外史を駆ける鬼・IS編 第001話(改正版)
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外史を駆ける鬼・IS編 第001話(改正版) 「準備期間」

 

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鳥の囀りが聞こえる朝。

といっても、ここはとある孤島なので雀などの生物がいるわけでもなく、何やら奇怪な生物の鳴き声が聞こえるだけ。

そんな孤島の地下で、じゅ〜じゅ〜と景気良く、フライパンで何かを焼く音が聞こえる。

焼いているものはどうやらベーコンエッグのようだ。

レンジからチンという音が鳴ると、中には焼きたてのパンが出来ており、二枚の皿にそれぞれベーコンエッグを盛り付け、さらにそれぞれの皿に焼きたてパンを乗せる。

そしてベーコンエッグが冷めないうちに、もう2枚のフライパンで焼かれていた目玉焼きをパンの上に乗せる。

片方は半熟。

これは束の好みであり、彼女は半熟の、割いたら黄身が出るようなやつしか食べないそうだ。

ちなみに重昌の好みは無いが、強いて挙げるならしっかり焼いているやつらしい。

朝の料理自宅を終えた本人は、着けていたサロンエプロンを外し、まだ眠っているであろうこの研究所の主を叩き起こしに行く。

「起きろ束。朝だぞ」

未だ熟睡、夢の中の研究所の主は、重昌の返事を遮るように布団を頭にかぶり直す。

地下であるので窓があるわけでもなく、その暗闇に包まれた部屋に文明の利器である電気の光を部屋全体に灯すと、彼は一つため息を吐いた。

なぜなら昨日埃一つないほどに片付けた束の部屋が、片付けてから半日、どうやればこれほどに散らかるのかと思うぐらい、足の踏み場がないほど散らかっていた。

何故これほど散らかるのかと言えば、いくら綺麗に片付けようと、結局束が寝る前の暇つぶしに新しい発明に取り掛かり、翌日になれば部屋の床には使った部品の欠片が散乱し、そして最終的には作った発明品を跡形もなく壊すのだ。

この習慣に慣れた彼は、足元の機会の部品を避けて彼女が寝ているソファの前に立ち、布団越しから束を揺すり起こす。

本来の寝るべきベッドの場所は部品に埋もれて現在確認出来ない様になっており、しかし何故かいつもソファだけが埋もれないのかが、重昌は謎に思っていた。

「起きろ束。朝だ」

「ふにゅ〜。あともう少しぃ〜」

彼の呼びかけは虚しく流れ、束は駄々をこね布団より出ようとしない。

「またあんな遅くまで起きているからだ。いいから起きろ」

そう言い重昌は束の包まっていた布団を引っぺがす。

引っぺがされた彼女の姿は、上半身は裸ワイシャツで下半身は下着だけという、なんともラフな格好だ。

実はこれでも寝る時の姿は進歩した方なのである。

重昌が束の所に身を寄せ始めた頃は、彼女の寝る時の姿は生まれたままの状態、つまり裸であった。

束は容姿も良く、胸も豊満で体のラインも出るところは出て、引く所は引いている。

本人曰く、寝るときに邪魔だそうだが、普通の男ならばこのまま襲ってしまいかねない状況。

……っが、相手は重昌。

今まで実子、養子、多くの子供育ててきた経験に隙は無く、彼の半年の説得の末、なんとか服を着せることに成功した。

そんな余談を挟み、重昌は辺りに脱ぎ散らかされた束のいつも来ている不思議な国のアリスが着ているドレスのような服と下着を回収し、洗濯し終わったしわの無い新しい彼女の服と下着を投げつける。

「直ぐに着替えて来い」と言い、目を擦っている束を後にし、自分は回収した彼女の服と下着を洗濯機の中に放り込む。

 

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「う〜ん、おいしいぃぃ。やっぱり重ッチの料理は「いっくん以上だよぉぉ」ぶぅぅ私のセリフ取らないでよぉ」

「毎日同じセリフを聞かされればな」

そう言いながら重昌は束の愚痴を肴にコーヒーを啜る。

実は研究室にあるキッチンも、最初は機械の瓦礫に埋もれており、食料も巨大な冷蔵庫に冷凍保存されていた。

しかし束は見るからに料理が出来る訳でもなく、それにめんどくさがり。

いつも食事はウィー○ーインゼリーの様な、明らかに怪しい液体。

それでこの体型と美貌を保っているのだから、まさにミステリー。

た〇しもびっくりである。

「……次はもう作り直さないからな」

「そう言いながらも、毎日作り直してくれる重ッチなのでした」

重昌はその問いにため息を零してしまう。

確かに彼はそう言いながらも、束に甘いところがある。

居候させてもらい、この世界での知識を提供してもらい、何かと恩義は感じているのだが、それ以上に彼の父性本能が、「この様な出来損ないの娘を放っては置けない」と彼を駆り立てるのだ。

彼女が言う「作り直し」とは、実はあの後、着替えているところを見るわけにもいかないので、用意した朝飯と共に重昌はパソコンを叩きながら束が席に来るのを待っていた。

しかし一時間たっても束は来ず、半熟の目玉焼きもすっかり固まってしまい、痺れを切らした彼は束の部屋に乗り込むと、案の定束はぐっすりと、渡された服を抱きしめ夢の中。

キレた重昌は流れ作業で彼女のワイシャツと下着を脱がし、新しい下着と服を着せる。

普通、女の…しかも美女の裸を見て、欲情しないのはノンケ以外の奴ぐらいだが、キレた彼にそんな余裕など無く、着替えさせた束を引きずり、朝食を用意している机へ引っ張って行く。

だが、そこでまた重昌は彼女に手を焼かされる。

束は朝食が冷めている事に駄々をこねるのだ。

一時間もたてば当然であろうが、「食え」と言う重昌に対し更に駄々をこね、結局彼はまた新しく朝食を作り直すハメになり、冷めた朝食を処理するため、彼の朝食はいつも二人分なのだ。

朝食を終えると、束はいつも通り暇つぶしの研究をする。

そして昼に入る前に重昌は彼女の部屋を含め、全体的に研究所を掃除し、洗濯などのその日の全ての家事を終わらせる。

後は食事の用意ぐらいのものだ。

 

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昼へ突入し、二人は昼食を終えると、束は重昌を連れて更に研究所の内部に行き、新しい研究にとりかかった。

「それじゃあ重ッチぃ〜、昨日の続きをするよぉ。風の力を使って直ぐに、氷の力に切り替えてね」

彼は「わかった」と言うと、鬼の篭手を出し気を集中させる。

今、束と重昌は重昌専用のISの開発に取り掛かっていた。

本来ISは女しか起動できず、男である重昌には起動できるはずもない。しかし彼は普通の人間では無い。

身に付けた鬼の力の圧倒的な霊力によって、女性のみと言うプロテクトを解除する。

その重昌仕様に束が作ったISなので、適正は最高のSランク。

しかも彼以外使えないというオマケ付きだ。

適正というものは、ISにも各個人ごとに相性があり、IS適性が高ければ高いほど、ISの能力を引き出しやすいのだ。

しかしこれはあくまで目安に過ぎず、その適性が高ければ強いというわけでもない。

彼の機体の色は重昌の鬼の能力に応じて変わるようになっている。

例えば風の能力ならば緑、氷なら水色、炎なら紅色といった感じだ。

普段の色は灰色で、装備はIS専用に作った、重昌お手製の鉄扇と背中には鉄傘、腰には現代兵器の概念を織り交ぜたリボルバーマグナムといった感じだ。

それと両腕の甲には、鬼の力を使っても怪しまれないように、篭手を隠すように少し大きめの篭手が装着させられている。

特に右手の甲は力の強化により絶対に壊れる心配はないであろう。

説明はこの辺にして、重昌達の様子を見てみよう。

現在、彼のISは大部分が出来上がっており、後は重昌の力にISが耐えられるかの実験に差し掛かっていた。

フェイズ1ではISの展開。

フェイズ2では力の開放。

フェイズ3では力の切り替え。

さっきのように風から氷に限らず、あらゆる力からの対応だ。

いつもここまでは順調なのだが、問題は次のフェイズ4である。

このフェイズの問題は、重昌が一気に力を解放した時に起こる。

彼から発する鬼の力をISが制御しきれず、結果ISに内蔵されているスーパーコンピュータは警告音を鳴らし、自動シャットダウンにより一気に力を失う。

勿論これは研究段階であるので、実戦においてISが自動停止するのはまずありえないのだが、だがこれで出撃しようものであれば、ISのあらゆる機能がショートを起こし、人体に影響を与えかねないのだ。

その為のシャットダウンシステムである。

「ふむむぅぅぅ〜また失敗かぁ”ワンオフ・アビリティー”」

実験の失敗により束は落胆のため息を漏らした。

 

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ワンオフ・アビリティー…つまり単一仕様能力。

ISが操縦者と最高状態の相性になったときに自然発生する固有の特殊能力。

だが、重昌のISはいつもここで力に耐え切れず脱力してしまう。

IS開発者のお手製であるので、これでも普通のIS以上の戦闘能力を発揮するのだが、天才科学者は納得がいかず何度でもやり直す。

「重ッチ。もう一回構成しなおすから、それまで休んでいいよ」

普通の科学者であれば、失敗の果てに練り直した理論をまた構成し、それもまた失敗に終わればため息の一つも付きたくなるが、彼女は違った。

彼女のこれまで出した人生の理論は大体成功に収まっており、失敗などその昔以来やったことのない彼女。

この久しぶりの感覚に彼女はため息どころか、また新たな発見を見つけた事により躍動感に包まれていた。

その状態の束に重昌は何かを話しかける。

「束よ」

「何?重ッチ」

「一つ私に今現在で成功段階のISと何か軍のレーダーには感知されない乗り物を用意してくれないか?」

彼が何故今更その様なことを頼むのか、今の束には理解できなかったが、きっと何か面白いことをするのだろうと思い「いいよ、天才にお任せ♪」っと言いながら潔く了承する。

秀才と鬼才、種類は違えど同じ天才同士、なにか通ずるものがあり、答えはいつもYesかNoで無駄な話は駄弁っている時だけ。

翌日、重昌は朝食と「今日中には戻る」と書いたメモを用意し、鬼の力で見た目を20代前半まで若返らせて、束の用意した乗り物に乗り何処かへ飛んで行ってしまった。

この力、本来であれば重昌は鬼の力を持った時点で彼は半不老不死の体を手に入れ、肉体年齢も50過ぎの体ではなく人が一番安定している20代の肉体を手に入れたのだが、見た目だけは変えずにいたのだ。

それは本来の自分自身を見失わない為であるが、今回はとある目的があり見た目も変える必要があったのだ。

彼が向かう目的の場所はオーストラリア。

この世界の時代の豪州はそれなりに発展を遂げている先進国であり、ISに関してもある程度の技術を持っている。

しかし”ある程度”止まりで、イギリスやドイツ、日本やロシアの様にISの技術に何か切り札的な物が無かった。

そこで重昌はその国に目を付けた。

向かった先はオーストラリアの大統領居住地。

ただ今休暇で自宅に戻っている大統領に直談判しに行く為である。

勿論、いきなり謎の飛行物体が上空より飛来すれば明らかに怪しいので、乗り物にはステルス機能を展開させ、人が全く来ないような場所にオートモードで空中待機をさせる。

重昌は乗り物を降りると、大統領の自宅に向かう。

大統領邸に着くと、何人ものSPが待機しており、重昌は問答無用で止められる。

「貴様。ドウヤッテ侵入シタ?ココハ大統領居住区ダ。一般人ガ通レルト思ウナ」

その問いかけに「残念。一般人ではない」と答えると、重昌はコンマ1秒程でISを展開する。

※因みに、喋っているのは英語とご判断下さい。

 

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「ア、IS!?」

「バ、馬鹿ナ!?男ガISヲ使エルナド!?」

控えているSP達は「まさか!?」と言わんばかりに動揺していた。

「私はただ大統領と直談判しに来ただけだ。条件を断れても危害を加えるつもりはない。だが今ここで大統領を呼び出さなければ…どうなるかな?」

「ク、クソッ」

SPの一人が重昌に銃を向けるが、彼自身により静止させられる。

「おっと、ISに普通の武器が通用すると思いますか?その気になれば、この辺り一帯を荒野に変えることも可能ですよ」

右手を突き出しながら答える重昌にSPは奥歯をかみ締めSP同士で相談し、この件は自分達の手に負えないと判断し、大統領に指示を仰ぎに一人大統領邸に入って行く。

数十分後、未だに互いに警戒したままでにらみ合いが続いていると、指示を仰ぎに行ったSPの一人が戻ってくる。

「オイ。大統領ハ貴様ニオ会イニナルソウダ。シカシ、変ナ気ハ起コスナ。ソノ時ハ俺ガオ前ヲ殺ス」

重昌は「OKOK」と言い、ISの展開を解き大統領邸に入っていく。

一応身体検査をされるが、持っているのは扇子と何かの資料の紙なので、彼はあっさり通してくれた。

通してくれた先の大統領邸執務室には風格のある、50代半ばぐらいの男性の姿があった。

「コンニチハ。日本ノ侍サン」

重昌を見て大統領らしき人物はそう言い、彼もつい「侍?」と聞き返してしまう。

「貴方ハ見タトコロ日本人デスネ。ソシテ着テイル服ハ伝統的ナ衣装着物!マサシク日本ノ侍デス。私モ欲シイデス」

突然来訪してきた余所者に対しても、目の前の男は自分の立場など意識もせずに、フランクに重昌に話しかけてきた。

「今の日本人は、全員この様な格好をしている訳ではありません。私が特殊なのです。良ろしければ、上着だけでも差し上げましょうか?」

珍客に対し、気概なく話しかけてきてくれた礼としてそんな提案をし、大統領も「OH、イイノデスカ!?」と嬉しさが溢れているような声で彼の厚意に甘えていた。

自分の羽織っている黒い着物の上着を、大統領にかけてやると、大統領は上機嫌で、対面して話が出来るソファに重昌を案内し腰掛けさせる。

「ソコデ日本ノ侍GUY(ガイ)ヨ。コノ様ナ場所二危険ヲ犯シテマデ私ニ直談判トハ?何ヲ持ッテ来タノデスカ?」

彼は重昌が片手に持っているカバンを指差し問いかける。

「今日は、貴方方の国に有益になる話を持ってきました」

重昌は今の世界の現状、豪州(オーストラリア)が他のIS発展国は第3世代機に突入しているのに比べ、未だ第2世代機に遅れ甘んじている現状について話し出した。

そこで自分をその豪州のIS代表にすることを持ちかける。

彼に自分の模擬戦と実験データと戦闘の映像を見せ、豪州にいるIS使いとのデータの見比べを見せ、自分の力が圧倒的だということを主張し、またここに来るまでの個人の潜入能力も付け加えた。

 

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「成ル程。確カニ貴方ヲ我ガ国ノ代表ニスレバ、ISヲ動カセタ二人目ノ男子ノ所属スル国ト大キナ宣伝トナリ、我ガ国ノIS技術モ大キク発展スルデアロウ。シカシ、君ニ何ノメリットガアル?何故、自分ノ祖国ニ自分ヲ売リ込マナイ」

彼の質問も尤もである。

また何故危険を冒してまで弱小国に自分を売りに来たのかも、謎であった。

重昌はニヤリと笑い答える。

「面白くない」と。

弱小を強豪に変えてこそが男の醍醐味だと。

大統領は豪快に笑い飛ばし、重昌の案を承諾する。

大統領も彼は彼で重昌に対して色々と条件は出したが、ここに記すは大まかな条件だけにしておこう。

大統領の出す条件の大まかは、重昌の名前を国の宣伝に使う事や、彼の戦いの記録を取る事。

それらに関して重昌は二つ返事で了承し、それに対し重昌の出した条件は自らの行動に干渉しないこと、毎月の給料として国への貢献制で決め、最低でも2000万払うこと、ISのメンテナンスは自らが行うので、自身のISに一切手を出さない事だ。

ISに手を出させない変わりに重昌は、ISの第3世代機の明確な設計図を提供し、こうして交渉による会談は終了した。

重昌にとっては、はっきり言って国など何処でもよく、代表の肩書きが欲しいだけであった。

代表であれば国の許可が無くとも、いつ、どこで、何があってもISを展開出来る権利が与えられる。

しかしイギリスやドイツのような強豪国はすでに枠が埋まっており、かと言って弱小過ぎれば資金面の援助が期待できず。だから豪州辺りで調度良かったのだ。

そうして彼は止めていた乗り物に見つからないように乗り込み、豪州を後にし、束の研究所に戻った。

戻ったら戻ったで、力で若返った重昌に対し、「イケメンktkr!!抱いて〜〜」などと冗談をこぼしながら彼に突っ込んでいき、華麗にかわされていた。

そして昼過ぎ、彼はいつもの様に研究所の掃除を続けるのであった。

 

説明
昔投稿した作品の修正版です。

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IS インフィニット・ストラトス 重昌  作り直し文章 

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