欠陥異端者 by.IS 第十話(裏稼業の一面)
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箒[モグモグ]

 

セシリア[モグモグ]

 

鈴音[モグモグ]

 

シャルロット[モグモグ]

 

ラウラ[モグモグ]

 

零「・・・」

 (何? この状況?)

 

復帰した零は、一週間ぶりに一夏から学食の誘いを受けた・・・だが学食に来てみれば、当の一夏はおらず、この五人が無言のプレッシャーを放って食事をしていた。

しかも、居ない間に"シャルルからシャルロット"になっているし、ラウラがここにいるのも零にとっては不思議だった。

 

一夏「悪い悪い、待たせちまっって。せっかくだから、谷本さん達も誘おうと思ったんだけど、他の用事があったみたいで─────」

 

五人[ギロッ!]

 

一夏・零[ビクッ]

 

五人の睨みが男二人を怯えさせた。

どうやら一夏は、零が帰ってきた祝いとしてみんなで食事をしようと考えていたみたいだが、この五名は"私一人だけが誘われた"と思っていたらしい。

紛らわしい言い方で誘った一夏も悪いが、一夏の唐変朴さを視野に入れず、勘違いをした五人も同じくらい非はあるだろう・・・と、心の中で突っ込む零。

 

箒「・・・はぁ。大方は想像できたが」

 

セシリア「そうですわね・・・」

 

鈴音「あ〜あ、期待して損した」

 

シャルロット「ハハハ・・・はぁ」

 

ラウラ「嫁失格だな」

 

一夏「???」

 

零(相変わらず・・・)

 

人数は増えたものの、最初の頃からブレないやり取りに、零は呆れつつも心の中で少し喜んだ。

 

鈴音「で? 何であたし達全員を呼んだわけ?」

 

一夏「それは零が療養から帰ってきたから、その祝いとして。なっ!」

 

零「は、はぁ・・・」

 

そう持ち上げられるのに抵抗のある零だったが、作り笑いを浮かべて流した。それを疑わし気に観察する四つの目。

 

シャルロット「・・・」

 

ラウラ「・・・」

 

シャルロットとラウラだった。

 

箒「ま、まぁ、そういう事なら仕方がないな」

 

セシリア「恩人の零さんの帰還祝いとなれば、わたくしが同席しているのが当然ですわね」

 

鈴音「っていうか、最初からそう言ってくれれば、学食ぐらい奢ることはしたのに」

 

零「・・・///」

 

露骨に顔には出ていなかったが、予想外な発言×3に零は照れた・・・この時も、シャルロットとラウラは零の事を観察していて、その照れた小さな動作にも気付いた。

 

一夏「じゃ、時間も無いし、零から一言もらうか」

 

零「え?」

 

いきなりの無茶ぶりに持っていた箸が、手から零れ落ちた。それをシャルロットが拾う。

零は、六人の「まだかまだか」という視線と、周囲の生徒達が聞き耳を立てている事に我慢ならず、さっさと終わらそうと席を立つ。

 

零「・・・えっと」

 

しかし、こういう経験がない零にとって、何を言ってこの場を乗り越えるかが分からない。

学園に編入時の自己紹介は、最小限の説明だけで、これまでもそうやってきた・・・

 

零(「無事に学校に戻れて安心しております。これからは、体調や怪我に気をつけ」─────怪我をさせた本人の前で言うべきでない気がする。「本日は天気にも恵まれ」・・・この入りはさすがに無い。「わざわざ僕のためにお集まりいただいて」───そういえば、この人達って勘違いしてここにいるから、根本的にこの発言は間違っているな)

 「〜〜〜」

 

一夏「お、おい、そこまで悩まなくていいって。単純でも思ってる事を言ってくれれば、いいんだからさ」

 

零「は、はい・・・」

 (思ってる事・・・思ってる事・・・)

 

この場で適切な発言とは? これを言った相手の反応は? その後の影響は? 自分にとって益か損か?

自分で気づかないぐらい、上記に挙げた以上の事を無意識に考えの中に入れてしまっている零にとって、一夏の言う"単純でも思ってる事"を伝える方が難しい。

だが、それは昔の零の話だ。己の感情が漏れる事が多くなり、自分が何を思い、どう感じているかを確認でき、価値観を図れてきている。

まだ暗中模索状態だが、雀の涙程度の心中にある感情を素直に出せるようになっていた。

 

零「あ─────」

 

未だ悩み続けていた零を、一夏・鈴音・シャルロットの三名がフォローに入ろうとした瞬間、何とか絞り出したかすれ声を零は発する。

 

零「あ・・・ありがとう、ございます」

 

単純で短い言葉・・・しかし、その気持ちはしっかりと周囲に受け止められた。

 

一夏「うっし! なら俺が何か奢って─────ってもう食べているから、夕食奢ってやるよ!」

 

自分の力こぶを叩いて、自分の手腕を誇示したポーズを取る。

 

箒「ならば、私も何か考えておかねばな」

 

セシリア「わたくしもご夕食に出席させていただきますわ」

 

鈴音「なに? またお祝いパーティでもするつもり?」

 

鈴音は口ではこう言っているが、表情はセシリア同様、乗り気だった。

 

シャルロット「ラウラも参加するでしょ?」

 

ラウラ「当たり前だ」

 

この五人だけでない。周りを見渡せば、次々に参加を希望する者、さりげなくその夕食の場に入ろうと画策しようとしている者・・・。

この状況で唯一、ついていけてない零は、呆然としていた・・・今まで心に固まっていた氷が、溶けるのを感じながら。

 

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国際連合本部ビル・・・by.ニューヨーク市。

各国の国旗が立ち並び、広大な敷地に39階建てのビル+各会議場などが建っている。

 

シャロン「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

ブロンドの長髪にカールをかけた女性。服装は、清楚な白ワンピースに華やかなカーディガンを羽織っていて、妖精のような雰囲気を醸し出している。

シャロンは、警備員に個人証明書を見せてから事務局ビルに入り、エレベーターに乗り込んで地下3階に行く。

到着して扉が開くと、すぐ目の前にカードレーダーが脇に取り付けられた頑丈な電子ドアがあった。シャロンは、ポケットから三枚のカードが束になっている物を取り出し、その内の一枚で電子ドアを開けた。

 

?「あっ! おっかえり〜!」

 

立派なセキュリティーとは違って、入ってみればせいぜい十人しか働けなさそうなオフィスフロアがそこにある。

フロアの形は長方形で、縦二列に長机が平行に置かれ、デスクトップが各席に一台ずつ設置されていた。ドアを背に左右の壁際にはクリアファイルを管理する鉄の棚、正面の奥の壁には入口同様カードレーダーが取り付けられた電子ドアがある。

 

?「ちょっと〜、私の説明もしてよ〜!」

 

シャロン「そ、そんな事、私に言わないでください・・・」

 

シャロンに詰め寄る黒いスーツ姿の女性は、"スィナー"と呼ばれている。茶髪のショートヘアにカチューシャで前髪を上げ、おでこを出したヘアスタイル。

この"スィナー"という名前は、本名ではなく、コードネームである・・・ちなみに、前回の話でパーカーを着て登場した女性と、同一人物だ。

 

シャロン「って、スィナーさんだけなんですか?」

 

スィナー「そうなの。一人ぼっちで寂しかったよ〜!」

 

ぎゅ〜っとシャロンに抱き付くスィナー。

 

  [ウィン]

永住「ただいま戻りまし─────お邪魔しました」

 

シャロン「ア、アルバート、違うの!」

 

スィナー「ほら、あの子の事は忘れて私と・・・」

 

シャロン「いやーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、登場した三人が所属しているのは、極秘に各国で活動するテロ組織を調査する部門。

その存在は、世間にも国連組織内でも知られていなく、表向きは国連の資金繰りを管理する経理部門とされている。上の人間は組織とは外れた、"アンノウングループ"と称している。

僅か10人の優秀人物で構成している。

 

シャロン・コーリング・・・年齢は24歳。国連に所属して3年が経過し、21歳という若さで採用試験に合格した超エリート。アメリカで育ち、軍人の姉を持つ。

 性格は穏やかだが落ち込みやすく、他人からの押しに弱い。

 事務系の仕事が得意なのだが、身体能力も高く、侵入捜査もお手の物。

永住・アルバート・・・年齢は23歳。シャロン同様、21歳に試験に合格したエリート。イギリス人の父と、日本人の母を持つハーフ人。

   外見は、背が高く色白・・・実を言うと、イギリスの喫茶店でスコールに声をかけたのは、永住だった。

   いつも冷静で、正義感を持った心優しい青年。しかし、甘いマスクとは裏腹に、軍隊の訓練を1年やり切り、身体能力はかなり高い。空手・柔道・合気道などの武術も身に付けている。

   ・・・実は、シャロンと婚約した仲で、仕事が落ち着く頃合いを見て婚姻届けを提出するらしい。

スィナー・・・見た目は20歳〜30歳ぐらいだが、実年齢は50歳を超えている。

   ある事情で、体に身体能力や脳の処理能力を向上させる強化ナノマシンを過剰に注入しており、副作用で注入した頃よりも若返っている。

   度々シャロンや他の女性にセクハラ行為を働くが、仕事になると豹変する。

   国連に所属して10年以上も経つが、どうやって国連に入ったかは不明。知っているのは、スィナーを拾った国連の幹部だけである。スィナーの本名を知る者もその幹部だけだ。

 

永住「今日いるのは、スィナー先輩とシャロンさんだけですか?」

 

百合な雰囲気が訪れた一時間後・・・シャロンの正面の席で仕事をする永住は、PCの操作に一区切りをつけて尋ねた。

 

スィナー「ええ、そうよ。他の人は出払ってる・・・あと、私は二人の事情を知っているんだから、"さん"付けしないでいつも通り話しなさいよ」

 

シャロン「そう言っておいて、陰で笑ってるくせに・・・」

 

シャロンは呟く程度の声量で毒づきながら、山積みになっている紙の束を捌いている。隣の席に座っているスィナーも、余裕綽々で事務仕事を続けていた。

 

永住「あっ、これか・・・」

 

シャロンが捌いていた紙の中から、目についた書類を永住が手に取る。

『イギリスのBT兵器搭載IS二号機"サイレント・ゼフィルス"、並びに、アメリカの第二世代機"アラクネ"が強奪された事後報告書』

長ったらしいタイトルを永住は、甘いマスクと似合わない険しい表情で読んだ。

 

永住「僕たちは、何も出来なかったのでしょうか?」

 

シャロン「アルバート・・・」

 

シャロンと永住は、『サイレント・ゼフィルス』が強奪されるのをただただ見ている事しか出来なかった。

それが、正義感の強い永住にとって辛く苦しいことだったのだろう。

 

スィナー「それが私達の任務よ。阻止はその国がやる。そして私達は強奪した組織を徹底的に調べ上げ糾弾する・・・テロ集団のような武力でもなく、暴君のような権威でもなく、正当な力で戦うのが私達」

 

二人「・・・」

 

仕事の話になると、いつもおちゃらけた雰囲気が消える。そんなスィナーが言う言葉は、経験の浅い優秀な部下の心に響く。

 

スィナー「まっ! 現状は難しいところまで来ているから、永住君の焦りは理解できるわよ・・・でもね、私達だけが動いても結果に反映されない事の方が多いから」

 

永住「・・・はい。肝に銘じておきます」

 

シャロン「いつもそんな感じだったら良いのに・・・」

 

スィナー「何言ってるの? 私はいつも私、よっ!」

[ムニュ]

 

シャロン「ひやぁ!?」

 

滑車付の椅子を疾走させてシャロンの背後を取り、程好い大きさの胸をスィナーが鷲掴みする。

 

スィナー「あれ? 少し大きくなった・・・揉まれた?」

 

シャロン「揉まれてません!」

永住 「揉んでません!」

 

スィナー「そこで、永住君が出るのはおっかしーいんじゃない?」

 

明らかに永住を見ながらの発言だったため、勘違いさせるのは必然。しかし、予想通りの永住の反応にスィナーはニタニタと笑って、揚げ足を取った。

こんな騒がしくて、でも平和なこの空間だったが、内線電話のコールがそれを崩す。それは、強引に現実へと引き戻されることを意味していた。

 

[ガチャ]

シャロン「コーリングが取りました・・・はいっ・・・はいっ、了解です。[ガチャ]────『亡国機業』が動き出しました」

 

スィナー「場所は?」

 

シャロン「バチカンです」

 

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・・・バチカン図書館・・・

ローマ教皇に関する蔵書が並ぶ図書館には、世界最小面積のバチカン市国といえど、珍しい本を求める外国人が多くいて、静かに黙読している。

その中で、アメリカの喫茶店に現れた"赤髪の修道士"も黙読していた。

 

マーム(・・・時間)

 

パタンと本を閉じた修道士────マーム・クルスは、足早に図書館を出る。その後を追う黒服姿の男女8名。

マームはその存在を認識し、バチカン庭園を抜け住宅街へと出る。人通りの少ない道を選びながら、マームの歩行スピードが上がる・・・そして、行き着いた先は、改修工事が控えられた廃墟地帯だった。

 

黒服[バッ!]

 

廃墟に足を踏み入れた瞬間、マームを取り囲むように黒服8人衆が出現し、全員が拳銃の銃口をマームに向けた。

 

黒服1「『亡国機業』! 単刀直入に聞く。何を目的にバチカンに来た? 抵抗する場合は、発砲する!」

 

マーム「・・・」

 

黒服1「それならば、仕方がない。お前を捕える!」

 

その一声を合図に、8つの銃口が火を噴いた・・・だが、全部が不発に終わる。何故なら、マームの周囲を囲むように金色のベールがひかれ、銃弾を全て受け止めたからだ。

 

黒服「ッ! ISだ! 全員、特殊弾に切り替えろ!」

 

8人は一糸乱れずに弾倉を変え、対IS用銃弾に切り替える。

 

マーム「神のご加護を─────」

 

黒服1「発砲!」

 

前で組んでいた祈り手をほどき、発砲と同時にマームは駆け出した

八方から銃弾は、致命傷にならない足や肩を狙っている。だから、マームは銃弾の軌道を読め、地面から火花が散っている中を恐れる事はなかった。

 

黒服1「くそっ!」

 

弾丸切れ、狙われた黒服は護身用スタンガンを取り出し、人並み外れた身体能力を持つマームの接近に合わせて、黒服はスタンガンを突き出す。

だが、それを見切ったマームの右足が、スタンガンを持つ腕を叩き上げた。修道士のスカートから健康的な健脚美が見えたが最後、腕を叩き上げた脚を軸にして、反対の脚で後ろ回し蹴りが黒服の顎に炸裂した。

脳を揺らされた黒服は、ブリキ人形のように崩れ落ち、マームはさらに一人、二人・・・と足技で撃沈させていった。

 

黒服8「うぅ・・・ま、待て」

 

最後に倒した女の黒服は、呻きながら去っていこうとするマームを呼び止めた。マームは律儀に振り返って足を止めた。

 

黒服8「なぜ、バチカンに、来た・・・? ここは、おまえたちが欲しがる、戦力など、ない。バチカンは、戦力を保有しない、法がある」

 

マーム「・・・国連のくせに」

 

黒服8[ビクッ]

 

よくよく見れば、マームは可愛らしい顔をしている。だが今は、憎悪に満ちた顔に豹変し、目つきが鋭くなっていた。

 

マーム「平和なんて・・・どこにもない。どこもかしこも、人を殺す兵器で満ちてる」

 

そう言い残して去っていくマームを、黒服は意識が遠のく中、見ている事しか出来なかった。

廃墟を出て、再び図書館へと戻ったマームは、読書を始めた・・・その数秒後、耳に取り付けていたインカムから通信が入る。

 

スコール『定時報告お願い』

 

マーム「国連に発見されました。一度は撃退しましたが、また来ると思います」

 

スコール『ならもう少し、そこに滞在して時間を稼いでちょうだい。もちろん、当初の目的もしっかり果たしてもらうわ』

 

マーム「了解」

 

スコール『バチカンは、イタリア、スイスと深い仲にある。証拠もある・・・必ず、国内に"IS"が隠されてるはずよ』

 

マーム「分かっています・・・この世の兵器は、私が潰します。たとえ兵器を用いてでも」

説明
小説を書くのは、やっぱり難しいです。
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