義輝記 雷雨の章 その弐拾壱
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【 虎牢関戦 終幕間近 の件 】

 

? 劉岱軍左翼 袁遺陣営 にて ?

 

袁遺「来たか………!」

 

 

謙信「貴方が、あの方術の術者か?」

 

袁遺「……間違い……無い。 どうする? ………力付くで止めるか? だが……術は発動した……限り、定めた敵……葬るか、召喚した者達の………の、頭を潰して、動きを……止めるしか……無い!」

 

謙信「………どちらにしても、事の真偽は不明。 されど、この部隊の指揮するは貴方だ!! まずは、我が軍を勝利に導くため、討ちとらせていただく!!!」 

 

袁遺「………真っ直ぐな視線……羨ましいな……。 いや……このような……将と………対峙出来る事……天に感謝……しよう!!」

 

☆☆★

 

? 劉岱軍 中央 にて ?

 

劉岱兵1「ご、ご注進! 右翼大将『辺允』様 討ち死に!!」

 

劉岱兵2「左翼大将『袁遺』様 敵将と交戦中!!」

 

劉岱兵3「申し上げます!! 元前衛兵 敵中央隊により壊滅! 王匡、鮑信、孔ユウの三将は不明!! 敵は中衛と交戦中!!」

 

劉岱「我が軍有利の報告は、無いのかぁぁぁ!!」

 

劉岱兵4「劉岱様──────!!」

 

劉岱「おぉぉ────! 報告があるかのかぁ!?」

 

劉岱兵4「敵、敵将がぁ──「ザシュ!」───グハッ!!」

 

華雄「貴様か!! 役目を終えた武人達を使役し、己の欲のため皇帝陛下、董仲穎様、天城達を貶める不届き者は!!!」

 

劉岱「い、いつの間に!? くっ! お、お前達! 儂を守れ! 天の御遣いぞ!!」クルッ! ダッ!

 

劉岱兵1「う……、うわあぁぁぁぁ─────!!」ブン!!

 

劉岱兵2「死ね、死ね、死ねぇぇぇ!!!」シャ─ン!!

 

華雄「どけぇ!! お前達如きに討たれる……華雄では、ない!!」

 

    ブシャャャァァァ─────!!

 

劉岱兵達「「 グワァァァァ─────!! 」」

 

☆★★

 

? 洛陽軍 右翼 にて ?

 

歳久「劉岱軍は崩壊寸前です! 今の内に殲滅戦の隊と追討戦の隊を分けましょう!!」

 

家久「あ! でも、追討戦の部隊は『姜伯約』さんが、既に水関で待機してくれているって、伝令が来てたよ!」

 

歳久「では、家久! 私が殲滅戦を指揮しますので『颯馬』に報告「としねぇ行っておいでよ! 颯馬お兄ちゃん心配なんでしょう?」 …べ、別に心配など………ちょっと様子が気掛かりで………」

 

家久「なら、尚更あたしに任せて、行ってらしゃい! 颯馬お兄ちゃんも、待ってるかもしれないよ?! もし、待ってたら、期待を裏切る事になるなぁ……。 可哀想だなぁ─「わっ、わかりました!」」

 

歳久「それじゃ、いえちゃん! 無理が無いように、お願いしますね! 何かありましたら、伝令を送って下さい!!」ダッ!!

 

家久「…………全く、素直じゃないんだからぁ〜。 さて! 島津隊! もう少し頑張ってね! 戦は勝利目前だからぁ!! 」

 

島津隊『ハイィィィ──────!!』

 

★★★

 

信長「義輝! 私達は大分押してるが、後方はどうだぁ!? 戦の状況は!? ここに、敵将が居た筈だが、姿が見えないと言う事は…討ち取ったか!?」

 

義輝「うむ! 手強い奴だったがのぉ!!」

 

光秀「良かった!! ですが……義輝様? 何故、後方より大分離れている前衛に、義輝様がいらっしゃるのです? まさか──!?」

 

信長「おぉぉ! また単騎で突っ込んだか!! 颯馬に叱られるぞぉ?! 『義輝様!!』と大声でぇ──!? ん? どうした?」

 

 

義輝「………そ、そうじゃ!! 颯馬が! 颯馬が!!」

 

光秀「颯馬が、どうしたのです!? 義輝様!!!」

 

義輝「颯馬が倒れたのじゃ!!!」

 

信長、光秀「「 ────────!!! 」」ガシィ!!

 

信長「いつ! いつだぁ!! 答えよ!! 義輝!!!」

 

光秀「義輝様! 颯馬の具合は!?!?」

 

義輝「……………わらわ達が、中央突撃した際に倒れ、信廉が看病しているのを見たが………最後じゃ………!! 様態等は、一切不明なのじゃよ…………………」ググゥゥゥ!

 

光秀「…………そんなぁ…………」ヨロヨロ

 

信長「光秀! ここは私と義輝に任せ、お前は颯馬の様子を見に行け!! 詳細を聞き、私達に使いを送り知らせるのだぁ!!!」

 

光秀「はい!!!」ダッダッダッダッ!!

 

信長「義輝! 今は落ち込んでいる暇はない! ここの勝負事を早急に付けて、颯馬を見舞おう!! 日の本の名高き将達が惚れ抜いた、『憎らしきおのこ』じゃ! そう簡単に………居なくなって、たまるものかぁぁぁぁぁ!!!!」

 

義輝「─────そうじゃな! こんな輩に時間を掛けるなぞ許されぬ!! 本気の本気で討ち滅ぼしてくれようぞ!!!」

 

 

◆◇◆

 

【 新しき仲間 の件 】

 

? 虎牢関 負傷者収容所 にて ?

 

颯馬「今…………戦は…………?」

 

運び込まれて、どれほどの時が経ったのだろうか? 

 

気が付けば………信廉殿と楽文謙が、心配そうに覗きこんでいたが。

 

そ、そう言えば、信廉殿は楽文謙殿を『真名』で呼んでいた……?

 

      バサッ!!  ──スッ! ─スッ!

 

信廉「颯馬! 体調はどうですか?」

 

凪「信廉様! 隣室には別の患者が入っています! あっ! あまり大声を出されるのは、些か礼儀に反すると……思われます………」

 

信廉「うふふふふ………凪もね?」

 

颯馬「………二人共、ご心配おかけしました……ゴホッ!」

 

信廉「駄目ですよ! まだ安静にして貰わなくては!!」ウルウル

 

凪「そうです! 天城様は……本来起き上がる事が、許されぬ身なのに……命に関わりますよ!!!」グスン

 

颯馬「分かった! 分かりましたから……!! そのような、涙目で訴えないで下さい!! こう、心の奥底から『罪悪感』と『嗜虐感』がごちゃ混ぜに湧き上がってくると言うか……ご免なさい!!」

 

信廉、凪「「 !?!? 」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

凪「私は…………正式に、曹猛徳様の下から去る事になりました。  天城様をこのような目に合わせ、そして、自分自身の武の道に、限界が見えてしまっていたので…………」

 

颯馬「────では、曹猛徳殿の下に残る御親友の二人、貴女の元主「曹孟徳」殿や他の皆さんと争うおつもりですが!?」

 

凪「………必然的にそうなりますね。 他の皆さんも反対されたのですが、意外にも後押ししてくれたのが、親友だったのです……! 」

 

 

☆★☆   ☆★☆   ☆★☆   ☆★☆

 

 

真桜「凪───! アンタは仰山悩んだ。 多分ウチらの一生分悩んだんじゃないかっつうほど、悩んだと思うんや………」 

 

沙和「だって凪ちゃん、ちょこっと、こっちに戻って来た時、お目々は真っ赤っ赤(まっかっか)で、肌がカサカサしてて……もの凄く落ち込んでいたの………。 今まで……見たことが無いくらい……」

 

真桜「あの『天城はん』の戦いの後……沙和と相談したんわや。 真面目な凪だから、悩んでるから慰めに行かんと……とな。 だけんど、ウチらじゃあかん! 凪をこんな目に合わせた『天城はん』に責任取らせにゃ! 』

 

沙和「真桜ちゃんも沙和も………凪ちゃんと離れるのは嫌。 凪ちゃんと戦うなんて、もっと嫌! だけど………凪ちゃんを……何も救う事が出来ないまま、見殺しにするなんて……絶対嫌なの!!」

 

真桜「凪! 『天城はん』とこへ行け! 『天城はん』は、大陸中を幸せにするちゅ『天の御遣い』の中心人物や! 凪がそこまで心服する人なら、ウチらも仲良うなって、皆で暮らせるよって!!」

 

沙和「沙和も真桜ちゃんも、お仕事頑張るし……沙和も北郷さんの事……気に掛かって……ね。 凪ちゃんの気持ち分かるのー!」

 

真桜「まぁ、ウチもな……。 北郷の兄ちゃんの事、意識してもうてるんよ。 結構、面倒みぃ…いいさかい。 まぁ、ウチら二人も……そんなワケや! 華琳様には、承諾を既に得てる! 早よぉ行って……幸せになるんやで!!!」

 

沙和「凪ちゃん! 元気でね…………なの!!!」

 

 

☆★☆   ☆★☆   ☆★☆   ☆★☆

 

 

楽文謙殿………真名を許可され『凪』殿………は、大粒の涙を流しながら、俺に謝罪をする。 

 

《あの『蹴り技』のため、俺は激しい武術が出来なくなった事》 

 

《凪殿は、俺を倒す事しか考えなかったのに、俺は大陸を救う大望を抱いて行動していた事》

 

《仲間の為に、命を懸けれる俺の行為を見て、自分の矮小さを感じ取り、嫌気が差した事》

 

その上で、『天城颯馬』自身に仕えたい! 自分の犯した罪を償うためにも、護衛として傍に居させてもらいたい! と、願い出した!?

 

その事により、ボンヤリしていた俺の頭は、急速に目覚め自体を把握! 凪殿に、思い止まるようにお願いしたが、頑として聞き入られず……………。

 

話を先に聞いていた信廉殿は勿論、俺の体調を聞きつけ飛び込んで来た光秀、歳久殿も……若干渋い顔をしながら、賛成に廻られた。

 

歳久「………今更、女誑しの颯馬に言うべき事はありません! ただ、今回の事で、颯馬が戦えなくなったのは、護衛の案件を提案しなければなりません!」

 

光秀「………そうてすね。 今になり、護衛を任命出来る程の武に秀で、尚且つ忠義に厚い人物を推挙するとなれば、到底一日二日では無理です。 楽文謙殿なら、『陳留の武神』なる肩書きと、高潔な精神は洛陽にも届いていますし!!」

 

歳久「………様子を見ながら、颯馬の護衛をお願いしましょう! 他の姫武将や将には、連絡しておいて…………」

 

光秀「…………月様が……なんと申されますか………!?」ハァ…

 

…………トントン拍子に、凪殿が董卓軍に加入する事が決まった。

 

ただ、凪殿から、一つお願いされた。

 

『自分は、曹孟徳様に信頼され将として任務を請け負いました! だから、鞍替えしたからと言って、曹操陣営の機密事項は、一切話す事は出来ません! これは、例え天城様に頼まれても、武人の矜持に掛け、漏らす事など致しません!! 御承知を下さい!!!』

 

俺達は、その条件を飲み、凪殿を迎え入れたのだった!!

 

 

◇◆◇  

 

【 袁遺 天に帰す の件 】 

 

? 虎牢関付近 にて ?

 

袁遺「……では………行くぞ!!」

 

袁遺は、白装束のかなり弛みのある袖の中に、両手を引っ込める。 

 

そして、次の瞬間……両手に長さ一尺(約23a)余りの黒と白の鉄扇を持っている。 表に陰陽太極図、裏に八卦図が描かれている。

 

謙信「仕掛けられる前に………斬る!!」

 

謙信が、八相の構えを取り、一足飛びに飛び込みながら、袁遺を右袈裟斬りにするために、太刀を振り落とす!!

 

袁遺「甘い…『黄龍翻身』!」

 

上段より迫る太刀を、左鉄扇で受け流し身体を回し、謙信の右側に廻りこむ! そして、右鉄扇が謙信の頭上に閃く!!

 

   バッ!!  シュッ────ン!!

 

慌てて身体を半身に開き、その攻撃を避けると、横より水平に動く扇子を見て、慌てて頭を下げ後ろに退く。

 

謙信「驚いた! これほどの武人が、簡単に討たれたなんて!!」

 

袁遺「お前達……の、将に依る……策に………掛からねば……まだ奮迅………出来た………のだ!!」

 

謙信「……確かに、颯馬の策のお陰なのだろう! だが、それを招き入れたのは、貴方自身に隙があったからでないか!?」

 

袁遺「………正論だ。 だから、俺も……今回、勝利を確実に……するため……策を弄した………」

 

謙信「どんな策だか分からないが…負ける私では……クッ!? た、太刀が、握れない………!!」 ガタン!!

 

袁遺「鉄扇……の中に…痺れ薬……を、入れた。 扇と……お前の得物……が、ぶつかるとき、自然………に、掛かるように。 ………我が秘術……『カスミ扇の術』………!」

 

謙信「………おのれぇ…………!!」ブルブルブル

 

袁遺「……フッフッフッ………私も、このような策を……使えば…良かったのだぁ……「ホンにそう思っか?」───!!」

 

★☆☆

 

    ザッ… ザッ… ザッ…

 

霞「………正当な勝負事なら、黙っとこうか思うたが。 えげつない手を使て勝とうなんて、ウチが黙ってせへんでぇ?!」

 

袁遺「……仲間か!! 「キィ───ン!」 うおぉ……!!」

 

霞「…袁遺…やったか? あんさん、そない勝ち方して、何ぞおもろい事あんの? おのれの心を誤魔化して……喜ぶと考えとんのか?」

 

袁遺「だが………勝ってこそ………」

 

霞「勝ち負けに拘り過ぎ、そんなんで余裕なんかあっか? 無いやろぉ? あれば、自分の未熟さに気付くはずや。 勝ちは確かに絶対欲しい! せやけど……自分自身を満足させる気……あんの?」

 

袁遺「……………………………」

 

霞「……確か、この謙信の目ぇ見いてぇ……羨望していたのは…何やったんや? ………ここまで、言うても反応無しかい。 仕方無しやな…これで終いにしよか!!」

 

袁遺「……お主達に……尋ねよう。 潔し良し…死に様の負け戦…と汚き謀略…にて勝った…勝ち戦。 どちらが…尊いと想う…かね?」

 

霞「ウチやったら、『志』の判断次第やね!」

 

謙信「私もだ! 自分よりも……『民』を優先し『守るべき人』を優先する! それで全力を出しての結果なら、どちらも尊いと想う!」

 

袁遺「………結果は? 汚き謀略で……殺された者共……の残された者が……恨み事……を、述べた……場合……は?」

 

霞「ウチは、一喝するわな! 『理由はどうあれ、相手を殺す気で来たんなら、自分の死の覚悟を考えなぁあかん!! もし、立場が逆になり、同じ事を言われたら、どないすんのや!!』……てな!」

 

謙信「私は………その分民草を幸せにして………恨み事が述べられないように、精進するのみ。 その方の死は………決して無駄ではなかったのだと、証明するために…………! 」

 

袁遺「……成る程。 ……そうか、焦っていた……のか? 袁本初…や袁公路……の栄光……の眩しさに………眩んで……いたのか……? いや……私の志……私欲……に、満ちていたんだろう……………!」

 

謙信「…………やっと、動ける………」

 

袁遺「……先程は………無様な……真似を…した。 謝罪…する! そして……頼み……が……ある」

 

謙信「私に出来る事ならば………………」

 

袁遺「……私を………斬って欲しい! それだけ……だ」

 

謙信「…………承知した! 霞、立ち会い人になってくれないか?」

 

霞「武人の死に様を見届けるんやね! 了解や!!」

 

袁遺「………最後に……礼を言わせてくれ! …清廉潔白な士よ!

……豪放仁愛の士よ! ……会えて良かった! ……さらば!!」

 

       ザシュ──────────!!

 

 

★★☆

 

 

 

霞「………敵さんじゃなく、味方として……会いたかったで!!」

 

謙信「………我々に問い掛けた事、この実績を問うていたのか? それとも、己の道程を後悔していたのか?」

 

霞「……………止めや。 答えなんぞ…考えても千差万別。 相手は既に天へ帰ったし。 ウチらは、今の最良と思う事を行うまでやな」

 

謙信「そうか、そうだな…。 霞…ありがとう! 助かった!!」

 

霞「なーに、洛陽に戻ったら、一杯奢ってくれればええねん!! ほな! もう一踏ん張り頑張ろうや!?」

 

謙信「あぁ───!!」

 

 

 

◆◇◆

 

【 劉岱の最後 の件 】

 

? 水関付近 にて ?

 

劉岱兵「もう駄目だぁ!! 逃げるぞぉ!!」

 

元袁術兵「何が『天の御遣い』だ!! 俺達を贅沢させてくれるんじゃなかったのかよぉ?!」

 

元袁紹兵「五月蝿えぇぇぇ!! そんなもん、命あっての物種だ!」

 

劉岱軍が、卑怯で合理的な方法で集めた(劉岱が皇帝がなれば、欲望のまま好き放題出来るという話で)約壱拾壱万(11万)の軍。

 

しかし、洛陽軍の奇抜な策と将兵達の奮戦振りのお陰で、敗走の憂き目に合っていた。

 

 

 

***   ? 翻竜鳳翼の陣 ? ***  

 

最後に劉岱兵へ仕掛けた策は、最初に鶴翼の陣形を構築、武を極めし者を両端に伏兵で置く。 

 

劉岱軍が攻め寄せて、伏兵の配置場所に中衛の軍が来た時に、三太夫側が合図をし、光秀に火縄銃の発射を促す。

 

そして、断続的な音の合図で劉岱軍に『策の恐怖』を思い出させ、進行を止める。 そして、更なる伏兵で恐慌させ、島津お家芸『穿ち抜け』を成功しやすいように、態勢を整える。

 

島津義弘隊を先陣にした隊を繰り出して、劉岱陣営を抜けきる。

 

その後、穿ち抜けした後に後方より攻めて、『包囲網』が完成する。

 

 

 

火計を大規模に出来なかったのも、この策略に支障をきたす可能性があるためという理由もあった。

 

***  ***  ***  ***  

 

劉岱兵「ハァ! ハァ! 水関まで行けば……!?」

 

元袁術兵「な、何だよ!! あれは!!」

 

元袁紹兵「逃げても………駄目かぁ…………」ガクッ

 

水関に行けば、留守役の軍が居る! その者に事情を話せば逃げる事は出来る!! そう高を括って来てみれば……………。

 

左右の水関門前に、『土嚢』で出来た壁が『八の字状』に、成人男性の腰の高さに組んである。 勿論、狭い方が水関の門口に向いている。 

 

そして、その『土嚢』の壁に、弓と竹槍を持つ兵士が…………!!

 

姜伯約「ここは、私達が占拠しました!! 大人しく投降するなら捕縛の上、罪を問いましょう! もし、強制的に逃走するのなら容赦はしません!! 」

 

水関の関上にて、姜伯約が宣言する! 

 

『命が惜しい者は投降せよ! 命の要らない者は挑んで来い!』

 

多数は……投降したが、脛に傷持つ者は、強行突破を試みた。

 

─────捕まれば死罪は確実! ならば一か八か!!

 

その様子を見ていた元捕虜は語る。

 

『あれは………《 生 》を餌にした、残酷な処刑場だった!』

 

逃走を企む者は、徒党を組み入り込む! そしてなるべく『内側』に潜り込もうとする。 他の奴を犠牲にして、自分だけが助かりたいために………。

 

洛陽軍 右陣営陣営隊長「 放て! 」

 

洛陽軍 右陣営陣営隊長「 やれ! 」

 

壁の『八の字』の末に侵入してきた兵団に、弓隊が矢を射る!

 

シュン! シュン! 「痛!」「おわっ!?」

 

まず狙われるのは、『 足 』。 逃走をなるべく阻むためと、『肉壁』を剥がし、内側に居る者達も『平等』に味わってもらうため。

 

足を射抜かれた者は、一応捕獲。 『壁』として強制的に連れて来られた可能性もあるため。

 

『 べ、別に《 脛に傷を持つ 》という意味合いから、思い浮かべた訳じゃありませんよ!! ムッ…信じていませんね! 颯馬!!』

 

と、颯馬と策の話し合いに、この策を提案した甲斐の虎殿は……顔を赤らめて抗議したという。

 

話が逸れたが、入り口に近付くにつれ、関上からも矢、横から竹槍が飛び出し、逃れる者は殆どいない。

 

無論、こんな事を繰り返すと、『学ばれる』ため、時には変わった物も準備する。

 

例えば、『荒縄』を両側で持ち、入ってきたら一斉に引いて『将棋倒し』。 菱の実を乾かした『マキビシ』をまいたり色々と。

 

 

そして……その中に、かの『天の御遣い』の姿が!

 

 

(極秘伝令……劉岱だけ、門の外へ逃せ!!)

 

 

三太夫より指令を受けていた姜伯約は、部下に指示して……劉岱だけを逃れさせた……………。

 

 

★☆☆

 

? 水関より少し離れた荒野 にて ?

 

劉岱「ハァ! ハァ! ハァ! ……おのれぇ!! 辺允、袁遺! 貴様等は儂を……儂を! 何だと思っていおる!!! それに、于吉めぇぇ!! このような能無しの部下を送り込みおって!!!!」

 

悪態をつくを劉岱。 普段着慣れない衣服のため、動きも鈍く通気性も良くない(冬服仕様)。 それでも『御遣いの服』は、大汗かきながらも、大事に着ていた。

 

??「待ってたよ! 『不倶戴天の御遣い』サマ!?」

 

劉岱「────!!」

 

水関より大分離れたと思っていた矢先に、声を掛けられ驚く劉岱!

 

そこには、数人な配下と共に、三人の将を縄で捕獲した

三太夫の姿があった…………。

 

三太夫「………この三人が、結構しぶとくてさ? どうも『天の御遣い』を殺さないと、成仏出来そうも無さそうなんだよ………」

 

『困った術を掛けてくれたぜぇ』と一応言っているが、顔は全然困った顔をしていない。

 

『王匡、鮑信、孔ユウ』を縄で捕獲した状態で運んでくる。

 

劉岱「まさか? 奴らに……儂を処刑させようと…しているのか? だが、そんな事は出来ん! でなければ、儂はコイツ等を率いてなどいないわ!!! 」

 

三太夫「………それがさ、袁遺を倒した時点に、統率が狂い始めてね。 『白い服』を着ている奴を狙うんだよ。 それで、他の仲間と相談した結果……おっさんを標的にしているじゃないかな? …と」

 

劉岱「何だとぉぉぉ!!!」

 

三太夫「おっさん…………アンタ、何回『天の御遣い』を連呼したと思っているんだい? コイツ等の腐った頭には、昔の記憶はあまりないんだろう? あるのは『御遣い弑逆命令』のみ、しかも…目標がわざわざ自分から名乗っていたんだ! 分かりやすいよな………!」

 

劉岱「まさか! まさか!!」

 

三太夫「………よし、解き放て!!! 」

 

       ブツン! ブツン! ブツン!

 

王匡、鮑信、孔ユウ『──────◆◆◆◆────!!!』

 

ユラユラ………  シャキン! シャキン! シャキン! 

 

劉岱「よ、止せ! 止めろ!! 俺は『天の御遣い』じゃな…「パン!」──! 」

 

劉岱は、不定しようと口を開けるが、三太夫が……遮るように、手を広げ勢い良く閉じ『合掌』を行う。

 

三太夫「………………安らかに、成仏!!」

 

★★☆

 

 

劉岱「俺は、こんな所で、死んでいい男では無い!!!」

 

『御遣いの服』が、身体に張り付く! 動きが徐々に拘束される!

 

王匡「───────!!」シャキン! シュンシュン!!

 

鮑信「…………………………!」 ザッ!! ブーン!

 

劉岱「くっ!! この───馬鹿者共!!」シューン ザクッ!

 

   バタァーン!!   ────ムクッ!

 

劉岱「くっ、くそ!! ん!? もう一人は?!?!」

 

   『ザアアァァァ─────シュッ!!!』

 

劉岱「グギャアアアァァァ━━━━━━!!!!」

 

せ、背中が熱湯を浴びせられたように──あ、熱い!!

 

後ろを振り返ると……孔ユウが顔を隠す布の奥で『嗤う』のが見える。 儂は、こんな操り人形のような「ドスッ! トスッ!!」 ……ガハッッッ!!!

 

さ、左右に……王匡、鮑信が……剣で、わ、儂の脇腹を…貫いた!

 

王匡、鮑信、孔ユウ『 ゴゴゴオォォォ━━━━!!! 』

 

さ、三将の………雄叫び…………聞こえる……………!

 

わ、儂の生…………は………こんな…もの…………か……

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

虎牢関戦………やっと、終わりましたが…………次回は、洛陽での戦いになります。 虎牢関の後始末も入れるかもしれませんが。

 

大風呂敷の広げ過ぎた感がありますが、何とかこの章も、終わりそうです。

 

雪風様 お待ちどうさまでした! 

 

やっと、三好と島と十河が出せますよ。

 

恋姫ファンの方なら、月や詠達ですね。 まだ、他にも出てもらいますよ。

 

禁玉⇒金球様 洛陽終わった後の諸侯ですが、華琳は『青州』黄巾残党の鎮圧を任せようと思います。 麗羽は罰金刑で。 雪蓮は……まだ考えていません!

 

naku様 これで、来週まで休むつもりですが………どうでしょうかね。 また、早めに投稿再開するかもしれませんが……。

 

 

また、宜しければ、読んで下さい。

説明
義輝記の続編です。 宜しければ読んで下さい。 3/23に一部加筆しました。
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コメント
オヤジキャラは、これからも出てきますが、泡沫の如き運命を辿る予定になりますので、過度の期待は禁物です。(いた)
禁玉⇒金球様 コメントありがとうございます! 袁遺の最後は、かなり悩みました。 オリキャラなのに主人公側が勝てる様子が浮かばなくて、やむを得ず霞に出て貰い自決に持ち込みました。 もう少し複雑な心情にして丁寧に描写すればよかったなと思っています。 今後の反省点ですね。(いた)
↓それだけに霞の説得に自己満足というか個人の満足感にも重きを置きそれに共感してしまった袁遺には少し残念感を覚えてしまいまして、矜持や誇りよりも結果と成果に重きを置くべき指揮官が其れでいいのかと。卑怯は最高最大の褒め言葉、朱里と雛里の泣き言にそれが具現されてましたよね。(禁玉⇒金球)
貴重なオヤジキャラ(男キャラも)の死亡、残念で仕方ないがこれも戦闘に付き物ですね味方に食い物にされたのも三人いますけど。グロイ描写とエゲツナイ作戦に凄く魅力と説得力を感じます(禁玉⇒金球)
作者も凪は気に入ってますが、加入予定じゃありませんでした。 流れ的に入れないと思っての参入です。 少し休んでから投稿しようかなと思ってますが、気が付けば話を、策をと考えている作者です。 なかなかゆっくり出来ないようで。(いた)
naku様 コメントありがとうございます! 辺允や劉岱は性格付けは簡単でした。 モデルはやはり北○の拳に出てくるヤラレキャラ。 袁遺はかなり悩んであの性格に。 悪人にしようとしたのに流れで、こんな具合に。(いた)
ふかやん様 長文のコメント 誠にありがとうございます! 本当は袁遺も悪い人にするつもりが、コメントにより『良い人』になりました。 劉岱は…そのままです。 これで二人の活躍が終わりになる予定ですが、于吉が呼び出す可能性も………。  (いた)
袁遺…時と場所が違っていたのなら、貴公もまた名将たり得たのだろう。惜しむらくは…『生まれる時と場所を間違っていた』事が何よりとしか言えない。願わくば…来世では良き武人として生を受ける事を願うのみ。そして劉岱よ、貴様は楽に死ねると思わぬ事だ。貴様の魂魄は未来永劫泰山府君の元で懲罰を受けるのだからなぁ!!!(ふかやん)
mokiti1976-2010様 コメントありがとうございます! 劉岱の最後は二転三転しましたが、こんな結果で落ちつきました。 次の話が、于吉の関わりになります。(いた)
劉岱も似合いの最期ですな…于吉の動向が気になる所ではありますが。(mokiti1976-2010)
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