真・恋姫無双「武人として、一人の男として?」6
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真「・・・・来ない。」

 

 

どうやら真は他の皆を待っている模様。指定された集合場所と時間は、中庭の午後。

 

 

この時代に時計など無い。だから、何時何分集合っていう細かい時間が決まっているわけではない。

 

 

夏侯惇「なんだ剣崎。随分早いな。」

 

真「・・・夏侯惇か。…華琳と夏侯淵はどうした?」

 

夏侯惇「うむ。食事は済んだのだが・・・・なにか髪のまとまりが悪いとかでな。今、秋蘭に整えさせている。」

 

真「ほぅ・・・・・・・・・・」

 

荀ケ「・・・貴方今、化粧や髪型なんて大して変わらない・・・・なんて思ったでしょ。」

 

真「いや、そんなことはない。・・・女性は髪型や化粧で印象が…ガラッと変わるからな。」

夏侯惇「うむ。州牧となったお方が、だらしない格好で公の場に出てしまったら臣下たる我々どころか、主の品格まで疑われてしまうからな。」

 

荀ケ「あら、珍しく意見が合ったじゃない。」

 

夏侯惇「当然だ。」

 

真「・・・しかし、刺史じゃなく、州牧になるとは・・・・」

 

 

あの戦いと後、華琳は陳留の刺史から広い地域を治める州牧へと昇進していたのだ。

 

 

荒ただしく引き継ぎを済ませて、ひと段落付いたのがつい先日。

 

 

落ち着いたのを機に、一度、皆でより賑やかになった街に様子を見て回ろう、ということになったのだが・・・・・

 

 

荀ケ「何よ。何か問題でもあるの?」

 

真「いや、…むしろ、既に陳留刺史としての十分な実績があるのに、州牧なんてごく正当な評価・・・・低くないか?」

 

夏侯惇「当たり前だ。本来の州牧が逃亡した非常時でもあるしな。中央にも、わざわざ人を選別して派遣するより、有能な華琳様に任せよう、と思った見る目のある奴がいたのだろう。」

 

荀ケ「それに、中央にも知り合いは何人かいたしね。」

 

真「・・・それは、荀ケのコネって事か?」

 

荀ケ「こね?」

 

夏侯惇「何をこねるつもりだ。麺でも打つ気か?」

 

真「訂正しよう。・・・荀ケが中央にいる知り合いに手回しして、華琳を…州牧にしたって事か?」

 

荀ケ「袁紹の所って、扱いは悪かったけど、中央との繋がりだけは沢山作れたのよね。」

 

真「・・・・華琳が怒るんじゃないか?」

 

華琳「別に怒らないわよ。」

 

 

三人の会話に華琳の声が聞こえてきた。どうやら整えは終わったらしい。

 

 

荀ケ「華琳様・・・・」

 

華琳「なにふりを構っていられるほど、今の私達に力も余裕もないでしょう。使えるものなら天の知識でも部下の繋がりでも、遠慮無く使わせてもらうわ。」

 

 

その姿はいつも通りの華琳だった。

 

 

華琳「・・・・何?」

 

真「いや、髪はまとまったかいな?」

 

華琳「雨でも降るのかしらね?なかなかまとまらなかったのよ。貴方から見てどうかしら?」

 

真「・・・特には問題ないかと。」

 

華琳「ならいいわ。それに、州牧になったおかげで季衣との約束を守ることが出来たわけだもの。言うことはないはね。」

 

真「・・・・・・?季衣は?」

 

夏侯淵「今朝、山賊のアジトが分かったという報告が入ってな。討伐は私か姉者が出るから街を見てこいと言ったのだが、聞かなくてな。」

 

真「・・・・そう・・・なんだ。」

 

夏侯惇「あぁ。自分の邑と同じ目に遭っている邑を見ていられんのだろう。張り切って出掛けていったぞ。」

 

真「・・・・ほんじゃ・・・土産くらいは買ってやんないとな。」

 

夏侯惇「なんだ、考えることは同じか・・・・」

 

荀ケ「あんたたち、観光に行くわけじゃないのよ。」

 

真「問題無い。…土産は帰りに買う予定だからな、仕事はちゃんとするさ。」

荀ケ「なら、いいんだけれど。」

華琳「さて、揃ったのなら出掛けるわよ。桂花、留守番、よろしくお願いね。」

 

荀ケ「華琳様ぁ・・・・何でこれは連れて行くのに、私はお留守番なんですかぁ・・・・?」

 

真「・・・人を指で差すな。」

 

華琳「警備隊として毎日街を回っている真以上に、的確な人材がいるかしら?」

 

荀ケ「うぅ・・・・分かりました。」

 

 

・・・っと、そんなわけで。荀ケを留守にし、陳留へと出掛けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「あれが陳留か・・・」

 

???「やっと着いた?。凪ちゃーん、疲れたの?。」

 

凪「いや、沙和・・・これからが本番なんだが。」

 

沙和「もう竹籠売るのめんどくさ?い。真桜ちゃんもめんどくさいよねぇ・・・・」

 

真桜「そうは言うてもなぁ・・・全部売れへんかったら、せっかく籠編んでくれた邑の皆に合わせる顔がないやろ?」

 

凪「そうだぞ。せっかくこんな遠くの街まで来たのだから、皆で協力してだな・・・・」

 

沙和「うっう?・・・・分かったよぉ?。」

 

真桜「最近はなんや、立派な州牧様が来たとかで治安も良うなっとるみたいやし、いろんな所から人も来とるからな。気張って売り切らんと。」

 

沙和「・・・・(ピロリン!) そんだ!人が多い街なら、皆で手分けして売った方が良くないかな?」

 

凪「・・・・成る程。それも一利あるな。」

 

真桜「それじゃ、三人で別れて一番売った奴が勝ちって事でええか?負けた奴は晩飯、奢りやで!」

 

凪「こら真桜。貴重な路銀を・・・・」

 

沙和「分かったの。」

 

凪「沙和まで・・・・」

 

真桜「よっし。二対一で、可決ってことで、凪もそれでええやろ?」

 

凪「はぁ・・・・やれやれ。仕方ないな。」

 

真桜「ほな決まり!」

 

沙和「おーなの!」

 

凪「・・・・・なら、夕方には門の所に集合だぞ。解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅芸人次女「はい!それでは、次の一曲、聞いていただきましょう!」

 

旅芸人三女「姉さん、伴奏お願いね。」

 

旅芸人長女「はーい。」

 

 

 

 

 

夏侯淵「ほぅ。旅芸人も来ているのか。」

 

真「・・・珍しいのか?」

 

夏侯淵「芸人自体はさして珍しくないが、あれは南方の歌だろう。南方からは旅人は今までこちらまでは来なかったからな・・・・」

 

真「・・・・・・・来なかったって・・・途中で危ねぇ所があったってことなのか?」

 

夏侯淵「そういうことだ。商人と違って、街道が安全でなければ連中は寄ってこないからな。そういう意味では、我々の働きが認められた、とみて良いかもしれない。」

 

真「・・・・・ふーん。」

 

 

興味無さそうな顔をする真。すると華琳は言う。

 

 

華琳「特に彼女等は女だけのようだしね。武芸に相当の自信があるか、安全な道が無ければ、こんな所までは来ないでしょうよ。」

 

 

実を言うと、真も賊に絡まれていたことがある。なんとか追い払っていたが。

 

 

 

 

旅芸人三女「有難う御座いましたー。」

 

旅芸人次女「次、もう一曲、いってみましょうか!」

 

 

 

華琳「まぁ、腕としては並という所ね。それより、私達は旅芸人の演奏を聴きに来たワケではないのよ?」

 

真「・・・そうでしたね。」

 

 

忘れてはならない。季衣の土産・・・・・もとい、街の状況の視察を。

 

 

華琳「狭い街ではないし、時間もあまりないわ。手分けして見ていきましょうか・・・・・」

 

夏侯惇「では、私は華琳様と・・・・・」

 

華琳「真は私と一緒にきなさい。」

 

夏侯惇「えぇ?・・・・」

 

夏侯淵「まぁ、よいではないか姉者。では華琳様。私は街の右手側。姉者は左手側を回らせます。それでよろしいですか?」

 

華琳「問題ないわ。では、突き当たりの門の所で落ち合いましょう。」

 

夏侯淵「はっ。」

 

夏侯惇「真!貴様、ちゃんと華琳様をお守りするのだぞ!」

真「・・・・・・・・ん。(俺はまだ何も言っていないんだが・・・) 」

 

 

 

 

 

 

こうして、真と華琳は夏侯惇、夏侯淵と別れて回ることになった真達が担当する街の中央部は、真ん中を走る大通りとそこに並ぶ市場が視察のメインとなる。まずは、小さな店や住宅が集まる裏通り

 

真「まずは…裏からか。」

華琳「ええ。大通りは黙っていても集まるから後でもいいのよ」

真「ほう。・・・・・・ここは住宅よりは…食い物関係の店が多いな。」

華琳「そうね。」

真「食材の店があるからか・・・・・・?えらく飯屋が多いな…」

華琳「そうねぇ…」

 

 

なんか返事が微妙な気がし、真の言っていることをじっくり聞いているようだった。そして真は肉屋の使っている包丁を見て、

 

真「鍛冶屋があったらいろいろと儲かりそうだが、三つ向こうの通りに行かないと無いからなぁ・・・」

華琳「たしかに・・・」

 

 

真はあの時の鍛治職人を思い出した。一戦やったら突然消えたあの包帯男。何者だったのだろう?そのことを考えようとした時、真と華琳は肉屋の隣の屋台の親父が丁度、遅めの昼飯をとっているのを見る。

華琳「向こうの通りには料理屋が無いのね。」

真「確かに・・・・・気になったが、えらく詳しいな。」

華琳「そのくらいは街の地図を見れば分かるもの。」

真「・・・・・で、この視察の意味は?」

華琳「意味?」

真「地図を見て、詳しい場所が分かるなら…視察はいらないと思うんだが。意味はあるんだろ?」

華琳「クスッ・・・人の流れは地図や報告書だけでは実感できないわ。客層や雰囲気もね。たまにはこうやって視察して実際に確かめておかないと、住民たちの意にそぐわない指示を出してしまいかねないわ。」

真「流石だ、余念がない。」

華琳「其れに、」

華琳が視線を移したのは、露店の前の人だかり。何か実演販売をしているようだ。

華琳「ああいう光景は、紙の地図だけではなかなか確かめられないもの。」

 

二人は、その人だかりのある露店に足を運んだ。

 

 

???「はい、寄ってらっしゃい見てらっしゃーい!」

そこで見たのは露店商の女の子。そこには猫の額ほどのスペースに沢山竹カゴがずらりと並べられていた。そして、その傍らには何やら木製の怪しげな物体あった。

 

真「・・・・これは・・・」

 

華琳「籠屋のようだけど・・・・・・」

真「いや、俺が言ってるのはこっちだ。」

真は怪しげな物体を指さす、よく見ると木製や金属の歯車が詰め込まれている。

 

 

華琳「あら、真は歯車が珍しい?見るのは初めてかしら?」

真「そう―――ではないが・・・・・・」

華琳「まぁ、この装置は気になるけれど」

真「確かに。・・・・お嬢さん、これは何かな?」

???「おお、そこのお二方、なんともお目が高い!こいつはウチが発明した、全自動籠編み装置や〜!」

華琳「全自動・・・・・・」

真「籠編み装置・・・・・・?」

???「せや!この絡繰の底にこう、竹を細ぅ切った材料をぐるーっと一周突っ込んでやな……そこの兄さん、こっちの取っ手を持って!」

真「・・・・・これか。」

言われるままに籠編み装置のハンドルに取る。

???「ほんで、そのままぐるぐるーっと」

真「・・・・・・・・・ぐるぐる。」

そのまま指示通りに回していくと、セットされた竹の薄板が機会に吸い込まれていって―――

しばらくすると、装置の上から編み上げられた竹籠の側面がゆっくりとせり出してきた。

???「ほら、こうやって竹カゴの周りが簡単に編めるんよ!」

真「ほぅ・・・・・これは凄いなぁ・・・・で?枠と底の部分は?」

???「あ、そこは手動です。」

華琳「・・・・・・そう。まぁ、便利と言えば便利ね。」

真「あぁ。全自動じゃ無いがな。」

???「うぁ、兄さんツッコミ激しいなぁ・・・・・・。そこは雰囲気重視。」

真「・・・・・・・・」

 

 

真は回していたハンドルを止める。

 

真「・・・・・・つかぬとこ聞くが、ここに並んでいる籠は、この装置で作ったものなのか?」

???「いや、みんな村の手作りや」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

真「・・・・・・ふーん・・・」

 

 

真は竹籠をながめる。よく見ると、丹精込めて作られているのが分かる。傍目から見てもいい作りなのもよく分かる。

 

真「・・・・・一つ良いか?」

???「やりっ!まいど〜」

 

 

どうやら真は籠を一つ買ったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、夏侯惇は、

夏侯惇「この辺りは、服屋ばかりか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、これ、華琳様がお召しになったら似合うだろうなぁ・・・・・」

 

 

途中からの間は夏侯惇が見つめる服を華琳が着たらどうなるかを想像していた。

 

 

夏侯惇「・・・・うぅ、いかんいかん。今日は視察に来たのだぞ視察に・・・・!」

 

 

すぐにハッ!と我に返る。

 

 

夏侯惇「・・・・・・・・ちょっとだけなら・・・・いや、駄目だ駄目だ。誘惑に負けるな私!」

 

 

それからもずっと気になっているらしい。

 

 

夏侯惇「・・・・・・・・・・・・・あぁ、やっぱり可愛らしい服があるなぁ・・・・・そうだ、ちょっとだけ・・・・」

 

 

誘惑に負けたかな?

 

 

夏侯惇「・・・う、うむ。これも視察の一環だ。これも視察の一環・・・・」

 

 

そう言いつつ、服屋に入る夏侯惇であった。

 

 

 

店員「いらっしゃいませー!」

 

夏侯惇「おお、これはなかなか・・・・」

 

店員「あのぅ、お客様。失礼ですがこの辺りは、お客様よりも少々小さめの・・・・・お客様に合うものでしたらあちら棚に・・・」

 

夏侯惇「ああ、華り・・・いや、知り合いの頼まれ物なのだ。私の事は気にせず、放っておいてくれ。」

 

店員「は、はぁ・・・・・そうですか?」

 

 

夏侯惇にそう言われた為、大人しく引く店員。

 

 

夏侯惇「うむ、これも悪くない・・・・・。ああ、あれも・・・・」

 

???「じゃあ、これは?」

 

夏侯惇「おお!これは素晴らしい!」

 

???「やっぱりなの?!それだったら、こっちも合うと思うの?。」

 

夏侯惇「そうかぁ?それはイマイチだろう。むしろ、これを内側に合わせたほうが・・・」

 

???「おおーっ!お姉さん、なかなかやるの?。」

 

夏侯惇「お主もな・・・・って、誰だ貴様!?」

 

 

夏侯惇は隣に居たのを今気づいたらしく訪問する。だが、少女は気にせず言う。

 

 

???「うーん。さっきから、服を見る目が凄く熱かったから・・・。こういう服が好きなら、これも気になるんじゃないかなーって思ったの。」

 

夏侯惇「ほぅ。最近はそういうのが流行りなわけか。」

 

???「そうなの?。でもお姉さんは、自分にこだわりがちゃんとあるみたいなの?。」

 

夏侯惇「ふっ、貴様。この私とやり合う気か?本気になった私は、かなり凄いぞ?」

 

???「んー。このお店、可愛い服が沢山あるし・・・・・分かったの!その勝負、受けて立つの!」

 

 

 

 

 

 

 

夏侯惇「・・・・うむ。久しぶりに良い戦いであった。血がたぎったぞ!」

 

???「私も楽しかったの?。その買った服も、きっとその子に似合うと思うのー。」

 

夏侯惇「しかし、少々服を買いすぎたな。これでは持って帰るまでに落としてしまいそうだ。」

 

???「あー。それなら、この竹籠を使うと良いのー。」

 

夏侯惇「おお、それは助かる!感謝するぞ!」

 

???「あ、でもそれ、売り物なのー。」

 

夏侯惇「なんだ。そうなのか。」

 

???「あと今思い出したけど、今日中にこの籠、全部売らないといけないのー・・・・」

 

夏侯惇「ふっ、それならそうと早く言え。今日の勝負の礼だ。そのような籠、私が全て引き取ってやろうではないか!」

 

???「おおっ!お姉さん太っ腹なのー。」

 

夏侯惇「はっはっは。誰がお腹たゆんたゆんで子供が乗ったらフカフカだとー♪」

 

???「誰もそんなこと言ってないのー♪」

 

夏侯惇「まぁ良い。ほれ、これで・・・・・・」

 

???「・・・・・・・・」

 

夏侯惇「・・・・・・・・」

 

???「・・・・・・・・・・・」

 

夏侯惇「・・・・・・・・・・・」

 

???「・・・・・それはさすがに、一個しか売れないのー・・・」

 

夏侯惇「・・・・・すまん。」

 

 

哀れなり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、夏侯淵は、

 

 

夏侯淵「・・・・・・・」

 

???「・・・・・・・」

 

夏侯淵「・・・・・・・・」

 

???「・・・・・・・・」

 

夏侯淵「・・・・・・・・・」

 

???「・・・・・・・・・」

 

 

・・・・長い沈黙。

 

 

夏侯淵「・・・・良いものだな。この籠は。」

 

???「・・・・どれも入魂の逸品です。」

 

夏侯淵「・・・そうか。」

 

???「・・・はい。」

 

夏侯淵「・・・・・」

 

???「・・・・・」

 

夏侯淵「・・・・・・」

 

???「・・・・・・」

 

 

また沈黙がはしる。すると、

 

 

男37番「姉ちゃん。この籠一つおくれや。」

 

 

場の空気を壊した愚かな男が籠を買いに来た。

 

 

???「・・・・まいど。」

 

 

そして代金を済ました男は帰っていく。

 

 

夏侯淵「・・・・・・・」

 

???「・・・・・・・」

 

夏侯淵「・・・・・・・・」

 

???「・・・・・・・・」

 

 

そして再び沈黙。・・・語っているこっちのみにもなってくれよ。

 

 

夏侯淵「・・・・よし。」

 

???「・・・・っ!」

 

夏侯淵「・・・これを一つ、もらおうか。」

 

???「・・・はっ。」

 

 

・・・どうやら、籠を買う気になったらしい。少ししか語っていないのになんか疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合場所は突き当たりの門の所。真達が行ったときはまだ誰も来てはいなかっがそれほど待つこともなく、二人と合流したのだが、

 

 

華琳「・・・で?」

 

夏侯惇「・・・・」

 

夏侯淵「・・・・」

 

真「・・・・」

 

華琳「どうして揃いも揃って竹籠なんて抱えているのかしら?」

 

夏侯淵「はぁ。今朝、部屋の籠の底が抜けているのに気付きまして・・・」

 

華琳「・・・まぁ、なら仕方ないわね。どうせ貴方の事だから、気になって仕方なかったのでしょう?」

 

夏侯淵「は。直そうとは思っていたのですが、こればかりはどうにも・・・・」

 

華琳「いいわ。で、春蘭は?何か山ほど入れているようだけれど・・・」

 

夏侯惇「こっこれは・・・季衣の土産でございます!」

 

真(嘘だな・・・・)

 

華琳「何?服?」

 

夏侯惇「はっ!左様でございます!」

 

華琳「・・・・そう。土産もいいけどほどほどになさいね。」

 

夏侯惇「はいっ!ほどほどにします!」

 

夏侯淵「・・・・で、どうして剣崎もそんな籠を背負っているのだ?」

 

真「・・・俺の部屋には籠は無い。それと一つ、…この中は季衣への土産が入っている。」

 

夏侯惇「・・・むぅ。」

 

華琳「それで、視察はちゃんと済ませたのでしょうね。籠なり土産なりを選ぶのに時間をかけすぎとは、言わせないわよ。」

 

夏侯惇「はっ!」

 

夏侯淵「無論です。」

華琳「ならいいわ。帰ったら今回の視察の件、報告書にまとめて報告するように。・・・・真もね。」

 

真「・・・・・うい。」

 

 

と帰ろうとした時

 

???「そこの若いの・・・・・・」

 

華琳「・・・誰?」

 

???「そこの、お主・・・・」

 

 

その声に一同は後ろを振り向く。そこにはローブを着て顔は見えないが、かなり年寄りと言った感じの奴がいた。

 

夏侯惇「何だ?貴様。」

夏侯淵「占い師か・・・・・・」

夏侯惇「華琳様は占いなどお信じにならん。慎め!」

 

 

語尾を強める夏侯惇を華琳は手を出して諌める

 

華琳「・・・・・春蘭、秋蘭。控えなさい。」

夏侯惇「は?・・・・・・はっ」

 

そう言われれば、夏侯惇は下がるしかなかったそれを見てか、占い師は言葉をゆっくりと紡いでいく―――

 

占い師「強い相が見えるの・・・・・・。希にすら見たことの無い、強い強い相じゃ。」

華琳「一体何が見えると?言ってご覧なさい。」

占い師「力ある相じゃ。兵を従え、知を尊び・・・・・・。お主が持つは、この国を満たし、繁らせ栄えさせる事の出来る強い相・・・・・・。この国にとって、稀代の名臣となる相じゃ・・・・・・」

夏侯惇「ほほぅ。良く分かっているではないか。」

 

真「・・・・・・・・・・・・」

占い師「・・・国にそれだけの器があれば・・・・じゃがの。」

夏侯淵「・・・どういうことだ?」

占い師「お主の力、今の弱った国の器には収まりきらぬ。その野心、留まるを知らず・・・・溢れた野心は、国を犯し、野を犯し…いずれ、この国の歴史に名を残すほどの、類い稀なる奸雄となるであろう。」

夏侯淵「貴様!華琳様を愚弄する気か・・・・・・っ!」

華琳「秋蘭!」

夏侯淵「・・・し、しかし華琳様!」

華琳「そう。乱世においては、奸雄になると・・・・・・?」

占い師「左様・・・それも、今までの歴史にないほどのな。」

そんな占い師の言葉に、華琳は笑みを浮かべる。

華琳「・・・ふふっ。面白い。気に入ったわ。・・・・・秋蘭、この占い師に謝礼を」

夏侯淵「は?」

華琳「聞こえなかった?礼を。」

夏侯淵「し、しかし華琳様・・・・・」

華琳「・・・真。この占い師に、幾ばくかの礼を。」

真「・・・・・・・・・」

真は占い師のそばにあった椀に適当に貨幣を入れる。そんな占い師を秋蘭は、静かに睨みつけていることが分かる。華琳を悪く言われたことに相当おかんむりの様だ。

華琳「乱世の奸雄大いに結構。その程度の覚悟もないようでは、この乱れた世に覇を唱えるなど出来はしない。そういうことでしょう?」

 

 

華琳はこういうことに妙に寛容だ。

 

占い師「それから、そこのお主。」

真「・・・・・?」

占い師「お主は将来、生と死の選択が待っておるだろう。そして、自分がどうしたいのか・・・・心して探っておきなされ。」

 

真「・・・・・・・・・・・」

 

 

生と死の選択・・・・・・・それがなんなのか、真は分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで帰り道。

 

 

華琳「・・・・・それにしても春蘭。よく我慢したわね。偉かったわ。」

 

夏侯惇「・・・・はぁ。」

 

 

そういえばそうだ。いつもなら華琳の悪口を言っただけで頭と体がおさらばなどありえる話。だが、今回は違っていた。これは成長したと言えるべきか?

 

 

夏侯惇「・・・・なぁ、剣崎。」

 

真「・・・・?」

 

夏侯惇「乱世の奸雄とは、どういう意味だ?」

 

華琳「・・・・・・・・・」

 

夏侯淵「・・・・・・・・・」

 

真「・・・・・・・・そういうこと。」

 

 

前言撤回。どうやら我慢ではなく、疑問の方だった。

 

 

夏侯淵「・・・・姉者。奸雄というのは、奸知に長けた英雄ということだ。」

 

夏侯惇「・・・・そうか、かんちか。」

 

 

絶対分かってない。by ガリ

 

 

華琳「奸知とはズル賢く、狡猾な、という意味よ。」

 

夏侯惇「ええと、ということは・・・・」

 

真「…世が乱れれば、ズル賢い手段で上へのし上がる、…ひどい奴って意味だ。」

 

 

真は奸知を簡単に説明した。すると、

 

 

夏侯惇「な・・・・なんだとぅ!?貴様、言うに事欠いて華琳様に何ということをっ!! #」

 

真「俺が言ったんじゃない・・・そじでぐびじめんなぁ・・・・・ぐぇ・・・・・」

 

夏侯惇「華琳様、すぐに引き返しましょう!あのイカサマ占い師め!木っ端微塵に叩き斬って、城の外堀に放り捨ててくれる!」

 

華琳「・・・・だから、いいと言っているでしょう、春蘭。とりあえず真を離しなさい。」

 

夏侯淵「そうだぞ。落ち着け、姉者。占い師より先に剣崎が死んでしまう。」

 

夏侯惇「これが落ち着いてなどいられるか!くそぅ!! 」

 

真「ぁぅ・・・・・・・」

 

 

真は苦しそうだ。真顔だが。

 

 

夏侯惇「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日、ある店。

 

 

旅芸人三女「・・・・はぁ、今日の実入りも、今一つだったわね。」

 

旅芸人次女「あーあ。こんなんで大陸一の旅芸人になれるのかなぁ・・・・・」

 

旅芸人長女「ほら、二人共、気にしないの。明日はきっと、良いことあるってー。」

 

 

姉妹かなにかの三人は輪になりながら話をしている。

 

 

旅芸人次女「天和姉さんは気楽で良いわよねぇ・・・・」

 

旅芸人長女「えー。ちーちゃんもれんほーちゃんもひどーい。」

 

旅芸人三女「それより、何か新しい策を考えないと、本当に行き倒れよ?もう宿泊費もあまりないのだから・・・・」

 

旅芸人次女「ちょっと、せっかくこんな都会まで来たのに、また田舎まわり!?私、絶対ヤだからね!! 」

 

旅芸人三女「私だって嫌よ。・・・・・もっと大きな都で有名にならないと、高が知れているもの。」

 

旅芸人長女「もぅ、二人共辛気臭いなぁ・・・お姉ちゃん、外の空気吸ってくるからねー。」

 

旅芸人次女「はいはい。あーあ、誰か後援者が付いて、大陸中を回ったり出来ないかなー・・・」

 

旅芸人三女「それならせめて、もっと有名にならないとね。」

 

 

 

 

旅芸人長女「あーっ、空気がおいしー!」

 

 

場所は変わって、店の外で旅芸人が空気を吸っている。

 

 

旅芸人長女「まったくもぅ?。人生まだまだ長いんだから、二人共もっと楽しくやれないかなぁ・・・?」

 

???「あ・・・あのっ!」

 

旅芸人長女「んー?誰ですかー?」

 

 

突然誰かに呼ばれ、旅芸人は振り向く。そこには一人の男が立っていた。

 

 

男82番「張三姉妹の、張角さんですよね!」

 

張角「そうですけどー。」

 

男82番「あの、俺・・・・張角さんの歌、凄く好きなんです!これからも頑張ってください!」

 

張角「え?本当に?ありがとうございますー♪」

 

男82番「あと・・・良かったらこれ、もらってください!よく知らない貴重な本らしいですから、売ったらちょっとはお金になります!活動資金の足しにでもしてください!」

 

 

そう言って出したのは、黄色い包み。怪しい。

 

 

張角「え?いいんですかー?嬉しいですー♪」

 

 

そう軽々言って受け取る張角。勇気あるね。

 

 

男82番「うぉ・・・あ、握手まで・・・・!こっちこそありがとうございます!この手もう、一生洗いません!」

 

張角「あはは♪ 厠に行ったらちゃんと洗わなくちゃ駄目ですよぉ♪」

 

男82番「それじゃ、失礼します!追われているので!」

 

張角「はぁ・・・・?」

 

 

そして男は走っていった。

 

 

張角「何だったんだろ・・・・?」

 

季衣「あの、すいませーん。さっきこっちの方に、怪しい男が来ませんでしたかー?」

 

張角「怪しい人?さぁ?見てないですけどー・・・・」

 

季衣「そうですか。ありがとうございます!じゃ、次はあっち探しに行くよ!」

 

兵士19番「あらほらさ…間違えた・・・・はっ!」

 

 

そう言うと季衣はさっき逃げていった男の方へと行く。それと同じように、兵士も続いていく。

 

 

張角「なんだか皆忙しそうだなぁ・・・・」

 

旅芸人三女「どうしたの、姉さん。何か騒がしかったみたいだけど。」

 

張角「んー・・・良く分かんない。」

 

旅芸人次女「あれ?その黄色い包み、何?」

 

張角「なんかお姉ちゃん達を応援してくれてるって人からくれたの。売ったらお金になるかもってー。」

 

旅芸人次女「ホント!?ちょっと、見てみましょうよ!」

 

張角「あーっ!お姉ちゃんがもらったんだから、お姉ちゃんが開けるのー!」

 

旅芸人次女「・・・・はいはい。分かったから、早く開けてよ。」

 

???「開けちゃ駄目だ!開けたら死ぬぞ!」

 

張角「えへへー。じゃーん!」

 

 

張角が黄色い包みを開ける。そこには、濃い紫色の竹簡らしき物があった。

 

旅芸人次女「何これ・・・古い・・・・竹簡?」

 

旅芸人三女「表題が書いてあるわ。ええっと・・・・南華老仙・・・・・太平・・・要術・・・・?」

 

旅芸人次女「何これ?こんなボロボロの本、本当に売り物になるのぉ?」

 

旅芸人三女「好事家なら、内容次第で高く引き取ってくれると思うけど。でも・・・・・ちょっと待って?これ・・・・」

 

張角「ねぇねぇ、ちーちゃん。これ売ったら、もうちょっとこの街にいられるかなぁ?」

 

旅芸人次女「お金も良いけど、なんかこう、私としては、凄く売れっ子になる方法とかが書いてあると嬉しいんだけどなー。」

 

旅芸人三女「・・・・天和姉さん。」

 

 

二人の会話に挟む三女。

 

 

張角「なにー?」

 

旅芸人三女「これ、凄いわ・・・。私たちの思いも付かなかった有名になる方法が、たくさん書いてある。」

旅芸人次女「ちょっと・・・ホントに!? さっきの冗談よ?」

旅芸人三女「冗談なんかじゃないわよ。これを実践していけば、きっと・・・・大陸を獲れるわ!私達の歌で!」

 

旅芸人次女「ホントに!?」

 

旅芸人三女「ええ!」

張角「よ、よくわかんないけど、すごいのねー。」

 

旅芸人三女「そうよ!凄いのよ!」

旅芸人次女「よぉっし!ならわたしたち三人、力を合わせて歌でこの大陸、獲ってみせるわよ!いいわね!」

張角「おおーっ!」

旅芸人三女「ええ!」

 

 

この後、時代は黄巾の乱に突入していく―――

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

どぅうも!ガリ眼鏡である!

 

 

今月は三月後半。私の高校生時代もあと一年となります。

 

 

思えば、小学校から今まで厳しいことがありながも、生きてきたことがあったような、なかったような・・・・・・・・

 

 

まぁどうでもいい。

 

 

さて次回はいよいよ黄巾の乱が始まるわけですが、最終話まで長いものだ・・・次回はどういう話にしようかしら?

 

 

とりあえず。真と一刀との初対面はいれておきたいなぁ。・・・・・・カオスになるかもしれませんが、次回も楽しみに待っててください。

 

 

ではまた!

説明
武人として、第六話!

ではどうぞ。
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