欠陥異端者 by.IS 第五話(つなぎの話)
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真耶「落合君、引っ越しです」

 

クラス対抗戦が中止になった後日。

時間は夜の7時を指す頃に・・・確か、山田先生だった気がする・・・が来て、突如、私に引っ越しを告げられた。

 

一夏「何で、わざわざ零が移動するんですか?」

 

織斑さんが僕の後から山田先生に尋ねる。

 

真耶「え、え〜と・・・それはですね・・・ちょっと失礼します」

 

部外者に聞かれたくないようで、わざわざ寮室に入ってきた。

聞けば、フランスから男子の転入生が来るようで、生活の仕方などを織斑さんに教えることになったらしい。

常に近くにいるため、織斑さんとの同室である私が別の部屋に移り、その転校生が織斑さんと相部屋になる。

 

真耶「急で申し訳ありませんないんですけど、明日には移動してもらいます。よ、よろしいですか?」

 

疑問形で尋ねられても、私に拒否権はないと思う。とりあえず「わかりました」と答え、山田先生の安堵をして室から出ていくのを見送った。

 

一夏「それにしても、もう一人の男子か・・・賑やかになってきたな」

 

元々、私は賑やかな人間でないため、織斑さんのその発言にどう反応していいか分からない。

とりあえず、「そうですね」と相槌を打っておく。

 

一夏「じゃあさ今度、その転入生と一緒に飯食おうぜ。男子水入らずでさ」

 

男子の転入生が来ることが、よほど嬉しいのだろう。それから寝るまでの終始、ハイテンションのままい続けた織斑さんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日の昼休み。

転入生2名は一組に入ったが、既に二組全体は3人目の男子の話題で持ち切りだった・・・はずだったが、実は転入草々織斑さんが平手打ちを食らわされたらしいとの噂が出回っている。男子の方ではないので、もう一人の女子に。

 

零(何で、みんなが見てる前でそんな敵((愾|がい))心を剥き出しにしたのだろうか・・・)

 

また余計な詮索思考に陥ってしまったが、切り替える前に凰さんが急に話しかけてきた。

ちなみに、クラス対抗戦で何が起こったかは詳しく知らされず、生徒にも世間にも反政府組織の襲撃と伝えられた。

その戦闘で織斑さんは、保健室に行くぐらいの怪我したらしい・・・よくは知らないけど。

 

鈴音「ほら、あんた。食事に行くわよ」

 

零「え・・・?」

 

鈴音「何、((呆|ほう))けてるのよ? 今日も一夏達と食べるんでしょ」

 

こうやって、織斑さん以外の人に食事を誘われるのは初めてだ・・・といっても、仕事の上司から飲み会に誘われることが多々あったから、初めてというのは語弊があるかもしれない。

しかし、こういう風に誘われると自然と嬉しくなるのは何故だろうか。

 

零(私を私として見てくれている・・・ような気がする)

 

鈴音「早くしてよ、置いていくわよ」

 

私は急かされるように席を立ち、凰さんについていく・・・しかし、向かう先が食堂ではなく、何故か階段を上っていく。

・・・あっ、屋上で食べるのか?

 

鈴音「はぁ〜・・・何でさ、転入生のために・・・」

 

ブツブツと言いながらも、手元のタッパーを大事そうに持っているのは、憤りよりも織斑さんと一緒に食事を取れる楽しさが勝っているからなのだろう。

でも、ここで話しかけると憤りの火の粉を浴びそうなので、黙って聞き流すことにする。

 

鈴音「・・・よし」

 

屋上の扉の前まで来たというのに、凰さんはヘアチェックと三回も触って確認してから屋上に入った。

屋上には人工芝が敷かれ、ミニサッカーが出来るほどの広さがある。

開放的な空間が、箱庭に近いIS学園に暮らす私達にとっては清々しい気分を与えてくれそうな場所・・・かもしれない。

 

一夏「よぉ、鈴と零。これで全員、集まったな」

 

集まっていた織斑さん、篠ノ之さん、オルコットさん、そして"ブロンド貴公子"と噂される名前は・・・シャルル・デュノアだったかな?

 

シャルル「君が落合君?」

 

デュノアさんが振り返る・・・確かに、どこかの貴族みたいだ。だが、何か・・・何か、気になる。

私は相槌を打ちながらデュノアさんの右に座り、食事が始まった。

 

目の前の三人・・・つまり織斑さんをキャッチハンティングを繰り広げている篠ノ之さん、オルコットさん、凰さんの手元には、入れ物は違うが弁当を持参している。

織斑さん目当てのツールだという事が、一目瞭然である。

 

鈴音「はい、一夏。アンタの分」

 

一夏「おおぉ、酢豚だ!」

 

先手は凰さんが出てきた。

 

セシリア「コホンコホン! 一夏さん、わたくしも今朝はたまたま偶然何の因果か早く目が覚めまして、こういうものを用意してみましたの」

 

次にオルコットさんが織斑さんに詰め寄り、パケットを開ける・・・お〜、お嬢様だからといって、料理が出来ないわけではないらしい。見た目がすごく綺麗だ。

 

一夏「お、おう・・・あとでもらうよ」

 

織斑さんの声が引き気味だ。篠ノ之さんも凰さんも、うわぁって顔をしている・・・あっ、そういうオチか。←あえて、言わない。

二人とも自分の弁当を渡した・・・しかし、篠ノ之さんだけが包みすら開けておらず、膝元に鎮座している。

 

一夏「ん? どうした、箒。お腹でも痛いのか?」

 

箒「違う・・・ほら、お前のだ」

 

素っ気なく弁当の渡された織斑さんは、首を傾げながら弁当箱を開ける。

 

一夏「お〜、うまそうだ!」

 

そう言われた篠ノ之さんの頬が、ポッと赤くなる。

中身はオーソドックスにから揚げやその他もろもろが入っていた。確かに美味しそうだ。

 

シャルル「何か僕たち、同席してよかったのかな?」

 

零「っ!?」

 

シャルル「あっ、ごめん」

 

いきなり耳打ちされたため、咄嗟に飛び退いてしまった。そのせいで、場の空気が一瞬止まって私に視線が集まる。

・・・こう見つめられると、けっこう恥ずかしい。

 

零「・・・あっ、お昼ごはん買ってきます」

 

嘘ではない。学食で食べるつもりだったから、凰さんに連れ出されお昼ごはんが手元にない。

第一理由としては、あの雰囲気を壊してしまったため、その責を感じ、この場から離れたいからだ。

織斑さんの静止を無視して、滅多しない走力で屋上を出た・・・が、何故かデュノアがついてきた・・・あっ、つい呼び捨てで言ってしまった。

 

シャルル「僕もお昼ごはん、無いから」

 

本当に男なのか?と、思うぐらい華やかな笑顔を私に向ける・・・やっぱり、気になる・・・いや"似てる"。

誰にも見せようとしない部分が、この人にある。それが、どれほどの重たいものかは分からないが、絶対に触れてはならないものを感じる。

織斑さんの言う"壁"を私は感じ取った。

 

シャルル「落合君のISって、もう届いてるの?」

 

零「いえ」

 

シャルル「あ、そうなんだ・・・」

 

即答したのがいけなかったのか、デュノアさんは困った顔を浮かべて会話が途切れた。

 

シャルル「・・・あっ! 寮部屋、わざわざ変わってくれてありがとね」

 

しかし、負けじと会話を続けようとするデュノアさん。

そんな努力を私は、どう扱ってよいものかが分からず、どうしても即答で短く返してしまう。

 

シャルル「え、えーと・・・あの─────────」

 

零「無理しなくていいです」

 

シャルル「ぇっ・・・」

 

予想外な発言にデュノアさんは、その場に立ち止まり、私も数歩行ったところで立ち止まって振り向く。

 

シャルル「えっと、それはどういう意味かな?」

 

デュノアさんの纏う雰囲気が2℃下がる。私としては、ここまで相手を警戒させることを言ったつもりは無かったのだが。

 

零「・・・別に、そのままの意味です」

 

シャルル「・・・」

 

屋上では爽やかな笑顔を振りまいていたのに、今はもう犯罪者を見るような疑り深い目つきをデュノアさんがしている・・・余計な事を言ってしまったかな?

この時以降、学年別トーナメントが終了するまで、デュノアさんと会話を交わす事が無くなった。

 

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ラウラ「・・・」

 

零「・・・」

 

何故だ? 何故、引っ越した寮室にボーデヴィッヒさんがいるんだ?

荷物を持って室に来てみれば、ベットに片膝を立て、座り込んでいるボーデヴィッヒさんを見つけた。

 

ラウラ「・・・ふん」

 

こっちをしばらく見つめていたボーデヴィッヒさんは、鼻を鳴らして目を瞑る。

実は、昼休み後の時限にボーデヴィッヒさんとの絡みがあった。一組と二組の合同IS操縦訓練。

そこで、専用機持ちがそれぞれIS操縦をレクチャーするものだった。私は、出席番号の関係によりボーデヴィッヒさんのグループに入ったのだが・・・

 

ラウラ『違う』

   『そんな事も出来ないのか』

   『・・・』

 

指導というより不満としか言いようのない態度を全ての生徒に対してしていたため、グループ内はお通夜の雰囲気が漂っていた。ちなみに、私が操作した時に至っては何も言わなかった。

結局、山田先生がサポートに入ってその場は収拾がついた。

ここからは、実際に見たわけではなく根本さんからの情報・・・ボーデヴィッヒさんは、編入の挨拶中に織斑さんを引っ叩いたらしい。そして、織斑千冬先生とは過去に軍隊で教えを受けていたらしい。

※この時、あの先生が織斑さんのお姉さんだということを知った。何時ぞやの、"過去に会った事がある"というのは、織斑さんの存在が混在して勘違いしただけのようだ。姉弟だから、雰囲気も似てるし。

 

零(女子と同室になったらどうしようって悩んでいた事もあったけど、この人とは違う意味でこの先、不安になる)

 

逆にこういう人だからこそ、男子との同室が許可されたのだろう。

 

ラウラ「何だ、貴様」

 

少し、相手を注目し過ぎたせいで不快にさせてしまったようだ・・・とりあえず、謝ろう。

 

零「いえ、すみません」

 

ラウラ「ふん・・・」

 

・・・本当に、先が思いやられる・・・はぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

【一夏SIDE】

 

一夏「・・・」

 

シャルル「・・・」

 

目の前に女子がいる・・・何で俺の寮室のシャワールームに女子がいるんだ?

って、よく見ればシャルルじゃないか。なら問題は無い──────あれ? じゃあ、シャルルは女子ってことか? え? どゆこと?

 

シャルル「きゃあっ!」

 

一夏「す、すまん!!」

 

箒が同室だった時も似たような出来事があったな・・・いやいや、思い出にふけってる場合じゃない!

 

 

 

俺は先生に職員室に呼ばれ、通常より遅れて寮に戻ってきた。

その時、シャルルはシャワーを浴びていた。「確か、ボディーソープが切れてる」を思い出し、扉を開けて渡そうとしたら・・・ショッキングな出来事が起きてしまった。

 

シャルル「あ、上がったよ・・・」

 

一夏「お、おう・・・っ」

 

ベットに座って待っていると、シャルルがお風呂から出てきた。振り向けば、やっぱりそこに"女子のシャルル"がいた。

シャルルは、黙って向かい側のベット座る。学園支給のジャージ上下を着るシャルルの胸元は、女性的らしい胸の膨らみがあった・・・すると、シャルルは両腕で胸元を隠す。

 

シャルル「い、一夏のえっち・・・」

 

一夏「あ、いや、すまん・・・」

 

変な沈黙が訪れた。お互いにどこを見たらいいのか分からず、時々目線が泳ぐ。

その沈黙が数分続くと、シャルルは上目遣いで俺を見て、その沈黙を破る。

 

シャルル「・・・聞かないんだ?」

 

シャルルが言いたい事は分かる。何故、女子なのに男の真似事をしてIS学園に来たのか・・・だ。

 

一夏「別に、無理やり聞き出すつもりない。シャルルが話したいと思った時に話してくれればいい」

 

シャルル「・・・ううん。ここまで来ちゃったら事実を話さないと」

 

覚悟を決めたのか、膝の服を握りしめて絞り出すように事実を話し出した。

 

シャルル「知ってると思うけど、僕の実家『デュノア社』っていうフランス内で一番大きいIS企業なんだ。『ラファール・リヴァイヴ』を僕の実家が作っているんだよ」

 

一夏「へ〜・・・だけど、それとシャルルが男子になる事と関係があるのか?」

 

シャルル「うん。デュノア社は、確かにフランス内で一番大きなIS企業だけど、第三世代機の開発が遅れているんだ。今も完成の目途が立っていない。そのせいで、政府からの資金援助も無くなって会社は潰れる・・・そこで、男子のIS操縦者の存在を作って注目を浴びようと考えたんだ」

 

一夏「・・・つまり、シャルルは実の父親からそう命令されたって事か?」

 

シャルル「うん・・・僕、愛人の娘だから」

 

"愛人の娘"・・・よくドラマとかで出るワードだが、まさか本当にそういう立場の人がいるなんて。

俺は詳しく聞かなかったが、シャルルから「本妻に"泥棒猫の娘"呼ばわりされ、殴られた」と聞かされた時は、俺の中の何かが切れた。

 

シャルル「それにね、僕がここにいるもう一つの理由は・・・織斑一夏、落合零の接触と調査」

 

一夏「・・・」

 

本物の男子操縦者と接触し、なぜ男なのにISを操作できるのかを研究し、解明すれば一躍会社の尊厳を回復させられるって事か。

 

シャルル「酷いよね・・・友達だったのに、実は裏で─────」

 

一夏「ふざけるな」

 

シャルル「え?・・・そ、そうだよね。僕なんか───」

 

一夏「そうじゃない。娘を道具のように扱う親に、俺は腹が立ってるんだ!」

 

シャルル「一夏・・・」

 

他人の家族関係に俺が口を出すのは、違うのかもしれない。だけど、子供は親の所有物じゃない。親の命令で望まない事をやらされ、こうして目の前の少女は苦しんでいる。

 

一夏「・・・この事実がバレたって事、本国に伝わったらどうなるんだ?」

 

シャルル「たぶん、僕は国に戻されるだろうね。その後どうなるかなんて・・・考えたくもないよ」

 

伏目がちにシャルルの顔色が青ざめていくのが分かった。しかし一方では、今までの呪縛から解放される爽快感に似た雰囲気も感じた。

行くのも地獄、戻るも地獄・・・((雁字搦|がんじがら))めじゃねぇか!!

 

一夏「・・・それで良いのか?」

 

シャルル「良いも悪いもないよ。僕に選ぶ権利なんて無いから」

 

寂し気な表情が、さらに俺を苛立させた。俺は、友達ひとり守れないのか・・・。

いや、絶対に守る! 俺は・・・俺は、シャルルの父親と・・・俺と千冬姉を捨てた大人と違うんだ!

 

一夏「だったら、ここにいろ!」

 

シャルル「え?」

 

一夏「『特記事項第二十一、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする』。つまり、少なくても三年間は大丈夫だろ?」

 

シャルル「よく覚えてるね。特記事項って全部で五十五個もあるのに」

 

実は、零の助言どおりに一人の時にずっと音読していました・・・。サンキュー、零。

 

一夏「三年もあれば、何かしらの対処が見つかるはずだ・・・でも、最終的に決めるのはシャルルだ」

 

シャルル「うん・・・ありがと、一夏」

 

やっと笑ってくれた。その表情に屈託さは無くて、十五歳の女子そのものだった・・・何かドキドキしてきた。

 

一夏「・・・」

 

シャルル「・・・」

 

さっきとは違う気まずさが生まれていた。シャルルは何故か頬に赤さが差し、そんなシャルルに何て言葉をかけていいか分からない。

何か・・・何か言わないと。

 

一夏「そ、そういえばさ・・・」

 

シャルル「は、はいっ!」

 

いや、そこまで気合い込めて返答しなくても・・・

 

一夏「今日さ、零と何かあったのか?」

 

昼飯を一緒に買いに行った二人の距離感が、屋上を出ていった時よりもギスギスしていたのを俺は感じ取っていた。

 

一夏「何かあったんだなら、俺が間を取り持つぞ」

 

シャルル「う、ううん。そういうのじゃないんだ・・・大丈夫。あれは僕と落合君の問題だから」

 

「また無理しているんじゃないか」と思ったが、シャルルの目には力強さが残っていた。

 

一夏「もし、俺が出来る事があれば何でも言ってくれよ。俺はシャルルの味方だからな」

 

シャルル「っ///。うん!」

説明
今回の、自分で読んだけどつまんねぇ〜。って、書いたのは私なんですけどね。
しかし、この話があってこその次の話がある!
すみません、調子乗りました・・・次の話は早めに出します。
ご容赦を!!
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