欠陥異端者 by.IS 第六話(接触)
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エミリア「ねぇねぇ、ちょっと聞いていい?」

 

後ろの席から話しかけてきたのは、イタリア出身のエミリアさん。

 

エミリア「実はさ、今度の学年別トーナメントに優勝すると、織斑君と付き合えるって話、本当?」

 

零「・・・さぁ」

 

エミリア「ん〜、やっぱりデマなのかな・・・ねぇー! 落合君も知らないってー!」

 

席を立って、女子の密集地帯に歩いて行った。

クラス対抗戦以来、何故かこうやって((他愛|たわい))のない会話を持って来られる事が多くなった。時々、食事にも誘われるようになって、前々から遠ざけていた複数人での食事が当たり前になり始めていた・・・時々、断っているが。

今日も、布仏さんから誘われている・・・少し聞きたい事もあるから、断りはしなかった。

 

本音「れいち〜ん! ごはん、行こう〜!」

 

 

 

 

 

 

食堂の一卓に私と布仏さん、布仏さんの友人である谷本さんに夜竹さんの四人が座る。四名卓なのだが、私の食事が三分一を占領していた。

 

谷本「結構、食べるんですね。見かけはほっそりしてるのに」

 

私は昔、かなり体が弱かった。孤児院育ちで三食はキッチリ出るが、一日中何も食べない事が多くあり、栄養失調で倒れた事もザラにあった。

小学6年生になってから、食べ物を無理やりにお腹に入れる事をやり始めて、そのおかげで今は倒れる事が稀になったため、今でも食事量は腹10分目以上に設定している。

そんな食事を続けて、メタボ体型にならないのは、おそらく体質だろう。

 

夜竹「あっ、そういえば落合君。あの噂、知ってる?」

 

零「・・・優勝すれば、付き合えるって話ですか?」

 

二組全体・・・いや、もしかしたら学校全体がその話題で持ち切りなのではないのだろうか。

食堂に来るまで、その話をしていた女子を多数、学年問わずに見かけたほどだから。

 

夜竹「知ってるって事は、事実なの!?」

 

顔が近い・・・どうやら、この噂は彼女達にとって重要なものらしい。

確かに、織斑さんは今時めずらしく男としてのプライドを持っている人物だ。男卑女尊の世の中で、ISを操縦できる男として登場し、常識をひっくり返したほど・・・あっ、私もそうか。

 

零「事実かどうかは、僕にも分からないです」

 

夜竹「な〜んだ」

 

キラキラしていた目が失せ、しょんぼりする夜竹さん。隣の谷本さんも残念そうにため息をついた。

だいいち、この噂はどこから出回ったのだろう・・・って、私には関係ないか。

 

本音「でも、不思議だよね〜。付き合えるのオリムーだけで、れいちんは入ってないなんて〜」

 

三人「・・・はい?」

 

何をぶっちゃけているんだ、この人・・・そんな事を言うと─────

 

谷本「え、何? 本音は、落合君と付き合いたいの?」

 

本音「え・・・っ/// そ、そそそ、そういうんじゃないよ〜! 不公平と思っただけだよ〜///」

 

夜竹「そういえば、落合君の恋愛事情も聞きたいなぁ」

 

こういう展開が一番困る。

小学校時代、一度だけこういう展開を経験したことがあった。その時、学年一の人気を誇っていた女子が、いつも一人でいる私に話しかけた事がキッカケで、ワァーワァーキャーキャーという事態になった。

別に、私はそれはそれで気にならなかったし、その女子もキャーキャー言われるだけなら大丈夫だった。

しかし、私に対する嫉妬によるいたずらはエスカレートし、その女子はあるキッカケで名前を弄られ、これらの要素が長く纏わりついた。名前を弄られるのが一番、嫌だったのだろう。男子相手に殴り合いの喧嘩もしたほどだ。

だが結局、その女子は転校した。それは嫌がらせが原因ではない・・・私のせいで"精神的に病んで"、そのまま違う学校に行ったんだ。"俺の身勝手な───"

 

本音「れいちん? 顔が怖いよ〜」

 

零「ぇ・・・すみません」

 

恋愛事情とずれたが、久々に昔の事を思い出して、無意識にしかめっ面になっていたらしい・・・谷本さんと夜竹さんの表情に警戒の色が見えるところから、本当に怖い顔をしていたのだろう。

その後、二人は席を立った・・・それが、無駄な気遣いによって起きた行動なのか、私との気まずさを感じた逃走なのかは定かではない。

 

零「・・・少し聞いてもいいですか?」

 

本音「ほぇ///!? な、何かな〜?」

 

何故、顔を赤くするんだ? まさか、さっきの引きずって────────いやいや、そんな確証のないことを考えるものじゃない。

 

零「簪お嬢様の事です」

 

そう言うと、布仏さんの頬から赤みが消え、稀に見ない真面目な顔つきになる。

学園に来て二か月が過ぎて、一切、簪お嬢様と絡みが無かった訳ではない。クラス対抗戦の時の事も((然|しか))り、その他の場面でも簪お嬢様を見かけた事があった。

四組の中窓から見た時、ISの実技訓練で二組・四組が合同になった時・・・その全ての印象を総合すると・・・

 

零「初めて会った時は、人見知りな印象はありましたが、あそこまで周囲を遠ざける人ではなかったと思うんです。まるで、自分のプライドを守っているような・・・」

 

本音「・・・」

 

零「それと、気になる事が一つ・・・『白式』と簪お嬢様が不機嫌になった事と関係があるんですか?」

 

本音「・・・」

 

食堂は他の生徒で賑やかなのに、私の耳には沈黙しか流れてこなかった・・・。

十数秒間、俯き気味の布仏さんだったが、急にバッと顔を上げたその表情は──────

 

本音「わかんな〜〜い!」

 

零「・・・は?」

 

のほほんとした表情に戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零(ここだ・・・)

 

私は今、布仏さんから教えてもらった"生徒会室"に来た。

そこに行けば、私の言った質問の答えを教えてくれるらしい・・・大方、そこに誰がいるのか分かるが。

更識((刀菜|かたな))・・・会うのは初めてだが、私はご主人から、彼女も私の事を知っている。そして、その人の従者である布仏虚さんも。

 

零「失礼します」

 

?「どうぞ〜」

 

引き戸を引き、室内に入ると─────

 

?「きゃあああぁ!!」

 

零「おわぁ!?」

 

水色髪の女生徒が何故かお着換え中だった。私はすぐに廊下に引き返し、引き戸をドンと閉めた。

我ながら、情けない悲鳴を出してしまった。というか、全然「どうぞ〜」じゃないじゃないかっ!

 

?「もう入ってきていいわよ〜」

 

零「・・・失礼しま─────って、まだ着替え終わってないじゃないですかっ!」

 

何で、私はこんな乱されているのだろうか・・・。

 

?「ククククッ・・・!」

 

笑われている・・・あ、アイツ────────いや、落ち着け。ここで気持ちだけで行動したら、昔の経験が無駄になってしまう。ここは冷静に対処を。

 

零「・・・失礼します」

 

三度目の正直なのか、あの女生徒は制服姿で私を迎えてくれた。立派な椅子に腰掛け、その背もたれに背を預けている人こそ、更識刀菜お嬢様。現IS学園の生徒会長。

 

楯無「初めまして、落合君。今、私は楯無って名乗ってるから、そう呼んで頂戴」

 

虚「ごめんなさい。お嬢様ったら、生粋の人たらしのもので」

 

紅茶を用意し、椅子を引いて誘導してくれようとしているのが、布仏虚さん・・・妹と全然、印象が違うところが逆に姉妹らしい。

 

楯無「虚ちゃん酷いな〜・・・でも、思ってた以上に面白い反応だったわ。もっと冷たく突け放すと思ってたのに」

 

そうですね。そうすれば良かったって今、後悔しています・・・。

 

楯無「で、簪ちゃんの事を聞きたいんだっけ?・・・でも、教える前にこっちから聞いてもいい?」

 

長机に肘をつけて両手を顔の前に持ってくる。丁度、私と真正面に対座する形になっているため、((博打|ばくち))をしている気がした。

相手の眼差しは真剣そのもので、目が離せない。その妙な緊張感で、ゴクリと喉を鳴らす────

 

楯無「簪ちゃんの事・・・好きなの?」

 

零「そのような感情はありません」

 

今回は冷静に切り捨てる事が出来た。

 

楯無「ず、ズバッていくのね・・・さっきとは大違い」←含み笑いを込めている

 

零「さっきのは・・・忘れて下さい」

 

思い出すと、自分で自分を笑いそうになる。

なにより、こういう人にあの態度を見られたら、何か脅しの材料にされそうな・・・気がする。

 

楯無「じゃあ、君の質問に答えるわね」

 

楯無お嬢様の口から出されたのは、だいたいが私自身、予想通りのものだった。

簪お嬢様の専用機『打鉄弐型』の製造を行っていた倉持技研は、織斑さんの登場により、七割完成のままの専用機を放置されてしまった。しかし、今は自分で開発をしているらしい。

そして、私が感じていた簪お嬢様の矜持についてはというと・・・

 

楯無「それは姉妹の問題なの」

 

なら、ここは突っ込まない方がいいのだろう──────

 

楯無「実はね、簪ちゃんは私の事──────」

 

零「話すのかい・・・」

 

大声で突っ込みたいところだったが、その気持ちを押し殺した声で突っ込む。

 

楯無「あら? 聞きたくないの? お姉さんのヒ・ミ・ツ♪」

 

ウィンクするその仕草に不覚にもドキッとしてしまった。

というか、私はただの契約従事者なのに、何でここまでオープンなのか・・・それを聞いてみると、

 

楯無「それはまぁ、信用できるからじゃない?」

 

他人事みたいな言い方なのは気にしないとして、チラッと布仏先輩の方を見たらコクッと頷く。少しこっぱずかしいが、信頼を置かれているのは事実のようだ。でも、私が"お嬢様"と呼ぶのも語弊がある気がしていたのも事実だが、今は気にしないでおこう。

予想以上に情報を手に入った。ここに長居する必要はないと思い、席を立つ。

 

楯無「あっ、帰る前にこれ」

 

私が立った同時にお嬢様も立ち、こちらに歩み寄ってきた。つい、体に力が入る。

 

楯無「警戒しなくても何もしないから安心しなさい。・・・はい、どうぞ。君のIS」

 

あと一歩で密着する辺りまで歩み寄ったお嬢様は、上着の内ポケットから"黄色のペンダント"が私の首にかけられた。

ひし形の模型の左右に、羽のようなウィングが装飾されたペンダント・・・ラファール型か?

 

楯無「私のコネで早めに届けてもらったの・・・でも、それ"問題児"だから頑張ってね」

 

トンッと人差し指でペンダントを叩くと二歩、三歩と私から離れる。

"問題児"と言った意味を聞く前に、にこやかな表情を浮かべてお嬢様が言った。

 

楯無「うん! 似合ってるぞ♪」

 

零[ドキッ!?]

 

不覚にも一瞬だけ、ときめいて、しまいました・・・。

 

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【一夏SIDE】

 

放課後。俺は、零がいるはずの二組を訪れた。

 

鈴音「あっ、一夏。どうしたのよ、わざわざ来て」

 

教室を出た鈴と遭遇した。丁度よかったので、零が教室にいるかどうかを聞いてみたところ・・・

 

鈴音「何だ、そういう事・・・」

 

ん? どうして表情が曇るんだ?

 

鈴音「落合ならいないわよ。HRが終わった途端、教室から出ていったから。寮に戻ってるんじゃない?」

 

一夏「そうか・・・鈴はこれから帰るのか?」

 

鈴音「これからアリーナよ。い、一夏も暇なら・・・その、また教えてあげてもいいけど」

 

一夏「いや、シャルルに教えてもらえるから」

 

モジモジしていた鈴が、急に今にでも襲い掛かってきそうな表情に変わった。

いや、だって、シャルルの教え方の方が分かりやすいんだよ・・・。そのまま睨まれたまま、鈴はアリーナへ歩いて行った。

 

一夏「何だよ、アイツ・・・とりあえず、寮に行ってみるか」

 

何故、俺が零に会いたがっているか・・・それは、シャルルが女子だと分かった日までさかのぼる。

俺とシャルルは今後の過ごし方について、話し合った。着替えの時やお風呂の時・・・どれが不自然なく、疑われないかを検討していた・・・その時、突然、シャルルが

 

シャルル「でも、落合君にはバレそう・・・」

 

この発言が、始まりだった。

なら直接確かめてみようと思い立った俺は、こうして零を探している。シャルルに許可を取ったが、零になら本当の事を話していい事になっている。零は信頼できるし、心強い味方になる・・・気がする。

俺は一度、一組に戻って待機していたシャルルを連れて、一年寮に向かった。

 

一夏「そういえば、零の同居人ってあの編入生だったな」

 

編入初日から頬を叩いてきたラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツの軍で千冬姉から指導を受けていた教え子。

かつて、ブリュンヒルデと言われた千冬姉はドイツに行き、IS訓練の教官を務めたことがある。

"ブリュンヒルデ"・・・モンドグロッソ大会の優勝者につけられる敬称。つまり、世界一最強のIS操縦者という事だ。千冬姉は第一回大会の優勝者なんだ。

 

ラウラ『貴様は、教官の唯一の汚点だ』

 

罵倒の言葉だが、確かに俺は千冬姉のX2を邪魔をした。

俺は、決勝戦が始まる前に何者かに誘拐された。その助けに千冬姉が来てくれたんだ・・・試合を棄権してまで。

ちなみに、俺の場所を情報提供してくれたのが、ドイツの軍だったため、その恩を返しに千冬姉は教官としてドイツに行ったんだ。

 

シャルル「ボーデヴィッヒさんなら、アリーナにいるよ」

 

まるで見てきたように言うシャルル。

種明かしとしては、ISの原動力であるISコアに"コア・ネットワーク"というものがあり、ISの位置を確認できる。

ちなみに、シャルルの専用機は『ラファール・リヴァイヴ・カスタムU』、ボーデヴィッヒは『シュヴァルツェア・レーゲン』と言う。

 

一夏「なら、好都合か。確か、零の部屋は・・・あっ、ここだ」

 

本音「あ〜、オリムーとでゅっちだ〜!」

 

シャルル「でゅ、でゅっち・・・って僕の事?」

 

ノックしかけた時に、もう既に狐パジャマ姿ののほほんさが通りかかった。

 

本音「れいちんならいないよ〜。あと、どこにいるのかも教えないよ〜」

 

こちらが問いかける前に先手を打ってきた。いつもはのほほんとしているのに、時々、鋭い発言をするよな。

 

シャルル「あの、何で教えてくれないのかな?」

 

本音「秘密だからだよ〜。しーくれっと なんだよ〜!」

 

あと鋭さだけじゃなく、頑固さも一級品だ。

俺たちは結局、零と会えなかった。しかし、時間が余ったのでシャルルから手ほどきを受ける事になり、アリーナに向かった。

 

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セシリア・鈴音「「あっ」」

 

零「あっ」

 

せっかくなので、専用機の操作を試してみようと思い、アリーナに来てみれば、一夏グループに属するオルコットさんと凰さんが戦闘を行っていた。

他にも、生徒達が量産型のISを使って運転をしていたが、二人はフィールドの中央を独占している。

 

鈴音「珍しいわね、あんたがここに来るなんて・・・ん? その首に引っさげてるのって」

 

セシリア「IS・・・ですわね。ISスーツも来ているところを見ると、それは専用機?」

 

零「まぁ・・・はい」

 

口を濁した言い方をした理由は、後に語る。

 

鈴音「じゃ、ここは専用機持ちの先輩として一揉みしてあげましょうか」

 

いや、何かムカつく後輩をしばき上げるようにしか聞こえないんだけど・・・

 

セシリア「鈴さん、その言い方はお下品です。ここはわたくしが・・・さぁ落合さん、専用機持ちの先輩の恐ろしさを、その身に叩き込んであげますわ!」

 

それも意味合いは一緒だと思うのだが・・・って、何でこういう風に絡まれるのだろうか。

 

セシリア(落合さんの戦闘力は未知数です。今の内に、相手の手の内を知っておけば優勝に近づく・・・そうすれば、一夏さんと──────)

 

鈴音(いや〜、本当はセシリアとの優劣をはっきりさせようと思ったけど、ここは未知のルーキーの実力を図るのが得策・・・優勝のために!)

 

つまり、己の恋を成就させるための生贄として、落合零という人物を捉えたという事。

それを知らない私は困惑し、オルコットさんの妄想と、凰さんの意地がオーラとして浮かび上がる

 

[ドンッ!]

 

三人「ッ!」

 

──────そんな空間を一発の弾丸が吹き飛ばした。

咄嗟に三人とも避けたため、丁度、三人の対角線の交点場所に着弾し砂が舞う。

 

鈴音「あれは・・・」

 

セシリア「『シュヴァルツェア・レーゲン』・・・」

 

砲弾が飛んできた方に、私達三人だけでなく、フィールドにいた全ての生徒が注目すると、そこには右肩に大きなキャノンを背負った黒いISが、私達をロックして立っていた。

 

零(・・・ラウラ・ボーデヴィッヒ)

 

ラウラ「・・・」

説明
六話まで来ましたが、ようやく専用機とヒロインに関しての意見がまとまりました。
ここから、オリジナリティーをふんだんに出せるよう尽力してまいります。
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