真・恋姫無双〜虎と狐の三国演義〜
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   参之五 『 夢幻の中で 』

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なんと言えばいいのだろうか。夜、狐燐に呼ばれて行ってみれば突然、

「一緒に寝てほしい」

と言われて、確かにすこし位はそんな予想もしていたし、期待もしていたし…。だというのに呼び出した本人は寝台に入るなり本当に寝てしまうし、肩透かしを喰らったというか、期待を裏切られたというか。相手が狐燐という事を考えれば期待通りなのかもしれないけど。

「はぁ〜」

なんか色々考えていた自分が馬鹿らしくなってくる。

「…まあ、今日はいいわ」

狐燐の寝顔を堪能出来たし。それに何の理由も無くこんな事をお願いしたりしないだろうし。…多分今日の賊が何かしら関係していて、私にも関係があるのかもしれない。なら、ここは素直に寝てみよう。でも…

「寝れるかしら…」

一度あれこれ期待してしまった後はどうにも寝付けず、ようやく意識を手放したのはそれから暫くしてからだった。

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目が覚めると?そこは何も無い真っ白な空間だった。そもそも立っているのかどうかも曖昧な宙に浮いているような感覚。その空間の中に見知った顔を見つけた。

「狐燐?というか此処どこ?」

「いらっしゃい雪蓮。一応此処は夢の中ってことになるかな。ちょっと待ってて」

そう言うと狐燐は目を瞑る。そうすると真っ白な空間が彩られいつの間にか森の中に立っていた。その風景には見覚えがある。初めて狐燐と出会ったあの場所だ。

「凄いわね。まるで神様みたい…」

「まあ、夢だからね。夢は見てる人の世界だからこういう事も出来るよ。ってこんな言い方したら現実の世界も誰かの夢みたいな言い方になっちゃうかもしれないけど」

「そうね。でも夢は夢だから意味があって現実とは違うでしょ?」

「そうなんだけどね」

そう言って狐燐は笑っている。

「それより、そろそろ私を呼んだ理由を聞かせてくれない?わざわざ夢の中にまで呼んでまでして話したい事があったんでしょ?」

「うん。とりあえず、落ち着いて聞いてね」

 

 

それから僕はあの時の賊から聞いた事を話した。僕にも訳が分からない事ばかりだが、少なくともあの賊達にとっては張角…天和は彼等にとっての首領、親玉になっているらしい事。だけど僕にはどうしても彼女達がそんな事をするようには思えなかった。(参之三 参照)

雪蓮も同じ様な事を思っているらしく暫く黙ったままである。

「……それでその事を話す為にわざわざこんな事をしたの?」

「まあ、それもあるんだけどね」

確かにこんな事いきなり冥琳達の前で話すわけにいかないし、それに天和達の事は雪蓮も知っているし先に話すなら邪魔もされない様にしたかった。

「も、って事は他にも目的があるわけ?」

「うん。雪蓮も言ってたじゃない。まずは話してみないと始まらないって」

「そうだけど。今、天和達が何処に居るのか当てはあるの?」

確かに話をしようにも、相手が何処に居るのか分からなければ意味は無い。普通なら。

「その為の場所だよ、『此処』は。まぁ、この手の術は本来は斑様の方が得意なんだけど、一応目印もあるし何とかなると思うよ」

「ん?目印?それに斑様って誰のこと?」

「僕の術の師匠…かな。といっても、転身の術とかおおよそ戦闘では役に立たない術ばっかりしか教えてくれなかったけど」

でも、こんな時に役に立つんだから案外馬鹿に出来ないなぁ。

「それで、一体何をするの?」

「あっ、それは大丈夫。『今、繋がった』から」

「繋がった?」

不思議がる雪蓮の後ろを指差す。今、その空間は歪んでいて、其処に人影が現れ始めた所だった。

 

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「此処は?一体…」

確か私は姉さん達と離れて部屋で先に床に入ったはずだった。それなのにいつの間にか森の中で近くには小川も流れている。外に出た記憶はないし、そもそも日が差し込んでいるなんてはずも無い。だからだろうかそれが夢なんだと理解するのは時間が掛からなかった。ただ、普段の夢と違うのは此処に見覚えが無く、何より不思議と現実味を帯びている様な感覚があることだった。

「あなた、人和?」

不意に名前を呼ばれて振り返ると其処に居たのは、

「雪蓮…さん?それに狐燐さんまで!?え?これって一体!?」

「良かった、上手くいって。でも、三人とも呼ぶつもりだったんだけど、そっちは失敗みたいだね」

「あの、狐燐さん。どういうことですか?」

なんだろう。夢にしてはどうもしっくり来ない。初めは私が二人に会いたいから夢に出てきたのかと思ったけど何か違う。

「狐燐、私にも説明しなさいよ。一体何をしたの?」

この感じだと何かしたのは狐燐さんの方で雪蓮さんも分かっていないらしかった。

「ほら、前に人和達に折り紙渡したでしょ?あれに籠めておいた僕の仙力を辿って、此処に呼んでみたんだ」

「あの蝶の事ですか?」(弐之二 参照)

「そっ。今、三人が何処に居るのかも分からないし、だったらこっちの方が楽かなってね」

「そんな事が出来るなんて…。狐燐さんって何者なんですか?」

「そういえば言ってなかったわよね。彼は仙人なのよ」

「ええ!?」

「ついでに言えば母親は蘇妲己らしいわよ」

「それって!?あの!?」

蘇妲己といえば大陸を混乱に陥れた悪女として有名だけど、そんなの御伽噺だと思っていたのに。

「雪蓮…。あんまし人の事勝手にばらさないでよ。それに母さんの事は内緒にしてって言ったはずだよね?」

「あ〜、あはははは、ごめんごめん」

「まぁいいや、その内ばれそうな事だし。それより今は、人和にどうしても聞きたい事があるんだ」

「…それは…、黄色い布を巻いた賊の事ですか?」

半ば予想は出来ていた。とはいえ、その事を私から言い出した事に二人共少なからず驚いているようだった。

「知ってるなら話は早いかな。教えてくれないかな?どうしてそんな事になっているのか、三人は今何をしているのか」

「…はい。私の知っている事、全てお話します」

 

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「何か突拍子も無い話ね」

人和の話を聞いた雪蓮の第一声はそれだった。(詳細は参之四 参照)

「確かにね。術者の素質があるにしてもおかしなところがある。少なくともその本を実際に見てみない事には何ともいえないけど」

「すみません…。私達が不用意に術なんかに手を出したばかりに」

「なっちゃったものは仕方無いよ。それより雪蓮、僕はこの一件は三人が何かに巻き込まれて、誰かに利用されてるんじゃないかと思うんだけど?」

「確かにそうかもしれないけど、わざわざそれを口にするってことは…」

「僕は三人を助けたいよ。でも、それには雪蓮の許可がいるんじゃない?」

「一応そういうのは考えてるのね」

「まあね。雪蓮の力になりたいのにそれで雪蓮の立場が悪くなったりしたら意味が無いしね」

「はぁ、冥琳にどやされそうね。それで?何か考えはあるの?」

「今はなんとも…、一度その術を見てみない事には策も立てられないかな」

「あの…助けてくれるんですか?」

雪蓮と二人でさくさく話しを進めていると人和がそんな事を聞いてきた。

「僕はそのつもりだよ。友達が困ってるなら僕は助けてあげたい」

「ちょっと、それじゃあ私がそうじゃないみたいじゃない。私だって真名を交わした仲なんだから気持ちは同じよ」

「その為には一度、その男が渡したっていう書の術を確認しておかないとね」

「何か目星はついてるの?」

「全然。ただ、斑様なら何か知ってるかもしれないし、知らなくても何か分かるかもしれない」

「ふ〜ん。まぁ術とか私には分からないからその辺は狐燐に任せるけど、その人、信用できるの?」

「うん。一応僕の術の師匠ではあるからね。ちょっと性格に難があるけど」

「なら、そっちは狐燐に任せるわ。どっちにしろ、一部の人間が賊と化している以上そちらにも対処が必要だし、そっちは私や冥琳達で対処しておくわ」

「お願い。あっ、それと誰か潜入とか得意な人借して欲しいんだけど」

「なら、明命でいいわね。他は誰か人手がいる?」

「術の確認だけだから大丈夫」

「なら、決まりね」

狐燐と雪蓮は次々に話を進めていく。そんな二人を人和は頼もしく思い、同時に誰かに頼らなくてはならない自分を情けなくも感じていた。

 

 

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とある山中、そこには小さな庵が一つ建っていた。その庵の住人である一人の少女は夜中でるというのに突然に目を覚ます。しかしその少女が普通でない事は一目見れば容易に理解できる。

その少女には人間には無いはずの耳と尾が生えていた。

「ふぅ、これタマ、起きんか!」

起きた途端に傍らで寝ていた少女を足で小突いて起こす。その少女もまた、体の一部が鱗の様なもので覆われていて、人間ではない事を証明していた。

「何ですか?斑様〜」

タマと呼ばれた少女は寝ぼけながら自分を起こした人物の名を呼ぶ。

「お主今日はわっちの書庫の整理をしておったな」

「はい。何の以上も…ふあぁ、以上も無かったですよ」

斑は今宵の夢幻での狐燐達の話を盗み聞きしていた。というより他人の夢の中を訪れるのは彼女の密かな楽しみでもあった。過去には一面の花畑で蝶に化けて遊んだものだ。そんな時に珍しく弟子が夢幻で術を行使していたので遊びに行ったところ妙な話を聞きつけた訳である。まあ、そんな事があったなどタマは知らないのだが。

「どうかしたんですか?斑様」

「うんにゃ、ただ、近い内にうぬの主人が来るつもりのようぢゃ」

「本当ですか!?」

「うむ」

斑の言葉にタマが嬉しそうに声をあげている。そして斑も夢幻の中で見た少女、人和に少なからずの興味を持っていた。

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あとがき

 

ツナ「此処に来てようやく新キャラ登場です。しかも二人?も」

楓 「何で『?』がついてるの?というより私も先輩とイチャイチャしーたーいー」

ツナ「だって二人とも厳密には人では無いですし。それに狐燐達は別にイチャついてはいないですよ?」

楓 「でも、現実では?」

ツナ「一緒の布団で寝てますね」

楓 「ずーるーいー。私達もイチャつかせてよ」

ツナ「戦場でイチャつくとかどんだけ空気読むつもり無いんですか!?あんた今虎牢関でしょ!?」

楓 「そこはほら、一度関に引き上げた夜にでも」

ツナ「やめたげて!一刀死んじゃうから!せめてゆっくり休ませてあげてよ!」

楓 「なら、せめて一緒に寝るくらいなら」

ツナ「健全?な高校生がそんな状況で寝れるかな〜?まあ、考えておきましょう」

楓 「ところで、新キャラの『タマ』って猫?」

ツナ「いえ、猫はむしろ『斑』の方です。『タマ』は霊獣です」

楓 「…想像が出来ない」

ツナ「でも、『タマ』はちゃんとヒントになっていますよ」

楓 「じゃあ、『斑』は三毛か何か?」

ツナ「そんなところです。まあ続きは…」

 

ツナ・楓「「また次回!!」」

説明
ついに新キャラ登場!一体何老仙なんだ!?

注:オリ主作品です。当然オリキャラが出ます
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コメント
禁玉⇒金球さん>まあ、姉二人はどうしても『何も気付かずに喜ぶ』みたいな感じしかしないわけですよ。その辺人和はしっかりしている印象が強いんですよねぇ。(ツナまん)
彼女らが犯した犯罪は殺人については第三級と言った辺りですよね、実際に手を下してはいないのでまた違いますが言ってみれば悪のショッカーの位置にいますから。人間の話の出来る人和で良かったです。(禁玉⇒金球)
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