外史を駆ける鬼・IS編 第002話(改正版) |
とある孤島の篠ノ之研究所のIS実験室にて稲妻の様な閃光が光り、閃光が収まり一室を覗いてみると、そこは耐熱、防弾機能を備えた壁質の特殊なラボになっており、その隣の特殊ガラスを隔てた部屋に、反射光防止のマスクをつけた束がおり、ラボにいた人物は重昌であった。
漂う煙が晴れてきた後、見えてきた彼の姿は、何やら特殊な黒いボディスーツを着ており、大量の汗をかいて息も荒く、重昌は疲労により片膝をついてしまう。
「やったよ…遂に完成だよ。重ッチのISのワンオフ・アビリティー。やっぱり天才は違うね、流石私。これでISの名前も付ける事が出来るね」
喜び勇んでいる彼女は、自身の落ち着きを取り戻した後に、重昌のISの名を言った。
その名を「戦鬼」。
外史を駆ける鬼・IS編 第002話(改正版) 「一時の別れ」
今日は重昌の日本に向けて旅立つ日。
ちょうど4月が終わり、5月に入った辺りの頃であろう。
「ぶぅぶぅ。重ッチが行ってしまったら、また私が一人ぼっちになっちゃうじゃん」
「あのなぁ。そもそも私に日本のIS学園に転入させようと計画したのは、君であろう?束」
彼がこの孤島を離れ、束の指定する、とある場所に向かう算段は、以前よりついていたはずなのだが、いざ当日となると、自分の立てたはずの計画であるのに、今現状はこの様な状態である。
ちなみにある場所とは、世界各国より受験者が殺到している、世界一の偏差値を持つIS学園のことであるであり、勿論最近噂となっている、ISを始めて動かせる様になった男以外は全員女子だ。
束は最初の約束通り、重昌を好きに使おうとした。
ある一人の人物の監視の為にだが、どんなに日本戸籍を入手しようと、明らかに18には見えないオジサンが生徒として乗り込むのは限界がある。
最初は学園の食堂の料理人や清掃員にでもしようとしたが、それでは監視に制限がかかってしまう。
そこで束が冗談半分で「(力で)若返る事は出来る?」っと聞くと、重昌は鬼の力により見た目を20代前半に若返らせた。
これであれば、いきなりISを動かせる事が出来た大学生男子的なカバーストーリーが作れる。
とある大学生が成り行きで触れたISを動かしてしまい、大学生は密かに訓練、そして豪州の適正試験に合格し、豪州代表として任命される。
っと、まぁこんな簡単なカバーストーリーも用意してみた。
ストーリーと共に日本戸籍をハッキングで入手。
元は孤児としておけば、家族も親戚もいないく怪しませることもない。
だが、4月の入学の時期を迎え、いまさら偏差値世界トップクラスのIS学園に簡単に入れるのは難しい。
その為の国代表の肩書きである。
また国代表であるからには、ISの知識だけであれば網羅している。
だから試験も何も無く、無償で学園に編入することが出来る。
しかし念の為、重昌は半年でISに関する知識は全て頭に叩き込んだ。
もっとも、近くにいい感じの天才家庭教師が、天才に教えるのだ。
飲み込むのも早くて当然。
さて、話を戻そう。
重昌はIS学園の生徒になり、ある一人の人物を観察しにいく。
その計画の発案者が、今こうして駄々を捏ねているのである。
「いっちゃやだぁぁ〜。もう重ッチのご飯食べれなくなっちゃうぅぅ〜」
「ちゃんと私の味を再現出来る、ボタン一つで作ってくれるロボットを作ったじゃないか?」
「やだぁぁ〜、重ッチの手料理がいいのぉ」
駄々捏ねる彼女に「たまには帰ってくるから」と頭を撫でて言い、重昌は日本へ旅立った。
そして日本。
重昌はIS学園に向かう道を進んでおり、束に作ってもらった学生証を見ながら呟く。
「ふっ、学生で20か。あの頃の私は…って一体何を年寄り臭い事言っているのだろうか私は。今の私は二十歳……だめだ。今更若者気分には戻れない」
彼は明らかに年老いた考えを持った自分に嫌気がさし、つい頭を抱えてしまう。
そんな町行く彼に、周りの人の注目が走る。
それもそうだ、なにやら頭を抱え悶えながら歩く黒い着物を着た男性がいるのだから、怪しいとしか言い様が無い。
そんなこんなで重昌はIS学園の前に着く。
IS学園はアラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校。
操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成されるらしい。
また、学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという。
つまり学園内でどうどうと獲物を持ち歩こうとも銃刀法違反で捕まることはないが、勿論何か問題を起こせばその者になんらかの処分が下されるのは言うまでもない。
IS学園は先の説明にあった様に、ISのあらゆる関係者が輩出場所であるので、学園にはあらゆる施設が揃っており、他にも時に各国の首脳陣や軍事関係者も来日するので、それらに対する設備も完璧。
学園の土地の規模だけでも馬鹿にならず、海の上に作られたものであるので、ある種の島の様でもある。
一般的な交通手段は、学園に通じる電車であり、線路では無く、モノレールの様な形である。
その学園の規模には淡々と驚かされ、只今は学園の生徒校舎前の門を彷徨いていた。
まだ彼の制服は支給されておらず、IS学園は基本女子校であり、学生証を見せても信じられない場合がある。
この学園の教務課に連絡すればそれなりの配慮をしてくれるであろうが、【普通に入るのはおもしろくない】と思い、彼は今朝作った自らの弁当を取り出した。
「警備員さん?すみません、学園関係者の家族の者ですけど。弁当を忘れたのを届けに来ました。入れてもらえませんか?」
重昌は門の前にいる警備員に話しかけ、芝居で入れてもらう賭けに出た。
警備員もいきなり黒い着物姿の若者が、学園の関係者の家族だと言う事に疑問を持ち確かめる。
「家族?一体誰の?」
「この学園の数学教師で1年3組担当のエドワース・フランシィです。彼女は私の従姉妹にあたります。エドワースに”従兄弟が来た”と伝えてくれれば大丈夫ですから」
自分の生徒手帳の方に『教員一覧』というものがあり、手頃そうな人物の名前をあげてみただけである。
そう言うと、警備員は門にある警備員室の中の電話で職員室に電話をかけ、その間に重昌は学園を門越しに見ながら何かを思考する。
【……あそこ辺りが職員室と考えて、人が通りそうで尤も一点に目立つ場所は……ヨシッ!】
突然彼は赤い紙とペンを取り出し何かを書き始め、書き終えるとそれを紙飛行機にして、とあるスーツ姿の女性が門の前に向かって来るのを確認する。
重昌はその女性の足元少し前辺りに紙飛行機を飛ばし、女性は拾い紙飛行機を開ける。
スーツ姿の女性はクスリと笑い門に向かって来た。
「どうしたの?重ちゃん。学園にまで来て」
「エド姉さん。弁当忘れた貴女にわざわざ届けに来たのに、『どうした?』はないだろう?」
「フランシィ先生。この人とは知り合いで?」
学園の教員と話す怪しい青年を不思議がり、警備員はフランシィに声をかけた。
※以降はフランと略す
「私の従兄弟なの。ちょうどいいわ、重ちゃん。せっかくだからこの学園を見学していきなさい。警備員さん、彼に一時期入校許可書を与えて頂戴」
警備員は「先生の家族でしたら」と言い、一時期入校許可書のネームプレートを作成し「出る時に返すように」と忠告し重昌に渡す。
そして警備員が見えなくなった辺りのところで、フランは話し出す。
「それにしても、なかなかおもしろい行動に出ましたね。新入生の影村くん?」
「いや、この学園はほぼ女子高ですし、それにISを動かせるようになった二人目の男子と言って学生証を見せても、『嘘だ!!』と言われ追い返されると思いまして。それに先生はカナダ人なので、もしかするとユーモアでこういうことに乗ってくれると思いましてね」
ニヤリと笑った彼に対し、フランはケラケラと笑い飛ばした。
「全く。いきなり紙飛行機が飛んできて、”芝居に協力しろ”という内容の文章だからつい乗ってしまったよ。なかなか楽しかったぞ。さて、それではとりあいず学生寮や学園の設備などを説明して周るから、終われば放課後まで学園内を好きに周っていろ。制服は織斑千冬と言う教師に渡しておくから、それも放課後、職員室に取りに来い」
そうして授業中の時間に彼は学生寮の位置などの説明を受け、全ての説明を終えて職員室前で自由行動になった時、持っていた自分の弁当をお礼にフランにあげると、彼女からは「結婚してくれませんか?」と上機嫌の反応を貰い職員室を後にした。
また学園は授業時間から昼休みに突入していた。
授業を終えた者達が教室を出て、「今日は食堂の何食べる」や「バレーボールしよう」などの声が飛び交っている。
その中を黒い着物を着た一人の二十歳の男が徘徊しているので、周りにいる女生徒達にいやでも注目がいく。
ひそひそと小声で2、3人に固まり話している者たちもいた。
「…やはり許可書があっても、女の中に男一人は目立つな」
それ以前に着物姿でいることが不自然であろう。
校舎の建物を見て周っている重昌の上に一つの花瓶が落ちてくる。
生徒が廊下でつまずいた時に放り投げてしまい、放物線を描き窓の外に飛び出したらしい。
それに気付いた女生徒は彼に「危ない」と警告するが、難なく花瓶を受け取り、何処か人の手が届く高い場所に置く。
状況を見ていた周りの大体が【避ける】か【ぶつかる】かと思い、まさか軽く受け止めるなど予想しなかった人達は唖然としている。
こうして彼は大体のめぼしい所を巡り、約束の時間(放課後)となり職員室へ向かった。
巡っている途中何人かに「父兄の方?」と聞かれたが、そこは適当にごまかした。
そして職員室にて。
「お前か?ISを動かせる様になった二番目の男と言うのは?」
「イエッサー!ブリュンヒルデ!」
そう言い重昌はとある女性に敬礼するが、言われた本人は「止めろ」と不服そうに頭を抱えて言う。
彼の目の前にいる黒スーツにタイトスカート、女性にしては高い166cmのスラリとした長身、よく鍛えられているが過肉厚でないボディラインであり、狼を思わせる程のつり目の女性は織斑千冬。
ISの第1回IS世界大会(モンド・グロッソ)総合優勝および格闘部門優勝者であり、この学園の教師。
彼女に敬意を評して「ブリュンヒルデ」と呼ばれる者もいるが、彼女はその呼び方を嫌っている。
「まぁいい、お前は明日からこの学園の生徒だ。これは制服と授業のスケジュール表。学生寮の部屋は普通二人で一つなのだが、暫くは一人で使え。私は1組担当でお前の担任ではないが、それでも気を抜かずに学業には励むように」
「イエッサー!ブリュンh「だからそれは止めろ」」
彼は言葉を途中で遮られ、千冬にありがたいチョップを貰うと、借りていた許可証を返し、「イテテ」と頭を撫でながら、職員室を後にした。
重昌がいなくなった職員室で、周りの教師は千冬のチョップにあまり応えていない輩を見て「おぉ〜」と驚愕の声を漏らすが、千冬は自分の机の上の彼の資料を見て不思議に思う。
【何故だ?いきなり候補生ではなく代表が編入してくるなど。資料では二十歳となっているが、あの落ち着き払った姿勢、つい殴ってしまった時の感触、明らかに二十歳の者ではない。いや、少なくても多くの戦場を駆け抜けた者と見えてしまったが?……しかし見た目はしっかり二十代前半だ。私の考え過ぎなのか?それとも束。またお前が一枚絡んでいるのか?】
千冬がそう考えていると、重昌は何故か一人も人に見つからずにこっそり自分の部屋まで来た。
気分はどこぞの固体の蛇の如く。
そしてその日の疲れを癒すようにシャワーを浴び、浴び終えると髪を拭きながら下着姿だけで自分のカバンよりノートPCを取り出し起動させる。
【束、大丈夫かな?ちゃんと食ってるか?部屋を散らかしていないか?裸で寝ていないか?……ダメだ、止めよう。鬱になる。私の親馬鹿癖も直らないな】
重昌がうな垂れている間に、PCの起動音がし、重昌はあるファイルを開きパスワードを打ち込む。その画面に出てきたのは……
Misson”織斑一夏の行動の観察について”
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昔投稿した作品の改正(ry まじかるー |
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