超次元ゲイムネプテューヌ 未知なる魔神 プラネテューヌ編 |
伸ばされた手が交差することはなく金色の閃光によって連れ去られ、遥か彼方に消えていく姿だ。虚しく伸ばされた手に誰も掴むことは無く、ネプテューヌは歯を噛んだ。追いかけようとするが、親友の声に我が戻る。
「コンパ、あいちゃん!!」
空の手によって解き放たれた白き魔龍による破壊はネプテューヌ達が立っていた浮遊島を崩壊させるほど破壊力を持っていた。巨獣の咆哮にも似た轟音と共に足場が急激に崩れ行き、空の立っていた場所を中心に蜘蛛の巣のように広がっていた亀裂は落ちていき始めている。
既にその崩壊によって全員が見える位置にいるものの十秒を経たずにここは脆くの屑となって落ちていくだろう。飛翔能力を持つ女神ならこの場を脱出することは可能であるが、人間であるコンパとアイエフにとっては絶体絶命以外何者でもない。
誰よりも早く親友に向かって宙に浮いた足場を蹴り、女神化する。
天を照らす如き光と共にネプテューヌという幼き存在は、冷徹ながら意思の力を宿す女神として真なる姿へとなる。女神を象徴するプロセッサユニットが人々の希望の思いに稼働する。
「手を!」
落ちてくる岩石はバックプロセッサで防ぐ必要はない、両手に伸ばした手でアイエフとコンパを掴む。御礼の言葉を言われるが、ネプテューヌに返事をする余裕は無かった。両手が封じられているこの状態では、武器を取り出せない。そして流星群の如く落ちてくる岩石に回避しながら既に女神化して島の崩壊から逃れた女神たちの元に急いだ。
「ねぷ子!」
もうすぐで出口が見えた時、その一瞬の油断。アイエフの叫びにネプテューヌが表を上げると巨大な岩石が落ちてくる。どう考えても避けることすら出来ないほどの巨人の拳の如き岩石にネプテューヌが出来たことを言えば残酷な未来に目を瞑ることしか出来なかった。
「ふんっ!!」
だが、その未来を砕く者がいた。巨大な体と六対の翼は生かして煌めく雷光のような鋭い飛び蹴りが、ネプテューヌ達の頭上にある岩石をバラバラに砕いた。驚くアイエフやコンパよりネプテューヌは的確にばらけた岩石を避けながら漸く、変身したブラックハート達の元にたどり着くことが出来た。
「ふむ、無事のようだな」
「感謝するわ。ありがとう」
そして隣には竜騎士がいた。どうして助けたのか、立場的に考えれば敵同士であるがネプテューヌはそんなことを振り払った。どうであれ、助けてくれたことには変わりないからだ。
ただ警戒心だけは解くことが出来ない。礼儀正しき青年のような態度であるがその風格は間違いなく空に続いて強敵であることは間違いない。ノワール達にも突き刺さるその視線にゼクスと呼ばれたモンスターは顎を擦りながら周囲を見渡し、空の手によって破壊された島より少し小さな島を指差した。
「ふむ、言いたいことがあるだろうが、まずはこっちだ。両手に抱えたままでは不安な物もあろう」
そうやってゼクスは女神たちに背中を向けた。そのことに驚く女神達。敵同士かもしれないのに無様な背中を見せたのだ。女神たちは視線を合わせて頷くと今は信じようと考え付いていくことにした。
◇
「自己紹介をしておこう、((我|オレ))の名前は『ゼクスプロセッサ・ドラゴニス』この世界とモンスターが生まれる地である冥獄界を繋ぐギョウカイ墓場で門番をしている者だ」
若気がありながら厳格ある口調でネプテューヌ達を見下ろす。改めて見るとその背丈は八メートルはある巨体だ。それでもネプテューヌの頭上から襲ってきた落岩はこの倍はあったが、獣の世界の中で王者に君臨した者のような肉体は一撃必殺の威力を秘めていると言われても納得が行く。
更に肩と胸から生える龍の顔は決して飾り物ではなく、この竜騎士の体の一部であることは様に恐ろしく鋭い瞳をこちらに向けている。正に女神としての力を逆転した者、ブラッディハードのような根本的な所ではなく、強靭にして無双とした雰囲気と厳しい目つきは、正に地獄の番人と言うのには相応しいだろう。
警戒を解くことなく臨戦態勢である女神を余所にゼクスは腰を下ろして握っていた手を開いた。そこには今まで姿が見当たらなかったイストワールの姿があった。
「…助かりましたゼクス」
「我らは兄妹の関係。妹を守るのは兄の役目である。……しかし、まさか浮遊島を破壊するほどの威力をした攻撃をいきなり放つとは、は……父は全く末恐ろしいな」
「……確かにいつもより更に情緒が不安定でした」
服と本に付いた砂を手で落としながらネプテューヌ達の元に移動するイストワールを微笑むように見つめる兄の姿。
そんなことより、ネプテューヌ達は呆然と口を開いた。空とは何等か関係はあるのは最初から気づくが、誰が兄妹と分かるか、そもそもイストワールは手に乗るぐらいのサイズでこちらは家の天井すら超すほどの巨体だ。例えるならば、赤子と大人ぐらいの差だ。
「驚くか?まぁ、そうだろう。我達も似てないと思っている」
「そもそも私達は生まれたというより造られた存在ですから、兄妹も順番でこうなっただけです」
「イストワール。お前の真面目な所は好きだが、それは悲しい。血の繋がり等、実に些細なことだ。大切な物はお互いの気持ちであろう?」
「す、好き!?ぜ、ぜ、ゼクス!!いつも言っていますがそのような言葉を軽々しく口にしてはいけないといつも言っていますでしょう!それに貴方には大切な使命がある筈!」
「暇なのだ。退屈しすぎて雲の数を数える事か寝る事ぐらいしかやることがないのだ」
「……貴方って人は!!」
「人ではないこれでもモンスターなのだが」
「屁理屈を言わない!!」
「なに、この痴話喧嘩……」
肩を落して脱力するノワールに全員が頷いて同調した溜息を吐く。
ゼクスに正座をさせてその小さい体を必死で大きく見せるように体を揺らして腕を上下に動かすイストワールの姿はまるで駄々っ子のようだ。あまりの生温い空気に耐え切れなく女神達は変身を解除した。既にネプテューヌが抱えてたアイエフとコンパは怪我ない。
「マジモードだったのに凄く気が抜けるんだけど……」
「最終ボスを戦う直前のこのイベントはよくあると思いますけど、まさか敵側がしてくるとなると調子が狂いますわね…」
「私、紅夜の方に行くわ」
「私も行くわ。この生温かい空気は居てられないし」
完全に調子を狂わせた女神達は頭を振るう。
毒気を抜かれた気分でその場を離れようとゼクスとイストワールから背中を向けて、離れては交わりを繰り返して宙に真紅と金色の二重螺旋を描く空と紅夜の元に行こう足を一歩、踏み出した瞬間、隔離するがの如く、ノワールとブランの足元から尖った氷の柱が、地面を突き破って出現する。
「……なんのつもりかしら」
振り向かずノワールは呟く。その問いにゼクスは当然のように返す。
「その疑問は可笑しい。最初からお前達はこれをしたかったのではないのか?」
「ゼクス!?貴方が何故、女神達と戦おうとするのですか!モンスターの中で最も女神に近い貴方が!」
「先代のまた先代の女神も我がしたことと言えば繁栄と戦いの歴史を紡いでいる女神達だ。そんな女神達が世界を知り世界を否定する、更に共に手を取り合ってここにいる。貴様たちの何がそうさせたのかが知りたいのだ」
止めようとするイストワールの言葉に耳を貸さずゼクスはゆっくりと立ち上がり、六対の翼を鋭く広げた。その動作だけで風が生じて、門番として威圧感が溢れ出す。
「みんなが笑っていられる世界の方が楽しいんだよ。今の世界は難しいことが複雑に絡み合って、みんな迷子になっちゃうんだよ。だから私は変えたいんだよ?」
「ふむ…なるほど」
「女神に似るモンスター……貴方に問う。この世界は貴方にとってどうなの?」
この世界にはいくつもの火種があり、それはバランスを取るための爆弾だ。何度もそれを引き起こして強引に世界の向きを正しくしていば限界が来る。女神に似る存在であるのならこれが間違っている事であることがどれほど残酷であり、忌諱すべきことであることは分かる筈だとブランの瞳は語っていた。それい対してゼクスは暫く顎を擦った後、簡潔に一言で終わらせた。
「分からん」
「………はぁ?」
「お前たちは何を勘違いしているか知らないが、我は所詮モンスターだ。神ではない。誰かの為にある存在ではない。更に言えば世界等と言う巨大な物を理解できるほどの知性と知恵はない。そこら問題はイストワールが役目だ」
この身はモンスターであるそれがゼクスの答え。
確かに女神に似た位置いることは確かであるが、それだけである。モンスターは人々の危惧されるべき存在だ。故に門番としての無断で通ろうとする輩を叩くことがゼクスの役目であり、宿命である。世界等と言う巨大な器を語れと言う相手が違う。
「……まさかの脳筋キャラだったのね」
「ねぷねぷより性質が悪いかもしれないですぅ…」
「それってどういう意味!?」
「アンタが人の話を聞かない時があるでしょ……でも、元より話が通じない相手なのよ。価値観も沁みた経験も何もかもが違うって事!」
とどのつまり、目の前の存在は、最初から((怪物|モンスター))でしかない。
「唯一話せるとしたら、これしかないって訳ね」
「荒事は嫌いですが……仕方がありませんね」
再び全員が戦意を纏う。
それにデペアは兜の下で嗤う。
女神だけではなく小さく弱弱しい人間と共に歩む事を選ばせる要因とはなんなのか。
再度女神化した女神達を見下ろしながら、胸のドラゴンの口から火花が溢れ、右肩のドラゴンの口から冷気が漏れ始め、左肩のドラゴンの口からは紫電が躍る。
「(あぁ、思い出した)」
巻き込まれたらダメだとイストワールを強引に退かして意識を高ぶらせる中でゼクスは空との思い出の一つを思い出した。
そもそもギョウカイ墓場ですら指で数える程度しか知らない存在を知る者はいなく、冥獄界へ行かせない為に門番をするゼクスの強大な力を思う存分、発揮できる相手は空しかいないと思っていた。いつものように手も足も出せずに倒された時に他の世界を話しを聞かせてもらった。
「さぁ−−−」
それは誰もが心躍る物語。
それは正義が悪を打倒す物語。
それは大衆を導く救世主の物語。
「貴様たちの((英雄譚|サーガ))、我に見せてみろ!!!」
勇気と希望と夢を胸に新たなページが捲られる。
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