恋姫外史終章・いつまでも一刀第27話
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洛陽に、三人の男女が訪れていた。

 

一刀、猪々子、斗詩である。

 

自分達が謀反を起こすという話について、帝に直訴すると言う理由で使者としてやってきたのだ。

 

・・・無論、表向きの理由だが。

 

「ほ、本当にやるんですか?」

 

ビクビクしている斗詩が、一刀に訊ねた。

 

「道中に何回聞いてきたよ?やるに決まってんだろ?」

 

「そ、そうですけど・・・・・・」

 

「斗詩は心配性だなあ。大丈夫だって!」

 

バンバンと斗詩の背中を叩きながら笑う猪々子。

 

「・・・文ちゃんのそのお気楽さが、今はすごく羨ましいよ・・・・・・」

 

重いため息をつく斗詩。

 

そんな斗詩とは違い、猪々子は楽しそうだ。

 

「もしかしたら大立ち回りになるかもしれねえから、そん時は頼むぜ?」

 

「おう!アタイに任せとけって!」

 

ドン!と胸を叩く猪々子。

 

こんな感じで、三人は王宮へ向かって歩を進めるのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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謁見の間

 

衛兵、そして高官たちが並ぶ中、一刀は膝をつき、頭を垂れていた。

 

斗詩、猪々子は外で待機している。

 

玉座に座るのは、まだ若い帝、劉弁。

 

その横には、五十代前半ほどの官僚が立っていた。

 

詠に代わって、帝の補佐をしているこの男。

 

彼こそが、月たちに汚名を着せた宮廷内の反董卓派、そのリーダーである。

 

とりあえず、帝補佐代理と呼ぶとしよう。

 

「さて、帝に代わって私がお聞きいたしましょう。謀反を起こすと言う噂、その真偽のほどをお聞かせ願えますかな?」

 

「はい。その件は事実無根です。そもそも、何故私達がそのような暴挙にうって出なくてはならないのでしょうか?」

 

珍しく敬語を使って反論する一刀。

 

「しかし、火のない所に煙は立たないと言いますからな」

 

「根拠の無い噂ですぐ人を疑うとは、民の上に立つ人間のおっしゃる事とは思えませんな?」

 

「では、そのような事は一切無い・・・と?」

 

「無論です」

 

きっぱりと目を逸らさず言い放つ一刀。

 

「・・・・・・ところで、私は私達の無実を訴えるためにここへ来た訳ですが、実はもう一つ用件がありまして・・・・・・」

 

「?」

 

「董卓殿が、霊帝殺害の罪で捕まっていると聞きました。それが冤罪だと言う証拠を持ってきたのです」

 

「!?」

 

一刀の発言に、帝補佐代理は目を見開いた。

 

彼だけでなく、董卓を犯人だとした反董卓派の官僚たちも一同肝を冷やした。

 

もしも一刀が持ってきた証拠が決定的なものだとしたら、董卓たちは解放され、彼らの人生は終わりなのだから無理も無いが・・・

 

「それがこの・・・・・・」

 

一刀が手をズボンのポケットに入れた瞬間、

 

「衛兵!この者を捕らえよ!!」

 

帝補佐代理の檄が飛んだ。

 

兵士たちは僅かに戸惑ったが、すぐさま一刀を包囲した。

 

「・・・・・・これは、どういうことで?」

 

「董卓たちの罪は決定的である!そもそも、かの大罪人を何故貴公がかばうのか?答えは明白!貴公は董卓たちと共謀し、共に国を乗っ取ろうという魂胆なのだろう!」

 

「・・・・・・」

 

「この者を牢へ!外の二人も一緒にだ!この者たちさえ手中にあれば、袁紹もうかつに動く事は・・・・・・」

 

そこまで帝補佐代理が言った瞬間、一刀を囲んでいた兵士たちが吹き飛んだ。

 

一刀が高速の回し蹴りで、兵士たちを一掃したのである。

 

「・・・・・・やれやれだぜ」

 

ゴキゴキと首を捻り、一刀は大きなため息をついた。

 

「どんな対応してくるかと思って様子見てたけど、まさかこんなにお粗末な対応してくるとはな・・・期待はずれだぜ」

 

「き、貴様!自分が何をしているのか分かっているのか?帝の前でこのような暴挙、許されぬぞ!」

 

「別に許してもらわなくて結構だ。猪々子!斗詩!!」

 

「あいよ!」

 

一刀が声を上げた直後、猪々子が扉を蹴破って謁見の間に入ってきた。

 

「うう・・・ご先祖様ごめんなさい。私は今、とんでもない事をしています・・・・・・」

 

斗詩はその後ろをおそるおそる歩いてくる。

 

「え、衛兵!このふとどき者たちを捕えよ!」

 

「やれるもんならやってみな!!」

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

数分後、謁見の間は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 

逃げ惑う高官たち。

 

一刀たちに次々と倒されていく兵士達。

 

兵士から武器を奪い、大立ち回りをやってのける一刀たち。

 

「み、帝!早くお逃げを!」

 

帝補佐代理は帝を連れて逃げようとする・・・が、

 

「逃がすかよ!」

 

一刀は大きく跳躍した。

 

帝たちの前に降り立ち、行く手を遮る。

 

「ひいっ!?」

 

「さ〜て、どうしてくれようか・・・・・・」

 

ボキボキと指を鳴らしながら、一刀は不敵な笑みを浮かべるのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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詠と月は、牢屋で身を寄せ合っていた。

 

冤罪を晴らすため、月と詠は何度も話し合いの場を設けてくれるよう嘆願した。

 

しかし、それらは一切聞き入れられる事はなく、もはや万策尽きたと刑の執行を待つだけであった。

 

そんな時、幾人かの足音が聞こえてきた。

 

やってきたのは、華雄、恋、ねね、霞である。

 

「そこを開けるのです」

 

ねねが見張りに命令する。

 

「いえ、いくら陳宮様の命令でも・・・」

 

「お二人の疑いが晴れたのです」

 

「え!?」

 

兵士は驚きの声を上げた。

 

「分かったら早く二人を出すのです。でないと、お前を牢にぶちこむのですよ?」

 

「は、はい!ただいま!」

 

ねねの言葉に、焦りながら牢の鍵を開ける兵士。

 

月と詠はゆっくりと牢から出てきた。

 

「・・・・・・月、大丈夫?」

 

「う、うん。大丈夫だよ、恋ちゃん」

 

「詠はどうだ?」

 

「心配いらないわよ。ところで、状況を説明してもらえる?」

 

詠がそう言ったとき、

 

「だから、逃げるつもりなんてないっての!そう警戒すんなって・・・ん?」

 

兵士たちに囲まれて、一刀、猪々子、斗詩の三人がやってきた。

 

「おお、出られたか。よかったよかった」

 

「あ、あんた、北郷一刀?何でこんな所に・・・・・・」

 

「牢に入るためだよ」

 

「は?」

 

それだけ言うと、一刀は猪々子、斗詩と共に詠たちが先程までいた牢の中に自ら入って行った。

 

「じゃ、後は頑張っとくれ」

 

ひらひらと手を振る一刀。

 

状況がつかめない月と詠。

 

「・・・・・・とにかく、一緒に来てくれ」

 

 

 

 

 

 

 

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華雄たちに連れられてやってきたのは、謁見の間。

 

人っ子一人いない謁見の間は、台風がやってきたようにボロボロになっていた。

 

「何があったのよ、いったい・・・・・・」

 

「へぅ・・・・・・」

 

謁見の間を見渡す月と詠。

 

「先程、北郷一刀たち三人がここで大立ち回りをやってのけたのだ」

 

「はあ!?」

 

詠は驚きの声を上げた。

 

月も目を丸くしている。

 

「もっとも、我等がここに着いた時には全て終わった後だったのだがな」

 

「じゃ、じゃあ、あいつが牢に入った訳って・・・」

 

「帝の御前で大暴れ。兵士たちも怪我人続出。おまけに混乱に巻き込まれた官僚たちもかなりの人数が負傷してしまってな。当然といえば当然なのだが・・・・・・」

 

「何でそんな事を・・・・・・」

 

「月と詠を助けるためだったみたいやで?」

 

「え?」

 

「・・・何ですって?」

 

「これ、見てみ?」

 

霞は一通の手紙を出した。

 

それに目を通す月と詠。

 

手紙の内容は、董卓による霊帝殺害の話はデマであり、そのデマと高官たちを使って董卓を抹殺しようとする陰謀が存在するというものであった。

 

そして、その陰謀を画策する人物の名は・・・・・・

 

「曹操ですって!?」

 

手紙には確かに曹操の名が記されていた。

 

しかも、この手紙を書いた者の名前には、曹操の臣下の名が記されていたのである。

 

「この手紙を出そうとして、北郷一刀は身柄を拘束されそうになったそうです。月殿と共謀して国を乗っ取ろうとしていると難癖つけられて」

 

「で、兵士たちを蹴散らして大暴れしたそうや」

 

「・・・・・・」

 

月はあまりにも破天荒な内容に言葉も出ないようだ。

 

それに対し、詠は情報を整理しつつ、事態の把握に努めていた。

 

「僕が言うのもなんだけど、この手紙、いまいち信憑性に欠けるわね。曹操の部下は優秀な人間ばかりだし、忠誠心もある。これが真実だったとしても、こんな手紙を書くような裏切り者が出るとは思えないけど・・・・・・」

 

「だろうな。だが、北郷一刀はここで更に証拠を見つけた・・・と言っていいのかどうか・・・・・・」

 

「何なのそれ?」

 

「・・・・・・そこの柱を見てみろ」

 

華雄の指差した先には一本の柱が。

 

そして、柱の下のほうに何らかの液体が付着していた。

 

「北郷一刀を捕らえるよう命令したのは詠の代わりに帝の補佐をしていた官僚なんだが、北郷一刀はそいつをこの柱に縛りつけて・・・・・・」

 

「まさか、拷問したの?」

 

「・・・くすぐった」

 

「「・・・・・・へ?」」

 

華雄の言葉に、月と詠は呆けた声を出した。

 

「北郷一刀曰く、くすぐり地獄の刑と言うのだそうだ。で、三分と持たずに男は吐いた。曹操の事は知らないが、董卓の霊帝殺害に関しては確たる証拠は無いと。目の上のたんこぶだった董卓を始末するための方便に過ぎない・・・とな。あれだけの人間たちの前で自白してしまったんだ。言い逃れは出来まい」

 

「ふ〜ん・・・で?そいつは何処にいるの?」

 

腕組みしつつ、目を細める詠。

 

「白目を向いて気絶していたから、そのまま自室に監禁してある」

 

「詠、今は官僚たちと事態を収拾するべきなのです」

 

「確かにそうね・・・緊急会議を開きましょう」

 

「主立った者はもう会議場に集めてあるぞ?」

 

「それじゃあすぐに・・・・・」

 

「詠ちゃん待って」

 

会議場へ向かおうとする詠に、月が待ったをかけた。

 

「月?」

 

「北郷さんは、どうするの?」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

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「で、これからどうする気なんですか?」

 

「ん〜〜・・・・・・今の所はやる事ねえな。遊ぶか、寝るか、喋るか。どれにする?」

 

「アタイまだ眠くないから、遊ぼうぜ」

 

「じゃ、腕相撲でもするか?」

 

「乗った!」

 

「じゃ、斗詩が審判な」

 

床に肘をつき、互いの手を握り合う一刀と猪々子。

 

「・・・・・・」

 

「斗詩、早く」

 

猪々子に急かされ、斗詩はため息をついた。

 

「それじゃ、よーい・・・はじめ!」

 

「ぬううううう!」

 

「ぐぬぬぬぬ・・・・・」

 

牢の中でも平常運転な一刀たちであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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どうも、アキナスです。

 

お恥ずかしながら、帰ってまいりました。

 

長い間更新を滞らせてしまい、申し訳ないです。

 

次は一週間以内に投稿できたらいいなあ・・・・・・

 

さて、麗羽を除いた袁家三人組。

 

これからどうするつもりなんでしょ?

 

そんな所で次回に・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「少林十八羅漢功托天勢!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
大暴れです
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コメント
ラズリードさん:楽しんでもらえたなら幸いです(アキナス)
本郷 刃さん:まったくそのとおりで・・・(アキナス)
蘭丸さん:これくらい気勢を上げないと、また一ヶ月くらい投稿できないから・・・・・・(笑)(アキナス)
観珪さん:ただ、一刀君がこれからどうなるか・・・・・・(アキナス)
欠陥製品さん:ありがとうございます。とはいえ、あまりお待たせしないように努力はしたいところですね(アキナス)
久々の更新待ってました!この唯我独尊の一刀君見てると気分がスッキリしますね。次も楽しみに待ってます(ラズリード)
ここの一刀は平常運転で成り立っているようなものですねww(本郷 刃)
「押忍!空手部」好きですね〜、寿命縮みますよww(蘭丸)
安定の一刀くんでなによりww 悪徳官僚も掃除できましたし、月ちゃんたちも疑いが晴れましたから、宮中は綺麗になりそうですねー(神余 雛)
待ってました!! ゆっくりでもいいのでお身体に気を付けて頑張ってください!!(欠陥製品)
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外史 北郷一刀 恋姫†無双 真・恋姫†無双 いつまでも一刀 

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