バイター「シャアッ！」

クロノ「っと。せいっ！」

　ズバッ！

カエル「しっ！」

星「せやぁっ！」

　ザシッ！ドシュッ！

愛紗「はあぁっ！」

鈴々「うりゃあっ！」

　ザンッ！ズシャン！

ルッカ「くらえっ！」

　ゴオオオォッ！

一刀「このっ！」

　ズバッ！

バイター「ギシャア・・・ッ！」

　隠し階段を見つけ、地下へと降りた俺たちを待っていたのは、魔物の猛襲だった。

　ヘビ、小悪魔、コウモリ。無数の魔物が、ひっきりなしに襲い掛かってくる。

愛紗「どうやら、星たちと合流できたのは幸いだったようだな。」

星「そうだな。私とカエル殿だけだったとしてもやられはしないと思うが、こうも戦闘が続くと、ちと面倒だったな。」

カエル「たしかに。思ったより敵の数が多いな。」

鈴々「あにゃ〜、ヘビとかがいるのに食べれなそうなのが残念なのだ。」

ルッカ「だから食べなくていいってのよ！」

一刀「・・・・・・。」

　そう皆が話す中、俺はふとした違和感を感じていた。

愛紗「ご主人さま？どうかされましたか？」

一刀「え？ああ、いや。なんでもないよ。」

　しかし、本当に些細なことだったので、あまり気にしないことにした。

　そして敵を倒しながら、慎重に進み、奥のフロアへ向かおうとしたとき。

？？「おーい、助けてくれー・・・。」

星「ん？皆、なにか聞こえないか？」

愛紗「え？」

？？「おーい。そこに誰かいるのかー！？いるなら助けてくれー！」

鈴々「んにゃ？声が聞こえるね。」

カエル「ん、どうやらあそこの部屋から聞こえるようだな。」

　いま居るフロアの両端には階段があり、その先にはそれぞれ２つずつ扉があった。おそらく部屋だと思われるが。

　その左奥の扉から、俺たちを呼ぶような声が聞こえてきた。

ルッカ「王妃以外の捕まってる人かもしれないけど・・・もしかしたら敵の罠かも。」

クロノ「どっちにしたって確かめないとダメなんだし、行ってみようぜ？」

　階段の方へ引き返し、声のした扉に向かう。

　扉の前には侵入を妨げるための針床があったが、近くにあったスイッチで難なく開いた。

　そして中に入ると。

？？「おお！お前たちは城から来た救助の者か？」

　ガルディアの兵士が数人いた。

ルッカ「そうよ。あなた達はガルディアの兵士ね？」

兵士「そうだ。王妃様の捜索中にここで捕まってしまって・・・。」

？？「あれ・・・もしかして、ご主人さま？」

？？「え？ご主人さま・・・？」

　と、兵士が話し始めたのを遮るように、奥から別の声がかかった。

一刀「え？」

　なんとなく聞きなれた声に、部屋の奥を覗き込んでみると。

？？「はわわ！やっぱり！ご主人さまでしゅ！」

？？「あわわ！ご主人さま！」

一刀「”朱里”！？”雛里”！？」

　そこにいたのは、我らが二人の軍師さまであった。

朱里「ご主人さまーーーっ！」

雛里「ご主人さまーーーっ！」

　勢いよく飛びついてきた二人を抱きとめる。

一刀「ふたりもこっちの世界に来てたとは・・・。」

朱里「目が覚めたら全然知らない場所で、あてもなく歩いていたら変な人達に捕らえられてしまいまして・・・。」

雛里「ここに入れられてたんでしゅ、あう・・・。」

一刀「そうだったのか。だけどもう大丈夫だ。」

朱里「ふえええん、ご主人さまぁ！」

雛里「寂しかったです〜！」

　―――――朱里(しゅり)。

　蜀を誇る二大軍師のひとり。”伏竜(ふくりゅう)”の異名を持ち、内政に長ける。

　姓は諸葛(しょかつ)、名は亮(りょう)、字は孔明(こうめい)。

　生粋の八百一本(やおいぼん)愛読者であることは(管理界では)あまりにも有名。※管理者記述。

　―――――雛里(ひなり)。

　朱里と並ぶ、蜀の二大軍師のひとり。”鳳雛(ほうすう)”の異名を持ち、軍術に長ける。

　姓は?(ほう)、名は統(とう)、字は士元(しげん)。

　生粋の八百一本愛読者で(以下略)。

ルッカ「・・・というか割と始めの方から気になってはいたんだけど。」

愛紗「ん？どうしたルッカ。」

ルッカ「あんたら皆、あいつの”女”なわけ？」

愛紗「ぶっ！ななな何を急に！」

ルッカ「いや、王なのは聞いたけどさ・・・それにしちゃ主従ってのとは違う関係に見えて仕方ないのよねぇ。」

愛紗「べ、別に自分の仰ぐ主君を敬愛するのは至極当然のこと。な、何も不思議なことなどないではないか。」

ルッカ「ふーん・・・。」

鈴々「鈴々はお兄ちゃんのこと好きだよ♪」

星「そうだな。我々の世界では、王が妻を何人持とうと問題はないからな。」

愛紗「お、お前たち！」

ルッカ「うわーやっぱそうなんだ。あの二人といい鈴々といい、ちょっと守備範囲広すぎなんじゃないの？」

星「まあ、主はあまり歳などに捉われぬタチだからな。それに数のことを言ったらキリがないぞ？」

ルッカ「まだいるっての！？」

　後ろでなんか騒いでるけど、気にせず目の前の二人と話を続けよう。

一刀「俺たちはこれから、捕らえられてる王妃様を助けに行ってくる。だから二人はこの兵士さん達と一緒に城へ戻っていてくれ。」

朱里「でも・・・。」

一刀「大丈夫。軍同士の大きい戦いでもないし、なにより愛紗たちがいるんだ。心配ない。」

朱里「・・・わかりました。ご無事をお祈りしています。」

雛里「ご主人さま・・・。」

　心配そうに見上げる二人の頭を一撫でし、俺は完全に空気と化してしまった兵士さんに向き直る。

一刀「じゃあすいませんが、二人をお願いします。」

兵士「・・・ああ、わかった。さあ、行きましょう。」

　そう言って兵士さんたちと共に、朱里と雛里は修道院を脱出した。

　・・・なんか兵士さんの顔が怖かった気がしたけど、気のせいかな？

一刀「さあ、先を急ごうか。」

ルッカ「アンタって、かなり女で苦労してるでしょ？」

一刀「え？」

ルッカ「・・・はあ、なんでもないわ。」

一刀「？」

クロノ「いいなぁ一刀。」

ルッカ「うらやましがるな！」パカンッ！

クロノ「痛っ！」

カエル「ふっ、青いな。」

　なんかよくわからないが、星に続き、朱里と雛里に再会できたことを喜びつつ、俺たちは最奥を目指して進んでいった。

　・・・・・・・・・。

　・・・・・・。

　・・・。

？？「ふん、やはりあちらは偽物だったか。ならば何も問題はないな。事が終わったあとにいくらでも対処の仕様はある。」

リーネ「もうおやめなさい。こんな事、いつまでも隠し通せるものではないわ、大臣・・・いえ、”ヤクラ”！」

ヤクラ「ギャハハハ！心配は無用ですぞ王妃。城の誰一人ワシの正体に気づいておらず、この地下聖堂も決して見つからない。もし仮に見つけたとしても、ここにいるのは全てワシの配下の魔物。口を封じるのは容易いこと。このまま大臣として城に居続け、内部から徐々にガルディア王国を乗っ取っていってやるのだ！そうすれば邪魔者はいなくなり、魔王様の敵はいなくなる！ギャーハハハハ！」

リーネ「ああ・・・――――。あなたが居れば・・・。」

ヤクラ「ギャハハハ！・・・さて、覚悟はいいかな、リーネ王妃？いよいよこの世にサヨナラを告げる時間だ。」

　ヤクラがリーネ王妃に近づいていく、そこへ。

クロノ「まてぇっ！」

　最奥へと到達した俺たちが乱入する。

ヤクラ「ほう、お前たち、よくここまで潜り込めたな。」

ルッカ「アンタの謀略もここまでよ！」

一刀「王妃様を返してもらおうか。」

愛紗「さもなくば、この場で叩き斬るまで！」

鈴々「悪いことするやつはおしおきなのだ！」

星「やれやれ、奸臣というのは、どこへいっても似たような輩が多いな。」

　俺たちはヤクラに対し武器を構え、警戒態勢をとる。

リーネ「カエル！」

カエル「王妃様はお下がりを。コイツを片付けちまいますので。」

リーネ「・・・気をつけて。」

ヤクラ「ギャハハハ！無駄無駄ァッ！ここからは誰一人として生きては帰さぬぞ！」

カエル「黙れ、”魔王直属六大軍団・百獣魔団長”、ヤクラ！」

クロノ「え、魔王直属！？」

ルッカ「ちょっとカエル！六大軍団ってなんなのよ！？」

カエル「魔王軍には六つの軍団があってな。その内のひとつ、獣類などの動物モンスターで構成された”百獣魔団”。こいつはその団長だ。」

一刀「だからヘビやコウモリの魔物が多かったのか。というかそれ以外の動物らしいのは見当たらなかったんだが。」

カエル「おそらく潜入や潜伏を重視した構成で来たのだろう。」

ルッカ「っていうかその六大軍団の団長が相手ってヤバすぎじゃないのよ！」

カエル「狼狽えるな。コイツは百獣魔団の団長であるにも関わらず、なぜか頭脳派だ。単純な力だけなら配下の魔物の方が強い奴が多い。」

一刀「なら俺たちでも勝算はあるってことか？」

カエル「力自慢はこっちにもいるみたいだしな。十分やれるだろう。」

ヤクラ「はっ！カエル風情が生意気な！貴様らから血祭りにあげてやるわ！」

　そう言ったヤクラから、異様な空気が発せられてくる。

　そして―――。

ヤクラ「だいじ〜〜〜ん、チェーーーンジッ！！」

　ビリビリッ・・・バリバリ・・・モゴモゴモゴモゴ・・・！

　ヤクラが叫んだ次の瞬間、ヤクラの着衣が破け、体が膨れ上がり、一見すると角の生えたクモ？のような姿に豹変していった。

ヤクラ「ヤ〜クラ〜！デロデロン！」

カエル「先手必勝！」

　ヤクラの変身が終わったと同時、カエルが素早く仕掛けた・・・だが。

ヤクラ「遅いわぁっ！」

　ビュンッ！

　カエルの初撃は軽々とかわされてしまった。

カエル「く、コイツ意外に速いぞ！」

星「速さならば、私も負けてはおらんぞ？はいっはいっはいーーっ！！」

　ドヒュヒュ・・・！

　星による槍の連撃が、ヤクラに向かって放たれるが。

ヤクラ「残念〜ハズレだ！」

　それもヤクラには避けられてしまった。

　そして。

ヤクラ「今度はこっちからいくぞ！デロデロ〜ン！」

　ギュバババババ・・・！！

愛紗「な・・・っ！」

鈴々「にゃにゃにゃ！？」

　ヤクラは部屋の中を縦横無尽に駆け回り、俺たちに突撃してきた。

クロノ「あぶねっ！」

ルッカ「きゃあっ！」

愛紗「くっ！」

鈴々「んにゃあっ！」

一刀「うわっとと！」

カエル「あの巨体でなんてやつだ！」

ヤクラ「ギャハハハハハ！どうしたどうしたぁっ！さっきまでの威勢はぁ！」

　ヤクラは尚も動きを止めず、何度も俺たちへ突撃を繰り返してくる。

　さらに。

ヤクラ「喰らえぃ！」

　ドシュドシュ！

　ヤクラの肩部が筒状に伸び、そこから回転する棘を発射した。

愛紗「なんのっ！」

　ガキィン！

　愛紗が青竜刀を一振りし、棘を弾いた。

ヤクラ「なかなかやりおるな！だが、このスピードについて来れねばどうしようもあるまい！」

星「たしかに。このままでは徐々に追いつめられてしまうな。」

クロノ「だけどこの速さじゃあなぁ。」

一刀「なんとかヤツの動きを止める方法を考えないと。」

鈴々「・・・・・・よーし。」

愛紗「鈴々？」

　鈴々が、何を思ったのか突然武器を置いて皆の前に一歩踏み出した。

鈴々「鈴々が止めてみせるのだ！」

　そう言って、足を開き、両手を前に突き出して構えた。

愛紗「鈴々！馬鹿な真似はよせ！」

ルッカ「そうよ！あんなデカイ上に速いの止められっこないわ！」

ヤクラ「ギャハハ！なんだ貴様！諦めたのか！？なら望み通りにしてやろう！」

　ギュンッ！

　壁や天井を駆け回るヤクラが、鈴々へと進路を向ける。

　ギュオン・・・！

　構える鈴々へと、ヤクラの巨体が迫る。

愛紗「鈴々！！」

鈴々「・・・・・・！」

　ドッ・・・ザザザザザザザ・・・！！

鈴々「にゅぬぬぬぬぬ・・・！」

　ヤクラの突進を受け、後方へ押しやられていく鈴々。

　あわや壁に激突するかと思われた・・・が。

　ザザザーーーーー・・・・・・ピタァッ！

ヤクラ「な・・・なにぃっ！？」

鈴々「へへーん、獲ったのだ。」

　鈴々はヤクラの角を両手でガッチリと掴み、壁寸前で止めたのだった。

ヤクラ「バカな！？こんな小娘に・・・！」

ルッカ「あ、ありえないわ・・・。」

愛紗「まったく、ヒヤヒヤさせおって。」

鈴々「いっくぞー。ふっ・・・ん〜〜〜そりゃあっ！」

　グ・・・オンッ！

　角を掴んだまま鈴々は、ヤクラの巨体を力いっぱいぶん投げた。

ヤクラ「うおおおおっ！？」

　ドグォォォ・・・ン！

　投げられたヤクラが、先にあった祭壇へと落下した。

ヤクラ「ぐ、くっ、おのれ〜・・・ぬおっ！？お、起き上がれんっ！？」

　壊れた祭壇が、ひっくり返っているヤクラの体をうまく固定し、身動きをしにくくしていたのだった。

愛紗「好機！？今のうちに奴を討ち取るぞ！」

星「応っ！」

鈴々「やぁってやるのだ！」

一刀「なんか卑怯な気がしないでもないが・・・。」

カエル「卑劣さならヤツら魔族の方が上だ、情けは無用だぜ。」

クロノ「っしゃ！いくぜ！」

　絶好のチャンスに、俺たちは一気に駆け出した。

ヤクラ「うおおおっ！おのれ人間どもめーーーっ！！」

愛紗「鈴々！」

鈴々「応なのだっ！」

星「カエル殿！」

カエル「いいだろう！」

クロノ「じゃあ俺は一刀と！」

一刀「お、おう！」

愛紗・鈴々『爪龍虎牙破刃(そうりゅうこがはじん)！！！』

星・カエル『蛙龍双交剣(わりゅうそうこうけん)！！！』

クロノ・一刀『エックス斬り！！！』

　ズ・・・バァァァ・・・ン！！

ヤクラ「ギィヤァァァ・・・！！」

　６人による渾身の連撃を受け、ヤクラは撃破、消滅した。

ルッカ「やった・・・はぁ〜。」

クロノ「あれ？ルッカいま攻撃した？」

ルッカ「残念ながら、ついさっき弾切れよ。それにアンタらに当たったらマズイでしょ？」

クロノ「あ、それもそうか。」

鈴々「にゃ〜。疲れたのだ〜。」

愛紗「こら鈴々、こんな所で寝そべるなどみっともないぞ？」

リーネ「・・・カエル。」

カエル「リーネ様。」

リーネ「やはり来てくれたのですね、ありがとう。」

カエル「王が心配しておいでです。城へ戻りましょう。お前たちも助かったぜ、礼を言う。」

クロノ「いいってことよ。」

星「無事に助け出せてよかったな、カエル殿。」

リーネ「あなた方もありがとうございました。どうか共に城へいらしてください。」

　こうして、無事リーネ王妃を救出した俺たちは、一路ガルディア城へもどったのであった。

　ガタガタ・・・ガタコンッ・・・バカッ！

大臣「ぷはぁっ！やっと出られたわい。あの化け物め、こんな箱に押し込めおってからに・・・あれ？王妃様？おーい王妃様ーっ！本物のワシはほれ、この通り！ピンピンしておりますじゃ！王妃様ーっ！」

...Continued to the next time⇒