英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク |
〜遊撃士協会・ロレント支部〜
「お、やっと帰ってきたか。」
「どうした?やけに遅かったじゃないか。」
「あれれ?そのシスターの人って、誰ですか??」
レン達がギルドに戻ると既に戻っていたルーク達がギルド内にいた。
「ええ、色々あってね。」
「お兄様たちがいるって事は鉱員の人達やママの護衛は無事終わったのかしら?」
「ああ、すでに向こうに連絡が行ってたらしくてな。すぐに出発できたから意外に早くかえってこれたぜ。」
「ただ、帰る途中で奇妙な魔獣が現れてな。しかもアネラスの方にも現れたらしいから、その事を話していたんだ。」
「―――もしかして霧の中から現れて、倒すと消滅する魔獣かしら?」
ルークとガイの話から何かを察したレンは真剣な表情で尋ね
「えっ!?レンちゃんが知っているって言う事は……!」
「そっちにも現れたのか……」
「こりゃ完全に狙って現れているとしか考えられないな……」
レンの質問を聞き、レン達も自分達が戦った魔獣と戦った事を察したアネラスは驚き、ルークとフレンは真剣な表情で考え込んでいた。
「先輩達は怪我はなかったんですか?」
「レン達の方は大丈夫だったんだけど……」
「…………………」
「何かあったみたいね。報告してもらえるかしら?」
アネラスの質問を聞き、言葉を濁しているレンと複雑そうな表情で黙り込んでいるシェラザードの様子から只事ではない事を察したアイナは真剣な表情で尋ねた。
そしてシェラザード達は農園で起こった出来事について一通り報告した。
「そう……一足遅かったみたいね。」
二人の報告を聞いたアイナは昏睡事件の犠牲者を増やしてしまった事に悔しさや無念を感じながら疲れた表情で溜息を吐いた。
「……あたしの失態だわ。もう少し上手く立ち回れば犯人を捕まえられたのに。」
「気にすることはないわ。どうやらあなた達は、罠にかけられたみたいだし。」
後悔しているシェラザードを慰めるかのようにアイナは真剣な表情でシェラザード達に非は無い事の理由を話し
「わ、罠!?」
「やっぱり、ね。」
理由を聞いたルークは驚き、レンは冷静な様子で頷いた。
「話を聞く限り、農園に入ったと同時に聞こえてきた鈴の音……。待ち伏せしていた霧の魔獣、そして鍵のかかった正面玄関……。ギリギリのタイミングでシェラザードたちが間に合わないよう計算された感じだな。」
「た、ただの偶然って事はありませんか?」
フレンの推測を聞いたアネラスは信じられない表情で尋ね
「いや、昏睡事件を考えても『黒衣の女』はかなり巧妙な女だ。シェラザード達が護衛する人々をわざわざ先回りして眠らせた………もしかしたら挑発しているかもしれねえな。」
「「………………………………」」
フレンの推測を聞き、心当たりがあるシェラザードは浮かない表情で、レンは真剣な表情で黙り込んでいた。
「そう言えば……そちらのシスターの方は何者かしら?もしかしてルーク達が帰る途中に会ったという”星杯騎士”の方かしら?」
その時カリンに視線を向けたアイナは尋ね
「いえ、私は”星杯騎士”の方達にお世話になっているだけで、厳密には違います。私の名はカリン・アストレイ。ヨシュア・アストレ―――いえ、ヨシュア・ブライトと血が繋がっている姉です。」
「何ですって!?」
「ヨ、ヨシュア君のお姉さん!?ど、どうしてヨシュア君のお姉さんが”星杯騎士”の人達にお世話になって……い、いえ何で今シェラ先輩達と一緒にいるんですか!?」
カリンの正体を知ったアイナは驚き、アネラスは信じられない表情で尋ねた。
そしてシェラザード達はカリンがシェラザード達に同行している理由を説明した。
「なるほど………―――ルーク。彼女の事を黙っていた理由は理解できるけど、せめて受付の私達ぐらいには教えてもらってもいいんじゃないかしら?第一、彼女はヨシュアの手掛かりを探すエステルにとっては重要な人物になるでしょう。」
説明を聞いたアイナは頷いた後責めるような視線でルークを見つめ
「し、仕方ねえだろ。俺達だってカリンの事を知ったのはごく最近だし、ロレントでさっき会ったイオン達からも任務が終わるまではカリンの事を知る人物はできるだけ少なくしてくれって頼まれたんだよ。何でも”結社”の連中にカリンがいる事がバレたら、”星杯騎士団”の重要な任務に支障が出る可能性が出てくるって言ってたし……」
見つめられたルークは慌てた様子で答えた。
「ええっ!?」
「”星杯騎士”にとってカリンさんがそんな重要な人物だなんて……」
「…………………ちなみにその重要な任務というのは一体何なんですか?」
ルークの口から出た予想外の説明にアネラスとシェラザードは驚き、アイナは真剣な表情で考え込んだ後カリンを見つめて尋ねた。
「いえ、私もその事については何も聞かされていません。イオン様達からは今回リベールで暗躍している”結社”に所属している”首謀者”に私がリベールにいる事がわからないように、このシスター服を着て、できるだけ私だとわからないようにしてくれと言われていますので……」
「”首謀者”っつー事は他にも仲間がいるって事か。」
「カリンお姉さんはリベール入りしている”結社”に所属している人達の事は何も教えられていないのかしら?」
カリンの話を聞いたフレンは考え込み、レンは尋ねた。
「それについてはイオン様達もわからないとおっしゃっていたけど……一人だけ、心当たりがいるわ。」
「もしかしてあのロランス少尉って言うアッシュブロンドの髪の凄腕の剣士かしら?」
「―――はい。本名はレオン=ハルト。イオン様達の話によると今のレーヴェは”剣帝”と呼ばれているそうです。」
シェラザードの疑問にカリンは頷いた後複雑そうな表情で答え
「そう言えば女王宮で戦った時、アリエッタお姉さん、あのアッシュブロンドのお兄さんの事、”剣帝”って呼んでいたわね………」
「―――決まりね。だけどカリンさん。その様子からすると”剣帝”とやらと知り合いのようですね?」
「愛称まで付けちゃってますもんねえ。もしかして昔の恋人とか?」
カリンの説明を聞いたレンは女王宮での戦いを思い出し、真剣な表情のシェラザードは苦笑しているアネラスと共にカリンに尋ねた。
「………幼馴染です。正直私もどうしてレーヴェがそのような裏組織に入って多くの人々を傷つけようとしているのか、わからないんです。昔は正義感あふれる人で遊撃士を目指していた人ですから……」
「ゆ、遊撃士ぃッ!?」
「何か込み入った事情がありそうね。フウ、参ったわね……エステルの為にもカリンさんの事をジャンさんに教えておきたいけど、”星杯騎士団”の任務が絡んでいるとなるとおいそれと教える事はできないわね……」
カリンの口から出た予想外の話にルークは驚き、アイナは考え込んだ後疲れた表情で溜息を吐いた。
「だったら、レン達がエステル達と会う事になったら、レン達の口からエステルに伝えるわ。」
「そうね。それが一番安全な伝え方ね。」
「ふう、ただいま戻りました。」
レンの提案にアイナが頷いたその時、ロレント常駐の遊撃士が戻って来た。
「リッジじゃねえか。」
「確か護衛で王都まで行ってたんですよね?」
「ええ、朝早くに向こうを出てやっと戻って来られましたよ。それにしても……いったい何があったんですか?霧の範囲は広がってるわ、街を兵士が巡回しているわ……」
「実は昨日の夕方頃から色々大変なことが起こってね。」
状況を理解できていない遊撃士にアイナは事情を説明した。
「うわ……そんなことになってたんですか。マズイ時に出かけちゃったなぁ。」
「気にする事はねえと思うぞ。この霧の中、護衛をするのも大切な仕事だと思うしな。」
「あたし達がそういう仕事を請けている余裕はないからね。フォローしてくれて助かるわ。」
肝心な時に力になれていない事に気まずさを感じている遊撃士をフレンとシェラザードはそれぞれフォローした。
「こ、光栄です。そういえば……その『鈴の音』なんですけど。それって霧の向こうから聞こえてくるんですよね?」
「ええ、そうよ。」
「何のために鳴らしているのかはっきりしてないんだけどね。」
「そうか……」
「何か心当たりでもあるの?」
シェラザードたちの話を聞き、考え込んでいる遊撃士の様子が気になったアイナは尋ねた。
「さっき、エリーズ街道を通っていた時なんですけど……。かすかに鈴の音を聞いたんです。」
「ええっ!?」
「エリーズ街道のどのあたりで聞こえたの?」
遊撃士の話を聞いたアネラスは驚き、シェラザードは血相を変えて尋ねた。
「え、えっと……。グリューネ門から出てわりとすぐだったから……。ミストヴァルトの方ですね」
「ミストヴァルトか……」
「たしかロレント地方の南東に広がる森だったな。確かに木が生い茂っているあそこなら、隠れるのにもってこいだな。」
遊撃士の話を聞いたルークとフレンはそれぞれ真剣な表情で考え込んだ。
「最初、誰かいるのかと思って聞こえてきた方角に向かって大声で呼びかけてみたんですよ。でも、何の返事もないから気のせいかと思っちゃって……」
「うふふ、もしかしてさっきの農園のようにレン達を挑発しているのかしら?」
「どうします?ルーク先輩、シェラ先輩。」
自分達が挑発されている事にレンは不敵な笑みを浮かべ、アネラスは真剣な表情で先輩遊撃士達の判断を煽いだ。
「危険だけど今のこの状況を解決する為には行くしかないんじゃないか?」
「そうね……。罠の可能性は高いけど飛び込んでみるしかなさそうね。ルークの言う通り、招待に応じさせてもらいましょう。―――カリンさん、貴女はどうしますか?」
ルークの意見に賛成したシェラザードは自分達に協力を申し出たカリンに尋ねた。
「勿論私も微力ながら協力します。ヨシュアを……弟が幸せに暮らしていた第2の故郷の為にも何かしてあげたいですし……」
「そうですか……くれぐれもあたし達から離れないようにしてください。」
「はい。」
その後ルーク達はミストヴァルトに向かった……………
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第52話 | ||
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