機動戦士ガンダムSEEDDESTINY 運命を切り開く赤と菫の瞳
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『勇敢なるザフト軍兵士のみなさーん!平和の為、わたくし達も頑張ります。どうかお気をつけて!』

 

メインディスプレイにテレビの画像が映し出される。それはプラントの海外放送だった。ラクス・クラインのザフト慰問ライブなるものを流している。コーディネイターにしかありえないピンク色の長髪と、露出度を増した衣装に身を包んだ抜群のスタイル、あどけなさを残す快活そうな顔、アップテンポの曲にあわせて会場のボルテージも上がっているのが中継越しにもわかる。

一見本人らしいが、間違いなく本人なら言わないだろう事……いや、むしろ本人の事を俗っぽい戯画にまで乏めているかのようだ。

 

「向こうは、楽しそうでいいですわね……」

 

その画面を見ていた、ラクス・クラインはにっこり笑って冷ややかに呟く。隣のチャンドラが、滅多に見せないラクスの怒りを感じ取ってか、ぎくりと身を引く。

 

「出来れば何とかしたいところだがねぇ、下手に動けばこちらの居場所が割れる。そいつは上手くないだろ、匿ってくれているスカンジナビアに対してもさ」

 

バルトフェルドが、ぼやく様に言った。

彼らは現在、かつて中立国であったスカンジナビア王国に身を潜めていた。残念ながら表向きはオーブ同様、連合に加わった国ではあるが、それを良しとは思わぬ王家が、密かにアークエンジェルに援助の手を差し伸べたのだ。元々この国の王家とオーブ首長家の関係が深かった事もある。

 

「でも、デュランダル議長の姿勢は紳士だわ。確かにユニウスセブンの落下は地上に大きなダメージを与えたけど、カガリさんの言う通り、ザフトが動かなければもっと酷いことになっていたでしょうしね……それを難癖つけて開戦した連合がバカよ」

 

「ブルーコスモスが、だろ?」

 

マリューがため息混じりに言うとバルトフェルドが訂正し、彼女は顔を上げて少し笑む。

 

「でも、それなら、誰がラクスを殺そうとしたの?」

 

珍しく険しい表情のキラが、低い声で問いただすように言う。

 

「…………」

 

「…………」

 

バルトフェルドとマリューは困惑気な表情で押し黙ってしまう。ラクスもまだ何も言わない。

 

「……議長は、おそらく違うと思う」

 

それまで無言を貫いていたカガリが、突然口を開いた。あの時以来、カガリはアークエンジェルメンバーとは距離を置いている。今もキラたちから少し離れた所から意見を出しているのがその証拠だった。

 

「それは、実際に会ったから?」

 

「いいや、メリットが無いからだ」

 

キラの問い掛けに寸分の間もおかずに即答するカガリ。しかしキラたちにはその意味が理解できなかった。

 

「お前たちはプラントにいるラクス・クラインこそがラクス暗殺の理由と思っているのだろう?」

 

カガリの視線が画面の中のラクス・クライン…………ミーア・キャンベルに移る。

 

「うん、だから僕には信じられない。そのデュランダルって人は」

 

「キラ……」

 

ラクスはキラを落ち着かせるように、穏やかな口調で名前を呼びかける。だがキラのトーンは落ちない。

 

「みんなを騙してる」

 

「政治なんてもんは、大なり小なり騙し合いだがね」

 

ふっ、と短くため息をついて、バルトフェルドが皮肉めいた意見を吐く。

そこへカガリが再び口を開く。

 

「なら、((どうしてラクスを出した|・・・・・・・・・・・))?」

 

「え……?」

 

それまで纏っていた雰囲気を脱ぎ捨てるかのように、キラは驚いたようにカガリを見る。

 

「もし議長が犯人からば、ラクスの暗殺は失敗してる事は知ってるはずだ。なら何故今偽者を出す?本物が出てくれば混乱すると分かっていながら」

 

キラたちは反論出来ずにいた。それはカガリの言った事がまさにその通りだったからだ。

 

「私はむしろユニウスセブンを落としたザラ派と同じような組織の人間だと考える」

 

「ザラ派?」

 

今度はマリューが聞き返した。

 

「アスランはあの時ザラ派の人間はユニウスセブン落下の時に全滅したと考えている。だが、それは一つの組織がであってザラ派全員が壊滅したわけではない」

 

「つまり、ユニウスセブンとは別だが、同じザラ派の犯行だと?」

 

バルトフェルドがカガリに尋ねる。

 

「私にはそっちの方が自然に見える。ザラ派にとって、ナチュラルと仲良くするコーディネイターも気に食わないだろうが、クライン派は同じくらい気に食わない筈だからな」

 

カガリは言う。ザラ派の可能性は高いと言うと同時に彼女は未だにあの柔和そうな人物が、ラクスを殺そうとしたとは考えられなかったのだ。それに先述したようにメリットがなく、デメリットしかない。

 

「なんだか、カガリさんの話と今の状況を見てる限りじゃ、どっちかって言うとザフトに味方して連合を討ちたくなっちゃうけど」

 

「お前は反対なんだろう?それには」

 

マリューの言葉を受けて、バルトフェルドがキラに訊ねる。

 

「ええ」

 

バルトフェルドにキラは険しい表情で頷き返した。

その様子を見ながら、カガリは頭を抱えていた。

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ガルナハン

 

カスピ海南端の沿岸に位置するこの地は、元は敬虔なムスリムの街であった。だがコズミック・イラの世になって石油資源が枯渇し始めた時、この地には比較的多くの埋蔵量を残す油井が残っていたことで、この街の運命は激しく揺れ動くことになる。世界再構築戦争に伴い、この地には後にユーラシア連邦の東部となる旧・独立国家共同体 (CIS、旧ソ連構成国からなる国家共同体)の連合部隊が展開してその勢力圏に収めた。だが、旧CISの構成国にはイスラム国家も存在するがもっとも影響力が強いのはロシア正教、即ちキリスト教である。その為この地の支配に当たっては、イスラームに否定的な政策が採られた。それが原因となり、支配者であるユーラシア連邦政府とこの街の住人との間には元々軋轢が生じていた。反政府レジスタンスが結成され、有形無形の妨害活動が始められたのは地球連合が成立するよりも以前のことである。とは言え、それもしばらくは小規模なテロ組織に過ぎず、街の治安も落ち着いていたのだが、それを覆す事態が起きた。エイプリル・フール・クライシスである。 核分裂炉によるオーソドックスな

原子力発電が使えなくなった結果、ユーラシア連邦は貴重な油井と火力発電所をもつこの地を重要軍事拠点に拡張し、改良型陽電子砲を備える要塞『ローエングリンゲート』を建設した。それに伴って、ムスリムの街に対する支配も過酷なものへと転じていった。それに比例するようにレジスタンス組織は拡大し、反政府活動も激化していく。緒戦におけるザフトの優位に裏付けされ、激しい抵抗活動が起こった。だが、アラスカにおけるザフト地上軍の壊滅により分離と独立、あるいは汎ムスリム連合への参加を目指したこの活動の機運は一気に萎んでいく。ユニウス条約締結時には、元の零細テロ組織が残るのみとなってしまった。だがユーラシア連邦はレジスタンスの活動員を逮捕拘束し、街の治安を回復しただけでは飽き足らず、街に報復とも言えるさらに過酷な支配を敷いた。

そこへ持ってきてブレイク・ザ・ワールド、そして連合・プラント再戦である。積もり積もった住民の反ユーラシア連邦主流感情は再び爆発し、前にも増して激しい内乱状態になった。それでも当初は軍事的にユーラシア連邦正規軍が圧倒していた。だが自らは宗教に否定的とは言え、異教徒が我が物顔で暴虐を振るうこの惨状に見かねて、遂にスエズのザフトがこの地に向けて軍を動かしたのである。

 

「と、言うのが現状です」

 

ガルナハンの目と鼻の先、ローエン グリンゲートの設置される渓谷を挟んで反対側のマハムールに展開したザフト部隊の司令官、ヨアヒム・ラドルが言う。

ミネルバからはフェイスのタリア、カツラン、そしてイチカ。それに副官としてアーサーとマユが列席してる。

 

「しかしここを突破するのは難しい。従前の戦闘では我々が優位に立ちましたが、それ故に地球軍もここの守りに必死です。敵はモビルスーツの他に、陽電子リフレクターを装備した多脚型のモビルアーマーを配置して守りに備えている」

 

「あ、あの時みたいな……!?」

 

ラドルの苦い表情に、アーサーが素っ頓狂な声を上げる。

 

「陽電子リフレクター?」

 

カツランが聞きなれぬ単語に聞き返し、イチカが説明をする。

 

「ビームシールドの強化拡大版と思ってくれれば良いと思うよ。詳しいデータはオーブ沖海戦のを見せるけど……あれはタンホイザーすら跳ね返す」 

 

「そんなものが……」

 

その威力を十分に知っているカツランは、信じがたい思いで聞き返した。恐らくかつて地球軍の軍事衛星アルテミスが用いていた光波防御体の一種だろう。あらゆるエネルギー、物理的攻撃を無効とするその防衛システムの為に、アルテミスは実に難攻不落とされていたのだ。

そんな兵器を導入されては、つまり此方からは撃てない。だがあちらは幾らでも撃てるという事になる。

 

「そんなものを一人で撃破したシンは、本当に凄いヤツだよ」

 

まるで弟の功績を自慢するように語るイチカは、何処か普段の大人らしい雰囲気から逸脱して子供らしさを見せていた。

 

「そうだ」

 

ラドルは期待を込めて身を乗り出した。

 

「陽電子リフレクターを突破した事のあるパイロットに、ヤキンの悪夢。それにアスラン・ザラといったミネルバの戦力が加われば、あるいは……」

 

カツランは始めそれを司令官がこちらを乗せるためにお世辞でも言っているのだと思っていた。幾ら最新鋭のモビルスーツを搭載した最新鋭の戦艦とはいえ、たった一隻が戦力に加わわって戦局が変わるとは思えない。だが相手は真剣な表情だ。カツランは気付く。オーブ沖海戦における勝利によって、ミネルバの名は既に独り立ちして歩き始めているのだ。

 

((あの|・・))ミネルバなら、あるいは……と。

 

「なるほどね……そこを突破しない限り、私たちはすんなりジブラルタルへも行けはしないと……そういう事ね」

 

「えっ……?」

 

くすりと皮肉っぽく笑ったタリア。それに気付いたアーサーは「ああっ」と声を上げて暗澹たる表情になる。タリアが言った通り、ジブラルタルへの道は、その陽電子リフレクターと陽電子砲に閉ざされているのだ。目的地に達する為には、ぐるりとアフリカ大陸を迂回するか、ガルナハンを突破するしかない。

ラドルは申し訳無さそうに笑った。

 

「まあ、そういう事です」

 

「私たちにそんな道作りをさせようだなんて、一体((どこのタヌキ|・・・・・・))が考えた作戦かしらね」

 

タリアはここにはいない人物を当て擦るように一人ごちたが、カップに残ったコーヒーを飲み干し、すぐにさばさばと言った。

 

「まあいいわ。こっちもそれが、仕事といえば仕事なんだし」

 

カツランは、このいささか辛口で果断な女性が気に入り始めていた。ラドルもそうなのか、あるいは全く気にしていないかだろう。彼は温和そうな喜びの表情を浮かべ、頷いた。

 

「では、作戦日時などはまた後ほどご相談しましょう。こちらも準備がありますし……我々もミネルバと共に、今度こそ道を拓きたいですよ」

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ミネルバがマハルーム基地に辿り着いてからもシンの不機嫌な態度は続いており、ルナマリアには子供っぽいとまで言われるが、カヅランに対する苛立ちは無くならない。レイはそんな状況を見ながらも微笑ましいものだとばかりに対応するだけだ。

その事をルナマリアはメイリンやアリサたちに愚痴をこぼしていた。

 

「でもさ、実際マユは間違ったことしてないよな?」

 

「だよね。別に悪いことしてないし……連合は敵だもん」

 

「でも、アスランさんはフェイスでしょ?フェイスの命令を聞かないのはどうかと思うんですけど?」

 

同じパイロットとしてなのか、シンを擁護するような発言をするショーンやアリサに対し、メイリンが正論気味た発言をされて苦い顔をする二人。

 

「まぁ、そうなんだけどね〜」

 

「あの人、なんだかんだ言ってザフトの裏切り者だし……」

 

シンの裏切り者発言が効いてきてるのか、最近は皆カヅランの事を前大戦の英雄よりもザフトとオーブを裏切った裏切り者と考えるようになっていた。

 

「というか、いいのかな?自分のでもないガーディアンをひっぱたいたりして……」

 

ふと思い出したようにアリサが気まずそうに聞いてくる。

そもそもガーディアンとは、プラント国防委員会直属の指揮下に置かれる特務隊フェイスの補佐の役割を持つ。

そして一人のフェイスにつくガーディアンは基本的にはそのフェイスの忠実な部下として動く為、今回のような他のフェイスに命令されるという事自体が珍しいというか初のケースなのである。ちなみに一応ガーディアンからすればフェイスは所謂別の課の上司のような存在なので軽い命令程度なら

 

「問題はそこじゃないでしょ?大の男が幼い子供を叩くなんて……万死に値するわ」

 

いくら軍人とはいえ、マユはまだ十一歳。だというのに問答無用で叩いたカヅランをルナマリアは嫌悪していた。

 

「私、やっぱりイチカにアスランさんを隊長から滑り墜ちさせる事出来ないか聞いてくる」

 

「どーでもいいけどおちる、の字が物騒だねー」

 

苦笑気味な表情を浮かべながらデイルはドリンクに口を付ける。

 

「あんな人、一度墜ちちゃえばいいのよ」

 

ふんぞり返るルナマリアを皆が苦笑気味に見てる中、レイは一人食堂を出た。

その手には、黒の油性ペンと錠剤の入った瓶を握り締めていた……

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マユは夕日に染められた岩壁を見ていた。さっきまでは全てが白茶けて見えた風景が、夕日を浴びて一変した。周囲の岩肌は燃え立つように輝き、くっきりと陰影が際立って見える。その景色は人の存在を拒むかのように、生々しく、強烈な峻厳さを投げかけた。

カヅランの事を考えると心の中で何かが渦巻く。自分はただ、罪のない人たちを救いたかっただけなのに……

彼女には未だに何故彼が叩いたのか分からずにいた。シンの言った通り、間違ったことはしていないと思っている。けれど、そう思う度に本当にそうなのか?という疑問符が自分の周りに現れていく。

マユはずっと悩んでいた。守るとは、救うとはどういう事なのだろうか?何が正しくて、何が間違っているのか、二年前からマユはその疑念に未だ捕らわれ続けていた。

背後のドアが開き、誰かが甲板に出てくる気配をマユは感じてマユは振り返る。そこに黒髪の青年の姿を認めて、彼女はうろたえた。イチカはマユを頬をゆるめながらこちらに歩み寄ってくる。

 

「どうしたんだい、一人でこんなところで?」

 

かけられた声はさり気なく、柔らかかった。

 

「イチカお兄ちゃん……」

 

対応に困ったマユはイチカから視線を逸らす。それで、つい作り笑いの笑みを浮かべた。

 

「別に、なんでもないよ」

 

「そうか……」

 

柔らかい表情を崩さず、イチカはマユに並んで手摺りに寄りかかった。

 

「……なんて、言うと思った?」

 

ポン、とマユの小さな頭の上にイチカの左手が置かれる。がっしりと鍛えられた右手からは、今よりもっと子供だった頃から知っている温もりが感じられた。

ふと、缶コーヒーを掴んでいる彼の左腕が視界に入る。二年前のあの日から永遠に、あの左腕からはイチカの温もりを感じることが出来ないのだと思うと、胸が苦しかった。

 

「あのさ、何年君のお兄ちゃんやってると思ってるの?マユがずっと悩んでる事ぐらい、とっくに気付いてるんだよ?」

 

勿論シンもね。と付け加えてイチカは缶のプルタブを開けて軽く口に含んだ。プラントに行く前は父のコーヒーを苦くて飲めないとぼやいていたのは今でも鮮明に思い出せる。

 

「ねえ、お兄ちゃん」

 

「ん?」

 

缶コーヒーから口を外したイチカはマユの頭に置いた手を離すとその手をズボンのポケットにつっこんだ。

━━もう少し置いてくれても良かったのに……

若干頬を膨らませながらマユはジト目で睨むが、猫を愛でるように笑みを見せるイチカに次第に毒気を抜かれてしまう。

 

「……私、間違ってるのかな?」

 

やがて最初の雰囲気に戻りだしたマユは重苦しそうに今の悩みを素直に吐き出した。

 

「……さあな、それは俺には分からないよ」

 

やがて飲み干した缶コーヒーをぐしゃりと握り潰してから、ドアの前のゴミ箱にピッチャーの要領で投げる。

真っ直ぐに飛んだ空きの缶コーヒーは、ゴミ箱に届いたものの、勢いを付けすぎたためか奥の縁に当たって宙に打ち上げられる。と、思ったら高く打ち上がった空きの缶コーヒーがくるくると回転しながら落下していき、ゴミ箱にがしゃんと音を立てて無事に中へと入った。

 

「人に『個性』があるのと同じ様に、正しいことや間違ったことは人それぞれだ。だからこうして人は何百年経っても争いを止めない」

 

ブレイク・ザ・ワールドを引き起こしたザラ派の人たちのように、パトリック・ザラの道こそが正しいと信じた結果、今の戦争が起きてしまい、大勢の人の血が流れてしまった。それは誰がどう見ても『間違ったこと』と認識するだろう。

 

「宗教や文化、差別なんかもそう。いつの時代も、人はすれ違ってばかり……どうしてなんだろうね?」

 

夕日を((背景|バッグ))にして、悲しみの色を帯びた瞳でマユを映した。

 

「それは……なまじ、知性があるから、些細なことで誤解しちゃうから」

 

「……そしてそれが嘘となり……相手を区別し……」 

 

「……分かり合え無くなる……」

 

「……マユ」

 

ぎゅっ、とマユの左手がイチカの右手に握られ、思わず「ふえっ!?」と可愛らしい悲鳴を漏らしてしまう。

 

「正しいことも、間違ったことも、それは決めるのは他人じゃない。マユ自身だ」

 

十一歳の少女に求めるべきではないというのは百も承知だ。しかし、だからといってイチカが道を示せば、きっとマユはその道をずっと走り続ける事になるだろう…………。他人の敷いたレールの上を、ずっと……

 

「もしもマユが多くの罪無き人々を傷付けるような『間違い』をしようとしたのなら、その時は俺たちが全力で止める」

 

ここには、頼りになるお兄ちゃんが二人もいるんだからさ。

 

小声でそう言ってから、イチカはマユの手を握る手を離して、艦内へ戻っていった。

一人甲板に残されたマユは、しばらく夕日に染められた岩壁を見てから、やがて艦内に戻った。

その顔からは、さっきまでの憂鬱はすっかり吹き飛ばされていた。

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「やっぱり、駄目かな?」

 

ミネルバ格納庫内。

ゲルググジェネラルの前でイチカはユーリにゲルググの状態の確認に来ていた。

 

「はい、特に電磁流体ソケットの摩耗が酷いですね……」

 

「駆動系はどこもかしこもだよ」

 

「限界ギリギリで、機体が悲鳴を上げてるようだぜ……」

 

ユーリ、ヴィーノ、ヨウランの順に攻め立てられたイチカは軽く肩を落とした。

先日アビスの連装砲の直撃を受けたゲルググは、アブゾーブシールドのディスチャージやイチカの反応速度も加わってか、機体の内外部共にあらゆる部位に多大なダメージを負わせていた。

 

「まあ、丸一年も使ってたら、自然とこうなっちゃうよな」

 

「ですね」

 

頭の痛くなる話だ。

もうじきガルナハン・ローエングリンゲート突破作戦が開始され、しかもオーブ沖海戦の時のようなリフレクター装備のモビアーマーまで出るというのに、ゲルググは次に出撃をすれば完全に使い物にならなくなってしまうというのだ。

 

「せいぜいがブラスターウィザードで固定砲台ってところかな」

 

ガナーウィザードの発展型に近いブラスターウィザードは、その重火器の多さから、パワーのあるゲルググにのみ採用されているウィザードで、機動力はほぼ皆無に等しいことからイチカを含むゲルググ搭乗者たちはあまり好んで使われることはないのである。

 

「少なくとも、ノーマルで暴れるっていう手は愚の骨頂だ。何時止まるかわかんないんだからな」

 

肩をすくめてヨウランが答える。

━━射撃、苦手なんだけどなぁ……

深い溜め息を一つしてから、イチカは心の中でこの後、格納庫を出て、射撃訓練場に足を運ぶことを決定していた。

 

「シンのこと、どうしよう……」

 

インド洋からずっとシンはカヅランに対して反抗的な態度で対応していた。他のクルーたちも、いきなりフェイスだ。上官だの言われた上にマユを叩いたことでかなり嫌悪されている。

イチカとしては、これからも共に戦っていく仲なために早急に改善させるべきだと考えていた。

が、解決策が全く以て浮かんでこない。ブラスターウィザードの装備欄とスペックを改めて確認する間も、今後どうすべきかずっとうなされ続けていた。

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突然ですがアスランについてアンケートを出します。

原作通り裏切らせて、シンに言葉でも、モビルスーツでも倒されるか

それとも最後までミネルバに留まりキラと決別させるか

締切は来週の金曜午後十二時までとします。

ご協力、お願い致します。

説明
PHASE13 悩み
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コメント
シンとハイネ次第、ですか。まあアンケートに答えられるよう出来る限り頑張ってみます。キラはほら、二年間ニートしてる間にラクス依存症になっちゃったんですよ。だから原作でもあれなんですよ(アインハルト)
確かに叩いた事は許されないと思います。かといってマユがキラと決別で。助長することを防止することでも誰かがやらなければいけなかったと考えます。シンがどう動き、ハイネも間に入ればクルーたちの仲の修復はまだ間に合うと考えてます。キラは相変わらずラクスラクス。ダメでしょ。(十河)
ここからミネルバクルーとカツランの関係の改善って無理じゃね?もうアスラン裏切りハイネ生存ルートのほうがいい気がしてきましたね^^;だってガイアはマユが乗ってるしガウェインは砲撃戦って感じだから死ぬのが想像できないし(ジン)
ジンさんへ ……すみません。勘違いしてました(アインハルト)
いやイチカの後継機はあのままでいんじゃないですかって言ったんですよ^^;(ジン)
ジンさんへ 機体を変える、というのはイチカの事であってシンではありませんよ?あと仰ってることはごもっともです(アインハルト)
アニメの頃からカツランのバカな介入さえなければかっこよかったから別にいいと思うんですけどね?てかあれはキラに主人公を乗っ取られたから子供っぽく見えただけでそれさえなければ普通にかっこよかったと思いますから機体の変更はしないでほしいかな^^;(ジン)
そういえばアメイジングエクシアってプラモ出るんすかね?アニメ見たかぎりだとダークマターはアメイジングエクシアの上に装飾付けたイメージがあるけど……アイズガンダムのようにチェンジ可能なんですかね?(アインハルト)
しみったれブルース&ジンさんへ 最近、ちょっと機体変えようかななんて思ってるんですよね。色んなアニメ見てたせいで……シンをカッコ良くさせるために、イチカ君はちょっと自重させないと……(アインハルト)
そうですよ^^あとはみんなから白騎士と呼ばれている機体がイチカの専用機です^^(ジン)
コアNo.001白騎士?(しみったれブルース)
違います。ヒントとしてはISの一夏が使っていた機体のコアの俗称は何だったでしょうか。(ジン)
イチカのゲルググジェネラルにかわる専用機ってアメイジングエクシアですか?(しみったれブルース)
Blazさん、ジンさんへ スパロボ持ってない事、近くに売ってないことを恨みます(ノД`)(アインハルト)
ジンさんへ もちろんですとも(アインハルト)
確かに^^;あれは酷かったわ。出てくるのもセツコルートのみだしね。(ジン)
あ!もしハイネさん生存ルートになったらハイネさんにはハイネ専用ディスティニーガンダムを使ってほしいですね^^(ジン)
ジンさんへ そうなんですか(゚o゚;スパロボ持ってないけど、やってみようかな……シンの待遇も良いらしいので(アインハルト)
ついでに言うと某スパロボKでも中盤のメサイア戦でアスランと一度交戦後に説得すると生存フラグ達成&仲間になるよ^^(ジン)
Blazさんへ なん……だと?(アインハルト)
余談だが、某スパロボLでは無条件で西川が生き残るって言う…(Blaz)
弥凪・ストームさんへ わかりました。イチカvsキラは一応やりたいとは思ってます。(アインハルト)
自分はミネルバにとどませた方が面白いかと(ただキラと対峙するのはイチカの方が良いと思います)(弥凪・ストーム)
民間人乗せてるんだからさっさとAAとストライクをザフトに渡してれば良かったのに。というか中立国でモビルスーツ作るなという話ですよ(アインハルト)
biohaza-dさんへ 種運命のキラは自分も嫌いです。でもたまにあんなイミフなキャラになったのは種で無理矢理戦わされ続けたからなんだと思うときがあります(アインハルト)
ジンさんへ その方式で行くとアスラン裏切れませんね。まあザフト、オーブを裏切ってんだし、もういいかもしれませんね(アインハルト)
決別の方でお願いします。なんか種死のキラって行動が意味不明すぎて嫌なので、最後まで裏切らず味方のままでお願いします!(biohaza-d)
そうですね。アスラン裏切り→ハイネさん死亡ルートかアスラン居残り→ハイネさん生存ルートって感じのほうがよかったかな? 自分はハイネさんが生存すればどっちでもいいですし^^;(ジン)
Blazさんへ まあ、嫁のカガリが成長しようとしてるのに夫がダメダメじゃあ示しがつきませんものね(アインハルト)
ジンさんへ ……もしかして、聞く内容間違えた?ハイネの生死をアンケートすべきだった?(アインハルト)
自分も・・・と言うか、アスランとキラって根本的に行動の原動力が違いますからね。アスランは自分の正義を信じ、キラはラクスを信じる。その結果が原作の有様ですからね。だから、ココはヅラが少し大人であると言う事でキラ決別ルートで。(Blaz)
アスランが裏切ってもハイネさんが死なないのならシンとイチカにキラともども討たれるで、ハイネさんが死ぬのならキラとの決別でお願いします。というか恐らく選択肢によってのハイネさんの生死で決まると思いますよ^^; 次回の更新も楽しみに待っているので頑張ってください応援してます。(ジン)
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