英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク
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〜王都グランセル・波止場〜

 

「くっ……うう……。リシャール閣下……申しわけ……ありません……」

心から信ずるリシャール大佐を解放できなかった事に無念を感じるカノーネは悔しそうな表情でこの場にはいないリシャール大佐に向けて謝罪の言葉を呟き

「はあはあ……。こ、これで決着だ……」

「さ、さすがにクタクタ……」

「はあはあ……れ、連戦やったもんなぁ。」

「ふう……何とかなったみたいね……」

「はあ、はあ……よかった………」

「さすがにレンもちょっと疲れたわ。」

「だが、これでようやく終わりだな……」

走り回った事に加えて連戦続きで疲労が重なっていたルーク達はそれぞれ息を切らせたり安堵の溜息を吐いた。

 

「お、終わったのか……?」

その時デュナン公爵がオルグイユから出てきた。

 

「あ、公爵さん……?」

「なんや……戦車に乗せられてたんか?」

「うむ、まあな……。今回ばかりはお前たちに礼を言わねばなるまいな……。感謝の証に、私の秘蔵する傑作劇画セットを譲ってやろう!」

「いるか、そんなもん!」

「ア、アハハ……」

「え、遠慮しときマス……。でも、まさか公爵さんに感謝されるなんてね―――」

デュナン公爵の感謝の言葉を聞いたルークは疲れた表情で指摘し、カリンは苦笑し、エステルは脱力したが

「ユウナは!?ユウナは無事なの!?」

「い、いきなり何なのだ……。何だ、そのユウナというのは?」

未だ姿を現さない少女に気付き、切羽詰まった様子でデュナン公爵に尋ね、尋ねられたデュナン公爵は戸惑っていた。

 

「女の子よ!白いドレスを着た!戦車の中にはいないの!?」

「そ、そやつら以外には私しか居なかったが……」

「ちょっと!ユウナをどうしたのよ!?どこに閉じ込めてるの!?」

「……?なにを言っている……?」

エステルに睨まれながら尋ねられ、訳がわからないカノーネは不思議そうな表情をし

「…………………」

レンは真剣な表情で黙り込んでいた。

 

「こ、この期に及んですっとぼけるんじゃないわよ!あんた達がギルドから掠った女の子に決まってるじゃない!」

「キルドから掠った………そうか………そういう事だったのね……」

「え……」

そしてエステルの話を聞いたカノーネは呆けた後独り言を呟き、カノーネの様子にエステルが首を傾げたその時

「うふふ………あははははははははは!」

カノーネは突如大声で笑い出した!

 

「ちょ、ちょっと……」

「カノーネ、一体どうしたのだ?」

突如笑い出したカノーネにエステルとユリアが戸惑いながら尋ねたその時

「これが笑わずにいられるものですか!わたくしが!閣下のために数々の謀略を成し遂げてきたこのわたくしが!………あんな小娘ごときにまんまと利用されたなんて……!」

カノーネは悔し涙を流しながら声を上げた。

 

「クスクス。小娘なんて失礼ね。」

「!!」

するとその時少女の声が聞こえ、声を聞いたレンが血相を変えてエステル達と共に声がした方向を見つめると声の主―――橙色の髪で、眼鏡をかけ、白いフリフリドレスを身に纏った少女がルーク達を見下ろしていた!

 

「………………………………。…………………………え。」

「お、女の子??」

倉庫の屋根に立っている少女を見たエステルは放心し、カリンは戸惑った。

「うふふ、こんばんは。月がとってもキレイな晩ね。今宵のお茶会は楽しんでいただけたかしら?」

「ユウナ…。な、なんでそんな所に登ったりして……。あ、危ないじゃないの!?」

「………………………………」

(やっぱり”結社”に所属しているようね……)

エステルの心配を聞いた少女――――ユウナは目を閉じて黙り込み、レンは冷たい視線でユウナを見つめていた。

 

「まったくもう……ほんとネコみたいなんだから。今、助けてあげるからちょっとそこで待ってて……」

「うふふ、その必要はないわ。だってここが一番、いい席だったんですもの。お茶会を開いた主人として当然の権利だと思わない?」

「………え…………」

ユウナの話を聞いたエステルは信じられない表情をした。そしてユウナはかけていた眼鏡を投げ捨て、懐から棒を出すと瞬時に刃を出して大鎌に変え、自己紹介をした。

 

「執行者NO.]X。”殲滅天使”ユウナ―――そんな風に呼ばれているわ。”剣姫”と呼ばれている”元おねえちゃん”と違って、ちょっと品がなくてあまり好きじゃないんだけど。」

「……………うそ………それに”剣姫”と呼ばれている”元おねえちゃん”って…………」

「こ、こんな子供が”身喰らう蛇”の一員だと!?い、いやしかし……”特例”で正遊撃士になったレン君という実例があるしな……そ、それより……レン君を”元姉”扱いしたという事は――――」

ユウナの正体―――”身喰らう蛇”に所属する”執行者”、そしてユウナの口から語られた驚愕の事実を知ったエステルとユリアは信じられない表情をした後レンに視線を向け

「嘘でしょう!?容姿はレンと瓜二つじゃない!?」

「もしかして”双子”?」

「お、おいおい。一体どうなってるんや!?」

「ま、まさか本当にレンの予想通りになるなんて……」

ユウナとレンの瓜二つの容姿を見比べたシェラザードは驚き、呆けた様子で呟いたカリンの言葉を聞いたケビンは混乱し、ルークは信じられない表情でユウナを見つめ

「…………………」

レンは一切動じず真剣な表情でユウナを見つめていた。

 

「うふふ、久しぶりね、”元おねえちゃん”。こうして顔を合わせるのは本当に久しぶりよね?せっかく元おねえちゃんも驚かせようとも思っていたのに、全然驚いていなくてつまんないわ。」

「うふふ、それは残念ね。クーデターの時に女王宮で対峙した”剣帝”がレンの”元妹”が生きているみたいなことを言っていたから、ユウナが”結社”にいる事は察していたわ。」

瓜二つの容姿を持つ少女達はそれぞれ小悪魔な笑みを浮かべて互いを見つめ

「レーヴェが?んもう、レーヴェったら、余計な事を言ってくれたわね。後で文句を言っておかなくっちゃ。」

レンの話を聞いたユウナは目を丸くした後頬を膨らませた。

 

「というかどうしてエステル達はユウナと出会った時、ユウナの容姿や声に疑問を思わなかったのかしら?いくら眼鏡をかけていたとはいえ、容姿や声はレンと一緒なのに。」

(いや、レンの事情を知らないエステル達には無理な話だろ……)

そしてレンは呆れた表情でエステルを見つめ、レンの指摘を聞いたルークは疲れた表情で心の中で指摘し

「そ、そんなのわかるわけないでしょう!?確かにレンに結構似ているなーっとは思っていたけど、単に似ているだけと思っていた上、レンに双子の妹がいるなんて初耳よ!!―――それより、ユウナ、レン!あんた達が双子の姉妹で、ユウナみたいな子供が”執行者”だなんて本当なの!?」

見つめられたエステルは真剣な表情で怒鳴った。

 

「”元”よ、”元”。前の”家族”との縁なんて、とっくに切っているわ。」

エステルの怒鳴りにレンは疲れた表情で答え

「うふふ。”結社”に子供や大人は関係ないわ。使えるか使えないか、それだけ。ユウナはとっても使えるの。規定年齢にも達していないのに遊撃士協会から”特例”扱いされて正遊撃士をやっている元おねえちゃんや昔の”漆黒の牙”みたいにね。」

ユウナは小悪魔な笑みを浮かべて答えた。

 

「!!!」

「そ、そんじゃあ……アレか?オレやジュエ卿に手紙を出したんは嬢ちゃんやって言うんか!?」

ユウナの話を聞いたエステルは血相を変え、ケビンは真剣な表情で尋ね

「ええ、ユウナよ。脅迫状を9通。教会のお兄さんとお姉さんに1通。情報部のお姉さんに1通。そして、エステルに1通。全部で13通―――うふふ、何だか手紙を書いてばっかりね。レーヴェ、誉めてくれるかしら。」

「こ、この状況を全部作り上げたというの……」

ユウナの説明を聞いたシェラザードは信じられない表情でユウナを見つめた。

 

「だってユウナは、みんなをお茶会に招待した主人だもの。出席してくれるお客様を退屈させるわけにはいかないわ。とっても頑張ったんだから。」

「………だったら……だったら、パパとママは?ユウナと……それとレンの本当のお父さん達は一体どうしちゃったのよ!?」

「???ああ、何だ。まだ気付いてなかったのね。うふふ、実はユウナってけっこう凄いのかも……。それともエステルがニブイだけなのかしら。元おねえちゃんもニブイエステルをおねえちゃんにして、色々と苦労していそうねえ?」

「ハア。反論できないのが悔しい所ね。」

「あ、あんですってぇ……というか、レン!あんたはどっちの味方なのよ!?」

小悪魔な笑みを浮かべるユウナと疲れた表情で溜息を吐いたレンの言葉を聞いたエステルは怒りを抑えた様子で二人を順番に睨んだ。

 

「うふふ、怒っちゃイヤよ。……これの事でしょ?」

一方エステルの様子を見たユウナは口元に笑みを浮かべた後、どこからともなく無表情の男性と女性を出した。

「あ……」

「こんなのユウナのパパとママじゃないわ。もう用済みだから……こうしちゃおっと!」

そしてユウナは大鎌を震って男性と女性の身体を真っ二つにして、エステル達の目の前に落とした!

 

「なッ!?」

「きゃあっ!?」

「ああっ?あ、あ、あんた……。何をやってんのよおおおっ!」

幼い子供が人を殺すというユウナの凶行にユリアは驚き、カリンは悲鳴を上げ、エステルは放心した後、ユウナを睨んで怒鳴った。

 

「エステル、落ち着きなさい!血が出てないでしょう!」

「え……あ……」

しかしシェラザードに言われたエステルは落ち着いた後、男性と女性を見た

「……ホ……ホントだ……」

「―――廃坑で戦った特務兵の姿をした人形兵器と同じ構造ね。」

「姉妹揃って色々な意味でとんでもない奴等だな……」

血も流れていない二人を見て人形と判断したエステルは呆け、レンは冷静な様子で呟き、ルークは疲れた表情で溜息を吐き

「失礼ね。レンは”元妹”と違ってこんな趣味の悪いことはしないわよ。」

レンは頬を膨らませた後不愉快そうな表情でユウナを睨んだ。

 

「うふふ、ユウナが側にいないと人間らしく操れないんだけどね。でも『人形の騎士』のペドロにも負けない自信はあるわ。あ、でも今回は、ユーカイされたりお茶会の主人になったりしたから……ティーア姫の役も多かったかしら?」

「じょ、冗談キツイで……」

笑顔を浮かべて語るユウナの話を聞いたケビンは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「さてと、ほんとのパパとママを呼ばなくちゃ。来て―――”パテル=マテル”。」

そしてユウナが大鎌を天へと掲げたその時、その場に何かの駆動音が聞こえてきた。

 

「な、なにこの音……」

「上だ!気を付けろ!」

ユリアの警告と共になんと全身赤紫色の巨大な人形兵器が空から現れ、倉庫の傍に着地した!

 

「なああっ!?」

「ひいいっ!?」

「なんて大きさ……!」

「な、なんやコイツ!?」

巨大な人形兵器の存在にエステル達が驚いている中、人形兵器はオルグイユについている『ゴスペル』を剥ぎ取った!

 

「あっ……」

「『ゴスペル』を!?」

人形兵器の行動にエステル達が驚いている中、ユウナは跳躍して人形兵器の手のひらに乗った。

 

「これがユウナのパパとママ(パテル=マテル)。パパのように大きくてママのように優しいの。それ以外のパパとママなんていらない。勿論おねえちゃんも。」

「うふふ、それはこっちの台詞よ。それにしても……よくそんな”モノ”を”パパ”や”ママ”扱いできるわねえ?そんな感情すらなく、喋る事もできない”モノ”なんかが”家族として”何をしてくれるのかしら?」

「!……………」

小悪魔な笑みを浮かべて自分を挑発するレンの言葉を聞いたユウナが目を見開いた後冷たい視線でレンを睨んだその時

「も、目標を発見!」

「わわっ、何あれ!?」

「戦車と”結社”の人形兵器か!?」

王国軍と共にアネラスとフレンが現れ

「ユ、ユウナちゃん!?」

続くようにギルドで眠っていた仲間達がイオンやアリエッタと共に現れた。

 

「みんな、目がさめたのね!?」

「はい。けど、この状況は一体……」

(やっぱり”楽園”にいた教団員達を殺したのは”結社”だったようね……)

エステルに答えたクロ―ゼはカノーネ達や倉庫の屋根にいるユウナや傍にある人形兵器を見て戸惑い、アーシアは真剣な表情でユウナを見つめ

「――――どうやら最悪の予想が当たってしまったようですね……アリエッタの話を聞いてまさかとは思っていましたが………」

「一体”結社”の誰が、何の為に、連れ出したの、でしょう?」

イオンとアリエッタはそれぞれ真剣な表情でユウナを見つめていた。

 

「うふふ、睡眠薬の効果も時間ピッタリだったみたい。昔ヨシュアに教わった通りね。」

「!!!」

「ホントはね、エステルのこと、殺しちゃおうかなって思ったの。だって教授が、ヨシュアが帰ってこないのはエステルのせいだって言ったし、元おねえちゃん―――レンの”家族”を殺したら、レンがどんな反応をするのか楽しみだったし。」

「え……………」

「…………………」

サラリと呟いたユウナの物騒な話やヨシュアの話を聞いたエステルは呆け、レンは膨大な殺気を纏って全てを射殺すような冷たい視線でユウナを睨んでいた。

 

「でも、楽しかったから今回だけは許してあげるわ。うふふ、特別なんだからね?レンがエステルを気に入っている理由も何となくわかったわ♪」

「ま、待って、ユウナ!」

「ユ、ユウナちゃん!どーいうことなのっ?レンちゃんがユウナちゃんの”元おねえちゃん”……ううん、どうしてレンちゃんとそんなにも似ているのっ??」

「うふふ、ティータもバイバイ。なかなか楽しかったからまた一緒にアイスでも食べましょ。それでは皆様………今宵はお茶会に出席して頂き、まことにありがとうございました。」

「ユ―――――ウ――――ナ!!」

そしてユウナを手のひらに乗せた人形兵器―――パテル=マテルは飛び上がってエステルの呼び止める声を無視して、その場から飛び去った!

 

その後、王国軍の警備艇によって夜通しの捜索が行われたが……結局、ユウナを乗せた巨大な人形兵器の行方は掴めなかった………

 

説明
第62話
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