超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 ネプテューヌ編
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「皆さん、準備はいいですか?」

 

イストワールの声に全員が頷いた。

プラネタワーの地下、薄暗い廊下の中で関係者以外立ち入り禁止と書かれた扉の前で俺達は集合していた。

少しでも力を付けるために大陸を回りシェア回復をした所為で時間が掛かった、元はと言えばあっちも待っているとだけ言って制限なかったから月並み程度だが自信が付いた。嫌な感じであるが、あいつは今まで無茶でかなり弱っていることはデペアから伝えられている。それでも、個々のスキルをかなり向上できたと思う。

 

「イストワール、ここがそうなの?」

 

「はい、この装置を使えば人を神界に送れます」

 

「女神達は自力で行けるらしいけど、私達は人間だからね」

 

「お手数をお掛けするです」

 

この扉の奥の装置を使えば人間でも神界に送れるらしい。

ほとんど使わなくてイストワールも使い方を思い出すのに三日ほど時間が掛かった。

 

「それじゃささっと行ってささっと終わらせましょう。国を長い時間空けるのはあまり良くないわ」

 

「ユニミテスが滅びた事で上がり気味なシェアを維持するためにあまり時間は懸けられない」

 

「そうですわね。チカに国の事を任せていると言っても、あまり長く空かせているとあの娘が寂しがってしまいますわ」

 

「ちょっと、みんな!?ラスボスの一歩手前なのにどうして国の事なの?これが私達の最終決戦、世界を守る為に私達はやり遂げる!絶対に奴を倒して平和を取り戻すとかお決まりセリフはないの!?」

 

「と言われてもな」

 

あいつがしていることって支配と言うより管理と言う方が正しいからな。

ゲームでありそうなラスボスのように世界を滅ぼすというより、あいつなりのやり方で守ろうとしているだけだ。更に言えばこちらは待ってもらっている立場だけどな。鍛錬しなかったら本当に瞬殺されるくらいに差が開いているし。

 

「まぁまぁ、空も待っているだろうし早く行かない?」

 

「あいちゃんまで!?う――ん、なんかこうお互いにもう一度決意を新たにするとかそんなイベントが合っても可笑しないと思うんだけどなぁ…」

 

「ぶっちゃけて、ゲイムギョウ界の危機とかじゃないからな」

 

「もし、倒した相手が蘇ったり、夜天 空のように異世界からナイアーラトホテップのような者が来ないかぎり危機とは言い辛いわね」

 

もし、そんな奴が来たらそれこそ空の力を借りないといけなくなるけどな。

……そういえばこの身を使って二回くらい邪神を召喚しようとしたり、憑依されたりされたけど大丈夫だ様な?逆探知とかで場所とか特定されないよな?なんか、オリジナルと邪神側は仲がいいと聞いたような気がするから空並の実力なら次元を超えて来襲しそうで怖いんだけど。

 

『(……………………………だ、大丈夫、だと、思うよ?)』(震え声)

 

そうだよな。とりあえず今は空の事に集中しよう(現実逃避)

 

「顔色が悪いですわ?やっぱりあと一日にくらい休んだ方がいいと思いますわよ?夜天 空は強敵ですから」

 

「いや、問題ないよ。空は関係ないし、なんとかなるだろう……うん」

 

あはははとデペアと共に空元気で笑った。不信そうにこちらを見る女神達とは別の方向を見ながら。

背中が冷や汗で濡れるが、話を逸らす為に更に顔を動かすと俺達より少し離れた場所に静かに佇むポチさんとその隣にいるネプギアの姿が合った。俺の視線に気づいたのか全員がそちらに向き、ポチさんを見つめる。

 

「あなた何もしないの?」

 

「テケリ・リ」『ここで貴方達と戦ったとしても―――私に出来るのは精々一人二人削ること程度です。それ主様は私に戦う事を望みではない』

 

首に付けられているポチさん専用のマイクから発せられる声はどこか寂しげだった。

 

「私が言うのもなんだけど、私達あなたの主を倒しに行くのよ?」

 

「テケリ・リ」『それは主様も望んだ事、最初から私に入る隙間はありません。それに---』

 

アイエフの言葉にポチさんは頭を振った。

儚げな顔で上を見ている。その先にはこの空間を照らすためのライトがあった。

 

「テケリ・リ」『私は従者です。例え、主様が正しく、過ちである行動であったとしても私は主様のご意志に従うだけです』

 

「……それでいいの?」

 

「ああ、それじゃダメだと思う。あいつ絶対に頼むより頼まれる方だから、意味なく強くなって誰にも相談とか話しかけれないぞ」

 

「テケリ・リ」『ふふ、それは貴方の……零崎 紅夜様のお役目です。いつも、いつも、主様が間違っていると思われた行動を取った時は容赦なく殴り飛ばしていましたから』

 

この人と空は非常識と常識のように元々から違うんだ。お互いの行動に納得できたとしても理解はできない。

まるで糸に操られる人形のようだと思った。しかし、目の前にいるポチには揺るぎない思いが感じさせる。誰も口に出すことはなかったが、ポチさんの力の限り握られた拳から血が滴り落ちていた。

 

「それって従者としてどうなのよ…。あなたの主様は外道よ。命を黒板の上で書かれる計算式程度しか思っていないわ」

 

「……テケリ・リ」『……そうでしょう。貴方の言うとおり、あの人は外道です。魔導に墜ち、修羅の道を鮮血で満たし、深淵の中で彷徨うことしか出来ない歪みです。しかし、それでも、私の恩人なのです』

 

「…ポチさん……」

 

隣にいるネプギアが声を零した。ポチさんは上から下に視線を落としてゆっくりと地面に膝と手を付けて頭を地面にくっ付けた。

 

「テケリ・リ」『無力な私は何も出来ません。あの時も壊れていく主様に何一つ救えなかった。紅夜様に相談した結果、全ては崩壊してしまった。本当の姉妹のように仲の良かったあの娘も空亡嬢も離れ離れになってしまった。あのお方はその責任を全て自分の所為にしてしまった』

 

己の行いを吐く様に呟いていく。

その姿も俺達は言葉を失い身を固ませるほどの懺悔の声が低く響く。

 

「---テケリ・リ」『---あの人は本当は酷く寂しやがり屋なんです。誰かが傍にいないと壊れてしまうほど脆い存在なのです。ブラックハート様の言うとおりあのお方は闇の住人です。だけど、それでも少しずつ光に向かって歩きだせていたのです。命を学び始めていたのです!お願いします!主様を解放してください!』

 

---この世界から、彼女から。いつものテケリ・リという奇妙な鳴き声でもその必死な言葉はマイク無しでも十分に伝わってきた。再度、神界に行くメンバーが全員目を合わせる。語る言葉はなくても、通じる思いはある。イストワールはドアの横に設置されたパネルを操作すると重々しい音を立てながら扉が開いた。その先には光が満ち溢れており、地面には転送用の魔法陣らしきものが輝いていた。

 

「お、おねえちゃん!」

 

背中から呼ばれる声にネプテューヌは振り向き、最高の笑顔と共に日本の指でVサインを作った所で魔法陣に乗った俺達を包むように一層輝く光に世界は変わった。

 

 

 

 

 

 

あまりの輝きに閉じていていた目を開けるとそこはため息が出るほどの幻想的な光景が広がっていた。

謎の重力が働いているのか浮遊する島があり、その島全てが虹色の光の橋と繋がっており、下は真っ白な雲で上空には煌々しく輝く太陽が全てを照らしていた。

 

「ここが……女神達だけが立ち入る世界……神界」

 

「凄く、綺麗です…」

 

「こんな所でお前ら戦っていたのか?勿体なさすぎるだろう」

 

四女神全員は露骨に目を逸らした。

女神の降臨する場所とか言われているし、見慣れているかもしれないかもしれないけど人間の感性からすればこんな綺麗な所で争うのは可笑しい。

 

「イストワール様、空はどこにいるか分からないか?」

 

「大雑把ですが場所は分かります。案内します」

 

イストワールを先導に歩き出す。

ポチさんといいデペアやオリジナルのように何だかんだ慕われているんだよな。

 

「ねぇ、イストワールもどうなの?」

 

「どうなの?…とい言われましても、えっと何のことに対しての?」

 

「空ちゃんのことだよ。親、なんでしょ?」

 

「…………」

 

俺も思った事をネプテューヌがイストワールに聞くとぴくっと止まると思い出すように青い空を見つめた。

 

「七万前まで、あの人は何かを追い求めるように探し出すようにあらゆる手で女神を人間をモンスターを支配してしまいました。いつも譫言のように呪詛を呟くような狂人で、今は普通に話したりできますが、昔は会話すら成立するのが困難でした」

 

苦痛に耐える様な声でイストワールは嫌な物を懸命に吐きだす様に呟く。先頭になっているので表情が見えないが肩が大きく震えていた。

 

「ご、ごめん…無理して話さなくてもいいよ!」

 

「いえ、…あの執事さんを見ていたら私も少し考え方が変わりました。話を戻しますが、七万年前を境に変わり始めたのです。何があったのかは聞いても答えてはくれませんでしたが、ゲイムギョウ界を支配するように操作していたあの人は、管理するように人間に女神にモンスターを自由を与えました。今思えば、あの人はあの時ゲイムギョウ界がどうでもよくなったんです」

 

「どうでも…?謎が膨らみますわ」

 

再び先に進み始めるイストワールに付いてきながらイストワールの言葉を聞く。

 

「最初にも言いましたが、私にはあの人が何かを探し求めるように見えます。とても大事な物を、だけどそれより優先する物が見えたから、この世界の価値は下がり起こる物事も傍観する程度にした」

 

「……勝手ね」

 

「えぇ、あの人は一人で何も出来るからこそ、何もかもを無視します。私も頼んでいないのに誕生日と言われ、服等をプレゼントされても困るのです……」

 

「え、いーすんの服って空ちゃんの手作りなの!?」

 

人の掌で収まってしまうほどの大きさの人型生き物の服なんてどこを探してもないだろう。故にネプテューヌが言った様に手作りされたと考えるのは正しい。興味津々に顔を近づけるネプテューヌにイストワールは顔を赤くしながら、移動スピードを上げる。

 

「親の心変わりに混乱している子供ね」

 

「会話も成立できない狂人が突然にプレゼントを送ってきたら確かに疑うわね、むしろ怖いと思っていいわ」

 

「いーすんさん可愛いです」

 

言いたげな目でこちらを睨むイストワールだが涙目だったので全然怖くなかった。むしろコンパが言った様に可愛い。皆が恥ずかしがるイストワールについて突きながら進んでいると、突然イストワールの顔つきが険しくなる。それに合わせて、全員が獲物を抜いた。

 

「……この先にいます」

 

頷き、虹の道の先にある他の島より広い敷地で一面草原だった所に奴はいた。

静かな風と共に踊るように靡く神々しい黄金色の髪に見る者を震わせる独特の畏怖感を放つ銀色の双眸。誰もが鏡を見て、こんな姿になりたい幻想を抱くような美形を造形させたような中性的な容姿。世界に一つしかない孤高にして孤立した白色のコートを靡かせながら儚げに遠い物を見るような目つきで夜天 空はそこにいた。

 

「空ッッ!」

 

「いらっしゃい」

 

振り向いて俺達を見る空は鮮やかに微笑んだ。

その背中に巨大なモンスターが腕を組みこちらを見つめていた。

 

 

 

説明
その8
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