【恋姫二次創作】死神の毒 一時の平和
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一刀私室。

 

そこでは一刀が筆を持ち、装が書いた木簡の文を写していた。

 

董卓連合の目的は無事達成され、自領に分かれていった各陣営。

 

そこでは久しぶりな平和な時を過ごしていた。

 

曹操軍は周囲を警戒し、孫策軍は袁術を叩き孫家の復興という企みを腹に抱え、袁紹軍はただただ領地を増やしたいが為に兵力を増強していた。

 

何もしていないと言う陣営は精々劉備陣営のみ。

 

文官である雛里の離脱により、劉備陣営の仲はギクシャクしており、能天気な劉備であっても何処と無く本調子ではなかった。

 

普段ならば一刀が何か一言を言い、全体の雰囲気を良くするのだが、文字さえ分からない一刀は装の指導を受けざるを得なかった。

 

それでも本心はもっとみんなに明るくなって欲しい、と願う一刀の止まった手を注意する装。

 

装「ほら、そこ間違ってますよ」

 

何時ものように平常心で言う装の姿が、一刀にとっては不思議な物に見える。

 

ボケーッと虚空を見ていた一刀は、装の言葉を聞き、質問してみた。

 

一刀「なぁ、ソウ」

 

装「はい、どうしました?後そこ間違ってますよ」

 

二度目の指摘を軽く受け流し、今の状態では確実に頭に入ってこないと言い訳をしつつ、装を見た。

 

一刀「雛里についてだけどさ……」

 

ゆっくりと筆を下ろし、口を開いた一刀を見た装は溜息を吐く。

 

装「はぁ……それは昨日合わせて10回目の質問ですよ」

 

一刀「え、そんなに言ってたっけ?」

 

装「その台詞は5回目ですねぇ」

 

頭を片手で軽く抑え、やれやれと聞こえるように言う装。

 

一刀「で、でもさ……やっぱり、心配じゃないか」

 

一刀は机の上にある木簡を見る。

 

自分の書いた下手な字が、まるで今の自分のグチャグチャな心境のようにも見えた。

 

装「何が心配なんです。文官が減ってしまったこれからの劉備軍の事ですかねぇ?」

 

一刀「そんな事じゃない!!」

 

思わず叫んでしまう。

 

机に両手を叩きつけ、立ち上がる様を見ても何も動じない装。

 

装の心情は一刀を哀れんでいるのか、それとも嘲笑っているのか。

 

そんな無表情に、一刀は冷や水をかけられた様に冷静になった。

 

一刀「ご、ごめん。でも、心配なんだ」

 

装の顔を見ながらゆっくり椅子に座ると、冷静に喋りだす。

 

一刀「何が心配かとははっきり言えないけど、雛里に対して無意識のうちにそんな状況に追い込んでしまった、そしてそれを分かれなかった自分が……。また誰か居なくなってしまうんではないかって……」

 

強く握られた一刀の拳には、一刀の強い想いが篭っていた。

 

仲間である雛里に対しそんな扱いをし悲しませてしまった、という想いが。

 

装はその一刀の顔を無表情のままに見て、何かを思い立った。

 

装「今日は此処までにしましょう。詰め込みすぎてもあまり良い事はありませんからねぇ」

 

立ち上がり木簡を片付ける。

 

筆を取り上げ、まるで何も無かったかのように机を綺麗に整頓し木簡を運んでいく。

 

ひょこひょこ揺れる装の髪はまるで笑っているかのように、一刀の心に重く圧し掛かった。

 

一通り片付け終わった装は扉の前で一刀に一礼し、一刀に背を向け部屋を出て行く。

 

その背中はまるで雛里が斥候に行く時の様にも見えた。

 

一刀の眼には悲しく、装の目ならば雛里が考えていたように嬉々として見えていただろう。

 

 

 

 

 

 

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愛紗「もう一度、言ってみてくだされ」

 

劉備陣営の核となる武将達は全員大広間に集っていた。

 

劉備が上座に座り、その両脇に並ぶように各々が座る。

 

そして下座には装。

 

その左隣に白髪の紳士、右隣に拳より一回り大きい程の水晶を両手で持つ艶のある黒髪の凛とした女性。

 

そこまではそれほど異変は無いが、その大広間は殺気が蔓延していた。

 

正しく言うならば、武のできる者の威圧と、文の者の不満気な視線。

 

装「何度でも言いましょう。この二人を『雛里の代わりに』文官として仲間に加えたいと言っているのですねぇ」

 

装達三人は飄々としては居るものの、どこか威厳があり武官では出来ないであろう落ち着きを見せていた。

 

星「流石にソウ殿であっても、雛里を愚弄するなら許すわけにはいきませんぞ」

 

何時ものおちゃらけた雰囲気は無く、ただただ真剣に装と二人を見る将達。

 

上座の劉備はオロオロし、その脇の一刀もどうして良いか分からず、キョロキョロしていた。

 

しかし、それ以外の物は全員真剣。

 

自分のせいで居なくなってしまったと気落ちしていた鈴々は、雛里の代わりという言葉に義兄弟である装を睨む。

 

朱里も自分の親友が黙って出て行っていき落ち込んでいた時に、自分の師から放たれた弟子に対し辛辣な言葉。

 

一触即発の空気の中、装は眼を開き言う。

 

その声は地面から湧き出すかのように重く、響く声だった。

 

装「愚弄しているのは貴方達でしょう」

 

装はハキハキと、次の語を並べる。

 

装「雛里の事を何時までも引きずり、勉学も兵の調練も財政も警邏も!!貴方達は最近腑抜けて、行っているでしょうが!!!

 

貴方達の誰か一人が気付いていたら?

 

過去の話をして、今を疎かにするなど、それこそ雛里に対する愚弄であろう!!!

 

反省しただけで何もしないなど、そこらへんの子供よりもなお性質が悪い!!!

 

恥を知れ!!!!」

 

初めて聞く装の怒鳴り声に各々は目を丸くし、その言葉を胸に抱える。

 

確かに雛里の離脱を引きずり、何事も中途半端になっていた。

 

割り振られた仕事も、割り振りも、どれもこれも中途半端。

 

この大陸の一つの陣営として、此処まで腐っていた陣営は他にはない。

 

装「そして、何よりも絆を大切にしている貴方達が、この事に気付けないその愚鈍さを!!!

 

今まで背負って来た命の重さを!!!

 

なぜ理解できない!!!!

 

僕の教えはそんな事も理解できぬ者に教えたつもりは毛頭ない!!!

 

ただただ一時の平和に胡坐をかき、精神が沈むだけで、何も進展してはいないではないか!!!」

 

装の声にゆっくりと自分の行動を思い返す面々。

 

確かにその通りだと考える者は次第に、心の中で雛里に対し謝罪した。

 

その光景を見ている白髪の男、安康はただただ笑いを堪えるのが厳しく、もう一方の島から着たばかりの凛とした女性、反正は劉備陣営の扱いの容易さに呆れ、装の嘘八百の舌にも呆れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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こうして装の部下である安康、反正は劉備陣営の面子となり、表向きは劉備を支える者となった。

 

劉備軍の面々は装の言葉にやる気を出し、仕事を全うした。

 

劉備は空回りし、仕事を増やし、一刀は反正を無意識に口説くが「装様の部下なので」と断られた。

 

安康は朱里や鈴々にお菓子を渡し、優しいオジサンと定着した。

 

一見平和に見えた大陸は、物語は、一気に堕ちていく。

 

怨みを武器に立ち上がった五人によって。

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
どんどんと加速する物語。

どんどんと加速していく疲労!!
4月ってやっぱり何か始まる時期だから忙しいよね。
クレヨンしんちゃん(映画)見に行きたーい!!
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コメント
↓いやいや今回も良き表現だと思ってますよ、実にらしいと言いますかどん底も挫折も味わわず来てますからダメージが良く見て取れました、総評すると…名もなき部下(not仲間)「こいつ等(宗教家達)駄目じゃん」という感じですかね?。(禁玉⇒金球)
金球さん まずトップが仲間を大切にしすぎていますからね。ストッパーのはわわも今回は相方を失って不調ですし。まぁ、恋姫劉備らしさは出ているのではないかと自画自賛してみたり・・・(ぺぺぺ)
たった一人の人間がそこまで大事かね、親友、頭脳、天才、仲間w呼び名は様々あれど組織に於いてたかだか一人の人間の為に政を疎かにするとは…他の配下にしてみれば依怙贔屓格差にも映ろうか、というか穴埋めを一顧だにしないとか無能なのか。(禁玉⇒金球)
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