ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY16 眠れる騎士
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STORY]Y 眠れる騎士

 

 

 

 

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キリト視点

感覚が遠退いていき、俺の意識は完全に途切れる。

視界が暗闇に閉ざされる直前、自分と相棒のHPがすでに半分以下になっていたことを確認した。

おそらく、俺たちのHPはそう遠くないうちに0になるだろう。

その時俺たちはこの痛みから解放され、そして同時2度と醒めることのない眠りにつく。

 

キリト〈俺は死ぬのか・・・?〉

 

緩やかな思考で、まるで他人事のように考え、何も見えない暗黒の世界を、ただ独りぼんやりとした意識のまま漂う。

まるで水中のような浮遊感の中、虚ろに開かれた俺の眼に奇妙な光景浮かんできた。

相変わらず景色は黒一色のままだが、隣にアスナとデュオが立っていて、俺とデュオは剣を握っていた。

不意にゾッとするものを感じ、そこから何かはわからないが悪意を持つ何かが湧き出てきたことを感じ取った。

俺は相棒と共に剣を振り回して、湧き出してきたその何かと戦う。

だが抵抗も虚しく俺たちは敗北、俺たちを横目に不可視の何かはアスナへと近付いていく。

恐怖で足が竦んでいるのがアスナは、後退りこそするものの逃げる様子はない。

再び立ち上がったデュオが何かに斬りかかり、その隙に俺がアスナの手を引いて逃げる。

しかし、デュオを倒した何かはすぐに俺たちに追い付き、そしてアスナの腕を掴んだ。

目に見えない腕がアスナの腕を掴み、俺から引き離そうとする

俺も必死でアスナの手を握っていたが、ついにその手は引き離されてしまった。

このままでは、アスナが連れて行かれてしまうだろう。

 

キリト〈そうはさせない!もう2度とアスナを奪われてたまるか!!〉

 

心の底から叫ぶと、辺りを包んでいた闇に亀裂が走り、そして次の瞬間ガラスのような音を立てて崩れ落ちる。

俺の周りを包んでいた黒い空間の欠片が、落下して消え去ると今度は真っ白な空間が現れた。

何も存在しない純白の空間は光が満たされているかのように明るい。

 

キリト「ここは・・・?」

 

?「キリト」

 

突然、背後から声が聞こえてくる。

驚いて振り返ると、何も存在しなかったはずの空間に鎧姿の少年と少女が浮かんでいた。

少年の方は、少しウェーブのかかった柔らかなアッシュブラウンの髪にクリーム色の肌。

東洋人ではなく、それでいて西洋人とも言い切れない容貌。

線の細めな優しげな目鼻立ちで、瞳の色は濃いグリーン。

青みがかった銀色にわずかに透明感のある鎧に、濃い青のマントを纏う。

腰に吊るした白革の鞘には、柄の各所に青い薔薇の象嵌が施された白銀の長剣が収められている。

少女の方は、純金を鋳溶かしたような真っ直ぐでつややかな金髪に透明感のある白い肌。

少し切れ上がった両目の瞳は、澄みきった青空を思わせる深い蒼。

白に黄金の装飾を施した鎧が少女の全身を金色の光で彩る。

腰に吊るされているのは、鞘から柄頭に至るまで煌びやかな黄金造りで、鍔に十字型の花の意匠が施された細身の長剣。

2人のその姿は、教団の連中が作った鎧騎士なんかよりもずっと騎士らしく見えた。

 

少年「君は、彼女を救いたいかい?」

 

少年が問いかけてくる。

言い方からして少年の言う“彼女”がアスナのことを指しているのは間違いない。

俺は迷わず、その問いに答える。

 

キリト「ああ。俺はもう2度とアスナを失いたくない」

 

少年「そうか・・・」

 

俺の答えを聞いた少年は満足げに瞳を閉じてから再び眼を開くと、隣にいる少女と顔を見合わせて頷き、もう1度俺を見てから口を開いた。

 

少年「なら、僕たちが力を貸そう」

 

そう言って少年が手を差し出すと、俺の手に何かが現れる。

そこにあったのは、青いバラと金色の金木犀が入ったクリスタルだった。

 

少女「貴方が助けを必要とするなら、それを使って私たちを呼びなさい。貴方が求めれば、私たちは貴方の剣となり盾となります」

 

少年「僕たちの魂は、いつも君と共に」

 

それだけ言い残し、2人はすうっと消えてしまった。

 

キリト「ありがとう・・・」

 

なぜか懐かしさを感じる2人の騎士に礼を言うと、俺のいる空間はひときわ強い光に包まれた。

 

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通常視点

鎧騎士が迫る中、突然キリトの目が開いた。

見開かれたその瞳が黒から金色に変化すると、紫色のライトエフェクトが発生し、キリトの体を包み込む。

それに呼応するように、ケースに収められていた剣が同じく紫色に光り始めた。

次の瞬間、折れた刀身の断面から無数の漆黒が伸び、失われた刃を再生させていく。

そして完全な剣の形を取り戻したそれは、回転しながら飛んでいき、キリトの右手に納まった。

直後、キリトを包んでいた光が爆ぜ、そこから2つの人影が飛び出した。

放出されたエネルギーがキリトとデュオを貫く剣を粉々にし、周りにいた鎧騎士を吹き飛ばして崩壊させる。

体を固定するものが無くなった2人の体は、壁から滑り落ちて床に付く。

それと同時にHPの減少も緩やかになるが、2人のHPはすでに2割を切っており今も減少し続けている。

すると、キリトから飛び出した人影の片方?――金色の鎧を纏った騎士―――が2人に向かって手を翳し早口で何かを唱えた。

詠唱が終わるとその手が白い光の球体に包まれ、キリトとデュオのHPが回復し始めた。

HPが回復するにつれて、2人の傷もふさがっていく。

傷口がふさがりきると、キリトはゆっくりと立ち上がった。

そのままおぼつかない足取りで、割れたガラス壁に向かってよろよろと歩く。

 

ヴォイド「な、なななんだ、その((能力|ちから))は!?」

 

爆発したエネルギーを受けて吹き飛んだヴォイドが、ガラス壁の向こう側で喚く。

土煙の中で立ち上がったヴォイドの姿は、先程までの人間の姿とは全く異なっていた。

体の基本構造は人間のそれに近いが、その全身は灰色の甲殻のようなもので包まれており、背中には昆虫―――厳密にはゴキブリ―――を思わせる翅が生える。

所々に毒々しいオレンジの模様が走る昆虫に類似した体とは違い、足は鶏のそれと酷似していた。

目も体と同様、昆虫と類似したものになっており、野球ボール程もあるそれは血を濁らせたような赤紫。

その姿は、神々しい天使のイメージとは程遠く、邪悪な毒々しさに溢れている。

およそこの世のものとは思えない醜悪な外見は、見る者に強い不快さと例えようのない嫌悪感を与えることだろう。

一瞬にして異形の姿に転じたヴォイドは、鉤爪の生えた指でキリトの手にある黒い剣を差して続ける。

 

ヴォイド「私にも再生できなかったのに・・・!!」

 

騒ぎ続けるヴォイドに、キリトはゆっくりと持ち上げた剣の刃先を向けた。

 

キリト「エンハンス・アーマメント!!」

 

半ば呟くような声に反応して、漆黒の刀身が脈打つ。

直後、刃のいたるところから幾筋もの闇が溢れ出した。

溢れ出した漆黒の奔流は、うねり、よじれ、絡まり合い、やがて大木のような太い槍となってヴォイドに迫った。

一直線に伸びた漆黒の槍は、ヴォイドの頬を掠め、そのまま後ろの壁に突き刺さる。

何が起きたのか理解できていないヴォイドが恐る恐る振り返ると、槍の刺さった壁には巨大な風穴が穿たれていた。

キリトが剣を引くと刀身から溢れる奔流は止まり、それは剣に吸い込まれる。

 

ヴォイド「ありえないことだ・・・!貴様のようなガキが“選ばれる”など・・・」

 

怯えた声で喚くヴォイドに、再びキリトが剣を向ける。

 

ヴォイド「・・・アリエナイッ!!」

 

だがキリトが剣の力を解放する前に、ヴォイドは叫びながらどこかへ逃げていった。

ヴォイドが逃げ出すのを見ていたキリトだったが、その姿が完全に見えなくなると、そのまま床に倒れる。

キリトが倒れたことにより、青銀と金色の2人の騎士も光となって消滅し、キリトを包んでいたライトエフェクトも消えた。

説明
本物の騎士登場
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コメント
本郷 刃さんへ この世界は他の様々な世界と繋がっているので、彼ら以外にもまだキャラが登場する可能性があります。(やぎすけ)
別世界の親友たちとの絆の力、それがキリトを勝利へ導きましたね! 彼と彼女が今後も登場するのかが気になりますが、とりあえずお疲れ様です、キリト(本郷 刃)
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