管理者からの御遣い 魏√ 4 |
盗賊団は山の影にひっそり隠れるように立てられていた。
許緒とあった場所から離れてはいなかったが・・・・・かなり分かりづらい所にあった。
近付けば、気取られる可能性があったため、砦からは離れたところに布陣した。
華琳「許緒。この辺りに他の盗賊団はいるのかしら?」
許緒「いえ。この辺りにはあいつらしかいません。曹操さまが探している盗賊団も多分あいつらだと思います」
華琳「敵の数は把握できている?」
秋蘭「はい。およそ三千との報告がありました」
一刀「此方の兵数は千と少し、約三倍近くあるな。」
桂花「最も連中は、唯の烏合の衆。統率、訓練もされておりません。我々の敵ではないかと
華琳「けれど、策はあるのでしょう? 糧食の件。忘れたとは言わせないわよ」
桂花「無論です。策は既に我が胸の内に」
華琳「説明なさい」
桂花「はっ。まずは曹操様は少数の兵を率いて、砦の前で部隊を展開します。その間に夏侯姉妹の両名は、残りの部隊を率いて後方の崖に待機します。本隊が銅鑼を鳴らし、盛大に攻撃を匂わせれば、誘いに乗った敵は必ず食いつくでしょう。その後曹操様は兵を退き、砦から引き離した所で・・・・」
一刀「両夏侯で背後を突く」
春蘭「ちょっと待って。華琳様を囮にしろと、そういうことか!」
華琳「そうなるわね」
桂花「何か問題でも?」
春蘭「大有りだ!そんなこと華琳様にさせるわけにいかん!」
桂花「だったら、あなたにはもっと有効な策があるの?」
春蘭「烏合の衆なら、正面から叩き潰せば良かろう」
華琳「・・・・・・・」
桂花「・・・・・・・」
一刀「・・・・・猪」
桂花「油断した所に伏兵が現れれば、相手は大きく混乱するわ。混乱した烏合の衆はより倒しやすい。時間と兵を最小限に抑えるには、一番の策だと思うのだけれど?」
春蘭「なら、相手が挑発に乗らなければ!」
一刀「・・・・・春蘭。相手は志を持たず、武を役立てることなく単純な阿呆だぞ。少数部隊で砦の前で陣取れば、自分達よりも弱いと判断し突っ込んでくるぞ。猪の如くね」
春蘭「な、なんだとぉーー!」
華琳「はい、どうどう。春蘭。あなたの負けよ」
春蘭「か、華琳さまぁ〜・・・・・」
華琳「しかし、春蘭の心配も最もよ。その辺りは如何なのかしら?」
桂花「この近辺で拠点になりそうな城の見取り図は既に。あの城も確認済みですので、万が一誘いに乗らなければ、城の内側から攻めます」
華琳に認めてもらうために全て整えていたな。用意周到なやつだ。
華琳「なら、この策で行きましょう」
春蘭「華琳様!」
華琳「これだけ勝てる要素が揃っているのに、囮の一つも出来ない様では・・・・・・覇道なんて夢のまた夢よ」
一刀「そうだな。華琳は覇者に成ろうとしている、たかが族如きに潰しても人の頭には残らない」
桂花「ですが、最小限の損失や最高の戦果を挙げれば、天下に曹孟徳ありと示すことができます」
春蘭「ならば、せめて華琳様の護衛として許緒を付けさせてもらう!」
桂花「許緒は貴重な戦力よ。伏兵の戦力が下げるのは好ましくないのだけれども・・・・・・」
一刀「だったら、俺が許緒の代わりに囮部隊に入ろう。許緒は春蘭たちの元に」
許緒「兄ちゃん、大丈夫?」
一刀「俺も武人だ。主を守るぐらいは、やってのける」
桂花「・・・・・分かったわ。囮部隊は曹操様と私、黄飛。伏兵は夏侯惇と夏侯淵、許緒。これでよろしいでしょうか、曹操様」
華琳「それでいきましょう。一刀、私をしっかり守りなさい」
一刀「任せておけ」
春蘭「一刀!貴様、華琳様に何かあったらただでは済まさんぞ!たてになってお守りするのだぞ!」
一刀「分かっている」
華琳はこっちを見て小さく笑っていた。
華琳「では作戦を開始する!各員持ち場につけ!」
力強いで声で指示を飛ばしていった。
春蘭たちの隊は離れていく。
此方のへ兵数は数えるほどに。
華琳と桂花は自信たっぷりな顔立ちだが・・・・・・まぁ、大丈夫だろ。
許緒「兄ちゃん」
一刀「ん?許緒か」
季衣「季衣でいいよー。春蘭さまと秋蘭さまも、真名で良いって言ってくれたし」
一刀「そうか・・・・・・だったら、俺も預けておくか。俺の真名は一刀だ。」
季衣「兄ちゃん。頑張ってね」
一刀「あぁ、季衣もな」
桂花「黄飛!早く着なさい。作戦が始められないじゃない」
戦いの野に、激しい銅鑼の音が響き渡る。
華琳「・・・・・・・」
響く・・・・・・・。
桂花「・・・・・・」
・・・・・銅鑼の音は、こちらの軍のもの。
だが、咆哮は、城門を開け飛び出してきたのは盗賊団たち。
一刀「・・・・・・出てきてしまったな」
華琳「・・・・・桂花。これも作戦のうちかしら?」
桂花「いえ・・・・・・流石に想定外です・・・・・」
一刀「作戦が台無しだな・・・・・。あやつら、出陣と間違えたようだな。挑発でも、考えていたのか」
華琳「そうね、大した内容ではないから、次の討伐にでも使うことにするわ」
一刀「ん?、敵がこっちに突っ込んでくるな」
華琳「・・・・・・まあいいわ。ズレが生じたものの、予定通りにするまで。総員、敵の攻撃を適当にいなし、後退するわよ!」
兵士「報告!曹操さまが後退しました!」
春蘭「やけに早いな。華琳様の御身に何か!」
秋蘭「いや、隊列に乱れが生じていない、作戦が予想の上を言ったか・・・・・。そういう所だろう」
春蘭「そ、そうか・・・・・」
秋蘭「よく見ろ、姉者。あそこに華琳様が居られる。一刀も桂花も無事のようだぞ」
春蘭「おぉ、よかった。総員、突撃用意!頼むぞ、秋蘭」
秋蘭「応!夏侯淵たい、撃ち方用意!」
春蘭「総員攻撃開始!相手の混乱に呑まれるな!混乱は相手だけにせよ!」
秋蘭「敵中央に、一斉射撃!撃てっ!」
春蘭「暴徒の群れなど、端から叩き潰せ!総員、突撃っ!」
兵士「後方の崖より夏侯惇さまの旗と、矢の雨を確認! 奇襲成功しました!」
華琳「流石ね、秋蘭」
一刀「はぁ・・・・春蘭も見習って欲しいものだ・・・・」
華琳「そうね、この隙を突いて、一気に畳み掛けるわよ」
桂花「はっ」
華琳「一刀、あなたの力見せて頂戴」
一刀「あぁ」
華琳「総員反転!数を頼りの盗賊如きに、本物の戦が何かを叩き込んでやりなさい!総員突撃!」
兵士「「「おおおおおぉぉぉ!!!」」」
盗賊討伐は、呆気なく終ってしまった。
両夏侯と季衣の伏兵が上手いこといなした。
桂花「逃げ出す者は逃げ道を無理せず塞ぐな!後方からの追撃がある、放っておけ!」
一刀「相手、可哀想・・・・・」
桂花「正面から受け止めて、噛みつかれるよりマジでしょう」
秋蘭「華琳様、ご無事でしたか」
華琳「ご苦労様、秋蘭。見事な働きよ」
一刀「ん?春蘭どうした?」
桂花「どうせ追撃しだいだろうから、季衣に夏侯惇と追撃に行くよう、指示を出したわ」
やるな、春蘭の性格を初陣で見抜くか、流石は王佐の才。
よく見ている。
華琳「桂花も見事な作戦だったわ。負傷者も殆どいない様だし上出来よ」
桂花「あ、ありがとうございます」
華琳「それと・・・・・一刀」
一刀「ん?」
華琳「あなたも、よくやったわ」
一刀「御大将を守るのも臣なる役目、華琳に怪我なく良かったよ」
その後、城を落とした春蘭たちが戻ってきた。
秋蘭「一つ心残りなのは、華琳様が気にかけておられた古書が見つからなかった事だけ」
春蘭「うむ。大変用心の書だな」
一刀「・・・・・・・・太平要術」
華琳「一刀は知っているの?」
一刀「知識としてな・・・・確か、中身はかなり危険なものだったはず」
華琳「良く知っているわね。まぁ、いいわ。代わりに桂花と季衣を手に入れることができたのだから」
一刀「そうか・・・・・。季衣は華琳の臣になったのか」
季衣「うん!それにボクの村も、曹操さまが治めてくれことになったんだ。今度は、ボクが曹操さまを守るんだ」
一刀「ほう。それって」
秋蘭「この辺りを、治めていた州牧が、恐れをなして逃げ出したらしくな。華琳様が州牧の任を引きつぎ、治めることになったのだ」
春蘭「それと季衣には、今回の武功をもって華琳様の新衛隊を任せる事になった」
一刀「そうか、よかったな。季衣」
季衣「これから、よろしくね、兄ちゃん!」
一刀「あぁ」
華琳「さて・・・・・桂花」
桂花「・・・・・はい」
華琳「約束は・・・・・覚えているわよね。私は、お腹が空いているの」
そう。予想外の事態が起こったんだよな。
兵が多く残ったことと、季衣が大食いだったことで原因で俺達は朝食を食べずにいる。
華琳「けれど、桂花。あなたの才を此処で潰すことはできないわ。あなたには私の真名を許しましょう」
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