英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク |
〜ボース市〜
「へ――――」
突如声をかけられたエステルが声がした方向に視線を向けるとそこにはリオンがいた。
「あっ!」
「ふえっ!?」
「テメェは……」
「あの時廃坑で”剣帝”を一人で圧していた奴……!」
「―――もう一人の異世界から来た人―――リオン・マグナスね。一体私達に何の用かしら?」
リオンを見たエステルやティータは驚き、アガットとルークは真剣な表情でリオンを見つめ、アーシアは動じずリオンに視線を向けて尋ねた。
「というか何であたし達が竜を無力化しに行く事を知っているのよ!?」
「フン、お前達があの白き飛行船に乗り、竜の捕獲作戦を観察する事は昨夜の内に知っている。そして空港から出てきた貴様らの仲間達の会話から推測すれば、自ずと答えは出てくる。」
エステルに睨まれたリオンは鼻を鳴らして答え
「ハアッ!?って事はお前、昨夜ギルドの外で俺達の会話を聞いていたのかよ!?」
「うわっ、それって”ストーカー”って奴じゃないの?よく考えたら昨日の廃坑での時もあたし達の後をつけていたみたいだし。」
リオンの説明を聞いたルークは驚き、エステルはジト目でリオンを見つめた。
「誰がストーカーだ!?」
エステルの指摘にリオンは怒鳴った。
(いや、実際その通りじゃないですか。マリアンの事と言い、やっている事がまさに”ストーカー”ですよ?)
(お前は黙ってろ、シャル!)
「???」
シャルティエの声を聞いたリオンはシャルティエに視線を向けて睨み、聞き覚えのない声が聞こえたエステルは周囲を見回して首を傾げていた。
「それで?何の為に俺達に接触してきたんだ?」
「フン、知れた事。―――竜の無力化に僕も手を貸してやる。」
ルークの質問にリオンは鼻を鳴らした後驚くべき事を口にし
「へ!?」
「ハアッ!?」
「何だとっ!?」
「ふえええっ!?」
「……理由を聞いてもいいかしら?」
リオンが口にした言葉を聞いたエステル達が驚いている中、目を丸くしたアーシアは尋ねた。
「いつまでもこのボース地方にあの竜が居座っているのは、僕にとっても都合が悪いから手を貸してやるだけだ。」
アーシアの疑問に対してリオンは答え
「それってもしかしてマリアンさんが関係しているの?崩壊したマーケットでのマリアンさんを凄く心配していた様子やレーヴェと戦った時の様子からして、そうとしか考えられないんだけど。」
エステルは真剣な表情でリオンを見つめて尋ねた。
「フン、お前達の好きに解釈しろ。」
(というか何気に的確な答えをついていますねえ、あのエステルって娘。坊ちゃんが誰かに手を貸す理由があるとしたらスタンやカイル関係か、マリアン関係ですし。)
エステルの質問に対し、リオンは答えを誤魔化していたが、シャルティエは的確な答えをついているエステルに苦笑していた。
「……………」
(おっとつい、口が滑ってしまいました。だからそんなに睨まないで下さいよ〜。)
そしてリオンにギロリと睨まれたシャルティエは慌てたが
「………ねえ。貴方以外に他に誰かいるの?さっきから声が聞こえてくるのだけど。っていうか、やっぱりあたし達に同行する理由ってマリアンさんが関係しているようね。さっきから聞こえてくる声がそう言ってるし。」
(ええっ!?)
「何!?」
周囲を見回した後首を傾げたエステルの質問を聞いて驚き、リオンは目を見開いてエステルを見つめた。
「お、おねえちゃん?」
「一体何を言ってるんだ?」
「声なんて聞こえねえぞ?」
「他に誰かいるのかしら?」
一方ティータやアガット、ルーク、アーシアは戸惑い
「………お前。まさかシャル―――この剣の声が聞こえるのか?」
(あのー……本当に僕の声が聞こえるんですかー?僕の名前はピエール・ド・シャルティエです。聞こえたら返事してください。)
リオンはシャルティエを鞘から抜いてエステルに見せて尋ねた。
「また聞こえた!名前はピエール・ド・シャルティエって!って………………………え”。け、剣が喋った??」
(うわっ。その娘だけ本当に僕の声が聞こえているみたいですよ、坊ちゃん?)
「チッ、スタンやカイルと言い、何故こんな能天気な奴等に”ソーディアン”を扱う”素質”があるんだ?」
シャルティエを見て口をパクパクさせるエステルの様子にリオンは舌打ちをした。
「むっかー!誰が能天気よ!?それよりその剣の事、説明してよっ!!でないと例え頭を下げて頼まれても連れていかないわよ!?」
(坊ちゃん、説明しておいた方がいいんじゃないですか?)
「フン、シャルに免じて特別に説明してやる。一度しか言わんからよく聞いていろ。」
そしてリオンはエステル達に『ソーディアン』の事を軽く説明した。
「い、意志ある剣って……」
「な、何だそりゃ!?そんな剣、ありなのか!?」
「し、信じられない………(話を聞く限り、どう考えてもアーティファクトと言ってもおかしくない武器じゃない!?それもかなり高位の……!異世界の技術って一体どれだけ進んでいるのかしら?)」
『ソーディアン』の説明を聞いたエステルは口をパクパクさせ、ルークとアーシアは驚きの表情でシャルティエを見つめ
「し、しかも嵌められてあるそのコアが意志を持っているどころか、コア自身が自ら起動して”昌術”っていう魔法(アーツ)みたいな事までできるなんて……う〜、どんな構造になっているのか凄く気になるよ〜。」
「ったく、やっぱり爺さんの孫だけはあるぜ……」
興味深そうな様子でシャルティエを見つめるティータの様子を見たアガットは呆れた表情で溜息を吐いた。
「フン、これで納得したな?ならばさっさと行くぞ。時間を無駄にした。」
そしてリオンはエステル達に背を向けて進もうとしたが
「ちょっと待ちなさいよ!マリアンさんとの関係をまだ聞いていないわよ!?」
「………何故それをお前達に教える必要がある?」
エステルの制止の声を聞き、振り向いてエステルを睨んだ。
「一緒に行動するからにはあんたの正体をハッキリさせておきたいし、遊撃士としてメイベル市長からも頼まれているの!記憶喪失のマリアンさんの手掛かりを知る貴方に話を聞いてきて欲しいって!後できれば、貴方と直に会って話をしてみたいって事も言ってたわ!」
(ええっ!?マリアンが記憶喪失!?)
「何だと………?おい、それは一体どういう事だ。」
エステル達はメイベル市長から聞いたマリアンの事情を説明した。
「……………………………」
(坊ちゃん………そ、その、元気出してくださいよ!もしかしたら既に記憶が蘇っているかもしれませんよ!?あの時のマリアン、坊ちゃんのもう一つの名前を知っていたんですから!)
マリアンの事情を聞き終えて黙り込んでいるリオンの様子を見たシャルティエは心配そうな表情で声をかけ
「ねえねえ、もしかしてマリアンさんと恋人同士なの?レーヴェとの戦いの時だって、マリアンさんを傷つけられたから怒っていたんでしょう?」
エステルは自分が気になっていた事をシャルティエに視線を向けて尋ねた。
(う〜ん、坊ちゃんとマリアンが恋人同士だったら本当によかったんですがねえ。坊ちゃんとマリアンの関係には色々と複雑な事情がありまして。まあ、あの銀髪の剣士と戦った理由がマリアンを傷つけられたからという答えはあっていますけど。)
「あ、やっぱり。恋人同士じゃないって事は、もしかしてリオンはマリアンさんに片思いしているのかしら??」
(え、えーと。それを僕の口から言うのはちょっと……)
自分の説明を聞いてある事を推測したエステルに尋ねられたシャルティエが答えを濁したその時
「これ以上ふざけた事を言うと叩き割るぞ!?シャル!」
リオンはシャルティエを睨んで怒鳴った!
(アハハ……どうやらあの様子だと図星のようね。)
(フフ、片思いの人の為だけに竜に挑むなんて、素敵な話よね。)
(は、はい。……まるで何かの御伽みたいで素敵です。)
(というか剣と喋る男とか一歩間違ったら、変人じゃねえのか?)
(お、おい。本人に聞こえるって!)
リオンの様子を見て口元をニヤニヤさせるエステルや静かな笑みを浮かべるアーシアと共にティータは目を輝かせてリオンを見つめ、アガットの小声の言葉を聞いたルークは冷や汗をかいた。
「――――貴様ら全員、僕に斬り殺されたいようだな……!?」
「アハハ、ごめんごめん。それで?マリアンさんとの関係を教えてよ。」
殺気を纏ったリオンに睨まれたエステルは苦笑した後すぐに気を取り直して真剣な表情で尋ね
「…………………マリアンは昔僕の家でメイドとして働き、僕の世話役も兼ねていた。―――それだけだ。」
「メイドがいたって事はもしかしてお前って、貴族か金持ちの家の出身か?」
リオンの説明を聞いてある事に気付いたルークはリオンを見つめて尋ねた。
「フン、貴族ではないが一般人と比べると裕福な生活を送っていた事は否定しない。―――そんな事よりいい加減決めたのか?僕を連れて行くか、行かないのか。もし連れて行かないのなら僕は僕のやり方で竜を無力化するぞ。」
「う、う〜ん。あたしはいいと思うけど……ルーク兄、アガット、アーシアさん。どうする?」
リオンに視線を向けられ、答えが出せないエステルはルークとアガットに視線を向け
「俺はいいと思うぜ。竜と戦うんだから、戦力は一人でも多い方がいいと思うし、”剣帝”と一人で戦える腕前ならむしろ俺達の方が頼む側だと思うぜ?」
「私も構わないわ。……というかむしろ連れて行って勝手な行動をしないか見張った方がいいと思うわ。」
「――――俺からは条件がある。」
ルークとアーシアが賛成している中、アガットだけは明確な返事をせず目を細めてリオンを睨んだ。
「条件だと?」
「ああ。俺達と行動している間は俺達の指示に従って貰う事だ。こっちの指示も聞かずに勝手に動かれたら俺達が迷惑なんだよ。いくらテメェが凄腕だろうと、これだけは守ってもらうぜ。でないと、せっかく居場所がわかった竜がまた逃げちまうかもしれねえしな。」
「フン。仲間達の制止の声も聞かずに勝手に動いた上、力量の差もわからずに挑んで叩きのめされたお前にだけは言われたくないな。」
アガットに睨まれたリオンは鼻を鳴らして嘲笑し
「こ、このガキ!喧嘩、売ってんのか!?」
リオンの嘲笑を見たアガットはリオンを睨んだ。
「ア、アガットさん!落ち着いて下さいよ〜。」
「全くもう……アガットがもう一人増えた気分だわ。」
リオンとアガットの様子を見たエステルが呆れた表情で溜息を吐いたその時
「「俺(僕)をコイツ(こんな奴)と一緒にするな!!」」
アガットとリオンが同時にエステルを睨んで怒鳴った!
(息ピッタリじゃねえか。)
(フフ……)
その様子を見守っていたルークは冷や汗をかき、アーシアは微笑ましそうに見つめていた。
こうしてリオンを仲間に加えたエステル達は霧降り峡谷に向かい、アガットが尋ねた人物によって、通れなかった道が通れるようになり、探索を開始した………
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