酔妖桜
説明
桜Exhibition2014参加作品。

ある満月の晩、助けを求めるように地中から差し伸べられた手のような桜の木に、桜の精は舞い降りた。
桜色の着物をひらひらとはためかせ、手に納まらんとするように枝に絡みつく。
そして木肌を優しく擦ると、哀れな死人が姿を現した。
「そなたの昇天出来ぬほどの悲しみ、癒してやろうぞ」
桜の精は死人の手に杯を取らせると、なみなみと酒をついだ。
「裏切りによる死刑、悦楽に浸る間もなし。
我が身の虚しきこと限りなく、残るは怨恨の想。汝、我を救い給うや?」
死人の枯れた身体に酒が染み渡ると、闇い穴と化してしまった目から涙が零れ落ちた。
桜の精はフッと微笑むと、いつの間にやら飛んできた蝶を指差す。
「あれがそなたを天へ送る。そなたが浮かばれぬままではこの桜は咲かぬゆえな。」
死人が蝶に連れられ昇天すると、桜の精は消え、後には満開の桜が残ったのだった。

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桜Exhibition2014 桜Exhibition  オリジナル 和風 

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