九番目の熾天使・外伝 運命の獅子
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第四話 獅子と英雄

 

官邸での話し合いの数日後、ウルはエヴァンジェリンの別荘―ダイオラマ魔法球の中の世界、そこにある湖に浮き一人瞑想していた

理由は先日の桜子からの告白である

 

「(桜子さんが僕―性格にはディアーリーズを好いてくれた。…それは純粋に嬉しい。姿は僕ではないとは言え、性格までは偽っていなかったから。…でも僕は人造人間で、桜子さんは純粋な人間。僕は魂から体まで全てが作り物。…たとえヒトと結ばれたとして、子が成せるのか。一緒に老いて死ぬ事が出来るのか。…それが僕には分からない。分からないからこそ答えられない…)ああ、もう!」

 

焦燥からかウルは魔力を一気に放出、それに巻き上げられた水が霧となりウルの肌や髪の毛に水滴がつく

 

「わからないなぁ…。どうすれば良いんだろう…」

「何がわからないって?」

 

そこに何者かの声がかかる

ウルが声の方を振り向くと、そこにいたのは―

 

「…なんだ、マスターですか。驚かせないでくださいよ」

「ふん、何を言うか。どうせ気がついていただろ」

 

そう、エヴァンジェリンだった

エヴァンジェリンは水面に両足で立っている

非魔法関係者がいないとき、ウルはエヴァンジェリンのことを『マスター』と呼んでいる

理由は単純、彼女がウルの魔法の『((師匠|マスター))』だからである

彼女がウルを引き取ったその日から修行は始まり、その時にエヴァンジェリンはウルに自分をマスターと呼ぶように命じたのだ

 

「で、何が分からないんだ?これでも私は600年を生きる吸血姫だ。お前より人生経験は豊富だぞ。」

「…いえ、大丈夫です。これは僕が自分で考えなくてはならないことですから」

「なんだ、つまらん」

「つまらんって…あれ、そう言えばマスター何でここに?今日は外にいるはずでは?」

「ん、そうだ忘れていた。ウルは上にいろ。ここは今から戦場になるからな」

「戦…え?」

「うむ、お前の兄弟子と姉弟子の最後の稽古だ」

「…ネギさんとアスナ姉さんの?」

 

ちなみにウルは遺伝子を組み込まれた影響か、アスナのことを姉さん付きで呼んでいる

初めはアスナも拒否していたが、どう言っても暖簾に腕押しといった風にぜんぜん呼び方を改めないので半ば諦めている

 

「そうだ。だから上で観戦していろ。…それと、お前に客がいるぞ。そいつらも上で待っているから早く行くがいい」

「客?…わかりました、とりあえず上に行きますよ」

 

ウルは飛行魔法を使って客とやらがいるであろう桟橋に向かって移動する

すると、そこにいたのは―

 

「っな…!?」

「おー!お前ぇさんが最後のアーウェルンクスって奴か?なるほどスゲエ魔力だな。ナギの馬鹿より多いんじゃね?」

「それにキティの弟子と来ております。将来的にはネギ君を越えるやも知れませんね」

「ふむ、確かに良い面構えをしているな」

「…ふん」

「おいおいクルト。彼はアリカ王女の事件とは直接関係はないんだ。彼に当たるのは筋違いだろ?」

 

―魔法世界に名高い、『((紅き翼|アラルブラ))』の面々だった

 

 

伝説の傭兵。千の刃のジャック・ラカン

 

 

胡散臭いが実力は確かで重力魔法を操る。アルビレオ・イマ

 

 

神鳴流を修めたサムライマスター。近衛詠春

 

 

サムライマスターの弟子にしてオスティアの総督。クルト・ゲーデル

 

 

((死の眼鏡|デスメガネ))、笑う死神。タカミチ・T・高畑

 

 

実力では魔法世界最強といっても過言ではない集団が、今この場に集っていた

 

「よ、俺はジャック・ラカン。ジャックでもラカンでもどっちでも良いぜ」

「私は既に会っていますが改めて。アルビレオ・イマです。今はクウネル・サンダースと名乗っているのでそちらで」

「わたしも会っているね。近衛詠春だ。よろしく頼むよ」

「…クルト・ゲーデルだ」

「クルト!…まったく。さて、じゃあ僕も改めて。タカミチ・T・高畑だ。これからよろしく」

「あ、はあ…。ウルティムス・F・L・マクダウェルです。ウルでお願いします」

 

英雄集団の覇気に押されながらもウルは自己紹介をする

と、その時ドドォ…ンと言う大きな音が聞こえてきた

紅き翼+αはその音の源がよく見える場所へと移動する

 

「((解放・固定|エーミッタム・エト・スタグネット)) 『((千の雷|キーリプル・アストラペー))』!!((掌握|コンプレクシオー))」

 

見るとネギがエヴァンジェリンから受け継いだ技法『((闇の魔法|マギア・エレベア))』でエヴァンジェリンに応戦しているところであった

 

「((術式兵装|プロ・アルマティオーネ))『((雷天大壮|ライテンタイソウ))』!!!」

 

ウルはその光景を目に焼き付ける

同じくエヴァンジェリンに師事している者同士、自分もあの高みへ登るのだという目標を胸に秘めて

 

―その時ウルの頭の中に何かが入ってきた

それは何かのプログラム、術式のようで―

 

「礼だ、見せてやろう。((解放・固定|エーミッタム・エト・スタグネット))。『((千年氷華|アントゥス・パゲトゥ・キリオーン・エトーン))』!!」

「ッ!させません!((術式解放|ペルフェクトゥス・プラスマティオーニス)) ((完全雷化|ぺル・エーミッシオーネム))!((千磐破雷|チハヤブルイカズチ))!!」

「((掌握|コンプレクシオー))!!」

 

今度はエヴァンジェリンが『闇の魔法』を使用する

それをさせじとネギは自身を完全に雷と化し、魔力を解放してエヴァンジェリンを狙う

 

―またもウルの頭に何かが入ってきた

それも今度は二つ、同じような術式が

周囲でラカンやアルビレオが何かを話しているが耳に入らない

身を乗り出して、食い入るように戦いを見つめる

 

「((左腕解放・固定|シニストラー・エーミッサ・スタグネット))『((千の雷|キーリプル・アストラペー))』!!((右腕解放・固定|デクストラー・エーミッサ・スタグネット))『((千の雷|キーリプル・アストラペー))』!!   ((双腕掌握|ドゥプレクス・コンプレクシオー))」

 

ネギが一度闇の魔法を解除し、今度は両腕での術式装填を試みる

ウルはそれを見逃すまいと必死だ

 

「((術式兵装|プロ・アルマティオーネ))『((雷天双壮|ライテンソウソウ))』!!」

 

―三度、ウルに術式がインストールされる

ウルには術式が文字通り『見えていた』

 

 

 

 

 

 

それは学習能力特化型として作成された人造人間の能力

―自身の目で見た魔法をコピーし、改良する能力がウルには備えられていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてエヴァンジェリン対ネギの模擬戦が終わった

途中でアスナが乱入したが、結果は引き分け

ネギの『武装解除魔法』が暴発してエヴァンジェリンとアスナの服を引っぺがしてしまったからだ

しかし他にも理由がある

ラカンたちと一緒に観戦していた刹那がアスナを引っ叩き、泣き出した為だ

 

―実はアスナは魔法世界の崩壊を食い止めた代償として、100年もの間眠りについてしまう事が発覚したのだ

自他共に認めるアスナの良き友人である刹那がそれを聞いてしまった結果、先の事と相成ってしまったのである

最終的にはアスナの根拠のない自信に刹那が負けたようだが

 

 

 

「…マスターにアスナ姉さん。服を持ってきたので着てください」

「む、すまんな」

「あははありがとうね。ウル」

 

ウルが城から二人分の衣服を持ってきて、エヴァンジェリンとアスナに手渡す

 

「お、そうだウル!お前、俺と戦ってみねぇか?」

「えっ?…分かりました、僕も今の実力を知りたかったですし」

 

ラカンからの唐突な申し込み

ウルは混乱しながらも誘いを受ける

 

「は!?ウル、お前はまだ修行中だろう!この筋肉バカに勝てるわけが無い!」

「おい、ヒデェ言いようだな」

 

エヴァンジェリンはウルの身を案じる

ラカンはエヴァンジェリンの辛辣な言いように苦笑いを隠せない

 

「大丈夫ですよ、マスター。…ちょっと、試してみたい事もありますしね」

「…ふむ、お前がそこまで言うのなら大丈夫なんだろう。しかし万が一があったらわたしは躊躇い無く乱入するぞ」

「はい、分かりました。ではラカンさん、行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーってっとぉ!一撃目はサービスだ。どっからでもかかって来いや!」

 

ラカンとウルはエヴァンジェリンの別荘にある修行場の一つ、砂漠世界へと場所を変えた

そこでラカンは余裕とばかりに仁王立ちしてウルの攻撃を待っている

 

「…随分と舐められた物ですね。では遠慮なく行きますよ!ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト!」

「おお来い!」

 

ウルは魔法始動キーを詠唱し、ラカンはやはり余裕を崩さずに仁王立ち

しかしそれを見たウルはニヤリと笑みを浮かべる

 

「『((契約に従い|ト・シュンボライオン)) ((我に従え|ディアコネートー・モイ・ヘー)) ((氷の女王|クリュスタリネー・バシレイア))!((来たれ|エピゲネーテートー)) ((とこしえのやみ|タイオーニオン・エレボス))!((えいえんのひょうが|ハイオーニエ・クリュスタレ))』!!」

「おおっ!?ここまで強い魔法を覚えてたとは!」

 

ウルが放った魔法は氷系の((上位古代語魔法|ハイ・エンシェント))

まさか既にここまでの域に達していたとは思わず、ラカンも声が上ずる

周囲150フィートを完全凍結する呪文に、先の約束どおりラカンは抗おうとせず凍ってしまう

しかしウルは慢心せずに既に氷付けのラカンに対して追い討ちの魔法を詠唱する

 

「『((全てのものを|オムニア・イン)) ((妙なる氷牢に|マグニフィケ・カルケレ)) ((閉じよ|グラキエーイ・インクルディテ))!((こおるせかい|ムンドゥス・ゲラーンス))!!』」

 

周囲にある氷が氷付けのラカンに収束し、カチコチに固めてしまう

焦った表情のラカンを中に閉じ込めた氷柱は、砂漠の暑さでも溶けることは無い

しかしその状況でもウルは警戒を解かなかった

なぜなら、氷柱に一筋の罅が入っているのを目敏く見つけたからである

 

 

 

 

ピキピキ、ビキビキ、と言う音が砂漠に響く

音と共に氷柱の罅は広がっていき、ラカンは氷の戒めから解放されてしまった

 

「ふぃー…焦った焦った。さすがあの本家ロリババァの弟子だな。危なかったぜぇ。ほんじゃ、次は俺の番だ!」

 

ラカンが無造作に右拳を後ろに引く

格闘の初心者がするようなその挙動にウルは悪寒を覚え、瞬時に腕をクロスして防御体制をとった

 

「ラカン適当に右パンチ!」

 

名前のとおりただの適当なパンチ

しかしそこに秘められた威力は『ただのパンチ』とは到底言えなかった

ウルは何とか防御に成功したが、防御した左腕が折れてしまっている

 

「お?あっちゃ、折っちまったか。すまん、手加減が苦手でな」

「ッ、気にしないでください。僕が未熟なだけですから!」

 

言い終わると同時にウルは強化した拳でラカンに殴りにかかる

ラカンも右手でウルの拳を包み込むようにして防御した

 

 

 

 

 

―しかし次の瞬間、ラカンは驚愕する

 

「もぺっ」

 

なんとラカンは右腕で自身の顔面を殴ったのだ

見ると右腕に、注視しなければ分からないほど細さの魔力の糸が張られている

その糸はウルの指に繋がっており、どうやらウルがラカンの右腕を操作しているようだ

 

「ブハッ!な、なるほど、人形遣いの糸で俺様の腕を操りやがったな?でも、こんなん力で引きちぎれるッ!りゃあっ!」

「ッ!ぐがぁぁああ!?」

 

ラカンが力任せに糸を引きちぎると同時にウルの両手からブシッ!と血がほとばしる

糸が繋がっていたために、その糸がウルの手を切ったのだろう

 

「どうだ?もうお前は戦える状態じゃあねえだろう。ここでギブアップするか?」

「…冗談じゃあない!僕はまだ、戦える!」

 

ウルが感情を爆発させ、魔力を放出する

その魔力が砂漠の砂を巻き上げ、ラカンの視界を一時的に塞ぐ

 

「おっと、最後の悪足掻きか。良いぜ、来いよ!」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

砂塵の中でウルが呪文を詠唱する

 

「『((風花旋風 風牢壁|フランス・カルカル・ウェンティ・ウェルテンティス))』!!」

 

放った魔法は竜巻で対象を閉じ込める魔法

竜巻が砂を巻き上げ、ラカンを閉じ込める

 

「おいおい、これが最後か?うわっぷ」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

ラカンは舞い上がる砂に辟易しながらウルの最後の抵抗に呆れる

しかし竜巻の音で遮られてはいるが、ウルはまだ詠唱をしているようだ

それを聞いてラカンは獰猛な笑みを浮かべる

 

「はははは!最後の抵抗のために時間が必要だったのか?だったらその抵抗を真正面から受け止めてやるよ!」

「((双腕|ドゥプレクス))………((掌握|コンプレクシオー))ッ!!!!」

「なッ!?」

 

詠唱を終える寸前で竜巻が晴れ、ラカンが目にしたのは―

 

 

 

 

ネギ固有ともいえる魔法の二重装填を、ウルが行っている光景だった

 

 

 

 

 

「面白ぇ…来いよ!ウルティムス!!」

「『雷天双壮』!!!!」

 

遂に二重装填をしたウルとラカンが対峙する

 

「おおおおおッ!!((完全雷化|ぺル・エーミッシオーネム))ッ!((千磐破雷|チハヤブルイカズチ))ィ!!」

 

ウルは先ほどコピーしたネギの技を『そのまま』ラカンに放つ

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

「残念だったな。俺様にゃ一度見た技は通用しねんだ」

 

 

 

 

 

ラカンは雷化したウルの拳を受け止めて―

 

 

 

 

「ラカンッインパクトォ!!」

 

 

 

 

自身の必殺技で、ウルを地に伏せさせた

 

 

 

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戦闘描写がつたないのは申し訳ありません!

次回、時間は飛んで麻帆良体育祭ッ!

フラグはあるかもねッ!

説明
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コメント
…うーん一段落したら僕も番外編書こうかなー…。暫くは無理だけど。ここまで幼馴染達の『お』の字すら出てないし…(ディアーリーズ)
ルカ;まあ、僕は本編でもリアルでもフラグをちゃんと踏み抜いたので楽観視出来るだけです(キリヤ)
もう一人味方が!(ディアーリーズ)
ルカ;御愁傷様です・・・・(キリヤ)
ひ、酷い!(首から下がうまってる)(ディアーリーズ)
お前もうるさい (ディアをかかと落としで(ry)(ガルム)
こういうのはノラないと(這い出ててくる)おれの場合だと尚更弄る側に行かないと同類の憐れみみたいに思われるし……(キリヤ)
FALKENさんカッコいー!(ディアーリーズ)
うるさい黙れ。ていうかくたばっちまえ。 (フラグ連呼してる奴らに上からかかと落とし 首から下を地面に埋めた) (ガルム)
Blazさん…あなただけが良心です…!(ディアーリーズ)
フラグ!フラグ!フラグ!フラグ!(キリヤ)
体育祭か…… 中学の妨害競争で男子に球を滅茶苦茶投げられた記憶と………うっ、思い出そうとすると頭が……(キリヤ)
・・・・・・・・・ドンマイ。(Blaz)
野郎ども!ディアといえばなんだ! フラグ!!フラグ!!フラグ!!(陣代高校ラグビー部風に)(okaka)
…ナズェフラグヲモドメルンディスカ…orz(ディアーリーズ)
フラグ!フラフ!フラグ!(王の軍勢風に(デルタ)
何だこの流れは…!?(ディアーリーズ)
フラグ!!フラグ!!フラグ!!フラグ!!(ヘルシング的なノリで)(Unknown)
体育祭…それは学年種目の二人三脚などで相方を決める際、血が流れるという学校行事…!(ディアーリーズ)
フラグ!!フラグ!!フラグ!!フラグ!!(手を叩きながら)(竜神丸)
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