会では定義しとりますわ。それであっちが……」

ユリア大尉の言葉に頷いたケビンは支柱が収納されてある床に近付いた。

 

「『ゴスペル』っちゅう漆黒のオーブメントが使われた直後……ここにあった巨大な柱が床の中に格納されたそうですな?」

「ああ、ここを含めた四隅にある柱が格納されたそうだ。しかし、2ヶ月近く経つのに、その意味はいまだ掴めていない。」

「封じられた『輝く環』……。そして使われた漆黒の『福音』……。装置が喋った『第二結界』と『デバイスタワー』の起動……。なるほどなー……。微妙にカラクリが見えてきたわ。」

「カラクリが見えた……。そ、それは一体どういう……!?」

今までわからなかった真実がわかったことに驚いたユリア大尉は僅か数分で理解したケビンを見つめて尋ねた。

 

 

「いや〜、何ちゅうか直感みたいなモンですけど。恐らくこの場所は『門』やないかと思います。」

「『門』……?」

「ええ、そうです。女神の至宝に至るための『道』を塞いでいた『門』……。そして、それをこじ開けたのが『福音』と呼ばれた漆黒の鍵……。そう考えれば、ここに肝心の『輝く環』が無いのも肯けますわ。」

「だ、だが、『道』と言ってもここはすでに遺跡の最下層だ。博士の調査でも、他のエリアが存在しない事は判明しているが……」

ケビンの説明にユリア大尉は驚き、焦りながら尋ねた。

 

「多分、目に見える形での『道』とはちゃいますやろ。地下に流れる七耀脈……。あるいはもっと別の経路……。恐らく、それを越えたどこかに『環』の手がかりがあるはずですわ。」

そしてケビンは真剣な表情でユリア大尉の疑問に答えた…………………

 

 

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外伝〜動き始めた運命〜後篇
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