リリカルHS 23話 |
はやて「それで士希君がなぁ……」
最近の主はやては、とある男の話ばかりする
はやて「今日の士希君のお昼も美味しかったなぁ。今度教えてもらおかな」
男の名は雑賀士希。突然現れた、得体の知れない男
はやて「士希君、今なにしてるかなぁ」
私はあの男が気に入らない
そして今
士希「さて、ちゃっちゃと終わらせるか」
目の前にその男がいる
時は少し遡り、昼食を終えた後。
主はやてが、なのは、テスタロッサと勉強会に勤しんでいる中、
私は目の前の二人、リインフォースとレーゲンと呼ばれる、
これまた得体の知れない奴がTVゲームをしている光景を眺めていた
私はなんとなく、レーゲンを知っている気がしていた。記憶にはない。
だが、我々守護騎士は幾度もマスターが変わり、その都度一部の記憶を失っている。
だからもしかしたら、会っていたかもしれない
シグナム「なぁレーゲン」
レーゲン「はい、なんですかシグナムさん?」
レーゲンはゲームを中断し、こちらに振り向いた。
人型の時の特徴は、銀髪で、中性的な顔立ち。
どことなくリインフォースに似ているようにも見えた
シグナム「お前はまだ、記憶は戻らないのか?」
レーゲン「あ、はい。先日タナトスを取り込んだ際に、
何か思い出しそうではあったんですけど、ダメでした」
タナトス……その名にも聞き覚えがあった。もっと言えば、他の5人。
プロメテウス、アルテミス、オケアヌス、ガイア、ミネルバにも。
ただ、どの名も神話に出てくる名なので、それ故に知っているだけなのかもしれないが…
リイン「そういえば、レーゲン君はユニゾンできますよね?どういう能力があるんですか?」
レーゲン「僕が出来るのは敵の探知、一定の範囲内に入ると敵がやってくるのかわかります。
それとしきさんの魔力を安定させて、力を使い易くすることができます。
あと、タナトスを自在に出せます」
敵の探知、魔力操作、そしてデバイスの現出か
リイン「レーゲン君自身は、魔法を使えないんですか?」
レーゲン「どうでしょう?変身や伸縮は出来ますけど」
何かはっきりしないな。まぁ記憶がないんだ。仕方ないか
レーゲン「…!!シグナムさん、リインさん!敵がやって来ました!」
噂をすればというやつか
リイン「私達も手伝います!」
シグナム「あぁ。レーゲンは雑賀士希を呼んでこい」
レーゲン「はい!」
レーゲンは主はやてが勉強している部屋へ走っていった。
私はその間に騎士甲冑を纏い、レヴァンティンを出す
リイン「士希さんもレーゲン君も、これじゃあ気が休まらないですね」
シグナム「そうだな」
程なくして、主はやてから念話が来る。雑賀士希、及びレーゲンを手伝ってくれとの事だ。
どうやら主はやても、心配なので出たいらしいが、今は勉学に集中してもらわねばいけない
シグナム「(こちらは我々に任せ、主はやては勉強に集中してください)」
リイン「(そうです!こっちは何の問題もないです!)」
私とリインフォースがそう言うと、主はやては了承してくれた。
だが、まだ微妙に心配しておられる様子なので、迅速に片付け、早く帰るようにしなければいけない
士希「悪いな、シグナム、リインちゃん。巻き込んじまうな」パチンッ
遥か上空、雑賀士希が我らと合流すると、結界を展開し、レーゲンとユニゾン、
そして黒い鎌を現出させた。あれがタナトスか
士希「さて、ちゃっちゃと終わらせるか」
襲ってきたのは、炎を纏った狼のような獣。とても素早いが、それだけだ。
動きは単調。しっかり見極めれば、大したことはない
士希「ハァッ!」
雑賀士希はタナトスを振り回し、敵を切り裂いて行く。
切れば切るほど、タナトスは赤く染まっていき、その禍々しさをさらに高めた
リイン『士希さん、凄いです』
私とユニゾンしていたリインが言った。確かに奴は強い。攻撃は鋭く、隙も全くない。
そして、こうしてじっくり観察して、私は何と無く思った。雑賀士希は…
士希「よし、こんなもんかな」
やがて、獣の群れを倒し終えた我々は、警戒しつつも一息ついていた
シグナム「……雑賀士希」
士希「ん?どうした?」
シグナム「私と、勝負しろ」
士希「…なに?」
雑賀士希は驚くと同時に、私に対しても警戒するようになった
リイン『ちょ、ちょっとシグナム!どうしたんですか?』
リインフォースが中から怒鳴ってきたが、私は確かめなくてはならない
シグナム「リインフォース、ユニゾン解除だ」
リイン『え?でも…』
シグナム「頼む」
リイン「……」
リインフォースは静かにユニゾン解除してくれた。私は雑賀士希に向き直り、剣を突きつけた
士希「遊び…って訳じゃなさそうだな。レーゲン、お前も出とけ」
レーゲン「しきさん…」
雑賀士希はユニゾンを解除し、私に相対した
シグナム「武器はいいのか?」
士希「まぁな。俺が使うのは、お前らみたいに非殺傷設定とかできないし」
シグナム「意外だな。私には、お前がそういうことを気にするようには見えないのだがな」
士希「…どういう意味だ?」
シグナム「言葉のままだ。お前からは、人を殺めた気配を感じる」
それが、私が抱いた雑賀士希の印象。
奴の戦いには容赦がない。なさ過ぎる。淡々と敵を狩る姿に、恐怖を感じさせる。
戦う時の雰囲気はまさに殺人鬼だ
士希「だとしたら?お前から見た殺人鬼は、放置出来ないってか?」
シグナム「あぁ。お前のような危険な人間を、主はやての側にはおけない」
例え、主はやてと親しい者でも、いずれ害をなすかもしれない人間を、私は見過ごせない
士希「はやての為、か。いいぜ、相手になってやるよ」
シグナム「本気で来い。でなければ死ぬぞ」
私はレヴァンティンを、雑賀士希は拳を構える。改めて相対してわかる。
やはりこいつは強い。底の知れない強さだ
リイン「ま、待ってください二人とも!なんで戦うんです!?」
レーゲン「そうですよ!それにしきさん!まだ敵の反応があります!今はまだ…」
シグナム「悪いな二人とも。少し確かめさせてくれ。この男を!」
士希「言葉じゃ伝わらない事もある。なら俺は、それを受け止め、示すだけだ。来い!」
シグナム「ハァァァ!」
私は雑賀士希に全力で斬りかかる。だが…
士希「ッ!」
私の一撃は、紙一重の所で避けられた。
しかし私も、この程度では驚かない。このままさらに追撃をしかける
シグナム「オォォォ!」
士希「…チッ」
クッ!全て避けられる!反撃の隙を与えるつもりはないが、このままでは…
士希「そこ!」
ガキィン!
シグナム「クッ!」
雑賀士希はこちらの一瞬の隙を見逃さなかった。
奴は拳の一撃を繰り出した。私はそれを何とかレヴァンティンで受け止めたが…
シグナム「重い…なんて力だ」
これが雑賀士希の力か?
こんな重たい、それでいて穢れのない一撃を持つ者が、なぜ殺人鬼のような雰囲気を?
士希「あー、しんど。久々に真面目に戦うな」
シグナム「ふん。たるんでいるな。叩き直してやる」
私はさらに猛攻をしかける。雑賀士希は避けつつ、時々拳で防いでくる。
そんな状況に、私は焦り始めていた
シグナム「ふん!ハァァ!タァ!」
攻撃が届かない。押しているのは間違いなく私のはず。なのに何故…
士希「アツっ!燃える剣とかスゲェな」
何故こいつは、こんなにも余裕でいられるのだ?
シグナム「なぜ、打ってこない?」
直感した。こいつは、わざと負けようとしている?
士希「いやいや、あんな苛烈な攻めの中で、どうやって反撃すりゃいいんだよ」
シグナム「なら何故貴様は息の一つも乱さない?手を抜いているのだろう?」
士希「あぁ?別にそんなつもりは…」
シグナム「黙れ!騎士を馬鹿にして、主はやてを惑わせて…貴様は一体どういうつもりだ!」
雑賀士希は気に入らない。それは、言ってしまえばただの嫉妬だ。
主はやてを盗られたかのような錯覚。器が小さいと、自覚はあった。
本来守護騎士は、主の幸せを願わねばならない。
だが、それでも、私は主はやての隣に居座ろうとするこいつが気に入らない
士希「……悪い」
シグナム「なに?」
何故、頭を下げる?
士希「確かに、全力で戦ってはいない。
だがそれは、決してお前を馬鹿にしているからではない。
俺は、お前を傷つけたくないからだ」
シグナム「なんだと?」
士希「お前ははやての大切な家族なんだろ?お前が俺の事を嫌うのは構わない。
だが、俺は俺なりに真剣にあの子に向き合い、真剣に考えているつもりだ。
そんな子の大切なものを傷つけるような事はしない。例えそれで、死ぬ結末を迎えても」
最後に「まぁ、簡単に死ぬつもりはないがな」と雑賀士希は言った。
それが本心からの言葉なのは私でもわかる。こいつの真っ直ぐな瞳。
誰かを護る覚悟がある瞳だ。なるほど、それ故に…
シグナム「お前はそうやって、大切なものを護る為に、人を殺めた事があるのか?」
少しの間の沈黙。やがて雑賀士希は意を決したかのように重い口を開いた
士希「……あぁ、ちょっと戦に巻き込まれてな。
だが、例えそれがどんな理由でも、殺人は許されない事だ。
だから、シグナムが俺を許せないと言えば、俺は何も言えない」
……いや、私には、私達には、それを糾弾する権利などない。
我々もかつて多くの人々を殺めた。主はやてが夜天の主になってからはないが、
それでも、殺めた事実は変わらない
シグナム「お前は………!?」
バァァン!
突然、私達の周りを、逃げられないようにするかのように炎が上がった。
そして炎の中から、体格のいい男が現れた。深紅の衣服を纏い、刀を手にしている
「これはこれは、我らを封じていた者を追って来てみれば、夜天の守護騎士、烈火の将がおるではないか」
なに?
説明 | ||
こんにちは 今回は、VS 嫉妬に燃える烈火の将です でも、あっさりしています(笑) |
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シグナム、嫉妬で戦うか……(ohatiyo) | ||
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