欠陥異端者 by.IS 第二話(挑戦)
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更識家に従事して8日目に入り、私は既に炊事・掃除・洗濯を一人で任されるほどにまで優遇され、他の従事さんから一目置かれるようになっていた。

ちなみに、今はご主人も奥様も仕事で、簪お嬢様・・・そして簪お嬢様の専属従者の布仏本音さんも学校で家にはいない。つまり家には従者だけだ。

 

佐々木「落合君。これから、みんなで休憩のおやつを食べるんだけど、一緒にどう?」

 

私が今いる場所は、浴場の隣にある空間・・・洗濯機が数個並び、奥様用・ご主人用・従者用・共用などで分けられた棚がある室。

そこで洗濯物を畳みそれぞれの棚にしまっている時、廊下から給仕服で身を包む従事長の佐々木さんがお菓子のバケットを持って尋ねてきた。

ちなみに、私も全身白の給仕服を着ている。

女性用だが、細身で身長が165センチ程度だからサイズはぴったりだ。

 

零「まだ仕事がありますので、すみません」

 

私は”いつも通り”笑みを浮かべて、断りを入れる。

 

佐々木「なら、落合君の分は取っておくから、時間があったら食べて」

 

佐々木さんは、洗濯場を通り過ぎて食堂の方へ向かう。

私はいつもこういう風に断っている。

従者の中には、そんな私に対し悪印象を持っている人もいるが、そんな事で気を遣うぐらいなら、避けられた方がいい。

それに、一緒にお菓子を食べても、一人で食べても変わらないと思う。

そういう考えの下で、毎日のようにくる誘いを断っている。

 

本音『ね〜! た〜べ〜よ〜!!』

 

零「・・・」

 

簪お嬢様の専属従者である布仏さんに、一緒に食事を取ることを強要された時は困った。

あの屈託の無さにテコでも動かない意思強さは、断り続ける方が疲れる。

 

零(絶対に、顔を合わせないようにしよう・・・)

 

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私は、昔から自分の意見を言ったり、人とプライベートで接することに抵抗がある。

仕事での人付き合いは必要なことだから大丈夫だが、飲み会や親睦会に出る事がストレスになることを、本能的に子供の頃から理解していた。

 

学校に通ったのは小学校までだが、その6年間、友達と呼べる人もおらず、孤児院にも仲の良い子や、心を開ける大人はいなかった。

別に悪い人ばかりだった訳ではなく、私自身に相手を信頼を置けない・・・信頼を置く必要性を見出せていないだけなのである。

実際、それで困ったことは無かったし、ロシアのホテル業に勤めていた時なんか仕事をしっかりしているだけで問題が無かった。

 

改善しないのも、改善する必要がないからだと思っているからだと思う。

 

しかし、ここで働いていると、社交的付き合いが出来るスキルが無いと苦しいと感じてきた。

それは、布仏さんのように迫られた時の状況を考えると、回避策として必要だと考えたからだ。

 

という訳で・・・

 

佐々木「落合君って、すごく仕事の手際が良いけど、ここに来る前は何かしてたの?」

 

3時のおやつタイムに参加してみた。

予想通り質問攻めにあい、この時間帯は仕事以上に神経を使った。

 

従者1「そういえば、その眼帯って怪我したの?」

 

零「一応、障害です。生まれた時から」

 

従者1「そう。かわいそうね・・・」

 

周囲の人はそう言うが、私にとっては左目が見えないのが普通なのだから、かわいそうと言われる意味を共感できない。それを言っても、誤解を生みそうだから指摘はしないが・・・。

 

こうして、初めての親睦会みたいのに参加をしてみたが、こんなので親睦を深められるのだろうか?

私には分からない・・・。

 

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それから数日が経った。

 

桜『日本に来て久々なんだから、一日ぐらい観光してきたら?』

 

まだ一か月も働いていないのに、私は休暇をもらって外に出ている。

 

本音「か〜んちゃんと、れ〜いちんとおっ買い物〜!」

 

簪「本音、そんなに大声ださないで」

 

・・・一人ではないが。

丁度、駅前のデパートへ買い物に行くところだったらしく、何故か連れ出されてしまった。

洋服コーナーで・・・

 

本音「ねぇねぇねぇ〜! これ、かんちゃんに似合うかな〜?」

 

零「そんなの僕に聞くより、本人に聞いたらどうですか?」

 

私は、あなたの必要以上に長い袖の方が気になるのだが・・・

 

本音「れいち〜ん、こういうのは男の人の意見が必要なんだよ〜。かんちゃんもあと少しで〜高校生なんだから〜」

 

簪「で、でも、そんなフリフリ、なの・・・着れない///」

 

洋服なんて外気温に合わせて種類を選べばいいと思ってきたけど、こんなに洋服の種類があるのか・・・

全部、同じようなものにしか見えない。

 

本音「れいちんもせっかく来たんだから〜、似合うの選んであげるよ〜! ねぇ〜、かんちゃん!」

 

零「え? いや、僕は別に・・・」←デパート初

 

簪「でも、いつも同じ服装だと・・・その、不潔と思われちゃうと、思う」

 

って事は、私は不潔に思われていたということだろうか・・・

簪お嬢様とは、しばらくの間は挨拶程度しか接してこなかったけど、ここ最近は布仏さんと絡むようになって、同時にお嬢様とも日常会話を軽くするようになっていた。

 

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と、私に似合う服を二人が探し回り、何度も試着をさせられた。

着せ替え人形のように何度も着替えさせられたが、結局、二人が納得するものはなく、余計なストレスを抱えただけに終わった。

それで今は、昼食がてら駅内の喫茶店に入っている・・・ケーキを食べるのも孤児院以来だ。

 

簪「落合さんって、私達と同い年、ですよね? 学校には通われないんですか?」

 

本音「ねぇねぇねぇ〜、どうして眼帯つけてるの〜?」

 

ここでも質問攻めにあうのか・・・

言葉遣いに気を付けながら、質問を適当に流す。

会話の中で、どうやら簪お嬢様と布仏さんはIS学園に入学することが分かった。しかも、お互いの姉が既にIS学園に入学しているらしく、簪お嬢様に至っては専用機の製作が進んでいるとのこと。

 

零(なるほど。こういう情報が入るから、プライベートの付き合いが必要なのか・・・)

 

でも、自分には必要ないと割り切り、喫茶店の向かい側にある文房具店の上に設置されている巨大ディスプレイに目を向ける。

丁度、緊急ニュースに切り替わった。

 

アナウンサー『緊急情報です。今日××時に、××学園の入試試験が行われていたドーム球場で、そこに居た織斑一夏君(15歳)が「ISを起動させた」との情報です──────」

 

零「・・・」

 

絶句した・・・いや、喫茶店にいる客、店員、外にいる人全てが時間が止まったかのように動きを止めている。

男卑女尊という世の中になったのは、ISを動かせるのが女性だけだと事実があったからだ。

だが、このニュースは今、確立されている風潮を根本的に崩す。

私達が動き出したのは、ニュースが流れて3分後の事だった・・・

 

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私には関係ないと思っていた。

だから、世間が大騒ぎしていて、他にも男性でISを動かせるのではと調査している中、特に興味を持たず、従事に専念していた。

それから3か月が過ぎ4月、更識家にも”何とか委員会”とやらが訪問した。

呼ばれたのは、私とご主人の二人・・・屋敷に待機しているボディーガードの人達は、別の日に呼び出されるらしい。

 

私とご主人は、それぞれ違う黒い車に乗せられ、検査場に使われている東京ドームに向かう。

今のところ、織斑一夏以外に男性でISを動かせる人はいない。何故、動かせるのか・・・逆に動かせないのかの原因も分からずじまいだ。

織斑一夏は、簪お嬢様や布仏さんと同学年でIS学園に入学した。

噂だと、織斑一夏には専用機ISが渡されるらしく、逆に簪お嬢様のISは延期になったと従者同士の会話から漏れてきた。

 

零(確かに、機嫌悪いことが多かった・・・)

 

自分とは関係ないと思っていても、日頃、顔を合わす間柄。嫌でも目に入り、考えてしまう。

奥様も布仏さんも気を遣っている。もちろん、従者の人達も。

 

零(一人の影響があそこまで、周囲に影響するのか・・・)

 

前の仕事場でも、喧嘩が起こればその後の作業効率が落ちる。

私は蚊帳の外で眺めていたようなものだから、影響は無かったが、今回は・・・いや、今回も私には関係ない。

と、自問自答を繰り返していたら、目的地である東京ドームに到着した。

ボディーチェックを済ませ、待合室まで誘導されたが、もうそこには各所から集められた年代を問わない男性たちが、ある人はどこかウキウキしながら・・・ある人はタルそうに・・・ある人は不安を滲ませ落ち着きがない。

 

陵「・・・」

 

ご主人は、近くのソファに腰掛け、腕を組み黙想している。

傍から見ても、雑念が一切無く、落ち着きを払っている・・・一体、この人は何なんだ?

普段は真面目で優しい雰囲気を漂わせているのに、今のご主人の雰囲気は何も感じさせない・・・”無”だ。

 

陵「・・・ん? どうしたんだい、落合君? 私の隣、座っても構わないよ」

 

零「あ、はい・・・」

 

また、余計な詮索を始めていたようだ。

そう自分に戒め、自分たちの番が来るのを待つ。呼び出されたのは、それから5分後。

まずは、ご主人から出ていった。そして、次は私が。

 

役員「では、着替えてもらってもよろしいですか?」

 

男臭がする一室で検査着に着替え、身長・体重などを計測した。精密検査も行われて、失明している左目も調べられた。

特に異常なし。

 

役員「次は、ISに触れてもらいます」

 

私服に着替え直し、グラウンドに出た。

そこには3機のIS『打鉄』が鎮座していて、一直線に男が三列に並んでいた。

私は最後尾に並び、順番が来るのを待つ。

ただ触るだけらしく、順番はすぐに回ってきた。

 

零「・・・」

 

前回の人が期待を膨らませて触れていたが、結果的に反応なしだったあの落胆ぶりを少し笑ってしまった後だと、私の次の人も反応がないのを見て笑うのだろうか・・・。

いや、そんなの気にしないでさっさと終わらせよう。

 

零「・・・ふぅ」

 

抵抗気味にISへ手を伸ばす。

 

零(何で、こんなに緊張をしているのだろう・・・まさか私が特別な人間だと、自分で思っているのか?)

 

そんな訳がない。自惚れもいいところだ・・・。

しかし、この胸の高鳴りは初めてだった。感情は生き物が持つ能力だが、私はそれを邪魔としか思わなかった。現に早く終わらせたいのに、うまく体が動かず、体中の関節が痛みだし、吐き気を催し、左目辺りがかぁ〜と熱くなる。

感情に動かされている・・・そう実感した時、久々に頭に血が上り、思いっきりで平手ISを押し叩いた。

 

[ウィン・・・!]

 

零「えっ・・・」

 

起動・・・してしまった。

咄嗟に後ろを振り向いた。さっきまで、笑うんだろうなと思った相手が、驚愕な表情を浮かべ私とISを交互に見ていた・・・

私の人生が、180度以上の変化が起き、予想も出来ない出来事と遭遇することになる線路へと乗らされた。

説明
お久しぶりです。
諸事情により、前作の続きを投稿せず、約束を守らず申し訳ありません。

前作は完結という処置を取り、新たに『欠陥異端者』を投稿します。
これからまたよろしくお願いします。
※ヒロイン設定、専用ISの設定を具体的に決めておらず、案がある方、コメントをいただけたら参考にさせていただくので、ご協力のほどよろしくお願いします。
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