魔法少女リリカルなのは〜原作介入する気は無かったのに〜 第百十四話 エレミアと雷帝
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 「貴女が当代の『エレミア』でよろしいのね?」

 

 「は、はい……」

 

 「私はヴィクトーリア…ヴィクトーリア・ダールグリュンですわ。よろしく」

 

 「じ…ジークリンデ・E・長谷川です」

 

 以前から予定していたヴィクターとジークの邂逅。

 それが本日遂に果たされた。

 季節は既に夏になっており、俺の通う海中もジークの通う海小も夏休みに突入していた。

 ヴィクターが地球に来日し、俺はジークと共に出迎える。出迎えた場所は認識阻害と人払いの結界を張った臨海公園。

 優雅に挨拶するヴィクターとは違い、ジークはやや緊張気味。

 けど俺の背後に隠れたりせず、きちんと1人で挨拶出来る様になってきた辺り、『少しずつ成長してるんだなぁ』と実感する。

 ジークと仲良くしてくれてる春姫ちゃんや杏璃ちゃん……『はぴねす!』キャラには感謝感謝。この調子で徐々に人付き合いに慣れていって貰わないとな。

 俺は付き添いで来たエドガー君と共に少し離れた位置から2人の成り行きを見守っている。

 

 「ジークリンデ……ね。早速聞きたい事があるのだけど良いかしら?」

 

 「う…((私|ウチ))に答えられる事でしたら……」

 

 「まず、貴女は自分のご先祖様が私の家系『ダールグリュン』と多少なりとも交流があったのだけれども、その事については何かご存知?」

 

 「………いえ、知らないです」

 

 「そう……」

 

 「あぅ……お役に立てず、すみません……」

 

 「いいのよ。私の家の文献に残っていない何かがあるか確認したかっただけだから」

 

 『雷帝』と『エレミア』ねぇ。

 どういう出会いがあって交流を持ったのかは興味あるな。

 ((悪魔図書館|あくまとしょかん))使えば簡単にその辺りの情報を入手出来る。

 けどそんな事をすれば、推理小説の犯人やトリックがいきなり分かるネタバレの様なもので面白味がない。

 

 「(いきなり真実を知るのもなぁ…)」

 

 ……自分の力だけで調べ、真実に辿り着く方が達成感もあるだろうから、自重するか。少なくとも今すぐ必要な情報って訳でも無いし。

 

 「ところで貴女は何かトレーニングとかしてるの?」

 

 「まだ基礎体力作る事ぐらいしかしてないです。『焦らずに少しずつ強くなっていけばいい』って兄さんにも言われてますから」

 

 「じゃあ、実践的なトレーニングはまだしてないの?」

 

 「はい」

 

 ヴィクターとジーク……今2人が戦えば間違いなくヴィクターが勝つだろうな。勿論『エレミアの神髄』が発動していない事が前提だけど。

 

 「お嬢様にも遂に同性のお友達が出来そうで本当地球に来た甲斐がありました」

 

 エドガー君は本当に嬉しそうだ。

 

 「遂にって……ヴィクター友達いないのか?」

 

 「お嬢様は学校に通っておりませんし、自宅の近くに同年代の子供はいないのです」

 

 んんん?

 

 「そうなのか?じゃあ勉強とかは?」

 

 「家庭教師を雇っておりますので心配はいりませんよ」

 

 『私もご一緒させてもらってます』とエドガー君は言うが、学校に通わないとは何か理由があるのだろうか?

 少なくとも学費が払えないって訳じゃ無いよな?

 

 「(聞いちゃマズいかなぁ…)」

 

 「???どうかされましたか?」

 

 「……いや、何でもないよ」

 

 エドガー君の方を見たまま沈黙していたので、気になったのか尋ねられた俺は結局聞く事はしなかった。

 

 「しかし地球という世界はミッドチルダより暑いですね」

 

 「季節は夏だからねぇ」

 

 ミッドチルダは1年中、寒暖の差がそこまで激しくない。むしろ夏も冬も丁度良いぐらいの気温だ。

 もっとも、気温の差がほとんど無いせいでミッドチルダでは真夏に海水浴へ行ったとしても水が冷たすぎる様に感じるのだ。

 真夏の海水浴なら断然ミッドチルダより地球の方が良い。

 冬もまた然り。

 雪が降っているのに程良い気温というのは地球育ちの俺からすりゃ違和感バリバリです。

 

 「ていうかエドガー君。暑いという割には全く汗掻いてないね」

 

 執事服を着ているエドガー君。中のカッターシャツも半袖ではなく長袖だ。なのに汗1つ掻いてないというのはどういう事だ?

 

 「執事たる者、主人の前で汗等掻く訳にはいきませんからね」

 

 いや、そういう問題じゃないと思うんだ俺は。

 今日はそこそこ日差しも強いし、半袖を着用している俺は勿論、ジークとヴィクターもうっすらとだが汗を掻いている。

 ……まずは移動する事が先決かな。

 

 「2人共ー、熱中症にでもなったら大変だから移動するよー」

 

 続きは涼しい場所に移動してからでも良いだろう。

 一旦会話を中断させて俺達は臨海公園を後にした………。

 

 

 

 とりあえず時間的にはお昼時だったので、俺達は商店街の中にある蕎麦屋にやってきた。俺の隣にジーク、机を挟んで対面側にヴィクターとエドガー君が座っている。

 

 「そう言えばヴィクターとエドガー君は蕎麦を食べた事ある?」

 

 俺の問いに2人は首を縦に振る。

 意外だ。

 

 「この世界の料理はミッドでも人気がありますから」

 

 「執事として、作り方を勉強させていただいてます」

 

 「じゃあ箸を使えるっていう認識で良いか?」

 

 「「はい」」

 

 良かった。2人共箸が使えないとなると蕎麦屋に入ったのは間違いだったんじゃないかと思っていたからな。

 

 「ざるそば4人前、お待ちぃ!!」

 

 お、きたきた。

 ここのざるそばは美味しいから夏場になると来店頻度が上がるんだよねぇ。

 箸を手に取り

 

 「「「「いただきます」」」」

 

 と、声を揃えてから俺達はそばを啜り始める。

 

 ズルズルズル…

 

 そばを啜る音が小気味良く響く。

 

 「んにゅ〜〜〜〜♪♪♪」

 

 ジークはご満悦。

 

 「これは……」

 

 「流石、地球の料理というべきですね」

 

 「気に入って貰えた?」

 

 「「はい」」

 

 ヴィクター、エドガー君もここのざるそばが口に合った様で何よりだ。

 そんな食事中に

 

 「で、この後だけどどうしようか?家にでも来る?それともこの街の観光でもする?」

 

 俺はヴィクターとエドガー君に尋ねてみる。

 今日は家に誰もいないんだよねぇ。シュテルは首都防衛隊の隊員に教導、レヴィは遊びに出かけ、ディアーチェとユーリはすずかの家で夏休みの宿題、メガーヌさんは買い物、ルーテシアはすももちゃん家に行くって言ってたっけ。

 

 「お嬢様、どうなされますか?」

 

 「勇紀様、この街の観光でよろしいでしょうか?せっかくの異世界ですから興味があります」

 

 「良いよ。ジークも着いて来る?」

 

 「うん」

 

 これでこの後の行動が決まった。

 全員がざるそばを平らげ、会計を済ませようとするが

 

 「あの、勇紀様。私達の分は自分で支払いますから」

 

 「そうです。そこまでして頂かなくても…」

 

 君等の言いたい事は分かるよ。でも

 

 「2人共、地球の通貨は持ってる?」

 

 「「………あ」」

 

 俺に言われて気付いた様だ。

 ミッドの通貨は地球では使えない。一旦ミッドで換金しなければいけないのだ。

 

 「だからここは大人しく俺に支払われておきなさい」

 

 「「……ご迷惑をお掛けします」」

 

 「別に良いよ。昼食代ぐらいで懐事情が厳しくなる訳でも無いし」

 

 申し訳なさそうに謝る2人だが、そこまで落ち込まれるとコッチも辛い。

 

 「今度キチンと食事代はお返ししますから」

 

 「それも気にするなって。年下の知り合いに奢った様なもんだし」

 

 シュン×2

 

 だから萎縮しないでほしいなぁ。

 

 「……はぁ。じゃあ今度ヴィクターの家に遊びに行く時は何か美味しいお菓子でも用意して貰えるか?それで今回の奢りは相殺という事で」

 

 「っ!!はい!!!最高級のお菓子を用意してお待ちしてますわ!!!」

 

 いや、そこまでしなくても市販のお菓子で充分です………。

 

 

 

 昼食後、海鳴の街中を色々と歩き回っていた時だった。

 

 「勇紀君?もしかして勇紀君じゃないか?」

 

 突然背後から声を掛けられたので振り返ってみると

 

 「えっ!?ハヤテさん!!?」

 

 本来ならこの街にいない筈の人物、綾崎ハヤテその人であった。

 この人とはいつぞやのくぎみー大集合縁日以来、直接会う事は無かった。たまにメールをする程度の仲だ。

 まあ、それはあの時知り合った他の人にも言える事だ。キンジさんは例外としてな。

 ただ、本来相手に対して丁寧語や尊敬語を使うハヤテさんだが、俺に対しては普通に話し掛けてくる。理由は『何か話し易い』という事らしい。ほとんど会ってないのに何故そんな評価なのか全くもって謎でござる。

 下手に畏まられるのは好きじゃないから良いんだけどね。

 その人が何故ここに?

 

 「久しぶりだね」

 

 「ええ、お久しぶりです。ハヤテさんは何故ここに?」

 

 「お嬢様の付き添いだよ。今日はアリサさんの家にお邪魔しに来たからね」

 

 「ナギちゃんがアリサの家に来てるんですか?」

 

 あの2人は作品の枠を超えて仲が良い。お互いに金髪、ツンデレ、家がお金持ち、そして何より『くぎみー』なのである。

 

 「そ。で、僕はお嬢様達が談話してる間、自由時間をもらっていてね。ちょっと街を散策中って訳さ」

 

 「なるほど」

 

 ハヤテさんが海鳴にいる理由に納得し、頷いていると服の裾が引っ張られた。

 犯人はジーク。

 

 「兄さん、この人誰?」

 

 ヴィクター、エドガー君もジークと同じ疑問を持っているのだろう。視線で訴えてきている。

 

 「ああ、ゴメンゴメン。この人は綾崎ハヤテさんって言って俺の知り合いだよ」

 

 「そうなんやー」

 

 俺が軽く紹介して3人は自己紹介をし、ハヤテさんも返す。

 特にエドガー君は執事という自分と同じ立場もあってなのかハヤテさんに興味を抱いていた。

 対してハヤテさんも

 

 「へー、その歳でもう執事として働いてるんだ。僕も小さい頃は色々な仕事を経験したなぁ…」

 

 遠い目をして語るハヤテさん。俺が知ってる『ハヤテのごとく!』の原作知識だとその仕事内容が『父親に詐欺を手伝わされていた』とか『給食費を盗む』とかだった筈。

 これは流石に語れはしない。てか、語れる訳が無いよな。

 

 「あの……綾崎様」

 

 そんなハヤテさんにエドガー君は声を掛ける。

 

 「お願いします!!私に執事としての指導をして下さい!!!」

 

 んんん?

 

 「指導?」

 

 「はい!!綾崎様の雰囲気や佇まいから私は感じました。この人は私なんかよりも遥かに有能な執事だと!!」

 

 「そ、そうかな?//」

 

 恥ずかしそうに照れるハヤテさん。けどどことなく嬉しそうだ。有能と言われたのが理由っぽい。

 

 「私は執事としてお嬢様のお役に立てる様、更なる高みに昇りたい!ですからお願いします!!執事の先輩として私にご指導下さい!!」

 

 頭を下げ、必死に頼むエドガー君。

 

 「え、エドガー……私は貴方が今でも良くやってくれてると思っているのだけど…」

 

 ヴィクターはそんなエドガー君を見てオロオロしながらも当人に『執事として無能では無い』と言ってるがエドガー君は引かない。

 そこまでハヤテさんに師事して貰いたいほどの何かを感じとったのか。

 

 「勇紀君、僕はどうすれば良いのかな?」

 

 「そこで俺に話を振られましてもねぇ……」

 

 困った表情を浮かべるハヤテさんに対して、俺も困った表情を浮かべるしかない。

 何せヴィクターの言葉にも応じないのだ。どないせえと?

 

 「こうなったらハヤテさんが執事のノウハウを叩き込んであげたらどうですか?」

 

 結局それしか解決策が浮かばん。

 

 「でもねぇ…」

 

 「ヴィクターの意見は?」

 

 俺はヴィクターに尋ねる。

 

 「……今のエドガーには何を言っても無駄そうですわ。彼の好きにさせるしかありませんわね」

 

 主様もお手上げの様だ。

 

 「お願いします!!!」

 

 「……僕が教えられる事は多くないかもしれないよ?」

 

 「構いません!!!」

 

 「……分かったよ」

 

 遂にはハヤテさんが折れて、エドガー君を師事する事になった。

 

 「じゃあアリサさんの家に戻ろうかな。あそこには鮫島さんもいるし、お嬢様の他に龍門渕のお嬢様も執事を連れていらっしゃってるみたいだからね。その方達にも色々教授してもらうといいよ」

 

 それはもしやハギヨシという名前の執事さんでは?

 お嬢様の方は中の人『くぎみー』とちゃうのに。単純に金持ち同士の繋がりか?

 

 「俺達はどうする?エドガー君に着いてく?」

 

 「いえ!これは私個人の事ですから皆さんは私の事など気にしないで下さい!!」

 

 俺達は俺達で自由に行動してほしいとの事。

 

 「しかし私はエドガーの主ですのよ。貴方を置いてどこかへ行くのというのも……」

 

 「お嬢様。私の事は心配なさらないで下さい。お嬢様の元々の目的はエレミア様と会い、交流を深める事だったではありませんか」

 

 「それはそうだけど……」

 

 「私の都合に時間を割いてお嬢様の目的が果たせない様では本末転倒です」

 

 「……………………」

 

 「ですから本当に私の事はお気になさらずに」

 

 「……分かりましたわ」

 

 ヴィクターはエドガー君の意思を尊重した。

 

 「エドガー君、もしそっちでの私用が終わったら俺の家で集合って事で良いかな?アリサには俺から連絡しとくから」

 

 エドガー君は俺の家を知らないからアリサに頼んで送って貰う様にしておかないとな。

 

 「分かりました。ありがとうございます」

 

 「良いよ良いよ。そっちも頑張ってね」

 

 こうして俺、ジーク、ヴィクターはハヤテさん、エドガー君と別れて再びヴィクターのために街の観光と案内を続けるのだった………。

 

 

 

 あれから一通り街を回り終え、俺の家に帰って来た。

 冷たい麦茶を3人分用意し、リビングで寛いでいる。

 

 「そういえば勇紀様。少し聞きたい事があるのですが」

 

 「ん?何?」

 

 「勇紀様はDSAAに出場なさらないのですか?」

 

 「あー………DSAAねぇ……」

 

 ヴィクターに言われて思い出した。

 

 「ヴィクターはDSAAの参加条件知ってるか?」

 

 「『年齢は10〜19歳で管理世界の出身者』『使用するデバイスは安全面を考慮してCLASS3以上の物を所持』だった筈ですわ」

 

 「正解。で、((地球|ここ))は何世界?」

 

 「管理外……あ」

 

 気付いたみたいだな。地球は((管理外世界|・・・・・))である以上、参加条件満たしてないんだよ。

 

 「じゃあ勇紀様は参加出来ないのですか?」

 

 「まあ、普通はな。けど例外があるんだ」

 

 「例外ですか?」

 

 「ああ。それは俺が『管理局員』である事なんだけどな」

 

 そう……普通は魔導師というだけで管理世界に籍を置いていない俺みたいな奴は参加出来ないDSAAだが例外の条件として『管理局員であれば管理世界に籍の無い管理外世界の魔導師でも参加出来る』というものだ。勿論、嘱託魔導師ではなく正式な管理局員として所属している者だけだが。

 

 「じゃあ参加は出来るんですよね?なのに参加なされないのですか?」

 

 「ヴィクターは俺に参加してほしかったのか?」

 

 「はい!!」

 

 即答ッスか……。

 

 「うーん…実は俺も参加しようと思ってたんだけど…」

 

 「だけど?」

 

 「………参加の申請書出すの忘れてたんだよ」

 

 「へ?」

 

 目が点になるヴィクター。

 

 「何つーか……今所属してる部隊の現場対応やら事務処理やら、やたらと忙しくて申請書出す事忘れてたんだよ。で、気が付いたら〆切りが過ぎてたんで、あの時は軽くショック受けてた」

 

 「そ、それは仕方ないですわね」

 

 「ご期待に添えず申し訳ない」

 

 俺も興味あったんだよな。

 ちなみに俺の知ってる原作知識だとDSAAは男子部門、女子部門と分かれていたのだがこの世界では男女混合である。

 つまりこの世界のDSAAに参加し、世界代表戦で優勝すれば男女含めた10代の最強が証明されるのだ。

 

 「兄さん兄さん」

 

 「ん?」

 

 「DSAAって何?」

 

 「ジークは知らなかったっけ?」

 

 「うん」

 

 そっか。よく考えたらジークを引き取った時は小さかったし、地球で過ごしてる以上、DSAAの事自体知らんのも無理は無いのかも。

 

 「DSAAっていうのは『((Dimension|ディメンジョン))・((Sports|スポーツ))・((Activity|アクティビティ))・((Association|アソシエイション))』の頭文字を取った略称で『公式魔法戦競技会』の事よ。全管理世界の10歳〜19歳で腕に自信のある魔導師が出場する『インターミドル・チャンピオンシップ』……スポーツ競技の一種の事よジーク」

 

 「ほえ〜…ヴィクターは物知りやね〜」

 

 ジークはヴィクターの説明を聞いて、その博識ぶりに感心している。

 この2人……街の観光中にお互いを愛称で呼び合うぐらい仲良くなった。

 原作でも仲良い2人だったから、必然だったのかな?

 

 「でも何で俺に出てほしいと思ってたんだ?」

 

 「そ、それはですね…//」

 

 「それは?」

 

 「地上本部のエースの1人である勇紀様がどの様な戦闘スタイルなのか凄く興味がありまして。勇紀様は……わ、私が目標にしている魔導師でもありますし////」

 

 本人が言うには教材に使われる映像なんかではなく実践でのスタイルが見たいのだとか。

 

 「ありがと。けど見たいなら見せてあげようか?」

 

 「見れるのですか!!?」

 

 「ウチの家族と模擬戦してる映像で良ければだけど」

 

 「是非お願いします!!」

 

 凄い喰い付き。

 ジークもどことなく楽しみにしてるっぽいし。

 俺はカーテンを閉めて室内が外から見えない様にしてから空中にディスプレイを出す。その映像に映っているのは俺とシュテルが模擬戦を行っている時のものだった。

 中、遠距離から誘導弾や砲撃魔法を放つシュテルに対し、俺は距離を詰めての接近戦に持ち込もうとシュテルに少しずつ近付きながら誘導弾で攻めていく。

 けどシュテルも一定の距離感まで縮まると後退し、距離をまた取る。

 そんな行動の繰り返しで互いに隙を見いだせずにいたので俺は((ワザとシュテルのルベライトが設置されている場所に踏み込んだ|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・))。

 

 「兄さんが捕まった!?」

 

 「というよりも自分から踏み込むなんて!?」

 

 ジークとヴィクターが目を見開いて驚く。

 まあ、普通なら自分から設置型バインドに飛び込むなんて有り得ない。特にシュテルやなのはの様な砲撃特化タイプなら敵が動けなくなった瞬間が最大のチャンスにもなり得るし。

 そもそもこの模擬戦は『レアスキル禁止』という縛りまで入れてるから俺は((唯我独尊|オンリーワンフラワー))や((鋼鉄乙女|アイアンメイデン))の使用も許されない。

 

 『ユウキ、攻めを焦りましたね』

 

 シュテルは俺が焦って攻めようとした結果、捕まった様に見えただろう。

 即座に魔力をチャージし始める。やや強めのブラストファイヤーを放つために。

 しかしこの時の俺はこの瞬間を待っていた。魔力チャージのため、動きを止めたこの瞬間こそ一気にシュテルに詰め寄るチャンスだから。

 

 『シュテル、読み誤ったのはお前の方だ』

 

 『ッ!!?』

 

 即座に俺はバインドをブレイクし、『剃』を使ってシュテルの懐まで飛び込む。

 チャージを即座にキャンセルし、プロテクションを張ってシュテルは攻撃を凌ごうとするが

 

 『真空ぅ〜…』

 

 シュテルの眼前まで接近出来た画面の中の俺は下半身を思いきり捻って

 

 『竜巻旋風脚!!』

 

 その場で旋回を繰り返す回し蹴りを放つ。

 俺の脚はプロテクションに阻まれるが

 

 パキイイイィィィィィンンン!!

 

 俺の真空竜巻旋風脚はいとも簡単にプロテクションを砕き、シュテルを巻き込む。

 この技、言うまでも無く『ストリートファイター』シリーズのリュウが使う技なのだが、俺が意図した訳でも無いのに『障壁の破壊効果』が付加されているのだ。まるで『PROJECT X ZONE』に出演してる時のブロックゲージを大幅に削る攻撃技みたいに。

 だが障壁に対する技としては重宝する。今は状況に応じてクリュサオルと使い分けている。

 ちなみにこの時、シュテルにとって真空竜巻旋風脚は初見の技であるため障壁破壊の付加効果については知らなかった。知ってたら普通に障壁を張らず、『剃』使うなりして回避するだろうしな。

 この一撃でシュテルの意識を刈り取った俺は模擬戦に勝利した訳だ。

 

 「「……………………」」

 

 キラキラキラキラキラキラキラキラ

 

 何か2人は模擬戦の映像を見終え、凄く目を輝かせてらっしゃるんですけど?

 

 「あんなに堅そうな障壁をいとも簡単に破るなんて……勇紀様は凄いです!!」

 

 「兄さん、((私|ウチ))にもあの技教えて!!」

 

 興奮した様子のジークとヴィクター。

 てかジークは教えてほしいの?真空竜巻旋風脚。

 

 「まあ、他にも模擬戦の映像あるけど…見る?」

 

 「「はい!!(うん!!)」」

 

 2人の目が『早く見せて!』と訴えてきてるので俺は次の映像を映し出すのだった………。

 

 

 

 「「今日は本当にお世話になりました」」

 

 夕方…。

 ヴィクターと、俺の家に着いたエドガー君の2人がミッドに帰る時間が迫って来た。

 2人を夕食に誘ったのだが、家で準備してるだろうからという事で一緒に食事を摂るのは次の機会に持ち越しだ。

 そして臨海公園に足を運び、来た時同様に認識阻害と人払いの結界を俺が張る。

 

 「今日は本当に有意義な1日でしたわ」

 

 「ええ、私も執事としての格が上がったと自覚できます。綾崎様、鮫島様、ハギヨシ様のお三方には本当に感謝してもしきれません」

 

 ヴィクターもエドガー君も満足そうで何よりだよ。

 …どんな指導されたのかは気になるけれど。

 

 「そうそう。ヴィクターもDSAAに出る気あるんだろ?ならコレあげるよ」

 

 「これは何なんでしょうか?」

 

 「魔力に負荷を掛ける特殊バンドだよ。鍛錬の際に役立つと思うから」

 

 ViVidでヴィヴィオ達が特訓時に装着してたものだ。かなり前、自分の特訓用に((悪魔図書館|あくまとしょかん))使って作っちゃった。

 その時、予備に作っておいたヤツをヴィクターに手渡す。

 

 「よ、宜しいのですか!?そんな物を頂いて!?」

 

 「良いよ。けどヴィクター、自己鍛錬は程々にな。焦って無茶し過ぎると身体壊すから」

 

 「お心遣い痛み入りますわ。決して無茶をしないと勇紀様に誓います」

 

 俺に誓うとまではいかなくてもいいけど。普通に約束してくれる程度で充分充分。

 

 「それとエドガー君にはこれを」

 

 俺は十数枚ほどの紙を渡す。

 

 「これは?」

 

 「一般的な地球の料理レシピだよ。ミッド語にして書いておいたから」

 

 「本当ですか!?ありがとうございます!!」

 

 勢い良く頭を下げるエドガー君。これで原作通りおでんも作れるだろう。

 

 「…そろそろ時間か。2人共、ミッドに着いたら気を付けて帰りなよ」

 

 「はい。勇紀様、いつでも宜しいので是非家に来て下さいね。お約束通りに最高級のお茶菓子を用意しておきますわ」

 

 「私もその時までにこのレシピの料理をしっかりとマスターして奮わせてもらいますので!」

 

 「うん。その時は楽しみにしておくよ」

 

 「ヴィクター、また会おなー」

 

 「ええ、ジークも元気でね」

 

 ジークとヴィクターはお互いに手を振り合う。

 やがて魔法陣が一際強い輝きを放つと、次の瞬間ヴィクターとエドガー君の姿はそこに無かった。

 

 「兄さん、2人共帰っちゃったねー」

 

 「だな」

 

 キュッと俺の手を握ってくるジーク。

 

 「兄さん、((私|ウチ))も…((私|ウチ))もな。DSAAに出てみたい。自分がどこまでやれるんか試してみたいんよ」

 

 「そっか…」

 

 あの模擬戦の映像やDSAAの事を聞いてから、そう思ったんだろうな。

 

 「だからお願いします。((私|ウチ))に稽古を付けて下さい」

 

 「……本気で上を目指すなら今やってる基礎トレーニングに加えて、身体を壊さない程度に厳しい訓練になるけど良いのか?」

 

 「望む所や。もっともっと強くなりたい。((私|ウチ))も遥かな高みを目指したい」

 

 真剣な眼差しで答えるジーク。

 

 「……ま、お前がそう言うなら俺は止めないよ。自分のやりたいようにやってみな」

 

 「うん!!」

 

 帰ったら皆に言って……シュテルと一緒に本格的な訓練メニュー考えないとな。

 ジークの基礎トレメニューを見直して追加、変更を行ったり組手を加えた実践的な特訓も取り入れたり…。

 後は『エレミアの神髄』の完全制御だな。

 前途多難かもしれないが可愛い義妹の頼みだ。期待に添えられる様にしますかね。

 俺達は手を繋ぎながら家路に就く。

 

 「それから兄さんの技も一杯覚えるよー。まずは真空竜巻旋風脚や!」

 

 ………やっぱり覚えるつもりなのね、真空竜巻旋風脚………。

 

 

 

 「ほえほえ〜。そりゃまた…ジークちゃんのしっかりした目標が出来て良かったじゃないですか」

 

 ヴィクター、エドガー君の来日から数日後…。

 俺は澪と共に今所属してる部隊の隊舎で事務処理を終え、昼休みの休憩に入っていた。

 空いている席に座り、昼食を食べながらの雑談。

 

 「しかし『雷帝』の子孫とも知り合いだったのか。勇紀は本当に交友関係が広いな」

 

 そして俺、澪と共にいるリンス。

 何故リンスが一緒にいるかというと俺が夜天の書をメンテナンスするため、昨日はやてから預かっていたからだ。

 メンテナンスは昨日1日と今日の朝一番時間を掛けて無事終わった。もうリンスははやての元に帰ってくれてもいいのだが、俺達が地球に帰るまでは一緒にいるとリンスが言ってきたので、行動を共にしている。

 

 「リンスはアレか?ベルカ時代に当時の雷帝と会った事はあるのか?」

 

 「いや……会った事は無い。当時の主の耳に雷帝の噂が入ってくる程度だったな」

 

 首を左右に振って答えるリンス。

 

 「にしても勇紀君、これで師事する事になるのは((2人目|・・・))ですね」

 

 「2人?ジーク以外にまだいるのか?」

 

 「はい。私と勇紀君でスパーの相手になってるんですよ」

 

 「それ……((ミカヤ|・・・))の事だよな?」

 

 「ミカヤ?」

 

 「フルネームは『ミカヤ・シェベル』。『抜刀術天瞳流第4道場』の門下生の子で、ここの部隊長と天瞳流の師範さんが旧知の仲らしいんです」

 

 そうそう。そんでもってその師範さんから頼まれたんだよね。『門下生1人のスパー相手になってやってほしい』って。

 彼女はこの時点からDSAAを強く意識してたらしいし、原作でアインハルトに言ってた様に『((接近戦型|インファイター))対策をしたい』との事で、俺と澪が手伝ってたんだよ。

 もっとも((近距離|クロスレンジ))だけじゃなく、((中距離|ミドルレンジ))や((遠距離|ロングレンジ))の対策も出来る様に特訓を手伝ってあげた。

 

 「2人から見て、その子の実力はどうなんだ?」

 

 「筋は良いですよ。居合による最速の一閃……まともに決まれば並大抵の選手は一撃KOですね」

 

 「その分、ミカヤの防御力は低い。スピードと破壊力重視に特化したスタイル……フェイトのソニックフォームをイメージすれば分かり易いと思うぞ。全く同じって訳じゃないけど」

 

 「成る程」

 

 俺と澪の説明にリンスは頷く。

 

 「そういや、DSAAの地区予選…エリートクラスって今日からじゃなかったっけか?」

 

 TV中継もあった筈だけど…。

 

 「そうですね。確か……」

 

 澪がディスプレイを出し、チャンネルを変えていくとDSAAの生中継を行っているのがあった。

 

 『さあ、これより予選3組戦第4試合が始まろうとしています!!』

 

 しかも実況付きか。

 

 『レッドコーナーからは今回が大会初出場!!10歳の若き((新星|ルーキー))……ミカヤ・シェベル選手ぅぅぅぅっっっっ!!!』

 

 ワアアアァァァァァッッッッ!!!

 

 会場盛り上がってんなぁ。

 てかミカヤの試合かよ。

 

 「何ていうかタイミング良かったですね」

 

 全くだ。

 

 「彼女がお前達2人で鍛えたという子か?」

 

 「「おう(はい)」」

 

 映像越しに観た感じ、緊張はしてないっぽいな。

 

 『ブルーコーナーからは大会参加7年目!!その内2回は都市本戦への出場経験もある地区予選優勝候補の1人……ブタ・ゴリラ選手ぅぅぅぅっっっっ!!!』

 

 ワアアアァァァァァッッッッ!!!

 

 歓声と共に出て来たのはとんでもない巨漢の大男。

 あの大男に比べるとミカヤは小さく見える。

 

 『さあ……((新星|ルーキー))が勝ちを掴みとるのか優勝候補の熟練者が勝ち上がるのか……今、試合開始のゴングが……』

 

 カーーーーン!!!!

 

 『鳴りまし……』

 

 実況の言葉を聞き終える前に

 

 ザザザザザザッッッ!!!

 

 「「「???」」」

 

 突然ディスプレイの画面が砂嵐になる。

 俺と澪は丁度お茶を口に含んでいたのだが

 

 『はっはっはっはっはっはっはっはっはっ……』

 

 「「ブーーーーッ!!!!!」」

 

 突然画面が映り、笑い声と共に映し出された人物を見て同時にお茶を吹いてしまった。

 

 「だ、大丈夫か2人共!?」

 

 「「ゴホッ…ゴホッ…」」

 

 咽た俺と澪を心配してくれるリンスを手で制し、大丈夫だと念話で伝える。

 すぐに落ち着きを取り戻し、改めて画面を見る。

 

 『ほとんどの者は『初めまして』だろう。私は時空管理局の特務部所属で階級は一佐のムスカだ』

 

 画面の向こうの人物は自己紹介を始める。

 ………うん、どこからどう見ても『天空の城ラピュタ』に出て来たムスカだねぇ。ソックリさんかな?

 

 『もっともその肩書きはつい先程までの事。今の私は古の帝国『ラピュタ』を復活させ、王として即位したラピュタ王、『ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ』だ』

 

 ……ソックリさんという可能性が消えた。

 画面の向こうのムスカはハッキリと『ラピュタ』の名を口にしたからだ。

 てかラピュタまで存在してたのかよこの世界は。

 

 『王国の復活と共に私はここに宣言する!!時空管理局を滅ぼし、全ての次元世界をラピュタが統一する事を!!世界を支配するのは私のラピュタ王国なのだ!!!はっはっはっはっは……』

 

 いきなり世界征服の宣言しやがったし。

 俺と澪、リンスはそんな映像を黙って観ていた。

 ……何か面倒な事になりそうだねぇ………。

 

-2ページ-

 〜〜キャラクターステータス〜〜

 

 NO.0008

 

 アリシア・テスタロッサ

 

 LV   78/ 999

 HP 6400/6400

 MP  650/ 650

 

 移動力     8   空  A

 運動性   170   陸  A

 装甲   1300   海  B

 照準値   165   宇  −

 移動タイプ  空・陸

 

 格闘 200 命中 211 技量 166

 射撃 199 回避 194 防御 181

 

 特殊スキル 援護攻撃L2

       援護防御L2

       インファイトL4

       ガンファイトL4

       ヒット&アウェイ

       連続行動

 

-3ページ-

 〜〜あとがき〜〜

 

 ムスカとラピュタが中学生編のボスです。

 もっとも、ラピュタは長く引っ張るつもりは無いです。サクッと事件を解決させます。

 高校生編までもうすぐだーー!!

 

説明
神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。
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コメント
でもムスカ大佐って基本カマセだよね?www(海平?)
ジブリ屈指の悪役にしてクロノに続くKYか……これは強敵だぞ勇紀(ギャグの意味で)ところでブタ・ゴリラとは奇天烈で大百科な作品に出てくる彼かな?(アインハルト)
俺は"乃木坂春香の秘密"がいいな(肉豆腐太郎)
真空竜巻旋風脚ということは、殺意の波動覚醒フラグ?(レイコウ)
ムスカさん〜!空気読めやこら〜ヽ(゚Д゚)ノてめえは、クロノか!あぁ(゚Д゚)あ!あとクロス作品は、「ベン・トー」がいいと、思う。(カイル)
てか、ブタ・ゴリラについては皆がスルーですか(彗)
やっぱ、最後は目がー?(蓮)
何と言いますか・・・・・・・・・凄いです(アサシン)
空気読まずに言いますけど時空監理局なら階級は大佐じゃなくて一佐では?(夜の魔王)
そっか、まだ中学生だったね。vividキャラとの絡みの時はどうしても勘違いしてしまう(ohatiyo)
ムスカ来ちゃった!?マジか…(アラル)
↓の学校に行くか。クロス作品にはぴねすに続いてラピュタが出たならば「鬼畜美学」「神殺魔王」「写真帳シリーズ」も出そう。(道産子国士)
高校生編の後@原作通り就職して正局員√A大学進学√か?高校となると中等部から高等部持ち上がり(女子+聖祥限定)は通用しないから受験の結果@優等生組と劣等生に分かれるA同じ学校だがまほれつのように成績別処遇(道産子国士)
ムスカwwwwwお茶噴いたわwwwまぁジブリの悪役の中では一番好きな人なんですがね(Thanatos)
大佐相手なら、閃光手榴弾でも投げ込んでしまえ……(Rinks)
しかし、ミカヤが勇紀の弟子だったとは思いませんでしたよ。その内ヴィクターも弟子入りしたりして。そして、勇紀が真空竜巻旋風脚を修得してたのは驚きました。この分だと竜巻昇竜拳や真空波動拳も覚えていたりして。(俊)
おいおいおいおい、この噛ませ犬が中学編のボスって、あっけなく終わりそうですね。しかもこの件を片付けて勇紀の階級が三佐から少将に上がるんじゃないだろうか?(俊)
まぁあんなの見ちゃお茶吹きますよね。(Fols)
よし、総員バルスの準備を!!(青髭U世)
なのは達も高校いくのかね?今さらだが……(肉豆腐太郎)
サクッとってwwwww(FUMI)
…てゆーか後書き見るまでもなく噛ませ犬臭が半端ないぞ、大佐www(プロフェッサー.Y)
バルス!!(人吉善吉)
てかボスって何!?いつからこの話ステージ制のRPGになったの!?(プロフェッサー.Y)
ま、まさかの……あの映画?……「親方!!空から女の子が!!」「飛行に失敗したのか?……助けるぞ」「はい!!」(肉豆腐太郎)
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