ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY15 狡猾な研究者 |
STORY]X 狡猾な研究者
デュオ視点
突進してくる4体の鎧騎士をサイドステップで回避した後、キリトがカウンターの左切り上げを放った。
攻撃の直後で反応が遅れた鎧騎士の胴に、キリトの一閃が襲い掛かる。
しかしその攻撃は別の騎士が突き出した盾によって弾かれ、体勢を崩したキリトにさらに別の騎士が斬り返してきた。
デュオ「キリト!」
キリト「わかってる!」
キリト&デュオ『スイッチ!』
声に合わせてキリトが下がり、代わりに俺が間に割り込む。
俺は放たれた上段斬りを受け流し、そのままの姿勢から剣を振り上げて騎士の頭部に叩き付ける。
デュオ「ぜあぁぁぁ・・・!!」
振り下ろされた刃は、鎧の頭部を真っ二つにしてそのまま胸まで食い込んだ。
切り裂かれた鎧はバラバラに分解し、残骸だけがその場に残る。
その中には、やはり前回と同じく何も入っていない。
デュオ「次!」
壊れた鎧を剣から吹き飛ばし、俺たちは次の騎士に斬り掛かる。
すると、鎧騎士は背中にある金属の翼を広げて一斉に飛び上がった。
デュオ「飛べるのかよ。だったら・・・」
すかさず銃を取り出し、銃口を騎士に向けて3回トリガーを引く。
俺の放った弾丸は1体の騎士の頭、胴体、翼にヒットし、騎士は空中でバランスを崩してよろめいた。
間髪入れずに跳び上がり、騎士の頭上から剣を叩き付けて地上に叩き落とす。
デュオ「もう1発!」
俺はそのまま、床に叩き付けた騎士目掛けて落下し、立ち上がろうとする騎士の中心に剣を突き立てた。
俺自身の重量と落下の勢いを利用した重い突きが、甲高い音を立てて鎧の中心を貫く。
剣を引き抜くと鎧はバラバラになり、鎧の残骸と騎士の持っていた剣だけがその場に転がった。
キリト「これで半分か」
デュオ「このまま一気に押し切るぞ」
それだけ言って再び敵に向き直ると、こちらを見て手に持ったメモに何かを忙しなく書き込んでいたヴォイドが口を開く。
ヴォイド「なるほど、確かに“奴”とまともに戦っただけのことはある。ならば・・・」
不意にポケットに手を突っ込むと、そこから何かスイッチのようなものを取り出した。
そのボタンが押されると共に騎士が後退し、代わりに部屋の奥にあの板状の建造物が現れる。
キリト「あれは・・・!」
デュオ「あの時の板切れ」
驚くこちらの様子を見たヴォイドは、勝ち誇ったような笑みを浮かべて語り出した。
ヴォイド「これはまだ試作段階のものでね。外に配置したものと違って大量のエネルギーを送り込まなければならないが、エネルギーさえあれば性能は他のものと変わらない」
ヴォイドの説明が終わるとほぼ同時に、球体に変化したエネルギーがこちらに飛んで来る。
光のボールは俺たちの目の前に降り立つと、前回と同じようにして弾けた。
?「ごごぉん!!」
強烈なライトエフェクトが目を瞑っていると、地響きにも似た雄叫びが迸る
光が収まって目を開けた俺たちの前には、やはり見覚えのあるモンスターが立っていた。
大木のように太い2本の脚、腰回りに黒光りするチェーンメイルを覆っただけで、上半身は裸の肉体、腹近くまで垂れ下がるねじくれたヒゲ、王冠を乗せた牛のような頭部には6本の角が生えている。
5mを上回る巨体の人型モンスターはかつてアインクラッド第2層で俺たちを苦しめた本当のフロアボス、【アステリオス・ザ・トーラスキング】。
デュオ「イルファングの時点で予想はしてたが、まさか本当に出てくるとはな」
そう言っている間に、ハンマーを振り上げたアステリオスはこちらに狙いを定め振り下ろしてくる。
俺たちは後方に跳びながらそれを回避し、空中で銃を構えた。
壁を蹴って着地した相棒の姿を確認した俺は、アステリオスの弱点である頭部を狙ってトリガーを引く。
撃ち出された弾丸は真っ直ぐアステリオスの額に吸い込まれ、ハンマーを振り下ろして前屈みになった巨体が膝を付いた。
デュオ「キリト!」
キリト「わかってる!」
次いで走っていたキリトが跳び上がり、下がってきた頭部に剣撃を叩き込む。
弱点に集中砲火を浴びたアステリオスは、上体を大きく仰け反らせた。
着地した俺は、キリトに続くべく一気に走り出す。
銃をホルスターに収め、両手で柄をしっかり握った。
だがその時、俺は予想外のものを目にする。
上体を仰け反らせているアステリオスの眼が光ったのだ。
デュオ〈まずい!ブレスが来る!〉
慌ててブレーキを掛けるが、横に回避するには遅過ぎる。
剣を足場にして上にジャンプすれば回避できなくもないが、その場合剣が破壊される可能性が高い。
それに俺自身が回避できたとしても、落下途中のキリトには確実に直撃してしまう。
キリトもそれに気付いているらしく、「お前だけでも回避しろ」とアイコンタクトしてくるが、今のキリトの位置でブレスが直撃すれば次の瞬間にはハンマー攻撃でゲームオーバーだ。
デュオ〈どうする!?何かないか!?〉
考えを巡らせていると、ふと視線の端にあるものが映る。
鎧騎士の残していった2本の剣だ。
デュオ〈あれだ!〉
俺はすぐさまその1本を拾い上げ、真上に投げ付ける。
真っ直ぐ上に向かった剣が、ガキィィン!と音を立てて天井に突き刺さった。
間髪入れずに自分の剣を持ち上げ、刀身の腹を上に向ける。
デュオ「こいつに着地しろ、キリト!!」
キリト「わ、わかった!」
直後、俺の言葉で着地姿勢に入ったキリトが剣の上に乗る。
デュオ「ぜあぁぁぁ!!」
一気に重量を増した剣を、力任せに振り上げた。
デュオ「跳べ!」
振り上げた勢いに乗ってジャンプしたキリトは、そのまま天井―――先程投げた剣が刺さっている位置―――まで上昇する。
デュオ「それに掴まれ!!」
叫びながら、俺も振り切った剣を足場にしてジャンプする。
直後、放たれた稲妻が俺のブーツを掠め、足場にしていた剣を吹き飛ばした。
予想通り、ブレスの直撃で吹き飛んだ剣は空中で粉々に砕けて消滅する。
キリト「デュオ!!」
愛剣の消滅後、上から相棒の叫び声と共に俺の投げた騎士の剣が降ってきた。
着地と同時に剣をキャッチし、ブレスを放って下がったアステリオスの頭に突進突き放つ。
剣がアステリオスの鼻先に突き刺さり、吹き出した体液が純白の刃を赤く染める。
アステリオス「ごごぉん!!」
苦痛の声を上げたアステリオスが、膝を付いたまま再び大きく仰け反った。
俺は、その動きに合わせて視線を上に向ける。
すると、アステリオスに向かって落下する黒い影が目に入った。
デュオ「ビンゴ」
笑みを浮べて呟くと、仰け反ったアステリオスの眉間にキリトの剣が突き立てられた。
アステリオス「ごごぉん!!」
ひときわ大きな叫び声を上げたアステリオスが光に包み込まれ、無数の破片となって爆散する。
同時に奴の血も消滅し、握っていたハンマーだけが転がった。
ヴォイド「ば、ばばば馬鹿な!?アリエナイ!!」
俺たちの戦闘を隣の部屋で見ていたヴォイドが、呆然としながら呟く声がスピーカー越しに聞こえてくる。
半ば混乱状態になったヴォイドは、今まで以上の速さでメモを取っている。
デュオ「残念ながらあり得るんだよ!」
俺はアステリオスが残していったハンマーを持ち上げ、思い切りガラスに叩き付けた。
ハンマーを握る手から伝わる振動に全身が痺れ、SAOでの麻痺に似た感覚に襲われる。
だがその振動は部屋全体にも響き渡り、ガラスに蜘蛛の巣のような亀裂が広がる。
メモを取るのに夢中になっていたヴォイドも、眼前から響いてくる振動でそれに気付いた。
だがすでに遅い。
ヴォイド「ぬあッ!?」
と、ヴォイドが声を漏らすとほぼ同時に、広がった亀裂がガラス壁を崩壊させた。
俺とキリトは衝撃で転倒したヴォイドの前まで行くと、その首筋に剣を突き付けて問う。
デュオ「さてと、説明してもらおうか。ここで何をしてる?」
短い悲鳴を上げたヴォイドはしばらく呆然と俺たちを見つめていたが、不意に立ち上がり興奮した様子でこちらを見る。
ヴォイド「スバラシイ・・・サイコウだ!」
デュオ「質問に答えろ」
近寄ってくるヴォイドを止めようと、剣を横薙ぎに振るう。
だが、ヴォイドはその刃を掴んで俺の剣を受け止めた。
すぐに引き戻そうとするも、異常な力で掴まれていてピクリとも動かせない。
ヴォイドは怪しく笑いながら、俺たちを見つめゆっくりと言う。
ヴォイド「知りたいなら、教えよう」
唐突に剣を放し、まるで独りごとのように話し始める。
ヴォイド「教皇直々のご命令で、私は数年前から“魔剣”研究を行っている」
デュオ「魔剣?」
ヴォイド「強大な力を有する剣で、その力と“シュヴァルの((義妹|いもうと))”を使えば世界を楽園に変えることが出来る」
“シュヴァルの((義妹|いもうと))”という単語に俺たちは反応した。
デュオ「どういうことだ?」
キリト「なぜアスナ出てくる!?」
急に食いついてきた俺たちの反応が愉快だったのか、ヴォイドは怪しげに笑ってから言った。
ヴォイド「彼女の記憶は天使″~誕に必要なのだよ」
デュオ「天使?」
ヴォイド「魔剣がいかに強大な力であろうとも制御出来なければ意味がない。そこで我々はまず魔剣の力を身に宿すことにした」
キリト「そのどこにアスナが関わる要素がある!?」
詰め寄るキリトの後ろで、ヴォイドを睨みながら銃口を向ける。
ヴォイド「話は最後まで聞きたまえ」
怯える様子もなく俺たちを制するように手を上げると、怪しげな笑みを浮べたまま続ける。
ヴォイド「私の研究結果から、魔剣とはかつて存在した“天空の鋼鉄城”からもたらされたものということがわかったのだ。そして、それが判明した直後に彼女は空から降り立った」
と語り続けるヴォイドは完全に興奮しているといった状態で、もはや周りなど見えていないようだ。
ヴォイド「魔剣と同じく空から舞い降りたこの少女には必ず何かあると睨んだ私は、彼女の記憶を結晶化して取り出し、それを研究した」
キリト「記憶を取り出した・・・だと!?」
その言葉を聞いた瞬間、キリトは眼を見開き脱力していく。
それに気付く様子のないヴォイドは、さらに喋り続ける。
ヴォイド「残念ながらどういう記憶なのかはわからなかったが、結晶化した記憶そのものが放つ力が魔剣に近いことがわかってね。それを取り込むことで人を超えた存在となることができる、それこそが天使!」
デュオ「馬鹿げてる!」
こいつの話が本当なら、アスナは記憶を失ったのではなく奪われたということだ。
キリト「貴様ぁぁぁ!!」
絶叫と共にキリトが剣を振り上げ、俺も引き金にかけた指に力を込める。
すると、ヴォイドが思い出したように呟いた。
ヴォイド「言い忘れていたが、この私もその天使でね」
次の瞬間、ヴォイドの体から強烈なエネルギーが放射される。
キリト&デュオ『ぐっ!!』
予想もしていない行動だったため、放たれたエネルギーをまともに受けた俺たちは怯んだ。
よろめいたところに、何かが突っ込んでくる。
それは、アステリオスと戦う前にヴォイドが後退させたあの鎧騎士だった。
飛来した騎士が、俺とキリトの体に先程とは異なる巨大な剣を突き立てる。
キリト「ぐわっ!!」
デュオ「ごはっ!!」
俺たちを貫いた騎士は、そのまま俺たちを壁に叩き付ける。
突き立てられた剣は体を貫通し、俺たちは壁に縫い付けられた。
デュオ「がはッ!!」
傷口から血が吹き出し、口からも赤黒い液体が溢れて床に零れ落ちた。
呼吸するだけでも、想像を絶する痛みが全身を駆け巡る。
剣を手放した騎士たちは、ヴォイドの背後に並んで整列する。
それを見たヴォイドは、満足そうに頷いてからこちらに向き直った。
ヴォイド「それも私の研究成果の1つでね。人工の魔剣【フロッティ】。」
俺たちを貫いているフロッティという剣は、灰色を基調とした刀身に、竜の頭を模した柄頭、鍔と刃の間にはマーキスカットされたオレンジ色の宝石が埋め込まれている。
ヴォイド「これを作るには、あの少女の記憶から出た力と強い人間の魂が必要だったのだよ。常人以上の精神力を有する者の魂を抜き取り、結晶の力を与えて剣の形に再構築することで完成する」
デュオ「・・・つまり・・・この剣は人の命でできている?」
朦朧とする意識の中で、ヴォイドに問いかける。
ヴォイド「その通りだ。理解が早くて助かるよ」
キリト「・・・ふざけやがって・・・」
キリトの言葉に、ヴォイドの表情が険しくなるが、どうにか堪えたらしく何もせずに話し掛けてくる。
ヴォイド「どうやら、お前たちも普通の人間では無いらしいな。なら次の研究材料は君たちだ。それまでゆっくり眠ると良い」
デュオ「・・・ふざけるな・・・」
吐き捨てるように言って、血を吐きつけてやる。
ヴォイドはそれを袖で拭うと、俺を睨んでくる。
そして、俺に刺さっている剣の柄を握り一気に押し込んだ。
震え上がるような痛みが全身に疾り体が仰け反ると、剣は一気に引き抜かれる
デュオ「ぐぁがはっ・・・!!」
ヴォイド「つ、つつ連れて・・・行け・・・」
ヴォイドが呟くと待機していた鎧騎士が迫ってくる。
打つ手の無い俺たちは、ゆっくりと気を失うしかなかった。
説明 | ||
教団の裏の顔が明らかに | ||
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コメント | ||
ヴォイドはどこかの妖精王(笑)と違って無駄に賢いので、その辺も厄介な相手なんですよね(やぎすけ) デュオとキリトがまさかの敗北とは、不意打ちに加えて色々と混乱させられる内容を叩き付けられたのもあるんでしょうね・・・2人はもちろんアスナにも無事でいてほしいです(本郷 刃) |
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