武士の花道 |
説明 | ||
山岳生まれの二人にとって「海」とは馴染みのない世界だった。二人が海を目にするのは、これでようやく三度め。一度めは新婚時代の15歳のとき、二度目は初子に恵まれた25歳のとき、そして三度めは男が戦地に旅立つ35歳の今日―― ともに将来を誓って20年、かつて若かった二人ももう35歳だ。もし男が戦地で五年すごせば40歳――そして、40というその年齢の重みは、男と女ではあまりにも違う。 だが、女はそんな老いの不安などお首にも出さず、意気軒昂戦場へ旅立つ夫を晴やかに見送る。なんとなれば村一番の勇者の妻である彼女にとって、男の出陣という晴れ舞台を飾るべきは女の涙ならぬ笑顔なりという事実など、あまりにもわかりきったことだからだ。 もし女が願うことがひとつだけあるとすれば、それは自分の女としての最後の姿を愛する男の目に焼き付けてほしいという、ただそれだけだ。だから女は、花嫁時代の衣装にその身を包み、生娘時代そのままのあどけない笑みをその顔に咲かせ、少女時代に幼なじみの少年と戯れにそうしたように、千紫万紅の野の花を夏空めがけて思いっきり放り投げる。 女が男に捧げる想い――それは凱旋への前祝いである。 ※Raptさま主催『第四回お絵かき企画』参加絵です。4月19日(土) 14時から発表予定ですので、興味がおありの方はぜひご来場ください。 http://com.nicovideo.jp/community/co1551649 |
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