超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 プラネテューヌ編 |
「プラネテューヌよ。私は帰って来たーー!!」
革新なる紫の大地『プラネテューヌ』を象徴するプラネタワーが良く見える丘の天辺まで来たとき、両手を空に向けてネプテューヌは大きな声で叫んだ。
四大陸の中で最も科学力に発展しており、最先端を行く大陸。しかし、守護女神戦争ーーーまぁ、隣ではしゃいでいるネプテューヌの不在と彼女自身の記憶喪失もあってか女神の加護が薄くなったことが問題となり、四大陸の中で最もモンスターの被害を受けている大陸でもある。
「本当に懐かしいわね…」
「旅の終わりが旅の始まりの場なんてロマンですぅ」
感傷に浸っているアイエフ、コンパ。
そういえば、ネプテューヌ達と初めて会ったのはラステイションだったから、初期パーティーはこいつらだったのか。
「そういえば、記憶喪失だったのによく仲間を集めれたな」
「ふふ、これも私の隠されし才能のおかげなんだよ!さすが私!」
「……で、実際の所は?」
「ねぷねぷが空から落ちてきて、そこから行き当たりばったりご都合主義展開であいちゃんと会えたんです」
うん、その方がネプテューヌらしい。
「なんで、みんな深く頷いているの?速くいくよー!」
……本人は無意識なのだから、これはある意味で恐ろしい。
先行するネプテューヌを見失わないように程度の速さで進む。
目指すはプラネタワー。まずは、イストワールの居場所ついての情報を集めないといけない。
◇
天を突き抜ける勢いで伸びるプラネタワー。何度も訪れたが流石ゲイムギョウ界で最も高い建造物として知られている物だ。その中身は協会として機能しているが、観光名所として有名だ。どういう原理なのかは知らないが透明な空洞の中に入ると下にうっすらとしたパネルが出現して足場として機能している。プラネタワーはこの街の中央にあるので少し歩くが、これを使えば直ぐに到着する。
「久しぶりに来たけど、やっぱりプラネテューヌの科学力は凄い…」
「悔しいけど、次世代という言葉が良く合うわ」
「紅夜」
「ゲーム屋回るのは後でな」
空中に投影されたディスプレイで放送されているゲームのCMにキラキラした視線で見つめるベールを止める。目を離せば次の瞬間にはゲーム店へ直行しそうだ。廃人恐るべし。
「みんなの顔がどこか暗いわね…」
「一番モンスターの被害が多いと言われているから、仕方がないわね。コンパの学校も休校になっているわ」
「でも、そのおかげでねぷねぷ達と会えていろんなところに回れたから勉強になったです」
…そういえば教祖イストワールと女神ネプテューヌがいない時に政治とか経済とか誰が仕切ってんだろう。ネプテューヌ自身がダメダメだけど不思議な雰囲気で優秀なスタッフとか自然と用意されていそだけども、自動で進むパネルの上で俺達は一通りプラネテューヌの街を雑談しながら楽しみ遂にプラネタワーの足元に来た。
そしてそこには俺達を待っていたように空の従者であるポチの姿があった。
「テケリ・リ」『初めての方もいらっしゃいますが。皆さん、お久しぶりです』
「……誰?」
「空の従者でポチって名前だ」
コスプレに見えない程きっちりと着こなした燕尾服に良く合う清雅な美顔を来るべき来客が来たような業務スマイルで小さく頭を下げた。見た所、武器類は纏っていない様ように見えるが、こいつ無手でも十分強い。警戒心を向けるが、それが感じないような物腰でポチは微動だにしない。四女神を前にしても、それは変わらない。
「テケリ・リ」『その反応ですと、やはりあなた方が主様と戦うつもりですか?』
「勝手に世界を操り人形にしている奴を認めるわけにはいかないわよ…で、あなたはどうしてここにいる?ここで一戦する?」
「テケリ・リ」『主様から戦闘許可は頂いておりません。故にあなた方と戦う理由は虚無です』
戦意を向けるノワールを抑える。ここで本当に一線すれば周囲に被害が及ぶ。それにしても、どうしてここに?お前がここにいるということは空が近くにいるのか?
「テケリ・リ」『主様は別件に呼ばれ暫しこの世界にはいません。直ぐにおかえりになると申しておりました。そして、あなた方に対して主様から贈られ物がございます』
そういって取り出したのは地図だ。それもプラネテューヌ。良く見るとここからそう遠くない場所に赤色で丸が書かれている。ここに行けと言う意味だろうか?そもそもこの世界にはいないってどういうことだ?
「ねぇねぇ、ここってなにがあるの?」
「テケリ・リ」『ここの教祖様でございます』
ネプテューヌ達が驚くが、俺はなんとなく予想はしていた。同じようなパターンが直ぐ前にあったからである。これを渡す為にここにポチを派遣したのか。
「……どうしてこれを私達に?一応、貴方の主と私達は敵対関係になったのよ」
「テケリ・リ」『これは主様のご意志です。どのような考えがあるの私は存知ません』
イストワールは空を倒してほしいと言っているのにそれを復活させることがどういう意味があるんだ?いや、そもそもイストワールと空ってどういう関係なんだ?あいつの意志でこれを渡してきたのなら罠はないと思うが、あいつにはメリットはなくむしろデメリットしかならないんじゃ…。
「とりあえず行こうよ!この人にはゲイムキャラでもお世話になっているし罠とかないよ。きっと!」
「…そうね。とりあえず行ってみましょう」
「テケリ・リ」『宿や休憩場をお求めの場合はプラネタワーにいらっしゃってください。今の私は副教祖としてこの国を管理している者故、なんでも用意しましょう』
その発言に全員が驚愕に染まったのは言うまでもない。
◇
「ぶっちゃけていうけど、ネプテューヌ。貴方の国って最早支配されているといっても過言じゃないわね」
「だ、大丈夫。あの人とってもいい人だから」(震え声)
あはははと渇いた声で笑うネプテューヌ。ラステイションに行く理由を作った鬼の様なモンスター出現事故だって関係者の記憶が錯乱していたし、もしかしらた協会メンバー全員洗脳とかされているかもな。まぁ、手ペア曰くポチは信用は出来るとかいったし、イストワールが封印されていると言われているダンジョンに来た俺達ではあるが、罠所かモンスター一匹もいない。
「私も最初はヤバイとは思って、ちょっと調べてみたけどプラネテューヌの経済とか落ち込んではないわよ」
携帯をつつきながら情報収取するアイエフがそう言うと事実だろうな。
「空って小細工とかあまりしないから、こういうこともしないと俺は思う」
どちらかと言えば現地で指導する監督のような行動だからなあいつ。良くも悪くもゲイムギョウ界だけの味方だし、あいつにとって女神は必要な財産の様なものだろう。そう考えると、国を支配したからと言っても好きにやる働くと言うより安泰に近づける事をすると思う。ポチも会って短いけど真面目な性格だから、そんなことをするようには見えない。
「とにかく、空とイストワールには何らかの因縁がある筈、聞いてみるのが一番」
「私は空さんとはお話をしていませんから、情報が欲しいですわね」
「ベール、あいつは悪以外なんでもないわよ。聞いてみればあいつってこの世界とは全く無関係って話じゃない。なんで、そんな奴にこの世界の理を作る権利なんてどこにもありはしないわ」
怒りの火を燃やすノワール。よっぽど空の事が気に入らない様子だ。
それにしても、俺も確かにあいつのしたこと憤慨するが、不思議と嫌いになれない。
「確かに私も空さんのしている行動は即刻中止だと思いますわ。けど、少し気になることが」
「…なによ気になる事って」
「空さんに対するメリットですよ」
ダンジョンを進む速さが止まる。全員だ。
「こういう時、ゲームでは高圧的なキャラや禍々しい悪魔のような者が自己願望で世界を支配すると言う話は良くありますわ。そして空さんはゲイムギョウ界の全生命を握っていると言っても過言ではありませんが、やっていることは裏方でむしろ邪神のような物からこの世界を守ること」
「…この世界を玩具にしているって考えた方もあるわよ」
「それはないよ。ブラン」
少し濁った顔でブランが口を出すが、その発言を否定したのはネプテューヌだった。
「本当に、本当に……この世界を玩具として扱っている人が、あんなに血とか吐きながら必死になれるかな?」
「……どういうことよ」
「この際だし、旅の話とか話そうよ。いいよねあいちゃん、コンパ、こぅちゃん」
ネプテューヌの視線に俺達は頷いた。
拒否する理由なんてない。当たり前だ。俺達のパーティーの中であいつを本当に嫌っている奴なんていないだろう。何故なら、あいつの手で俺達は何度も助けられたからだ。
思い出すように俺達は語り始めた。
ラステイションでは暴走したロボットから人々を守るためにノワールより早くその場に駆け付けて避難誘導をしたり、リーンボックスでは毒を飲まされたネプテューヌに貴重な薬草を態々届けたり俺が暴走したときに体を触手で蜂の巣されたり、両手を切り落とされ、血を吐きながらも俺を止めるために必死になってくれたこと。ルウィーは誰よりも先に誘拐事件に気づいて誰よりも対処を始めた。協会奇襲も空がいなかったらとんでもない被害を被っていたし、ロムちゃんとラムちゃんを庇って死んだ教祖の為に詳細は分からないが禁術を使って全身が蝋燭のように真っ白になって当分起きる事すら出来なかったこと。その状態で危なった俺達を助けに来たこと。ダンジョンを進みながら、長い旅の中で巻き込まれた事件の中で常に光を差し込んだ空の話にノワールたちは更に複雑な顔を見せる。
「空ちゃんのしていることは否定する。だけど、私は空ちゃんを嫌いにはなれない。空ちゃんは、とても優しい心を持っているから」
「……ちょっとむかつく所があるけど戦術指南していた時なんて、口は悪かったけど私達の欠点とか分かりやすいように説明してくれたわ」
「私もねぷねぷと同じで、嫌いになれないです」
「俺も、同じだ。ラステイションの時もリーンボックスの時もルウィーの時もやっぱりあいつのしたことは破壊ではなく、救いだった」
その姿は、まるで女神のように。
『ーーー……えぇ、そうなんでしょう。だからこそ、これ以上あの人は罪を重ねてはいけない』
「! いーすん!」
突如頭に響く少女の高い声。
目の前には古い扉があった。
「いーすん、この中に居るの?」
『はい、押せば開くと思いますがどうでしょうか?』
言われる通りに押してみるとそれがスイッチであったように石と石同士が擦れるような音共に簡単に扉は開いた。中に入っている見ると奥に薄らと光る不思議な形をした石とゲイムキャラが置かれていると同じような祭壇の上に鎖で縛られている本があった。
「……本?」
『はい、貴方達の目の前にあるその本こそ、ゲイムギョウ界の歴史を記録する私−−−イストワールです』
……人間じゃなかったのか。いや、こんなところに封印されている時点で人間じゃないよな。
「ねぇ、これからどうすればいいの?」
『鍵を掲げてください。それで私の封印は解けます』
言われたとおりにポケットから取り出したこの旅の中で集めた欠片が一つとなった鍵をネプテューヌが掲げると鎖に罅が入り込み、鍵が砕けると同時に本を縛っていた鎖は完全に砕け消えていった。
そして本がふわりと誰の手に触れることもなく浮かび上がり、バラバラとページが勝手に捲れ光が溢れるそれは人の形を取った。
幼げな顔をしているが、どこか大人びた怜悧な表情をしていた。その裾が短く、手が隠れる程に袖は長い不思議な服装をして、その髪はノワールと同じようツインテールだったが、頭にはリボンがついたヘアバンドがあった。
「再会を喜びたいけどまずは聞かせてほしい事があるわ」
「私と空さんの関係ーーですよね?」
その大きさは、掌に乗る程度の小さな少女。
全員が疑問に抱くその問いに妖精のような少女はこう答えた。
「あの人は、私の親です」
本日二度目の絶叫が響いたのは言うまでもない。
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