リリカルHS 37話 |
出張から帰ると、エイミィが私に三通の手紙を渡してくれた。
封筒に差出人の名前はなかった。
それに気づいたのか、エイミィが士希から預かったと言ってくれた。
少し予想外な相手からだったので、驚きつつもそれを部屋で読む事にした
三通の封筒にはフェイト・テスタロッサ・ハラオウン様へと日本語で書いてあった。
だけど、封を開け見てみると、そこにはミッドの文字で書かれた手紙が入っていた
一通目
『こんにちは、フェイト。こうしてお手紙を送るのは初めてになりますね。
と言うより、あなたにこうして何かを伝えるのは初めてになるのかな?
あ、自己紹介がまだでした!私は、アリシア・テスタロッサです』
ここまで読み、私はドキリとする
アリシア・テスタロッサ?お姉ちゃん?な、なんで?どうやって?
私の頭は混乱していた。アリシアは既に亡くなったはず。なのにどうして今になって…
私は戸惑いつつも、手紙を読み続ける事にした。
すると、その私の疑問に答えるように手紙は続いていた
『多分フェイトなら、この手紙を読んで驚いてると思います。
だって、死んだ人からの手紙なんですから。
ていうか、死んだ私自身もとても驚いてます。まさかこうして手紙が書けるなんて。
生きてると何があるかわからないねー。まぁ、私は死んじゃったけど』
やっぱり、アリシアはもう…
『っとまぁ、自虐ネタはここまでにして。フェイトの生活はどうですか?
こっちはとても楽しく過ごしています。
リニスがいて、リインフォース・アインスっていう幽霊友達がいて、そしてお母さんもいる。
誰もが幸せなハッピーエンド、とは言えないかもしれないけど、少なくとも私は幸せです』
そっか…プレシア母さんは、アリシアに会えたんだね…
『私は幸せだと思います。皆がいますから。でも、フェイトはどうですか?
フェイトがいろんな、とても優しい人達と暮らして、優しい人達が友達にいるのは知っていますが、それでも、どうしても、私はフェイトが心配です。寂しい思いをしていないか。泣いていないか。だって私は、フェイトのお姉ちゃんだから。唯一の心残りは、フェイトと同じ時を過ごせなかった事です。フェイトとお話する事が出来なかったことです。お姉ちゃんらしい事が出来なかった事です』
フェイト「アリシア…」
手紙から伝わる、アリシアの想いと、優しさ。
それがとても嬉しくて、そしてとても誇らしい。
アリシアは、私の自慢のお姉ちゃんだ…
『私達は、あの世からフェイトを見守っています。あなたの成長を見届けます。
フェイトがしっかり歳をとって、結婚して、長寿を全うして、そしてこちらに来た時に、
あなたの話を聞かせてください。どうか健やかに、幸せに、今を生きてください。
元気でね、フェイト!
アリシア・テスタロッサより」
フェイト「お姉ちゃん…」
うん、約束するよお姉ちゃん。
今を生きて、おばあちゃんになって、そっちにいったとき、いっぱいお話しようね…
フェイト「……ん?」
手紙を見て行くと空白が続き、そして最後に一文を発見した
『P.S. フェイトなら大丈夫だと思うけど、お母さんの事、許してあげてね。
フェイトの代わりにいっぱい怒ってあげたから』
私はアリシアからの手紙を封筒にしまい、次の封筒を開けてみる。
アリシアがあの2人と暮らしているのなら、この残りの手紙は恐らく…
二通目
『ハロー、フェイト!リニスです。元気ですかフェイト?
私はあの世でもテスタロッサ家に仕えて、楽しい日々を送っています。
そんな私の最近の楽しみは、フェイトの入浴をウォッチングする事です。
あ、フェイト?気持ちはわかりますが、お風呂では自重しましょうね』
二通目はリニスからだった。
ただ、いきなり衝撃の告白をされて、少しビクッとしてしまう。
明言はされてないが、私がお風呂で時々している事を指しているのなら、
本当に見守っているらしい。いや、これはもはや覗き?
『それはさておき、執務官任命、おめでとうございます!あなたが私の教えた魔法、技術、知識を活かし、それを人々の為に使っていると思うと、私はとても誇らしく思います。この世で、あなたの側で、あなたの成長を見れない事がとても残念ですが、それでも、あなたが信念を持って仕事をしていること、良き友人に囲まれて楽しい日々を過ごしている事はわかります。私にはそれがとても嬉しく思えます』
フェイト「リニスのおかげだよ…」
今の私があるのは、リニスがとても優しく、それでいて厳しく教えてくれたから。
リニスの想いを受け継いだから
『あ、でもお仕事のし過ぎはダメですよ。フェイトは少し真面目過ぎるところがありましたから、適度に休んで下さい。まったく、自分の体を考えないで没頭するところは、プレシアにそっくりですね』
ふふ、そっか、母さんにそっくりか。怒られちゃったけど、少し嬉しいな
『先生からの最後の指導です。いいですかフェイト?お仕事が好きなのはいいですが、適度に手を抜いて、遊んで、今を楽しんでください。せっかく環境にも恵まれているんですから、お友達とはっちゃけましょう。それが、今を生きる人の義務です。わかりましたか?』
フェイト「うん…わかったよ、リニス…」
『それでは、いつかまた、あなたと話せる日を、
プレシアとアリシアと三人であなたを見守りながら、末長く待ってます。
こっちの生活も悪くありませんが、くれぐれも、すぐに来ることのないように。
いっぱい色んな経験をして、あなたの力でより多くの人々を助けて、
今度はフェイトが私に指導してください。楽しみにしています。
リニスより』
フェイト「うん…私、いっぱい経験するよ…」
それで、いつかリニスより物知りになって、リニスに教えるよ。
私が経験する、楽しかった事や幸せだったことを…
リニスの手紙は、ここで終わりかな?っと思っていると、
アリシアと同じように、最後に一文添えてあった
『P.S. プレシアには私から説教しておきました。
フェイトが恨んでいるとは思えませんが、どうか、プレシアを許してあげて下さい』
最後の一通。アリシア、リニスと来たんだ。恐らく、母さんの手紙だ
フェイト「………」
私は、少し怖かった。
何が書いてあるんだろう。少し、想像がつかない。
母さんに対して恨みはない。これは断言できる。
だがそれでも、私は手紙を見るのに躊躇ってしまう
フェイト「はは、ダメだなぁ…こんな時に、なのはが居てくれたらって思っちゃう」
なのはなら、頼ってくれと言うだろう。普段の私なら、多分頼ってた。でも…
フェイト「これはきっと、私が向き合わなきゃいけない事だ」
手紙に何が書いてあっても、私は受け入れなきゃいけない。私は、母さんの子だから…
三通目
『久しぶりね、フェイト。プレシア・テスタロッサです。
こっちはアリシアとリニスと、仲良く暮らしているわ。
そっちはどうかしら?あのなのはって言う子と仲良くやってるらしいわね』
出だしは、拍子抜けするほど普通だった。だけど、続く文には…
『正直、こうして手紙で書くって形であなたに伝える事ができて、良かったと思ってる。もし、直接あなたと話せる事ができたら、またあなたに酷いことを言っていたかもしれないから。私は素直じゃないから』
………
『あなたは、何を今さらと思うかもしれない。
あなたには、殺されても文句を言えないほど酷いことをしてきたつもりだから。
だから、今さら母親ヅラなんかできない』
母さん…
『でも、これだけは言わせてちょうだい。
あの時、あなたに酷い仕打ちをしてごめんなさい。
自分が抱えていた苛立ちを、あなたにぶつけてしまって、本当にごめんなさい。
あなたがお土産に持ってきた物を台無しにしてごめんなさい。
あの時のあなたの優しさが、嬉しくないわけじゃなかった。
でも、それ以上に辛くもあった。
何故あなたは、あんな酷い女を気にかけたの?何故あなたは逃げなかったの?
何故あなたは、私を助けようとしたの?
私はあなたに母親らしいことなんて、何一つしてあげなかったのに…』
それでも、それでも私は…
『でも、本当に今さらよね。死んでから気づいたんじゃ遅い。あなたを、アリシアのクローンとしてじゃなく、アリシアの妹のフェイトとして見てあげる事が出来れば…それだけが、私の後悔。許して欲しいとは思わない。ただ、謝罪を…本当にごめんなさい』
手紙から伝わる、後悔と懺悔。母さんは本当に、優しいと思う…
『フェイト、今はハラオウン家の養子だったわね。
せめてそこでは、あなたが幸せに暮らせる事を願っているわ。
幸せに暮らして、楽しんで、健やかに過ごしなさい。
決して、私のようになるんじゃないわよ。
それじゃあね、フェイト。迷惑かもしれないけど、陰ながらあなたを見守っているわ。
プレシア・テスタロッサより』
母さんの気持ちは、痛いほど伝わった。溢れる涙が止まらない。
母さんが亡くなってからだけど、母さんが私を、アリシアのクローンではなく、
ただのフェイトとして気にかけてくれたのが、嬉しくてたまらなかった…
フェイト「ぐす…確かこの手紙、士希が届けてくれたんだよね…」
会えるかわからない
それでも、私は伝えたい
伝えなくちゃいけない
この気持ちを……
説明 | ||
こんにちは 今回はフェイトさん視点 あの世から、亡くなった方からお手紙が届く回 |
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フェイト、風呂で何してるんだよ……(ohatiyo) | ||
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