リリカルHS 35話 |
アインス「ふむ、なかなか美味い紅茶だ。このスコーンとも良く合う」
レーゲン「ま、またお茶が…スコーンが一人でに…」
初代リインさんは俺の家までやってきた。
そしてお茶菓子にと用意した紅茶とスコーンをいただいている。
どうしてこうなった…
アインス「ふむ、というかこのちんちくりん、もしやゼウスではないか?
ずいぶん久しいな」
そう言えばレーゲン、もといゼウスは、はやての持つ夜天の書と兄妹機だったな。
良い機会だ。少し話してみるか
士希「今レーゲン、ゼウスは記憶を失っているんだ。それで他の神器に狙われている」
アインス「そうなのか?というか、何故他の神器が外に出ている?
あれはタナトスとプロメテウスではないか」
初代リインさんはゲームをしている二人を指差す。あいつら仲良しだな
士希「あいつらの他に、オケアヌス、アルテミス、ガイア、ミネルバが外にいるらしい。
リインさん、ゼウスについて何を知っている?答えてくれたら、あなたの望みを聞く」
初代リインさんはしばらく思案し、やがて口を開いてくれた
アインス「そうだな。神器の役目はマスターを護る事にあるのだが、
我らの製作者は当初そう思っていなかったはずだ」
士希「なにか他の目的が?」
アインス「確か半分は趣味だったはずだ。初代は物作りが大好きだったはずだからな」
俺は思わずこけてしまう。拍子抜けにも程が有る。趣味ってなんだよ
士希「なら後の半分は?」
アインス「ふむ、なんだったか…いかん、ど忘れしたようだ。
何かしらの意味があったはずなのだが…」
おいおい、なんでどうでも良いことは覚えていて、重要そうな方を忘れるんだよ
アインス「だが作って行くうちに、その力を知って行くうちに、初代は危惧したのだ。
神器の力を。他の者に神器が手渡れば、争いの火種になると思ったのだ。
そこで初代は、ゼウスの中に全ての神器を封印させ、未開の次元世界に置いてきたのだ。
程なくして初代は亡くなり、我らも次なるマスターの元に行った」
それが、幾星霜も前の事。
ゼウスは記憶を失う以前、たった一人でその世界に居たことになる。
記憶を失うまでの間、ゼウスはどういう心境だったのだろう?
もう2度と会えないマスターを想い、ただ一人、何もない世界を眺めていたのだろうか。
それは、なんて…
レーゲン「え?ど、どうしたんですか、しきさん?急に頭を撫でて…」
俺はレーゲンの頭を撫でてあげた。今となっては、こいつは俺の大切な弟のようなものだ。
記憶はないかもしれないが、俺がこいつにしてあげれることは、
せめて一緒にいてあげることだけだ
士希「レーゲン、お前は俺の相棒だ。例えどんな状況でも、俺は最後まで、お前の味方だからな」
レーゲン「え?あ、はい。ありがとうございます?」
俺とリインさんの会話が聞こえないレーゲンにとっては、今の状況全くわからないのだろう。
だがそれでいい。いつか記憶を取り戻し、俺の言った言葉の意味を理解してくれたら十分だ
アインス「ふむ、しかし何故ゼウスは記憶を失う事になったのだろうな。
ゼウス本来の力が弱まっていたのだろうか」
士希「十中八九そうだろう。
そんな、いつかもわからないくらい前の話なら、抑えられなくなっても不思議じゃない」
アインス「ふむ、まぁ後はミネルバに聞いてくれ。彼女なら何かしら知っているだろう」
なら、そのミネルバさんが襲ってくるまで、気長に待つしかないな
士希「さて、約束通り協力しよう。俺は何をすればいい?」
俺はリインさんのお願いとやらを聞いてみる。そういう約束だったしな
アインス「私もテスタロッサ家の面々同様、主はやてに感謝の気持ちと、
あの世でも上手く暮らしている事を伝えたいのだが…」
となると、また手紙大作戦か。紙とペンを用意しておかないとな
アインス「そこで私は、私にしかできないアドバンテージを活かし、
神器の主であるあなたとユニゾンしたいのだ」
士希「………え?」
それってつまり…
アインス「あなたの体を貸してくれと、そういう事だ」
乗っ取りかよー!!
士希「却下だ馬鹿野郎!なんで幽霊に体貸さなきゃなんねーんだよ!」
アインス「ん?勘違いしているようだが、乗っ取る訳じゃないぞ?
ユニゾンなのだから、あくまで体の主導権はあなたにある。
ただ、一つの肉体に二つの意思があるだけだ」
十分気持ち悪いわ!
士希「ていうか、死んでまでユニゾンできんのかよ!魔力は失ったんじゃないのか?」
アインス「私は管制人格で融合騎だ。死んでからは試した事はないが、まぁ大丈夫だろ」
なんだそのアバウトな理由!
士希「そんな危ない賭け、誰ができるか!」
アインス「む、約束を破る気か?」
士希「うっ…」
いやしかし、流石に幽霊が体の中に入るのは…生気とか吸われたりしないよな?
士希「い、いいか?俺が少しでも体の不調を感じたら、速攻で出てってもらう。いいな?」
アインス「ふむ、致し方ないな。では失礼して…」
初代リインさんは俺の中に突っ込んで行った。
なかなか気持ち悪い感じはあったが、確かにレーゲンとユニゾンしている感覚と同じだった。
ただ違うのは、別段力の増幅を感じる事や、ましてや不調になると言ったことはなかった。
ただただ、自分の中にもう一人いるって感覚だけ
レーゲン「え?しきさん、髪の毛が…」
レーゲンに言われ、俺は鏡を見てみた。
そこにはレーゲンとユニゾンした時と同じ様に、銀髪になった俺がいた
アインス『上手くいったな。体の調子はどうだ』
レーゲン「きゃー!しきさんの体から声がー!!」
ほー、ユニゾンすると、幽霊の声が聞こえるようになるのか
士希「残念ながら、体の不調は感じない。
それとレーゲン、今俺がユニゾンしているのは、初代リインフォースさんだ」
レーゲン「初代!?初代ってなんですか!?まさか初代さん、幽霊さんですか!?」
アインス『うむ、死んで今年で七年になるな』
プロメテウス「む、この声、夜天の管制人格か?」
タナトス「おや懐かしい。元気にしていますか?」
神器二人は知っていたらしく、普通に話しかけてきた。
俺に向かって話しているのに、俺に向けられた言葉ではないから気持ち悪い
アインス『こちらは死んでしまったが、まぁ元気にやっている。
それと、私は祝福の風・リインフォースという。もう夜天の管制人格ではない』
プロメテウス「ほう。名を貰ったのか。よかったではないか」
タナトス「祝福の風ですか。なかなか良い名ですね」
めちゃくちゃ和んでいた
レーゲン「……しきさん、頭痛が…」
士希「我慢しろレーゲン。俺なんて頭痛と腹痛と寝不足の三冠だ」
間違いなく病気になる一歩手前だな
アインス『よし、では早速、主はやての下へ行こう』
俺達は八神家へ向かう事になった。そして玄関を出ると…
スポーン
アインス「……ん?」
士希「あ……」
外に出た瞬間、ユニゾンは解除された。どうやら俺の部屋じゃないと干渉できないらしい
士希「とりあえず、はやてには仕事が終わったらうちに来るようにメールしたから」
外ではユニゾン出来ない事を知った俺たちは、はやてとは俺の家で話す事になった。
それまでは適当に時間を潰す事になった
レーゲン「あの、なんでしきさんはそんなに冷静でいられるんですか?
幽霊とかおかしいじゃないですか」
士希「そう言われても、子どもの頃からなんだから、慣れるしかないよ」
東の血と言うよりは、司馬の血筋だな。異常な程の目の良さ故に、あり得ない物が視える。
母はものの脆い部分。咲希は確か、音や感情が色になって視えるんだったかな
レーゲン「もうしきさんと居る時は、何が起きてもおかしくない気がします…」
確かに、魔法やら幽霊やら、もうなんでもありだな。
てか、レーゲンもその筆頭だったりするんだが…
アインス『そう言えば、お前は主はやてに好意を抱いているんだよな?』
リインさんが俺の中から尋ねてくる。はたから見れば、独り言言ってるやばい奴である
タナトス「ほう、マスターは夜天の主殿に好意を…」
プロメテウス「そう言えば、私は会っておらんな。どのような人物なのだ?」
アインス『主はやては、とても可憐で、聡明で、優しいお方だ』
プロメテウス「なるほど、マスターに相応しいな!
こちらのマスターも、なかなか気概のある良き男だ。
強さと優しさ、そして護るという信念を感じるぞ」
アインス『ほう?そうなのか?』
俺は微妙に照れ臭くなってしまう。確かに、大抵のやつに負けるつもりはないが…
レーゲン「ていうか、しきさんもはやてさんも凄く仲良いのに、いまだに友達のままなんですよね」
士希「いやぁ…こういうのはタイミングってのがあってな…」
アインス『なんだ、ヘタレか』
リインさんの発言は、俺の心にグサっと刺さった。
いやそりゃ、ヘタレって言われても仕方ないけどさ…
プロメテウス「マスターよ、男は勢いが重要ですぞ」
タナトス「ですね。兵は神速を尊ぶという言葉があるように、
早く行動に移さなければ誰かに盗られますよ」
アインス『その場合は恐らく烈火の将だろうな。
あいつは主に恋愛的な好意を寄せているように見受けられた』
クソッ!正論過ぎて反論できねぇ
レーゲン「しきさん、覚悟を決めましょう。いつ告白するんですか!」
レーゲンに詰め寄られる。周りの二人、さらには俺の中からも圧力を感じるが…
士希「な、夏の間には…」
俺はやはりヘタレのようだ。周りも呆れてため息をついていた
ガチャン
夕方ごろ。家の玄関の鍵が開く音が聞こえ、しばらくしてはやてがリビングにやって来る。
そう言えばはやてには、家の合鍵渡していたんだったな
はやて「うぃーっす。なんや用事って聞いたけど、なんやったー?
てか、なんで士希、ユニゾン状態?」
士希「お疲れ、はやて。まぁいろいろあるんだが、とりあえず聞いてくれ」
俺はリインさんに話すように促した
アインス『お久しぶりです、主はやて。リインフォース・アインスです』
俺の中から、リインさんの声が聞こえる。対するはやては…あーあ。フリーズしてやがる
アインス『主?どうかされましたか?』
見えないが、恐らく心配した顔で言っているのだろう
はやて「………うん、あー、うんうん。んー?」
どうやら、目の前の現象に脳の処理が追いついてないらしい
士希「はやて、俺の中には七年前お亡くなりになった、初代リインさんがいる」
はやて「……HAHAHA!!おっかしいなー。ナイスなジョークやで士希!お盆やもんなぁ」
どうやらはやては、全力で現実逃避に挑もうとしているらしい
士希「はやて、俺、お前から闇の書事件について聞かされていないよな?
何も知らない俺が、なんで知ってると思う?」
はやて「そんなん、他の人から聞いたとか…」
士希「他の奴らに聞いてみろ。誰もがNOって答えてくれるぜ」
はやて「………マジ?」
士希「マジ」
はやて「マジでアインス?」
アインス『マジでありんす』
リインさん、ずいぶんお茶目な返し方だなぁ
はやて「な、なんで…」
はやては少し戸惑っていた。当たり前だろう。死んだやつがこうして話しに来たんだから
アインス『主はやてに、お礼と報告をしたくて。
私が亡くなる前にも、感謝の気持ちは伝えましたが、それでも足りないほど、
主はやてが私にしてくれた事は大きいのです。
そして、主はやてが私の名を継いだ融合騎を作ってくれて、私は本当に幸せでした。
主はやての心に、私が居た事がとても嬉しかった。なので、ありがとうございます。
私はもうこの世のものではありませんが、あの世でも楽しく暮らし、
またあなたをいつでも見守っております』
リインさんは一気に喋っていった。その間、俺もはやても黙り、聞き込んでいた。
そして、リインさんが話し終えると、はやては涙を流していた
士希「はやて……!!」
俺がはやてを気にかけると、はやては突然俺を抱きしめた。
顔は胸にうずめ、すすり泣く声が聞こえる。
俺はそんなはやてを抱きしめ、頭を撫でてあげた
はやて「ぐすっ……少し…不安やった……アインス一人……助けてあげれへんだで……
恨んでんのと…ちゃうかなって……でも……」
アインス『はい、私は主はやてを恨んでなどおりません。
だから、どうか泣かないでください、主はやて。私はあなたに、笑っていてほしいです』
はやて「ごめん…ごめんな…アインス……止めなアカンってわかってても…涙止まらへんねん……」
アインス『……私は本当に幸せです。あなたにこれほど想ってもらえるなんて…
本当に、ありがとうございます」
はやて「わ、私も…ありがとうな…こうやって…会いにきてくれて…」
その後も、はやてが落ち着くまで俺ははやてを抱きしめ続けた
はやて「その、ごめんな士希。突然泣いてしまって…」
落ち着いたはやては、リビングにあるテーブルに腰掛け、俺はお茶を出してあげた。
ちなみにレーゲンはもらい泣きしたらしく、寝室で休んでいる
士希「いいさ。大切な人が会いに来てくれたんだ。涙も出るよ」
はやて「そやけど、胸まで借りてしまって…」
士希「気にすんな。女の子1人抱えるくらいの器量はあるつもりだぜ」
アインス『役得だったろ?』
士希「リインさんは黙ってください」
確かに役得だったけどさ
はやて「あ、あはは。アインスは、どんくらいこの世に?」
アインス『お盆の期間はいるつもりです。
その間はこちらにお邪魔する予定ですので、しばらくはこうして話せます』
………は?
士希「え?いやいや、何勝手に決めちゃってくれてんの?」
はやて「そっかぁ。なら今度はヴォルケンやツヴァイも連れて来るわ」
アインス『はい。お待ちしています』
士希「ちょっと待て!なんでそんな進めてんだよ!?俺の意思は!?」
正直、帰って欲しいんだが…
はやて「…しばらく、おいてあげてくれへんかな?
せっかく、もう会えへんと思ってた人と会えたでさ。もうしばらく一緒にいたいんさ」
はやては少し物悲しげな顔でお願いしてきた。
そんな顔でお願いされたら、断れないに決まってるだろ…
士希「……あーもう!!いいぜ!幽霊の一人や二人、抱え込んでやるよ!」
俺は若干ヤケになって言ってしまった。て言うか、そろそろ寝不足でヤバイ
はやて「ありがとう!さすが士希やな!」
アインス『すまんな。お前なら、主はやてを任せられそうだ』
こうして俺は、この夏に1人の幽霊と暮らすことになってしまった。
はやての為なら、そう思ってこの夏は過ごさないといけないらしい
リニス「あ、私達もいいですか?」
アリシア「お腹すいたー。ご飯まだー?」
プレシア「ふぅ…あ、お風呂借りるわね」
士希「………」ふらっ
ばたっ
はやて「し、士希ーー!?」
はやての叫び声が聞こえる中、俺はとうとう倒れてしまった…
説明 | ||
こんにちは! まだまだ続く幽霊騒動!アインスさんのお願い |
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コメント | ||
あぁ…ここじゃないと娯楽がないのか…(akieco) 可愛そうな士希(ohatiyo) テスタロッサ家の皆さんまで帰ってきたwww 士希(・ω・`)乙(黒鉄 刃) もう、仙人でも妖怪でも何でも来い状態になっていますね・・・(ツナまん) |
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