リリカルHS 18.5話 |
私の名前は東咲希〈あずま さき〉。東士希を弟に持つ者だ。
私は現在、ミッドチルダにやってきている。
というのも、私が3年ほど前に出会った少女と会う為だ
私がバイクを走らせ、目的地に辿り着くと、そこには大手を振ってこちらに走ってくる子がいた。
その子こそが私のミッドでの友人、ティアナ・ランスターだ
ティア「咲希さーん!お久しぶりでーす!」
咲希「おう!久しぶりだなティア。また大きくなったな」
私がバイクから降りると、ティアが抱きついてきた
ティア「えへ、あたしももう13歳ですから!」
咲希「知ってるさ。定期的に会っているんだからな。それでも、ここしばらくで随分綺麗になったな」
ティア「ほ、本当ですか?」
咲希「あぁ、見違えたぞ」
ティア「えへへー」
ティアは満面の笑みで私の腕に抱きついてきた。この子は本当に甘えん坊だな。まぁ、仕方ないか
咲希「そっか、ティア、陸士訓練校に入校したんだな」
ティア「はい!そこで出会ったスバルって子があたしのルームメイトになったんですけど、
この子がまたバカで…」
私はティアの近況を聞いていた。
私には、次元世界を移動する力はないが、次元世界をまたいで念話する力を持っている。
だからティアとはいつでも話せるのだが、こうして会って話すとはまた違う。
彼女が文句を言いつつも、楽しそうに話している限り、訓練校でも上手くいっているようだ
咲希「はは、ティアはそのスバルって子、結構気に入ってるみたいだな」
ティア「な!?そ、そんなことは…でも、ほっとけない感じではあります」
咲希「そのスバルって子とも、会ってみたいな」
ティア「あ、スバル今日はお姉さんと一緒に街にいるみたいですから、
もしかしたら会えるかもしれません。連絡してみます?」
咲希「あー、いいよいいよ。今日はティアに会いに来たんだし。
街なら、ぶらついてりゃ会えるかもだしな」
ティア「…はい!」
ティア「あ、いつもいつも生活金の振り込み、ありがとうございます。
いつも思うんですが、本当にあんな大金、用意してもらっていいんですか?」
ティアは両親を亡くし、兄も仕事中に亡くなった。それ故にティアは天涯孤独。
それを知った私はティアの生活保護をしている。と言っても、金を用意しているのは私じゃないがな
咲希「いいんだよ。ティアは私にとって妹みたいなもんだ。
その妹の世話するのは当然だろ?だから金の心配もしなくていい」
ティア「ですが…」
咲希「兄の、ティーダ・ランスターの夢を継ぐんだろ?
私はそれを応援してるし、ティアの夢の為なら、あんな金大したことない。だから気にするな」
ティア「はい…」
咲希「それに、金を用意しているのは私じゃない。
前にも話した私の弟、士希が用意してくれている。礼ならそいつに言え」
ティア「はい。あ、ですがあたし、咲希さんの弟さんに会ったことありませんよ?」
咲希「当たり前だろ?私の大事なティアに、士希っていうシスコン・ミニコン野郎を会わせる訳ないだろ」
ティア「あ、あはは…」
ティア「ん?なんでしょうあの人だかり」
私とティアは街に赴き、昼食を取れる場所を探していた。
その道中、とあるカフェの扉が吹っ飛ばされていた
咲希「強盗なんじゃないか?管理局の連中も動いてるみたいだし、放っておいてもいいだろう」
私はチラッと、杖を持った少女を見やる。その少女が訛りのある言葉で管理局と名乗っていた
ティア「それもそうですね。
あ、ここをもう少し行くと、美味しいハンバーガー屋があるのでそこにしましょうか」
私達はティアオススメのハンバーガー屋にやって来た。私の世界には無い料理店なので興味はある
ティア「お待たせしました!ここの特製バーガーです!」
咲希「おう。ありがとうな。じゃあいただくよ」
私は一口食べる。なるほど、大雑把ではあるが確かに美味い。
ハンバーグはもちろん、バンズもこれは手作りだな。レタスとトマトもいいアクセントになっている
咲希「うん、荒削り感はあるが、なかなかだな」
ティア「あはは、流石にプロの料理人の評価は厳しいですね」
咲希「いやいや、十分イケるさ。おっと、今日はキッチン付きのホテルを取ったから、夕食は私が作るよ」
ティア「ホントですか!?やったー!」
歓喜してくれるティア。ここまで喜んでもらえると、私も嬉しいな
咲希「飯も食ったし、軽く稽古でもしようか」
ティア「はい!よろしくお願いします!」
私達はひと気のない公園にやって来ていた。
私は3年前から、ティアに武術を仕込んでいる。彼女の夢の為に必要だと思ったからだ
私が教えたのは、短剣やナイフを使った戦闘術と素手による格闘術。
ティアの主装備は銃だが、銃は近接戦闘に向いていない。そこで私が教鞭を取った。
少しでも、強くなって欲しいから
咲希「よし、じゃあまずは素手だ。どこからでも打って来い」
ティア「行きます!ハァァ!」
ティアは拳と蹴りをバランスよく使ったスピードタイプだ。
だがそれ故に、単発の威力は低い。氣の扱いもまだまだ慣れていない
咲希「速いが、それだけだ。決定打がないと倒せないぞ?」
ティア「それなら!」
ティアは一度後ろに下がり、脚に氣を溜め始めた。へぇ、あの技は…
ティア「猛虎蹴撃・乱!」
ティアの脚から、無数の小さな氣弾が放たれた。一度の溜めで6発か。大したものだ
ティア「うへぇー、流石に通らないかぁ」
私は飛んでくる氣弾を全て打ち消した
咲希「いや、ほとんど独学でよくここまで頑張った。私にナイフを抜かせたんだ。誇っていいぞ」
そう、私は全ての氣弾をナイフで打ち消した。流石に危なかったな
ティア「や、やった!咲希さんにナイフ抜かせた!」
ティアは喜んでいた。こういうところは、まだまだ子どもっぽいな
「あれ?ティアナさん?」
一通り稽古をつけ、休憩していると、アイスクリームを持った青髪の子が話しかけて来た
ティア「あら、スバルじゃない。こんな所で何してるの?」
スバル…この子がティアのルームメイトか。なかなか可愛らしい子じゃないか
スバル「あたしはギン姉と散歩!ティアナさんは?」
ティア「あたしは…あ!すいません咲希さん!この子がスバルです!スバル、こちらの方が咲希さんよ」
スバル「へぇー!この人がティアナさんの言ってた大好きな人かぁ」
ティア「ちょ!バカスバル!何言ってるの!?」
ティアは顔を真っ赤にしながらスバルの頬をグニグニしていた。
私はニヤニヤしながらティアを見ると、ティアはさらに顔を赤くした
スバル「いひゃい、いひゃいよ、ティアナひゃん」
ティア「スバルうっさい」
咲希「こーらティア、その辺にしとけ」
ティア「うー…」
ティアはしぶしぶ離した
咲希「よう、私はティアの姉代りの東咲希ってものだ。いつもティアが世話になっているな」
スバル「あ、スバル・ナカジマです!ティアナさんとはルームメイトで、仲良くさせてもらってます!」
ティア「あんたが勝手についてくるんでしょ?」
スバル「嫌いじゃないくせにー」
ティア「……」ペシッ
スバル「あぅ」
ティアは無言でスバルにデコピンした。はは、確かに仲は良さそうだ。だけど…
咲希「なんでスバルは、ティアの事をティアナさんって呼んでるんだ?お前らルームメイトだろ?」
スバル「あ、ティアナさんはあたしの一つ年上なので。
それにティアナさんがティアって呼ばれているなんて、今初めて知りました」
咲希「そりゃよくないな。今後はティアって呼べ」
ティア「えー!?流石にそれは…」
咲希「ティア、前にも言っただろ?お前は指揮官向きなんだ。
ルームメイトなんだし、今後コンビでやることもあるだろうから、
今のうちに仲良くなって癖とか把握しておけ。
そうすりゃお前なら、上手くこの子を扱って、どんな事件でも解決できるだろ」
ティア「うー…」
咲希「できないなら、私の事を呼び捨てで呼ばせるぞ」
ティア「そ、そんな事はできませんよ!
あーもー!わかったわスバル。今後はティアって呼んでちょうだい」
スバル「いいの?」
ティア「聞かないでよ。決心が鈍るわ」
スバル「わかった!よろしくねティア!」
ティア「ッ!?」
ティアは照れ臭くなったのか、そっぽを向いた。慣れるにはまだまだ時間がかかりそうだな
「あ、いたいた。スバルー!」
私、ティア、スバルが仲良く話していると、今度は紫の髪の女が走ってきた
スバル「あ、ギン姉!」
ギン姉?スバルの姉か?
ギンガ「お待たせスバルーと、あれ?ティアナと士希さん?…ではないか」
ティア「こんにちはギンガさん」
士希だと?
咲希「おいお前、士希と会ったのか?」
ギンガ「え?あれ?知り合いですか?」
咲希「あいつは私の弟だ。おっと、私は東咲希。
スバルのルームメイトのティアの姉代りをやってるものだ」
ギンガ「あ、私はギンガ・ナカジマです。そっかぁ、士希さんのお姉さんだったんだ」
スバル「そう言えば、似てるね」
ティア「ちょっとスバル!あんた士希さんに会ったの?」
スバル「うん。さっきアイスクリーム屋さんで」
アイスクリーム屋?あいつはアイス食べないし、あいつと一緒にいたレーゲンって子の分か
ティア「ねぇねぇ!どんな人だった?」
ティアは興味津々で聞いていた。確かに私はあまり士希の話をしないからな
スバル「なんか突然話しかけられて、アイスのオススメを聞かれたんだ」
ギンガ「最初はナンパかと思っちゃったわね」
何をやっているんだあいつは…
スバル「オススメ教えたら、そのまま食べて、バイクでどっか行っちゃったんだよねー」
ティア「残念。もしかしたら会えると思ったのに…」
咲希「そんなに会いたいのか?」
ティア「一応、お世話になっているので、お礼は言いたいですよ」
そういうことか。ならそのうち会わせてもいいかもな
咲希「そろそろいい時間だし、ホテルに行くか。ギンガ、スバル、お前達も来るか?」
ギンガ「あ、お気持ちは嬉しいですが、私達は今日家族と過ごす予定で」
スバル「父さんとご飯♪」
咲希「わかった。なら今後も、ティアをよろしく頼むな」
私とティアはバイクにまたがり、その場を後にした
咲希「ティア」
ティア「はい」
ティアの声には元気がなかった。やっぱり…
咲希「羨ましいって思ってるのか?」
ティア「……凄いですね咲希さん。なんでわかるんですか?」
咲希「私はお前の姉貴分だからな」
ティアは天涯孤独であるが故に、家族に対し憧れがあるのだろう。
私がミッドにいない間も、きっと寂しい思いをさせている
咲希「ごめんなティア。そばに居てあげられなくて」
ティア「い、いえ!そんな事は…
咲希さんには、凄く良くしてもらってますし、こうして会いに来てくれるだけで、あたしは…」
咲希「満足…してないよな」
ティア「………」
咲希「私は店を継がなければならないし、ティアはミッドで執務官になるって目標がある。
どっちも妥協できないから、一緒には住めないよな」
ティア「あたしこそ、ごめんなさい。せっかく咲希さんにうちに来ないかって誘われたのに…」
咲希「いいさ。でも、私は心配なんだ。
無茶してないかとか、病気になってないかとか、寂しい思いさせてるとか」
ティア「その気持ちだけで、あたしは幸せです」
ティアは強い子だな。まだ13歳なのに、しっかりしている。悪く言えば、無理している
咲希「こうして定期的に会う時は、甘えていいんだからな」
ティア「えへ、もう十分、甘えさせてもらってますよ」
咲希「はは、そうだったな。ティア、夕食は何食べたい?好きなもの、何でも作ってやるよ」
ティア「ホントですか?でしたら、肉じゃがが良いです!」
咲希「肉じゃが?なんでまた?」
ティア「この前読んだ本に、肉じゃがは家庭の味と書いてあったので」
咲希「ははは、なら肉じゃがにするか!」
ティア「はい!あ、それと…」
咲希「ん?なんだ?」
ティア「今日、一緒に寝て良いですか?」
咲希「当たり前だろ?そのつもりでベッドは一つしかないんだし」
ティア「えへへ、咲希さん大好き!」
ティアには普段寂しい思いをさせている。
だから私は、せめてミッドにいる間は、ティアのそばに居たいと思っている。
ティアの要望は叶えられる範囲で叶えていく。それでティアが笑顔でいるのならそれでいい。
それが、私がティアにできる事だから
あとがき
こんにちは、桐生キラです!
今回のこのお話、ティアメインの回なんですが、
ストーリーに直接関係しないので外伝という形を取らせていただきました。
ティアと咲希の関係、それによるティアの微妙な性格改変(訓練校で壁を作らない等)を描いてみました
ティアと咲希の出会いの話も、ティア視点でいつかやろうとは思っているので
その時にさらに詳しい二人の関係を描けたらなと思います。
東 咲希については…
オリジナルキャラクター、雑賀士希の双子の姉という解釈でいいです。
あまり出る機会はないと思いますけど、士希や両親以上の武力を持つ最強の人って感じです(笑)
それでは今回はここまで
また次回にお会いしましょう!
説明 | ||
こんにちは! 副題「ミッドチルダでの出会い」なんですが 今回はストーリーに関係無い話なので18.5となります |
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