一刀「わかり易く教えてやるよ、襲

まず一つ目は、単純に『【瞬考】をされる前にお前に一撃を入れること』だ」

襲「なる程…………確かにそれなら俺に一撃を入れる事は可能だ

だが、その方法には無理があんじゃねぇか？」

一刀「襲の言う通り、これは作戦を無しに只我武者羅に突っ込むって感じだからね

命をなげるような物だ、あまりお勧めはしない」

一刀は一人腕を組みながら、目を閉じて頷いた

明命「更にそれにはとてつもない速度で接近しなければなりません

思春殿や雪蓮様でないと………」

明命は首を傾げながら言った

一刀「そうだな、明命の言う通りだ

そこで二つ目……………二つ目は『作戦を複数練っておくこと』だ」

襲「複数？」

襲は頭を傾げた

冥琳「なる程………理に適っている

いくら作戦を考えたところで結局行動に移すのは一握り………最悪一つだけとなる」

冥琳が説明したところで斗詩が手を挙げた

斗詩「ですけどそれだと確率の問題となりませんか？

運悪くその行動に移した作戦を読まれてしまったら………」

猪々子「そうだよアニキ

そんなんじゃあっという間に返り討ちだぜ？」

猪々子も苦い顔をする

華琳「それだと『ただ運が良く勝った』ってことにしかならないわ」

華琳もこの作戦には同意しない

あくまでここにいる皆は実力で勝ちたいのだ

一刀「皆の言う事は最もだ

そこで俺が行動に移したのは最後の三つ目だよ」

鈴々「何なのだ!?お兄ちゃん!!」

季衣「教えてよ兄ちゃん!!」

鈴々や季衣などの武将は一刀に聞く

一刀「勿論教えるよ

三つ目は………………」

一刀「『襲の頭の中に余計な事を流し込む』事だよ」

鈴々「にゃあ？余計な事？」

季衣「どういう意味？兄ちゃん……」

猪々子「アタイ、アニキの言った事が分かんないよ」

鈴々や季衣、猪々子などの武将は目を白黒させていた

朱里「余計な事……………？」

穏「ふむぅ………どういう意味ですか?？」

冥琳を筆頭に他の軍師達もよく分かっていないようだ

一刀「平たく言えば『違う事を考える』って事だな」

秋蘭「違う事？」

愛紗「ご主人様、それ少々無茶があります

我々が一騎当千の武人とはいえ、戦闘中に違う事を考えるなど我々の命に関わります」

紫苑「そうですご主人様

私生活でならまだしも、流石に戦闘中では危険が…………」

他の武人も次々と首を横に振る

だが………………

襲「…………………」

襲は冷や汗をかきながら黙っていた

そして一刀が『瞬考』の核心に触れた

一刀「襲…………お前は恐らく、自分の能力である『瞬考』を扱いきれてないんじゃないか？」

襲「っ!!!な、何を根拠に…………」

愛紗「襲………？」

明らかに落ち着きを無くし、挙動不審になった襲を見た愛紗達はまさかと思っていた

一刀「その挙動不審さ………やっぱりな…………」

襲「っ!!!そ、そんな訳ねぇだろうが!!

俺は『瞬考』を操る襲!!!『過激派の曲者』と言われた襲様だぞ!!?」

襲はかなり焦っていた

一刀「よく聞いてくれ皆…………

襲は自分の能力である『瞬考』を完全に使い切れてないんだ」

一刀のカミングアウトに皆は

春蘭「な、何だと!?」

音々音「『瞬考』を……」

祭「扱いきれてないじゃと？」

あまりの事実に絶句していた

襲「くっ!!てめぇ余計な事を言ってんじゃねぇ!!!」

ｼｭﾝｯ!!

襲「口を閉じやがれ!!!」

ﾌｫﾝ!!

一刀「よっと！」

ｼｭﾝｯ!!

襲は『空走』をして一刀に殴り掛かったが、一刀も『空走』をしていとも簡単に躱した

襲「っ!!?クソッタレが!!!」

一刀「どうやら『瞬考』はかなりシビア……………扱いが難しい代物らしいな

それじゃなかったら俺が考えた事をお前の意思で弾き、必要な情報だけを読み取れる事ができた筈だ」

襲「くっ……………!!?」

宝鈴「襲……………」

宝鈴は苦虫を噛み潰したような表情をして呟いた

一刀「お前は『瞬考』に操られてるんだ

お前は操ってなんかいない」

襲「くっ!!?こんの……………」

一刀「まだお前の『瞬考』は未完全なんだ

だから必要のない情報も無意味に全て受信してしまう

戦闘中に何にも関係ない事を考える事は死に繋がる……………

だがそれは普通の戦闘の時……襲にはこの方法が一番手っ取り早い方法なんだ」

桔梗「な、何と……………」

皆呆然としていた

当然だろう

命を落とすかもしれない戦闘で、全くどうでもいい事を考えると目の前の強敵を倒す事ができるだから

蓮華「例えばどういった事を考えればいいの？」

蓮華は一刀に聞いた

一刀「ホントにどうでもいいことだよ

今日は何しようかなぁ……とか、今日は誰と鍛錬しようかなぁとか色々なこと」

恋「…………ご飯とか……？」

恋が一刀に質問した

一刀「そう、それだけでもいいんだ

…………さて、種明かしも済んだところで………」

襲「っ!!くっ!!」

一刀はニヤリと笑い襲の方へ振り向いた

その笑みを見た襲は思わずたじろいだ

一刀「終わりにしようぜ…………襲」

襲「くっ!!俺は認めねぇ!!!能力を扱いきれてないなんて事実なんか絶対に認めねぇっ!!!」

ｺﾞｵｯｯ!!

襲は『龍走』をして我武者羅に突っ込んできた

一刀「現実逃避をすると前が見えなくなるぞ？」

襲「ほざくなーーー!!!」

襲は怒り狂いながら拳を振り上げた

襲「俺には無敵の『瞬考』があるんだ!!!てめぇ何かに…………」

ｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｯ!!

襲「っ!!!ぐ、ぐあっ!!!ち、ちくしょう!!!」

襲が『瞬考』を発動した瞬間、一刀が雑念を大量に送り込んだ為、襲の頭の中にはまた激痛が走っていた

そのせいで『龍走』が解除されてしまった

一刀「能力が使えないお前じゃ左慈にすら勝てない

おっと…………左慈に失礼だったな」

一刀は左慈を見ながら言った

左慈「けっ!!言うようになりやがって………」

左慈は苦笑いをしながら腕を組んでいた

一刀「新技試させてもらうぜ!!」

そう言うと一刀は左手を前に出し

ｷﾞｭｫｫ！

左掌に気を送り始めた

すると…………

ｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｯ!!

小蓮「えっ？」

宝鈴「あれは……………」

襲「『闇行』………だと!?」

一刀は左掌に手が通る程の小さな『闇行』を作り出した

一刀「『闇拳(やみけん)』………いくぞ!!」

一刀が掛け声を掛けた瞬間

ｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｯ!!

襲「ん!?『闇行』？」

襲の目の前に一刀が出現させた極小の『闇行』が現れた

襲「何するつもり…………」

ｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｻﾞｯ!!

襲「ぐっ!!?」

襲は一刀の考えを『瞬考』でさぐろうとするも三度激痛に頭を抱える

一刀「『闇拳』!!」

ﾌｫﾝ!!

一刀は右拳を自ら作り出した『闇行』に手を突っ込んだ

一刀の右拳が『闇行』に完全に取り込まれた瞬間

ﾌｫﾝ!!

襲「なっ!?」

ﾊﾞｷｯ!!

襲「ぐはっ!!?」

襲の目の前に現れていた『闇行』から一刀の右拳が現れ、襲を殴りつけた

宝鈴「な、なに!?」

于吉「なんと………」

左慈「器用な野郎だ

二つの『闇行』を駆使して空間を超越しやがった」

雪蓮「あんな攻撃………どんな遠距離にいても当たっちゃうじゃないの？」

雪蓮は目を輝かせながら言った

貂蝉「確かに『闇行』なら何処でも攻撃する事は可能だわん

でもぉ、『闇行』をあそこまで自在にできるなんてぇ

お師匠様ん、ご主人様をどこまで強くしたのよん？」

卑弥呼「ガッハッハッハっ!!最早ご主人様を倒せるのは晩禍の小僧だけかもしれんのぅ

いや、あの小僧でも難しいであろうな」

卑弥呼は胸を張って言った

一刀「はああぁぁぁ…………」

ｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｽﾞｯ!!

襲「くっ…………ん!?」

一刀は気を送り出し、襲の廻りと自分の目の前に大量の極小の『闇行』を出現させた

一刀「『闇拳・袋叩き(やみけん・ふくろだたき)』!!!」

ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!

ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!

ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!ﾌｫﾝ!!

一刀は目にも止まらない速さで『闇行』に拳を入れ始めた

ﾄﾞｶｶｶｶｶｯ!!

襲「ぐっ!!?ぐああぁぁぁっ!!!!」

一刀の拳は『闇行』により襲へ伝わり雨のように襲の体に直撃していく

鈴々「お兄ちゃん凄いのだ!!!」

風「お兄さん強いです?！」

白蓮「勝てる!!これなら勝てるぞ!!」

誰もが希望を持ち始めていた

襲「ぐっ!!いい加減にしやがれ!!!」

ﾊﾞﾝｯ!!

一刀「おっと！………今のは『気衝破』か………」

襲は『気衝破』を起こし一刀の攻撃を強制終了させた

そして顔を真っ赤にさせて上空高くへ飛び上がった

襲「完全に頭にきたぞ北郷!!!!

もう構うもんか!!!死ぬ一歩寸前まで痛みつけてやる!!!!覚悟しやがれーーー!!!」

ｷﾞｭｫｫｯ!!

襲は血だらけのまま気を最大限まで溜め始めた

一刀「………………ちょっと危ないな

皆、少し離れるんだ………」

星「危ないとは？」

左慈「恐らく襲は北郷を消さない程度の強烈な攻撃を放つ気だ

ここら一帯は最悪穴ボコになるぞ？」

卑弥呼「早く避難するのじゃ」

愛紗「わ、分かりました」

愛紗達は急いで一刀の側を離れた

襲「はああぁぁぁっ!!!」

ｷﾞｭｫｫｯ!!

襲の『邪闇気』はどんどん溜まっていく

宝鈴「全く…………襲、頭は消さないで下さいよ？」

宝鈴は呆れながら言った言うと

襲「うるせぇっ!!!それくらい分かってる!!!」

襲は怒り狂って入る為、宝鈴に怒鳴りつけた

宝鈴「全く…………これだから……」

宝鈴は再び溜息をついた

一刀「ふぅぅぅっ!!!」

ｷﾞｭｫｫｯ!!

一刀も同様に気を溜め始めた

襲「そう簡単に気を溜めさせるかよ!!」

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｯ!!!!

一刀「ん!?」

襲は一刀の頭上から『気弾』の雨を降らしてきた

襲「潰れちまいな!!!」

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞｯ!!!!

襲はまだ手を休めない

愛紗「ご主人様っ!!」

華琳「愛紗、心配は必要ないみたいよ」

華琳は愛紗を咎める

愛紗「ですが………………!!!」

一刀「『気弾』は気の塊…………」

一刀は両手を前に突き出した

すると

ｷﾞｭｫｫｯ!!

襲「何だとっ!!?」

宝鈴「っ!!?あ、あれは『体気吸収』!?」

一刀は修行により完全に操ることが出来た『体気吸収』を発動し、襲が放った『気弾』を全て吸収し尽くした

それにより

一刀「ふっ！」

ｷﾞｭｫｫｯ!!

一刀の気は最大限には程遠いが、かなりの量が溜まった

襲「何か嫌な気を掌に感じると思ったら…………そいつは『体気吸収の掌(たいききゅうしゅうのたなごころ)』か………」

一刀「生憎だけど俺には無意味だ」

襲「クソッタレが!!!だがこれで終わりにしてやる!!!

感謝しろよ北郷!!この『隕流星(いんりゅうせい)』を発動させたのはお前が最初で……………最後だ!!!!!」

ｺﾞｵｯｯ!!

襲が両手を真上にやると、巨大な炎に包まれた巨大な大岩が出現した

その大きさ直径約5m強

一刀「おぉおぉ…………でっかいな

でも響窃の『死の宝玉』と比べると小さいな…………」

襲「バラバラになりやがれーーー!!!」

ｺﾞｵｯｯ!!

襲は頭上に浮遊している『隕流星』を投げつけてきた