仮面ライダーディケイド 〜Road Of Precure〜 2話 |
彼女達がその男と出会ったのは、一週間ほど前の出来事だった。
「「プリキュア、マーブルスクリュー!!」」
「ザケン、ナァー?!」
彼女達はいつものように、現れたザケンナーを苦戦しながらも倒した後の出来事だった。
「まったく、いつもいつも懲りないわね!」
「でも、なんとか倒せてよかったわ」
今回も得意な能力を持っているザケンナーに驚きながらも、持ち前のパワーでなんとか倒し、二人が気を抜いたところだった。
「ブラック、なんだか最近変なんだメポ」
そういったのは、キュアブラックの腰につけられているポーチに入っているメップルだ。彼はブラックの相棒であり、彼がいないと彼女はこの姿に変身することもできない。
「メップル? 最近変ってどういうこと?」
ブラックの言葉に、メップルは言葉に悩みながら答える。
「なんというか、これまでとは質の違う邪悪な気配を感じると言うメポか……」
「何、はっきりしないわね」
「それは、ミップルも感じてたミポ」
メップルの言葉に同意したのは、ブラックと同じようにキュアホワイトの腰につけらているポーチに入っているミップルだ。彼女はホワイトの相棒で、メップルと同じように彼女がいないと変身できない。そんな彼女の言葉に、ホワイトが驚いたように、
「ミップル、あなたもなの?」
「そうだミポ。最近、ザケンナーと一緒にこれまでとは違う邪悪な気配を感じるミポ」
「どういうこと?」
二人の相棒の言葉に首をかしげる二人。邪悪な気配、といえば彼女たちにはジャアクゾーンしか思い浮かばないのだが、それとは違う邪悪な気配とはなんなのか?
そのことに悩む二人に、声をかけるものがいた。
「なるほど、これがプリキュアの力って奴か。面白れぇな」
「たしかにぃ〜。仮面ライダーとは違った脅威になりそうだなぁ」
「……誰!?」
振り返るブラックとホワイト。そこには、革ジャンにジーンズ、黒い帽子を被った口を尖らせるように笑う若い男性と、大して浮浪者のように薄汚れた服に身を包む中年ほどの男性。どちらも、不気味な笑みを浮かべている。
「お兄さん達、なんでここに?」
「あなた達……何者?」
普通に驚くブラックに対してホワイトが警戒しながら言った。彼女は気づいていた、この世界はジャアクゾーンが作った特別な空間になっており、一般人ならば入ることはできないし、入れたとしても気を失うからだ。
「へっへっへ、そりゃぁ、知らねぇよな」
「答えなさい!」
笑って答えるだけの二人にホワイトが声を荒げると、二人は笑うのをピタっと止める。
「いいぜ、教えてやるよ」
「俺たちはぁなぁ〜」
バリバリっと、服が内側から放たれる力によって裂けていく。革ジャン男も、浮浪者男も体が膨張するように膨れ上がると、その姿を異形のものへと変わっていく。
革ジャン男は全身がトカゲのような鱗で覆われると、首周りにエリマキが現れ、爪が矢じりのように鋭くなる。
「俺の名前は、トカゲロイド!」
そして、浮浪者男は全身が緑色になるとカメレオンを思わせるように瞳が大きくなり、浮き出す。腕は鋼鉄に覆われて、万力のような形へと姿を変える。
「俺はぁ、カメレオンロイド!」
突然の変身に驚くブラック、ホワイトの前で二人の異形は叫ぶ。
「俺達はスーパーショッカーに使える改造人間さ!!」
「イーッ!」
「イーッ!」
その言葉に合わせるように、町の至る場所からショッカー戦闘員たちが現れると、彼女達を取り囲む。
「な、なんなのこいつら!」
「ブラック、こいつらだメポ! メップルたちが感じていたもう一つの邪悪な気配は!」
「じゃあ、彼らが?!」
驚くことしかできない二人を、トカゲロイドは鼻で笑うと、待機している戦闘員達へと叫ぶ。
「やれ、野郎ども! プリキュアを倒してこの世界をスーパーショッカーの物とするのだ!!」
「イーッ!」
「イーッ!」
いっせいに襲い掛かる戦闘員達。ブラックとホワイトの顔が女の子のものから戦士のものへと変わる。
「ホワイト!」
「ええ!」
二人は互いの背中を護るようにあわせると、最初に飛び掛ってきた戦闘員をブラックは拳で、ホワイトは足で吹き飛ばす。
「イーッ!?」
「イーッ!?」
風に飛ばされる木の葉のように、多くの仲間を巻き込みながら吹き飛ばされていく戦闘員。その感触にブラックは、
「こいつら、そんなに強くない……だったら!」
ホワイトもその言葉に頷く。
「蹴散らす!」
ブラックのパンチが戦闘員をなぎ倒し、ホワイトの腕が戦闘員を宙へと投げ飛ばす。さして強い改造をされてない彼らでは、ブラックとホワイトの二人を止めることはできない。
全員を片付けるのに、ものの数秒もたたずに戦闘員達は地に倒れる。
「どんなもんよ!」
「この程度の力では、私達は倒せないわ!」
ブラックの言葉と、ホワイトの啖呵に対して、二人の怪人は余裕の体を崩さない。
「さすが、この世界を護っているだけのことはある」
「だけどぉ、俺達をこいつらと一緒にするなよぉ?」
トカゲロイドが仰け反るように上を向け、息を吸い込むと、それを二人に向けて一気に放つ。彼の放った空気は灼熱の炎へと変化すると、ブラックたちへと襲い掛かる。
「きゃあああ?!」
とっさに腕で顔を庇うと、巻き込まれないように後ろへと飛んで逃げるも、
「そう簡単にぃ、逃がさねぇよ!」
彼女達の真後ろへと、突然現れるカメレオンロイド。万力のような形の腕を振り上げると、がら空きの背中へと叩きつける。重厚な音と彼女達の悲鳴が混じりあい、二人は再び炎の中へと叩き込まれる。
「ぐ、ぐぅ……」
「強い……!」
炎が止んだ後に、なんとか立ち上がる二人。ボロボロ担った二人を、邪悪な笑みを見つめる二人。
「なんだ、伝説の戦士とか聞いていたがこの程度かよ。拍子抜けだぜ」
トカゲロイドはつまらなそうにそういうと、冷酷な瞳と笑みを浮かべながら告げる。
「それじゃあ、トドメといくか……?」
その言葉に、身を硬くする二人。だが、
「そこまでだ! スーパーショッカー!!」
少し低めの、男性の声が響く。とっさに振り返るトカゲロイドが見たのは、トレンチコートに帽子を深く被ったメガネをかけた男性。その男の名前は……
「てめぇは、ナルタキ!」
鳴滝、ディケイドを危険視して何度も彼の行く手を邪魔した男だ。一度はショッカーにさえも手を貸した彼が、今度は彼らに向かって敵意を向けている。
「スーパーショッカー、この世界をお前達の好きなようにはさせんぞ!」
「ナルタキィ……スーパーショッカー壊滅後、消えたお前が今更何を」
「黙れ!」
鳴滝の一括とともに、銀色のベールが現れその場を通り過ぎる。そして、そのベールが通り過ぎたとき、新たに二人の戦士が現れていた。
「兄貴……見てみなよ、あれはワームかな?」
「さぁな……だが、俺達の敵みたいだな」
緑と黒の、バッタを思わせるような姿をした戦士。仮面ライダーキックホッパーにパンチホッパー。互いに、地獄兄弟と称される戦士だ。
「最後通告だ。この世界から今すぐ出て行け、さもなくば……」
「ッハ! さもなくだ、なんだって言うんだよ? そのもやしライダーたちが相手でもしてくれるのか?」
鳴滝の言葉を、トカゲロイドは鼻で笑う――――だが、
「……いまお前、俺たちを笑ったか?」
「……あん?」
緑色の戦士、キックホッパーがその笑いへと強く反応する。
「お前、今俺たちを笑ったよなぁ?」
二人の戦士は威嚇するようにトカゲロイドへと歩を進める。対するトカゲロイドも、口の端を吊り上げるように笑う。
「面白ぇ、やってやろうじゃねぇか!」
トカゲロイドは思い切り息を吸い込むと、先ほどと同じように灼熱の炎を二人に向けて噴出す。迫りくる炎を目前にしながらも焦りを見せない。ただ、泰然自若とたっている。
ただ一つ、腰を一つ叩く。
-CLOCK UP!-
その瞬間、二人の姿が消えた。
「!!」
驚くトカゲロイドに襲い掛かるのは、衝撃。ただ、己の体が打ち上げられていくのを、抵抗することさえもできずに見ていることしかできない。
(こ、これが―――!)
クロックアップシステム。カブトの世界のライダーだけが持つ特殊な能力で、超高速で動く彼らを捉えることができるのは、全てのライダーの中でもごくわずかしかいない。高速で打ち付けられていく拳と蹴りの前に、彼の銃弾をも弾く皮膚が紙のように歪んでいく。
-Rider Jump!-
きっと、その音さえも、トカゲロイドは聞き取ることができなかっただろう。
-Rider Pumch!-
-Rider Kick!-
そして、ブラックたちも二つの閃光が挟み込むようにトカゲロイドを襲った風にしか見えなかった。
「ギャアアアアアアア?!」
断末魔の叫び声とともに、炎となって散っていくトカゲロイド。その炎の中から、地面へと降り立つ二人の戦士。その姿を見て、カメロンロイドは悔しそうに鳴滝をにらみつけると、
「ナルタキィ……! 憶えていろよ……!」
そう、捨て台詞を吐いて消えていく。同時に、銀色のベールが再び現れると、キックホッパー、パンチホッパーを包んで運び去っていく。
「助かった……の?」
未だに状況が把握できないブラックに、鳴滝は静かな声で言った。
「君達に、伝えないといけないことがある」
第2話「最強の絆/ふたりはプリキュア!」
「鳴滝さんが言ってたとおりね、ディケイド! あなたがこの世界を破壊しに来るって!」
「だから、人の話を聞けって言ってるだろ!」
士が何を言っても、ブラックとホワイトは聞く耳を持たない。
「お、落ち着いてくれよ、ブラックちゃんもホワイトちゃんもさ」
「あなたはさっきの……?」
見かねたクウガことユウスケが間に入る。ディケイドのことは聞いてても、彼のことは聞いていないのか、首をかしげる。
「さっきも言ったろ? 俺達は君達を助けに着たんだ、敵じゃない」
「けど……ディケイドは……」
「頼むよ、俺達の話を聞いてくれないか」
出たと同時に吹き飛ばされたものの、彼女達を護るために盾になってくれたのも確かである。彼女達が、如何しようかと顔を見合わせたとき、
「相変わらず、嫌われているようだね、士」
乾いた銃声とともに、弾丸がプリキュアの足元に打ち込まれる。とっさに声のしたほうに顔を向ける四人。そこには、ディケイドによく似た青いライダー、
「ディエンド……海東か!」
ディケイドと同じ能力を持っている仮面ライダーディエンド。その正体は、世界中のお宝を狙っている男、海東大樹。怪盗……と言えば聞こえはいいが、見境なく物を盗むその節操のなさから多くの人々からこそ泥扱いされている。
「お前、なんでこの世界にいる?」
「愚問だな士、僕が世界に現れる目的なんて一つしかない……ズバリ」
海東は人差し指で銃の形を作ると、ブラックとホワイトに向ける。
「お宝さ、この世界のね。……プリズムホービッシュという名前のね」
「「!!」」
彼女達の顔がこわばる。
「光の園のお宝で、全てを生み出す力をもっているって聞いたよ。それを僕に、くれないかな?」
「ふざけるなメポ!」
「あれは光の園の大事なものミポ! 渡すことはできないミポ!」
その言葉に、ディエンドは少しだけ考えるそぶりを見せるも、
「それじゃあ、いつもどおり、奪わせてもらおうかな?」
二枚のカードを取り出すと、手に持っている銃型の変身システム、ディエンドライバーの先端を引き出す。それによって現れたスリットに、そのカードを差し込む。
-kamen ride-
「君達には、この二人がちょうどいいかな」
引き金を引く。
-ORGA!!-
-SYGA!!-
現れるのは、黒いローブを纏い、漆黒の体に金色のラインが走る、剣を持った戦士。―――仮面ライダーオーガ
もう一人は、オーガに比べて軽装な姿だが、背中に大きなフライングシステムを背負っている戦士。―――仮面ライダーサイガ
「俺は、人間を許さない……!」
静かに、それでも堪えきれない怒りを滲ませてオーガが呟き、
「It's show time!!」
声質こそ明るいが、親指を立てて首を掻き切るポーズを取るサイガ。
漆黒のオーガと純白のサイガ。そのどちらとも、異世界でとはいえファイズを圧倒した強敵ライダーだ。
「このライダーは!」
「そうさ士、君が協力してくれたお陰で手に入ったライダーだ」
オーガはゆっくりと歩きながらキュアブラックへ、サイガはフライングユニットを展開させると空へと飛び上がり、キュアホワイトへと襲い掛かる。
「はぁっ!」
「!!」
振り上げられたオーガの拳、それに合わせてキュアブラックも拳を振り上げて叩きつける。だが、
「きゃあ!!」
オーガの圧倒的なパワーの前にその拳は弾かれ、体ごと吹き飛ばされる。オーガのパワーは、ファイズとの決戦において彼を一撃で観客席に吹き飛ばすほどのパワーだ。力自慢のキュアブラックでさえも叶わない。
「Let's enjoy!!」
空へと舞い上がったサイガはフライングユニットに装備されている機関銃で、キュアホワイトを上空から狙う。眩しいマズルフラッシュと共に、オルフェンクでさえも致命傷を与える弾丸が放たれる。それを、超人的な身体能力で回避しつつ、
「はぁああああ!」
ビルの壁を蹴って一気に肉薄するが、
「Lazy」
巧みな操作でフライングユニットを動かすと、キュアホワイトの蹴りを回避。そのがら空きの背中へと強烈な蹴りを放つ。
「きゃあああ!」
吹き飛ばされ、ビルへと突撃するキュアホワイト。壁が砕け、瓦礫が彼女の体へと降り注ぐ。
サイガはオーガほどのパワーこそ持っていないが、ファイズがアクセルフォームを発動させなければ捕らえることもできなかった高い俊敏性を持っている。また、飛行能力を持っている数少ないライダーだ。
「な、なんのよこいつら……!」
「つ、強い……!」
突然現れた強敵の前に、圧倒される二人。キュアブラックへとオーガが剣を振り上げ、サイガが銃口をキュアホワイトへと向ける。オーガの剣が振り下ろされ、サイガが容赦なく引き金を引く。
―――だが、
「そうは」
「させない!―――超変身!」
オーガの剣を、ディケイドがライドブッカーソードモードで、サイガの銃弾を紫のクウガ、タイタンフォームで受け止める。
「やれやれ、少しは丸くなったかと思ったが、やることはやっぱりこそ泥か、海東」
「邪魔をするのかい、士?」
「当たり前だ」
彼女達の前に、立ちふさがるディケイドとクウガ。
「助けて……くれるの?」
「誰も、お前達の敵だと言ってないだろうが」
オーガの剣を弾いて、ディケイドが答える。だが、相手は一筋縄ではいかない相手だ。
「そっちの白いのはお前に任せるぞ、ユウスケ!」
「ああ、黒いほうは頼んだぜ士!」
クウガはパワーがあるがスピードのないタイタンから俊敏性の高い青いクウガ、ドラゴンへと変わる。近くにあったパイプを引き千切ると、ドラゴンロッドへと変形させると、上空にいるサイガを睨み付ける。
「はああああ!」
ドラゴンの跳躍力で一気に飛び上がるとサイガへと向けてロッドを振るう……が、
「oh,lazy」
自由に空を飛べるサイガは瞬時に高度を上げると、ドラゴンよりもさらに上へと昇る。ロッドは悲しく空を切り、同時に上空から無数の弾丸が降り注ぐ。
「うわあああああ」
叩きつけられるクウガ。地面が砕け、言葉にならない苦悶の声が漏れる。
「はぁああああ!」
ディケイドはライドブッカーを振り上げてオーガに叩きつける、が。
「……」
オーガはその攻撃を意に介さずに、腕で受け止める。ライドブッカーの刃は、火花こそ散るが装甲を切り裂くことは叶わない。そのまま、まっすぐにディケイドへと叩きつける。重厚な音と共にディケイドの体が吹き飛ばされる。
「ぐぅ……!」
圧倒的なパワーの前に歯が立たない。
「帝王のベルトのライダーを馬鹿にしちゃいけないよ。ギアシリーズでは最高の出来なんだから」
「士君、ユウスケ!!」
ディエンドが余裕の体を崩さずに言い、夏海が焦りを含んだ叫び声を上げる。圧倒的な能力でライダーとプリキュアを圧倒するオーガとサイガ。さらなる攻撃を、加えようとしたとき。
「駄目ポポォー!!」
小さな声が響く。その場にいた者たちが、いっせいに声のしたほうに顔を向けると、
「……うさ、ぎ?」
耳の長い、白と黄緑色の王冠を被った動物。
「ポルン!」
キュアブラックが叫ぶ。その小さな動物はメップル、ミップルと同じく光の園の住民、「未来へ導く光の王子」の冠を持つのだが、少し我侭で幼い。
「プリキュラを、苛めたら駄目ポポー!!」
その叫び戸と同時にポルンの体が光りだす。
「光の力を受け取れポポォー!」
強い二筋の光が、キュアブラックの左腕と、キュアホワイトの右腕へと飛ぶ。彼女達の腕へととんだ光は、ブレスレットへと姿を変える。
「よっしゃぁー!」
キュアブラックが嬉しそうに叫ぶ。
レインボーブレス。ポルンの力によって生み出される、プリキュアの身体能力を飛躍的に向上させるアイテムだ。装着と同時にプリキュアたちのダメージが回復するという優れものだ。
「なるほど、出し惜しみはなし、だな」
その姿を見て、ディケイドも変身アイテム、ケータッチを取り出す。そこに、マークだけが書かれた特殊なカードを差し込むと、ケータッチのタッチパネルにカードに書かれた絵柄が映る。そのマークを、一つずつなぞっていく。
-KUUGA-
-AGITO-
-RYUKI-
-FAIZ-
-DLADE-
-HIBIKI-
-KABUTO-
-DEN-O-
-KIVA-
-Final Kamen Ride DECADE!-
ディケイドの額と、右肩から左肩まで一列にカードが並び、瞳の色もマゼンタへと変化する。全てのライダーの力を集めたディケイド最強のモード、コンプリートフォーム。
「行くぞ、キュアブラック!」
「任せてよね!」
「ユウスケさん!」
「わかった!」
ディケイドとキュアブラックがオーガに、クウガとキュホワイトがサイガへと走る。
「はぁああああ!」
レインボーブレスによって身体能力が飛躍的に向上したキュアホワイトは、一気に跳躍サイガへと向かって蹴りを放つ。サイガは再び上昇することでそれを回避させようとするが、
「そうはさせるか!!」
挟み込むように背後からクウガがドラゴンロッドをサイガのフライングユニットへと突く。ドラゴンロッドはフライングユニットへと食らい付き、貫く。完全に動きの止まったサイガへと、
「はぁあああああ!」
キュアホワイトがその腹部へと蹴りを叩き込む。
「sit!」
飛行機能を破壊され、地上へと落下するサイガ。何とか立ち上がると、フライングユニットを切り離し、トンファーを手に持つと構えると、地上へと降り立ったキュアホワイトへと襲い掛かる。
「Haaaaa!」
「飛行能力さえ、なくなれば!」
トンファーを振り上げ襲い掛かる相手に向かって、キュアホワイトは体勢を低くすると相手の脛に向かって強烈な蹴りを叩き込む。足が強制的に止められ、体勢が崩れたサイガの胸と腰に手を多くと、
「はぁあああああ!」
そのままサイガの速さを利用して後方へと投げ飛ばす。
「ユウスケさん!」
「おう!」
クウガがドラゴンロッドを構え、その先端を投げ飛ばされたサイガへと向けて突く。ドラゴンロッドはサイガの肩口へと食らい付き、そこから封印エネルギーを注ぎ込む。ドラゴンフォームの必殺技、スプラッシュドラゴン!
「What?!」
攻撃を受けた肩口に浮かび上がる紋章。同時に苦しみだすサイガ。
「Ga,Gaaaaaaaa?!」
最後の断末魔の叫び声と共に、消滅していった。
「さっきはよくもやってくれたわね!」
キュアブラックは一気にオーガへと肉迫すると、拳を振り上げて叩きつける。オーガはそれを受け止めるが、さらに拳を叩きつける。ひたすら連打を繰り返して、反撃を許さない。レインボーブレスによる身体能力向上により、なんとかパワーが互角にまで渡り合えている。
「こんのぉおおおおおおお!」
だが、それでも流石はオーガと言ったところか。キュアブラックの攻撃を全て受け止める。
「……舐めるな!」
「!」
オーガがキュアブラックの拳を弾く。思わず体勢の崩れるキュアブラックへと、剣を引き抜く。
-Exceed Charge-
ベルトのバックルにつけられている携帯のエンターキーを押すと同時に、手に持っている剣へとフォトンエネルギーが注入されていく。理論上、刃が無限まで伸びるオーガの必殺技、オーガストラッシュ。それを、振り上げる。
「キュアブラック、飛べ!」
「!」
後ろから聞こえた言葉に、キュアブラックは躊躇うことなく真上へと飛んだ。開ける視界の向こう側には、ライドブッカーをガンモードへと変形させたディケイドの姿。
-FAIZ! Kamen Raide-
ディケイドの横に現れる、真紅の仮面ライダー。
-BLASTER-
ファイズブラスター。ディケイドがカードを取り出し、腰の横に取り付けられたディケイドライバーに差し込むと、その動きを完全にトーレスする。
-Final Attack Raide-
ディケイドの並んでいる9つのカードが全てファイズブラスターのものへと変わると、ディケイドとファイズブラスターは同時に手に持っている銃を構える。
-Fa,Fa,Fa,FAIZ!!-
ディケイド、そしてファイズブラスターから同時に、必殺技フォトンバスターが放たれる。二つの巨大なエネルギーは振り下ろされたオーガストラッシュを受け止め、拮抗した後に打ち砕く!
「!!」
砕け散っていく刀身を見つめながら、オーガも光の中へと消えていった。
「ふむ……やっぱり、一筋縄ではいかないようだね」
ディエンドはその光景を見て、小さく呟くと、
-Attack Raide Invisible-
その場から姿を消すのであった。その姿にディケイドは、
「まったく、あのこそ泥野郎め……」
悪態をつくディケイドの隣では、
「ブラック、大丈夫だった?!」
「うん、大丈夫だよホワイト。そっちは?」
「私も大丈夫、ユウスケさんが助けてくれたから……」
彼女達は、互いの無事を確認しあってからディケイドたちへと向く。その表情は、どこか申し訳なさそうだ。
「ごめんなさい、私達勘違いしてたみたいで……」
「さっきは助けてもらってありがとうございます」
彼女達の言葉に、ディケイドは、
「気にするな、もう慣れっこだ」
全員が変身を解除していく、ディケイドも変身を解除し、エプロンにバンダナ姿へと戻る。その姿を見て、顔を見合わせるプリキュアの少女達。
「ん、どうした?」
「いや、その姿、まるで……」
茶色の髪の少女が何かを言おうとしたとき、
「お〜い、門矢くーん、探したよー!」
遠くから声が聞こえ、全員が顔を向けると濃い青のエプロンに赤いバンダナの女性。彼女を見て、真っ先に反応したのはプリキュアに変身していた少女達だ。
「アカネさん!」
アカネ、と呼ばれた女性は、士たちと、少女達を見て、少し驚いたような顔を浮かべる。
「なに、もう知り合いになっちゃったの?」
「アカネさん、この人知ってるの?!」
茶色の髪の少女が驚いたように言うと、アカネは士に近づき、肩に手を置いて、
「紹介するよ、門矢士君。今日からバイトとして入ってもらうから」
笑顔での紹介、一拍を置いて、
「えええええーー?!」
驚きの声が公園へと響くのであった。
深い森の奥にたたずむ、一つの洋館。昼間であろうとも、朝日の一つも差し込まない深い霧の中に存在するその館は、この世を止み似つつ込もうとしているドツグゾーンの本拠地である。
「なるほど、これが仮面ライダーというものか」
髪の白い初老の男、闇の眷属であり、ジャアクキングより生み出された種の三者の一人であり、リーダーのベルゼイが呟くよう言った。
「そうだ、我らスーパーショッカーの野望を邪魔する者たちだ」
そう答えたのは、ファラオのようか被り者をつけた男。彼の名前は、暗闇大使。元バダン所属の男であり、ショッカー所属の地獄大使の実の兄弟であり、その姿も酷似している。
「スーパーショッカーか、口は大きいが実力はたいしたことないようだな。ああもあっさり倒されるとはな」
暗闇大使を挑発したのは、20代前半ぐらいの男性。非常に真面目そうなイメージを与えるが、彼も種の三者の一人、ジュナ。
「そうね、仮面ライダーにあっさり負けちゃったしね」
ジュナと同じような年齢で、茶色の髪をロングに伸ばしている大人しそうな女性、同じく種の三者の一人、レギーネ。
二人の小馬鹿にするような言葉に対しても暗闇大使は激昂するのではなく、逆に嘲るように二人に言った。
「ふん、貴様らのザケンナーとかいう怪物も、プリキュアにはあっさり倒されていたではないか」
「なに?!」
「やめないか。仲間同士で争って如何する」
怒りに声を荒げるジュナをたしなめるベルゼイ。その姿を、見下すような表情で見つめている暗闇大使。
「確かに、我らの怪人では仮面ライダーには敵わないかもしれない……そして、ザケンナーだけではプリキュアに敵わないかもしれない……」
「なにがいいたい、暗闇大使」
ベルゼイの言葉に、暗闇大使は不適な笑みを浮かべて答える。
「1つ1つで敵わないのならば、それを組み合わせればよいのだ」
「美墨なぎさです。さっきは話を聞いてなくてごめんなさい……」
「メップルだメポ!」
茶色の色でウルフカットの少女、美墨なぎさ。そして、そのパートナーである選ばれ勇者ことメップル。
「雪城ほのかです。さっきは助かりました」
「ミップルメポ!」
黒い色でロングの少女、雪城ほのか。同じく、彼女のパートナーである希望の姫君ことミップル。
「ポルンだポポ!!」
一番元気よく答えたのは、先ほどのポルン。
「門矢士だ」
「小野寺ユウスケ、ヨロシクね」
「光夏海です、よろしくおねがいします」
そして、士たちも自己紹介を返す。
「それにしてもびっくりしました。なぎささん達みたいな小さな女の子があんな化け物と戦っているなんて」
「いや、私達も偶然巻き込まれたというか、メップルが降ってきたから、がむしゃたらに戦ってただけで……」
瞳をきらきら輝かせて言う夏海になぎさは照れながら謙遜。一方で士はタコカフェと書かされた車の中で、千枚通しを手にタコヤキを作りながらその話を聞いている。
「それじゃあ、一週間前からスーパーショッカーの残党が?」
「はい。ザケンナーを倒してから頻繁に出てきて」
「ホント、面倒な奴らよね」
なぎさは頬を膨らませながらも、タコヤキを口へと運ぶ。その姿を微笑ましそうに見つめるほのか。最後の一つを口に運んでから、
「士さーん、タコヤキもう一個お願いしまーす!」
「もう、なぎさったらまだ食べるの?」
「だって、ショッカーとかいう奴らと戦ってたらお腹減ったんだもん」
「ずいぶんと仲良しなんだな」
焼き上がったばかりのタコヤキをなぎさの前に置きながら、士は言った。
「勿論、だってほのかは私の親友だもの」
当たり前だ、と言わんばかりになぎさは言った。
「最初は喧嘩もしたけどね」
「まぁ……そんなこともあったかな」
ちょと茶化すようなほのかの言葉に恥ずかしそうに頭をかきながら誤魔化すなぎさ。
「まったく、その仲の良さを他のライダーどもも見習ってほしいもんだ」
士が感心するように呟く。無理もない、全員が全員とは言わないが、共通の敵を持っていながらも共闘できないライダーはわりといるからだ。
「士さんとユウスケさんも仲いいじゃないですか」
「勿論さ、だって俺達親友だもんな士!」
「暑苦しい引っ付くな」
ユウスケも嬉しそうに言うが、士の対応は中々冷たい。しかし、それを見つめながら夏海は、
「男の子って素直じゃないですよね」
と、微笑みながら答える。彼女は、ユウスケがどれほど士のことを信頼しているかを知っているし、士がどれほどユウスケを信頼しているかも知っているからだ。
「そんなことよりも、問題はこれからだ。スーパーショッカーとやらがドツグゾーンとかいう連中と手を組んだことは間違いないだろう」
「だけど、ドツグゾーンの本拠地なんて私達も知らないし……」
なぎさが困ったように言った。無理もない、基本的に相手が出てきてから戦うことが多いため、彼らの本拠地など知らないのだ。
「やっぱ相手が出てくるのを待つしかないのか」
「どうせせっかちなあいつらのことだ、すぐに現れそうだけどな」
ユウスケの言葉に、士もあまり気にせずに答える。どうせ彼らの目的もこちらなのである待っていれば相手のほうからやってくるであろう。
「つまり、餡子より海栗がましってことね!」
「なぎさ、それを言うなら案ずるよりも生むが易し、でしょ」
なぎさの言葉にほのかがしょうがないなという風に突っ込む。それに対して、士たちも笑いがこぼれる。そんな中、士は一枚のカードを取り出す。何か描かれているのだが、絵柄がぼやけて何か判断できない。
「楽しそうだな、プリキュア」
―――和気藹々とした雰囲気を冷たい言葉が引き裂いた。
士たちが一斉に振り返ると、そこには髪の毛を逆立ててた男に、髪をロールにして幾重にも重ねた女性。どちらも自分体にぴったりと張り付いたウェットスーツを着てるような格好だ。先ほどと姿は変わっているが、ジュナとレギーネである。
そして、彼らの後ろに立っているのは、暗闇大使。士たちを見つめると、獰猛な笑顔を浮かべ、その手に持っている鞭で地面を叩く。
「始めまして、門矢士……いや、仮面ライダーディケイドよ!」
「お前、地獄大使?! 何故貴様が生きている!?」
士の驚きの声に、暗闇大使は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「私をあんな奴と一緒にするな!! 我が名は暗闇大使、栄光あるバダン出身だ!」
「暗闇大使だと……!」
一度、激昂するも暗闇大使は気を取り直し、
「まぁよい。今日は貴様らを倒し、この世界を我らが掌中に治めるためにきたのだからな」
「面白い、やれるものならやってみろ」
「ふざけるんじゃないわよ!」
「貴方達なんかに、この世界を私はしない!」
士、ユウスケ、なぎさとほのかがそれぞれのポーズを取る。
「「変身!!」」
-Kamen Ride DECADE!!-
「「デュアル、オーロラウェーブ!」」
士とユウスケの体を鎧が包み込み、なぎさとほのかの体を七色の光が包み込む。現れるのは四人の戦士。
「光の使者、キュアブラック!」
「光の使者、キュアホワイト!」
「「ふたりはプリキュア!」」
「闇の世界の僕たちよ!」
「さっさとお家に帰りなさい!」
「スーパーショッカーの残党がいるなら話が早ぇ。今すぐ地獄に送り返してやる」
その言葉に、暗闇大使は口を歪ませるように笑い、答える。
「私を甘く見るなよディケイド……愚かな地獄大使や、己の体を失いガイアメモリになるしかなかった死神博士と私を一緒にするなよ」
暗闇大使はマントを翻し、続ける。
「いまでこそ、バダンはスーパーショッカーの一員となっているが、元々我らがバダンはショッカーからジンドグマまで続く悪の秘密結社の粋を集められて完成した組織……貴様らなんぞにやられるほどやわな組織ではないわ!」
「あんた達、いい加減にしなさいよね!!」
その言葉に、キュアブラックが噛み付く。
「バダンだかパンダだか知らないけどね、勝手に人の世界に着てまで暴れるんじゃないわよ! ドツグゾーンだけでも迷惑だってのに、これ以上変なのが増えたらたまらないんだからね!」
「気にすることはないさ、キュアブラック……貴様らは、今日ここで私達に倒されるのだからな!!」
暗闇大使がそう叫ぶと同時に、彼らの足元に赤く輝く謎の円陣が現れる。どこか魔方陣を髣髴とさせるようなその模様を見て、ディケイドが叫ぶ。
「これは……時空魔方陣!?」
それこそ、バダンの持っている最大の技術力。どれほど距離が離れていようとも、一瞬にして物体を運ぶという驚異的な能力だ。驚いている間にも、ディケイドたちの足を魔方陣が飲み込んでいく。
「お前達の弱点は……」
「一人では何もできないところよ!」
ジュナとレギーネが言葉を続ける。
「ライダー、貴様らは確かに強い! だが、たった一人きりになってもその強さが維持できるかなぁ!」
暗闇大使を睨み付けるディケイド。
「さぁ、暗黒の暗闇の中で、一人っきりでどう戦えるかな、仮面ライダー、そしてプリキュアよぉ!!」
「ブラック!!」
「ホワイト!!」
ホワイトの叫び声にも近い声に、キュアブラックは手を伸ばす。すでに彼女達も腰まで飲み込まれてる。互いに必死に手を伸ばしながら、なんとか指が触れそうなったとき。
「そうはさせんよ!」
「「!!」」
暗闇大使の右腕がうなり、鞭が二人の手を弾く。己の手を弾いた鞭の向こう側で、魔法陣へと飲み込まれていくキュアホワイト。
「ブラックゥーー!」
「ホワイトォーー!」
その映像を最後に、ブラックも魔法陣へと飲み込まれていった。
「士……!」
「あいつらも、厄介なものを持ち出してきやがったな……ユウスケ」
肩口まで飲み込まれながら、ディケイドはクウガへと顔を向ける。
「死ぬなよ」
「……! ああ、お前もな!」
その言葉にディケイドはフッと笑う。そして、最後に彼らも魔方陣の中へと飲み込まれていった。
「さぁ、これからショーの始まりだ……!」
自らも魔法陣へと入り、消えていく暗闇大使たち。
「士君。ユウスケ、プリキュア!」
残された夏海たちが、その場で探すも、彼らの手がかりになりそうなものは一つもない。
「皆……消えちゃったポポ」
ポルンが、小さく呟いた。
「……ここは?」
ディケイドは、気づけば広い公園のような場所にいた。彼の目の前にはバスケッドゴールがつけられている。まわりには誰もおらず、他の皆がどこにいったのかもわからない。
「ち、面倒だが探すしかないのか」
そう、彼が足を一歩踏み出そうとしたとき、
「まて、ディケイド」
一つの声が彼を呼び止める。振り返るディケイド、そこにいたのは……
「鳴滝……」
彼のことを敵視し続けている男、鳴滝であった。
「ディケイド、貴様のお陰で、この世界まで破壊されてしまった」
「……また、俺のせいか」
うんざりするようにディケイドは答える。この男、初めて会ったときからこの調子なのだ。いい加減に彼でもうんざりしてくる。
「残念だがお前を相手する時間はない」
「私とてできれば君と話なんかしたくもないが、状況はそうも言ってられんのでな」
鳴滝はそういうと、指をパチンと鳴らす。すると、彼がライダーを呼ぶときなどに使う銀色のベールが姿を現す。
「今度はなにをする気だ」
「君を、キュアブラックの場所まで送る」
「何……?」
突然の鳴滝の言葉にディケイドは眉をひそめる。無理もない、今まで彼がしてきたことは基本的に妨害であり、彼を助けるなどということはしてないからだ。
「勘違いするなよディケイド。スーパーショッカーを相手にするのはプリキュアではなくて貴様でなければならないのだ」
「なるほど……いまだけ利害が一致しているということか」
「そういうことだ。……この世界にライダーが生まれる前に早く行け」
ディケイドにそういうと、背を向ける鳴滝。
「だが……感謝だけはしておく」
その言葉に、鳴滝は吐き捨てるように言う。
「貴様の感謝など、怖気が走るだけだ」
「う、うう……ここは」
クウガは朦朧としながらも何とか意識を取り戻した。どこか、薄暗い場所にいる。
「ユウスケさん、大丈夫ですか?!」
すぐそばで声が聞こえ、顔を向ければ、そこにはキュアホワイトの顔が見える。
「ホワイト、無事だったのか……ここは?」
「わかりません、ブラックや士さんもいなくて……」
『闇の世界にようこそ』
「「!!」」
突如聞こえてきた声に構えを取るクウガ。だが、どこにもその声の主は見当たらない。
「闇の世界……! ミップル!?」
ホワイトは何かに気づいたようにパートナーである妖精に声をかける。だが、帰ってくるのは弱弱しい声。
「闇の力が強くて、苦しいメポ……体中から力が抜けていくメポ」
『ここは闇の力であふれている。光の園の住民には耐えられないだろうなぁ……そして』
「う、ぐ……!」
「ユウスケさん?!」
苦しそうにひざを突くクウガ。
『たとえ、仮面ライダーであろうとも、闇の力には抵抗できまい……元が、人間である以上な』
「ミップル、ユウスケさん、しっかりして!」
『お前達は無力も同然だ』
『そのまま闇に飲まれ、朽ち果てていくがいい……!』
暗闇の中で響くベルゼイの笑い声。苦しむクウガとミップルをそばに、キュアホワイトは何もできない。
キュアブラックは、ただひたすらに暗い雲で覆われた街を走り続けていた。
「ホワイトォー!」
『お前達は、一人では何もできない』
『だから必死になって探す』
『相手を探すフリをして、本当は無力な自分を安心させたいだけなのだ』
己の心に囁きかける、悪魔の言葉に戦いながら。
『結局お前は、自分のことしか考えていない!』
『そうだ、全ては自分のためだ!』
『自分だけのためなのだ!』
「どこ? ホワイト、どこなのぉー!?」
必死に、心に囁きかけてくる言葉を否定しながら。彼女はただひたすらにキュアホワイトを探し続ける。
「闇の力がだんだん強くなってきてるメポ! きっとここらへんのどこかにいるはずだメポ!」
「ホワイト、ホワイトどこぉー!?」
相棒のメップルが言葉をかけるも、その言葉を聴くだけの余裕がブラックにはない。まるで母親を探す子供のように、叫びながらただがむしゃらに駆け回る。
「ブラック落ち着くメポ! 落ち着いてホワイトの居場所を探るメポ!」
そんなキュアブラックの姿を、心の言葉は嘲笑う。
『無理もないわよね!
『あんたたちはずぅっと二人で戦ってきてた』
『それが今じゃバラバラだもの』
『不安でしょ』
『きっと恐いんでしょ』
『だってあんた達一人一人じゃ何も出来ないんだもの!』
「やめて……やめて……!」
「ブラック、あいつの言葉に耳を貸したら駄目ミポ!」
だが、それでも悪魔のささやきは執拗に、彼女の心へと言葉を投げつけ続ける。
『だから言ったじゃない』
『バラバラなあんた達は何の役にも立たないんだよ!』
「もうやめてぇぇぇぇ!!」
その言葉は、彼女の心を蝕み、確実に刷り切らせて行く……そして、
「もう、無理だよ」
その肘が、地面を付いた。
「ブラック!」
「やっぱ、私一人じゃ無理だよ……」
「なにを言ってるメポ! ブラックらしくないメポ!」
相棒であるメップルが必死に彼女を励ますが、その言葉は彼女の心には届かない。
「だって……だって、いつも二人だったんだよ!? 私一人の力では無理だったんだよ!」
そういつだってそうだった。辛い戦いがあった、悲しい戦いがあった、そんな時、いつも彼女のそばにいて支え続けてくれた大切な親友がいた。
「いつも二人だった、何度も励ましてもらった……ホワイトがいないだけで、こんなにも不安だなんて!」
もう、彼女の体を動かす力は、欠片として残っていなかった……
「こんなの、ありえない……」
「ミップル……ユウスケさん……大丈夫?」
闇の中に閉じ込められたホワイトとクウガ。ホワイトにも闇の力は容赦なく蝕んでいき彼女の体力を奪っていく。クウガはすでに立つ力もなくなり倒れ伏し
「もう……駄目ミポ……」
「そんなこといわないで……私を一人にしないで……!」
悲痛な叫び声のような言葉だが、力を奪われて続けているその言葉はか弱く、闇の空間の中で響くこともない。
「希望の姫君なんでしょ……? ミップル!」
だが、その相棒さえもついには沈黙してしまう。彼女の心の中を、孤独が支配していく。なんとか力を振り絞り、体を起き上がらせたとき、見てしまった。
闇に包まれて、消えていく己の腕を。
「いやぁあああああああ?!」
彼女の絶叫が、闇のなかで轟く。
『それがお前達の運命だ』
『全て闇に飲み込まれ』
『やがて跡形もなくなってしまうのだ!』
「諦めたら……駄目だ……!」
闇に飲み込まれていくキュアホワイトの腕を、力強く握るものがいた。顔を向けると、そこには……
「ユウ、スケさん……?」
立ち上がる体力さえ残ってないはずのクウガが、彼女の手を握り締めていた。
「キュアホワイト……君にはキュアブラックがいるじゃないか……」
「で、でも……!」
「信じるんだ、君の相棒を……君の友達を!」
クウガはホワイトの手をゆっくりと離す。そして、ふらつきながらも立ち上がると、背を向ける。
「君達はずっと一緒に戦ってきたんだろう……? その仲間を信じないで、どうするんだ」
その言葉に力はない。今にも掻き消えそうな風前の灯のような言葉……なのに、力強い。
「キュアブラックは……美墨なぎさはきっと来る! だから」
クウガは立ち上がり、前を向く。
「それまで君の笑顔は……俺が護る!!」
笑顔の護人は、立ち上がる。―――そばにいる少女の笑顔を護るために。
「そこで、諦めるのか?」
膝を突いたブラックへと、声をかけるものがいた。顔を上げるブラック、そこには
「……士、さん」
「キュアブラック、お前はここで諦めるのか」
「でも、でも、私一人じゃあなにも……」
その瞳には光がなく、その声には覇気がない。
「お前には、キュアホワイトが……雪城ほのかがいるだろう!」
「ほの……か?」
キュアブラックに……なぎさの頭の中に、彼女の笑顔が浮かび上がってくる。それは、この一年間、彼女の横にあった笑顔。そこで、はっと気づいたかのように、立ち上がるキュアブラック。
「そうだ……ほのか探さなきゃ」
何かに突き動かされるように、キュアブラックは立ち上がる。すると、遠くから光が見える。
遠くから、電車の音がした―――気づけば、二人は揺れる電車の中へと映っていた。
「ここは……地下鉄?」
そして、二人の前にたつ一人の男、ジュナ。
「もう、後がないぞ」
高圧的に、ジュナは二人へと告げる。だが、キュアブラックは怯むことはない。
「お前達に逃げ道はない」
「ほのかはどこ!」
「諦めろ、もうすぐ闇に飲み込まれる頃だ」
「……!」
ジュナの何気ない一言。だが、それがキュアブラックの挫けかけていた心に火をつけたことに、彼は気づいていなかった。
「もうすぐ、跡形もなく消え去るさ」
「それって……ほのかのこと言ってんの?」
最初は、小さな声だった。今にも消えてなくなりそうな、そんな小さな声。だが、
「それ、ほのかのこと言ってんのぉ!!」
次には、竜の咆哮へと変わる。彼女の言葉に合わせるように、彼女の怒りの感情がエネルギーとなって渦を巻き、突風を吹かせ、相対しているジュナでさえも圧倒させる。
(馬鹿な、何だこの力は……!)
「ふ……どうやら、俺の力は必要なかったみたいだな」
ジュナは理解していなかった。何故、キュアブラックが再び立ち上がることが出来たのか、挫けかけていた心に、再び闘志がついたのかを。そして、ディケイドは理解していた、彼女が完全に復活したことを。
―――きっと、彼には理解できないであろう。
「お前も消えてなくなるがいい!!」」
一気に肉迫、懇親の力を込めてキュアブラックの腹部へと体重を乗せた一撃を放つ、がその拳は両の手によって防がれる。
「ぬぅうううううう!」
「……ほのかに何かあったらただじゃ置かないんだから!」
ジュナの拳を防ぎながらも、キュアブラックは彼を睨み付ける。その瞳には涙が溜まりながらもジュナの顔を睨み付けている。その瞳には先ほどまでの暗闇はない。強い光が、怒りの感情の中に灯る小さな光が映っていた。
―――何故、彼女が立ち上がることができたのかを。
「……く、無駄なことを!」
ジュナは一旦、後ろへと下がると、再び腕を振り上げ襲い掛かる。
「諦めろぉ!」
「そこを、どけぇえええ!」
キュアブラックも、己の腕を振り上げて真っ向から立ち向かう。
勝負は一瞬だった。
重厚な音と共に弾き飛ばされた、ジュナがそう気づいたときには、壁へと叩きつけられていた。
―――彼女の体の中からあふれ出す力が何であるのかを。
「馬鹿な……! レインボーブレスも装着していないのにこの俺を……!」
「貴方達なんかに……貴方達なんかに……!」
キュアブラックは、ジュナをにらみつけて叫ぶ。
「私の友達を……ほのかを傷つけさせなんか、絶対にしないんだから!」
「近く……近くにいるメポ」
「ミップル?!」
弱弱しくも、ミップルは口を開く。
「希望が……希望が近くに……」
「それって……それって……!」
キュアホワイトの心の中に、一人の少女の姿が浮かぶ。
「言っただろ、ほのかちゃん」
彼女に背中を向けたまま、クウガも彼女に告げる。
「彼女は、絶対に来るって……だから、諦めたらダメだって……!」
キュアホワイトの心に中に確かな光が―――希望が灯る。それは、たとえどんなに暗い暗闇の中でも、はっきりとわかる強い光が。だからこそ、彼女は叫ぶ!
「なぎさぁあああああ!」
「―――ほのか?!」
「どうした、キュアブラック」
「今、確かにほのかの声が!」
キュアブラックの耳にわずかだが聞こえた声。だが、ジュナはその言葉を否定する。
「そんははずはない。あいつらが閉じ込められた闇は、声一つとて外には漏らさない!」
「わかってないな」
だが、その言葉をディケイドがさらに否定する。
「距離だとか壁だとか時空だとか、そんなのは関係ねぇ。こいつらは、そんなちゃちな者で引き裂けなんかしない!」
「黙れ、世界の破壊者がぁあ!」
ジュナは闇の力を集めだす。直径は2mもあろうかという巨大な球体にすると二人へと向かって叩きつけるように投げつける。
「キュアブラック!」
「ええ、ディケイド!」
ディケイドの言葉に合わせるように、キュアブラックが並び、飛び上がる。
-Final Attack Ride!-
「ライダー!」
「プリキュア!」
-DeDeDe,DECADE!-
二人の前に現れる、カード上のホログラムが浮かび上がる。
「「ダブルキィィィック!!」」
二人の息のあった渾身の蹴りが闇の球体を突き抜ける!!
爆発と共に消える足場、ディケイドとキュアブラックは吹き飛ばされるように落下しながらも、空中で体勢を整えると、地面へと着地する。二人の目の前に並んでいるのは暗闇で包まれて先の見えない地下鉄用の通路だ。
「……ブラック、近くにいるミポ!」
「え?」
「きっと、この先メポ!」
「この地下通路のさきに、キュアホワイトがいるってわけか」
だが、そんな彼らを邪魔するかのように、再び闇の声が響く。
『だとしても、貴方達にこの先に進む力はあるのかしらね?』
「ほのか……!」
プリキュアたちが戦っている中、夏海とポルンは途方にくれていた。
「士君たち、どこに行っちゃったんでしょうか……?」
探せども見つからない仲間達に、夏海は諦めてブランコをこいでいたのだが、
「……! 感じるポポ」
「ポルン?」
先ほどまで夏海のひざの上でじっとしていたポルンが急に立ち上がると、ひざの上から飛び降りて走り出す。
「ちょ、ちょっと待ってください、ポルン!」
「感じるポポ! なぎさたちを……感じるポポ!」
「ミップル、しっかりして……!」
体の中に残っている力を振り絞って、キュアホワイトは立ち上がる。
「もうすぐ、なぎさが助けに来てくれる……!」
指一つ動かすこともできなかったはずなのに、彼女の体の中からは何故か絶えることのない力が湧き上がってくる。
「希望を忘れちゃ、私たちらしくないでしょ?」
「ありがとうホワイト……ホワイトこそ大丈夫ミポ?」
その言葉に、キュアホワイトは微笑む。
「大丈夫よ……ユウスケさんがいてくれる」
彼女の笑顔を護るために、立ち続けてくれる戦士がいる。
「それに……」
変身アイテムへと変化しているミップルを、キュアホワイトは優しく握る。
「まだぬくもりが伝わってくるもの」
闇に消えかけている指の先から確かに伝わってくる暖かな力。それがある限り、彼女の心が絶望に支配されることはない。
『お前は無力な自分を安心させたいだけだ』
『お前達はバラバラだ』
『あなたにその力はあるのか』
『全ては 自分自身のためなのだ』
地面が地響きに揺れる。見てみれば、トンネルの向こう側からショッカー戦闘員、雑魚ザケンナー、そして怪人たちが入り乱れた軍団が、アリ一匹入る隙間もないのではないかと思うほどの数で押し寄せてきている。そして、その後ろには、
「これで、終わりだディケイド! そしてプリキュアよ!」
暗闇大使が高らかに叫んでいる。
だが、キュアブラックは目の前に迫り来る軍団には目もくれていなかった。そう、今の彼女にそんなものは聞かない。
「馬鹿にするのもいい加減にしてよね……バラバラ? 一人じゃ何もできないって? そんなの当たり前じゃない。みんな元々独りじゃない」
「キュアブラック……」
だから、人は友を探す。いつも一緒に居てくれる人を、いつもそばで励まし合ってくれる人のことを。
「私が私のために、ほのか探してなにが悪いの? 自分を大切にして、何がいけないのよ。独りじゃ何もできなくたって、私にできることはたくさんあるんだから……!」
人はいつだって誰かを求め続けていく。それは、決して悪いことではない。
「そんな当たり前のことの、どこがいけないって言うのよ!」
もう、美墨なぎさは迷わない!
「なぎさ……」
「ほのかぁああああ!」
キュアブラックは大群へと向かって走り出す。彼女を飲み込まんと、多くの怪人たちの手が襲い掛かるも、
「邪魔、する、なぁあああああ!」
それを殴り飛ばし、蹴り飛ばし、飛び越え、踏み越え、止まることなく進み続ける。挟み込みで襲い掛かってきた戦闘員を拳一つで吹き飛ばし、飛び上がってきた雑魚ザケンナーを蹴りで薙ぎ払う、後ろから殴りかかってくる怪人の拳を受け止め放り投げる。
もう、彼女は止められない!
「やれやれ、飛んだお転婆娘だ……俺も置いていかれないようにしないとな」
ディケイドもそう呟くと、ケータッチを取り出して素早くコンプリートフォームへと変身する。
「キュアブラック、俺が道を開く!」
-DLADE! Kamen Raide-
ディケイドの真横に現れるのは、金色の鎧と、巨大な大剣を握り締めた戦士
-KING-
13対全てのアンデットと融合した、脅威のライダー。仮面ライダーブレイド、キングフォーム。
-Final Attack Raide B,B,B,BLADE!-
再び、ホログラム状のカードが出現すると其処へと二人のライダーが斬撃を叩き込む。斬撃はホログラムのカードによって強化されていき、必殺の一撃となって敵の大群を薙ぎ払う。
「いけ、キュアブラック! お前の相棒をとっとと助け出して来い!」
「……ありがとう、士さん!」
ディケイドの攻撃によって開いた通路へと走り出す。
「そうは、させ……!」
暗闇大使が右手の鞭を振り上げるも、弾丸が打ち込まれて邪魔をする。暗闇大使は弾丸を放った主をにらみつけ、地獄の其処から響くような声でその名を呼ぶ。
「ディケイドォ、貴様ぁ!」
「お前らの思い通りにいかせるかよ」
ディケイドの助けもあり、怪物の群れをなんとか突っ切ることができなたキュアブラック。見えてきたのは、巨大な黒い球体と、その前に立っている種の三者のひとり、レギーネ。彼女は、厳しい顔で告げる。
「ここから先は、通さないわよ……!」
「そこを、どけぇえええ!」
一気に飛び掛るキュアブラック。レギーネはそれを腕で払い落とそうとするも、ブラックは腕をすり抜けレギーネの脇を越えて後ろの黒い球体へと体ごとぶつかっていく。
「!!」
だが、黒い球体の弾力性に弾かれてしまう。
「今の音……!」
キュアブラックの起こした振動は中にまで届いていた。クウガの言葉に、キュアホワイトは確信を持った声で叫ぶ。
「なぎさぁああああ!」
「……ほのか!」
「はああああああああ!」
確かに声を聞き取ったキュアブラック。しかし、その真後ろからレギーネが空中へと飛び上がり蹴りを打ち込んでくる。キュアブラックは迷うことなく飛び上がると、同じく蹴りを打ち込む。
ぶつかり合う二人、瞬時にキュアブラックは体を反転させると、レギーネの蹴りを足場として黒い球体へとさらに蹴りを放つ。
「やぁあああああ!」
なぎさの裂帛の叫び声とともに放たれた蹴りは、黒球体へと突き刺さり、その弾力性さえも断ち切り、砕く! ひびが走り、ガラスのように割れながら崩壊していく黒の球体、その破片は闇へと解けて消えていく。
地面へと落ちるキュアブラック。痛みを堪えながら、立ち上がると……
「ほのか……?」
「なぎさ」
クウガに護られるように、キュアホワイトが立っていた。闇の世界から解放されたためか、消えかけていた指先も、顔色も万全な状態へと戻っていた。一瞬、呆然と立っていたキュアブラックであったが、彼女の顔を見ると、涙を堪えるような顔して、
「ほのかぁ!!」
泣き崩れるように彼女に抱きついた。涙声になりながら無事を確かめる彼女の言葉に、キュアホワイトは優しく答えていく。
「俺たち……助かったのか」
あたりを見回して、呟くようにクウガ。
「なんだ、お前もそこにいたのか」
「士!」
姿を現したディケイドに、クウガも喜びの声を上げる。ディケイドは、キュアホワイトになきついているキュアブラックの姿を見つめる。
「本当に、仲がいいやつらだ」
小さく、そして嬉しそうに呟いた。
「馬鹿な……!」
ジュナが姿を現し、やっと自分達の相棒を見つけることのできた四人の姿を見て、否定するかのように呟いた。
「何故だ、分断し、無力な独りの人間となったお前達が、何故これほどの力を……!」
「独りじゃない」
ジュナの言葉を、ディケイドは否定する。
「何……?!」
「たとえどれほど離れていようとも、たとえどれほど高い壁で引き離そうとも、こいつ等は絶対に独りにはならない……なぜだかわかるか?」
押し黙るジュナ。そう、彼らにはわからないだろう。プリキュアという存在を一個の戦力としてが見てない彼らにとって、ディケイドが言っていることがわかるはずがないのだ。
「『絆』、だ。こいつらは互いを信頼し、互いを支えあって生きている。辛いときも悲しいときも、二人で乗り越え戦ってきた! それによって生まれた最強の絆は、お前らがどんな手を使っても引き裂くことはできない!」
「……お前は、一体何者だ!」
「通りすがりの仮面ライダーだ……覚えておけ!」
ジュナの真横に現れるレギーネ。そして、暗闇大使。
「ずいぶんとなめた真似してくれたじゃない」
キュアホワイトが立ち上がり、キュアブラックの横へと並ぶ。同じように、クウガもディケイドの横に。キュアブラックは怒りを隠すことなく、口を開く。
「今度言う今度は、あんた達、絶対に許さないからね!」
「我々を、本気にさせないほうがいいぞ……?」
ジュナは拳を握り締めると同時に、キュアブラックへと瞬時に間合いを詰めて叩きつける。対してキュアブラックは、足を踏み出して頭をずらし、ぎりぎりで回避、カウンターを決めるように肘を打ち込む。
「はぁああああ!」
そのキュアブラックの背中から、爪を尖らせたレギーネが襲い掛かるが、
「させない!」
キュアホワイトが庇うように立ちはだかり、強烈ね蹴りを叩きつけてレギーネを吹き飛ばす。
「あんた達……!」
「私達を」
「舐めるんじゃないわよ!」
「ディケイド……お前達がここまでやるとはな」
「暗闇大使。もう逃げ場はないぞ?」
ディケイドとクウガという二人のライダーを相手にしながらも、暗闇大使は余裕を崩さなかった。
「ふっふっふ……逃げる? この私が? 舐めるなよディケイド、私の新の姿……見せてくれるわ!!」
暗闇大使はそう叫ぶと、体を変異させていく。体中から赤い突起が浮き上がっていき、それが全身へと伝わっていく。左腕は茨の先のようにトゲだらけとなる。これぞ、バダンの最高幹部、暗闇大使の真の姿、サザンクロス!
「ディケイド、そしてクウガよ、貴様らは私の手で倒す!」
「やれるものなら、やってみろ!」
暗闇大使―――サザンクロスは鞭を振るう。その鞭は彼の意思を汲み取るかのように伸びると、変幻自在の動きをもってディケイドとクウガを撃つ。火花を散らしながら吹き飛ばされる二人のライダー。
「こいつ、強い……!」
「無駄に自身ばかりが強いってわけじゃないようだな!」
無理もない、彼の兄弟である地獄大使ことガラガランダも一号・二号にBlackRX・カブトの四人を相手にしながら激闘を繰り広げたほどである。少なくとも、彼と同じ実力は兼ね備えているはずだ。
「しねぇ、ライダーども!」
再び振るわれる鞭。だが、ディケイドは素早くライドブッカーをソードモードに変形させると、鞭を受け止める。強靭な鞭を叩ききることは敵わないが、一気に鞭を巻き取る。
「いまだ、ユウスケ!」
「おう!」
相手の武器を封じると同時に、クウガが飛び上がり、サザンクロスへと必殺技、マイティキックを叩き込もうとする。だが、
「舐めるなぁ!」
サザンクロスの全身から生えている無数の突起状、フジツボなどを連想される空洞から無数のミサイルが白煙を上げて現れると、そのままクウガ、ディケイドへと襲い掛かる。武器を封じられていたディケイド、蹴りの体勢に入っていたクウガはともに攻撃を回避することもできずに直撃してしまう。
爆発に吹き飛ばされ、地面を転がりながら、苦悶の声を上げる二人。その姿を、サザンクロスは高らかな笑い声とともに叫ぶ。
「これで終わりだ、仮面ライダー!」
一方、プリキュアたちも苦戦を強いられていた。
「どうしたプリキュア! 俺たちをゆるさないんじゃなかったのか?!」
ジュナの猛烈なラッシュをただひたすら受け止めることしかできないキュアブラック。
「絆? 笑わせるんじゃないわよ!」
レギーネの攻撃を、ただ受け流し続けることしかできないキュアホワイト。
彼らも、ジャアクキングを蘇らせるために生み出された戦士達である。一筋縄ではいかないことはわかっていたが、その実力はザケンナーの比ではない。
「「はぁああ!」」
「「きゃああああ!」」
ついに裁ききれずに、吹き飛ばされる二人。ディケイド、クウガの元まで地面を転がる。
「強い……!」
「何が絆だ……何が信頼だ」
「たとえあんた達が何をしたって、無駄なのよ」
「無力なお前達がどれほどあがこいうとも、無駄なことだ。諦めろ」
だが、戦士達は立ち上がる。キュアブラックも、キュアホワイトも、ディケイド、クウガも。
「無力……なんかじゃない!」
「何?」
キュアブラックはジュナを睨み付ける。そこに、絶望の闇などない。ただ、絶対に勝つという闘志のみ。そしての投闘志は、キュアホワイトにも灯っている。
「今の私の横には、ほのかがいる! 私の大切な友達の、ほのかが!」
「私達は負けない! そして、私達が互いに互いを思い続けている限り!」
「「絶対に、諦めない!!」」
そう、二人一緒なら、どんな壁だって打ち砕いていける。そう信じられるほどの固い絆が、今の彼女達にはあるのだから。
「無駄な足掻きを、貴様らの力では我々には―――!」
「プリキュラを、苛めたらダメポポぉー!」
ジュナの言葉をさえぎるように聞こえた声に、その場に居た全員が顔を向ける。そこには涙を浮かべながらこちらに叫んでいるポルンと、驚きの顔で見つめている夏海の姿。
「「ポルン!?」」
「夏みかん、どうしてここに?!」
「あ、いえ、ポルンを追いかけてたら、ここに」
夏海も十分に驚いているようだが、ポルンはそんなのお構いなしに叫ぶ。
「プリキュラ、頑張るポポォーー!」
その叫びに呼応して、ポルンの小さな体が輝き始める。
「待ってましたミポ!」
その光は一筋の光となってブラックノ右腕、ホワイトの左腕に飛び込むと、金色に輝くブレスレットへと変わる。
「よっしゃぁ!」
それまで感じていた疲労やダメージが回復されていく。一瞬にして完全な状態へと復帰するブラックとホワイト。ジュナとレギーネの二人をにらみつける。
「どっからでも、かかってきなさい!!」
「うおおおおおおお!」
キュアブラックの言葉に乗るかのように、突撃するジュナ。そのまま、スピードを乗せた蹴りを叩きつけるが、
「無駄よ!」
腕を交差させてそれを弾く。そして、相手のがら空きになった胸部へと向けて渾身のパンチを叩きつける。重厚な音とに仰け反る相手にむかって飛翔、そのまま蹴りを連打させてジュナを圧倒する。
「このぉおおお!」
レギーネもキュアホワイトへと襲い掛かる。キュアホワイトが、再び柔術のような構えで彼女を投げ飛ばそうとするが、それを腕を掴んで押さえ込もうとするが。
「はぁあああああ!」
裂帛の叫びとともに空中を回転するレギーナ。がら空きになったその背中へと、キュアホワイトはさらに蹴りを叩きつけ、吹き飛ばす。
悠然と立ち並ぶキュアブラックとキュアホワイト。今の彼女らの前に、敵は居ない!
「いくよ、ホワイト!」
「ええ、ブラック!」
互いのブレスレットが光を放つと、キュアブラックとキュアホワイトは手を握りあう。
「希望の力よ! 光の石よ!」
「未来に向かって、突き進め!」
彼女達の体が虹色の光に包まれ、全てを生み出す力の一端が彼女達に力を与える。
「「プリキュア、レインボーストームッ!」」
突き出される腕、そこから放たれる虹色の光は、どんな邪悪な存在でさえも打ち消す希望の力。そのあまりにも大きな力に、二人の体がノックバックで飛ばされるほどに。
「ぬぅ!!」
「仕方がない……引くぞ、レギーネ!!」
強烈な力に飲み込まれる前に、ジュナとレギーネはそ闇にまぎれて逃げ出したのであった。
「これで終わりだ、ライダー共ぉ!」
右手の鞭を振り回し、全身から無数のミサイルを放ちながら、サザンクロスこと暗闇大使は鞭を振るう。その変幻自在の攻撃に、二人を追い詰めるが、
「いつまでたっても、同じような攻撃が聞くと思うなよ!」
ディケイドはライドブッカーをガンモードに変形させる。
-Attack Ride ILLSION-
瞬間、ディケイドの姿が分裂し、四人の姿へと変わる。さらにその四人のディケイドが同時に、
-Attack Ride BLAST-
一気にライドブッカーから弾丸を発射する。無数の弾丸は不規則軌道を描いていたサザンクロスのミサイルを漏らさず打ち落とす、
「ユウスケ!」
「おう!」
一人のディケイドがライドブッカーを変形、ソードモードにすると投げる。それをクウガが空中で掴み取る。
「超変身!」
クウガの叫びと同時に、クウガの体を紫の鎧が身を包み、ライドブッカーが巨大な剣へと変化する。大地の戦士、クウガ・タイタンフォーム。
「うおおおおおお!」
超パワーの戦士、タイタンの圧倒的な力を込めて、振り下ろされる大剣。サザンクロスは素早くそれを打ち落とそうと鞭を振るうも、圧倒的な力の前に右腕ごと叩き切られる。
「が、がぁああああ!?」
「決めるぞ……!」
-KIBA! Kamen Raide-
ディケイドの真横に現れるのは先ほどのブレイドと同じように金色の鎧を着た、マントを羽織るライダー。
-EMPEROR-
ファンガイアの王となることを決意したものに与えられる王者の鎧。キバ、エンペラーフォーム。
-Final Attack Raide KI,KI,KI,KIBA!-
ディケイドとキバが飛び上がり、両の足を突き出す独特のフォームでサザンクロスへと蹴りを放つ。その両足からは翼が現れ、牙となってサザンクロスの全身を切り刻んでいく。そのまま壁へと叩きつけられると同時に、壁にキバの紋章が浮かび上がる。
「馬鹿な……この私がぁあああ?!」
火花を散らしながら、倒れ崩れるサザンクロス。
「俺たちの……勝ちだ!」
『ふふふ、無様だな暗闇大使』
「く……ベルゼイか。貴様、一人だけ高みの見物とはどういうことだ!」
『保険だよ。万が一、全滅してドツクゾーンを失うわけにはいかないだろう?』
「こしゃくな事を……!」
火花が飛び散り、今にも爆発しそうな体で、サザンクロスはなおも立ち上がる。それは、意地と執念のなせるわざ。
『最後に我らからの手向けだ、暗闇大使。闇の力をお前に授けよう』
「何? 何を言って……グワァアア?!」
首をかしげるサザンクロスへと、闇の力が集まっていく。それは、彼の意思によるものではなく、ベルゼイによる強制によって、闇の力が注ぎ込まれていく。その力の前に、飲み込まれていくサザンクロス。
「ベルゼイ、貴様ぁあああ!」
『武運を祈っているよ、暗闇大使……フフ、フハハハハハハ』
「がぁあああああああああ!?」
「な、何が起こってるの?!」
闇の力に飲み込まれ、サザンクロスの体が徐々に肥大化していく。腕も足も首さえもなくなり、体中から生えていく突起が巨大化していく。体は改造人間の元になったであろうサザエへと近いものになっていきながら、禍々しく変貌していく。顔の名残は消えうせ、ギラリと光る赤い瞳に、むき出しの牙が並ぶ。
「ザケンナァアアアア!」
ここに、サザンクロスザケンナーが誕生したのである。
「そんな、怪人をザケンナーにしたっていうの?!」
「面倒くさいことになった……!」
キュアホワイトの言葉に、ディケイドも真剣な表情で返す。サザンクロスザケンナーは、眼下に居る四人の戦士達を睨み付けると、咆哮を上げる。同時に、全身の突起に光が灯る。
「ヤバイ、離れろ!」
ディケイドの言葉に全員が行動するよりも早く、サザンクロスの全身から雨のように高熱のレーザーが放たれ、戦士達へと襲い掛かる。直撃をなんとか避けながらも、吹き飛ばされていく戦士達。
「強い……一筋縄じゃいきそうにもない!」
クウガが悔しそうに叫ぶ。だが、
「でも……諦めない……!」
キュアブラックが強い決意を込めた言葉で力強く言い放つ。
「たとえ、どんな敵が相手でも、たとえどんな壁が立ちはだかろうとも……私は諦めない」
傷だらけの体で立ち上がる。
「だって、私は一人じゃないから!」
「なぎさ……」
隣に居るキュアホワイトに―――ほのかに笑いかける。それに合わせるように、彼女の笑う。
「メップルもいるメポ!」
「ミップルもいるミポ!」
「ポ、ポルンもいるポポ!」
そして、彼女達の大切なパートナーたちも。
「私は無力でちっぽけな存在かもしれないけど……でも、ミップルやメップル、ポルン、それにほのかがいれば何度だって立ち上がることが出来る!」
「そうよ、たとえ一人では無理だって思っても、そばに誰かがいてくれればなんとかなるって思える!」
「「だから、私達は!」」
そう、それこそが、
「「絶対に諦めない!!」」
最強の絆!
ディケイドは、一枚のカードを取り出す。先ほどまで、絵柄が曇っていたために見えなかったカードに確かな絵柄が現れる。重なり合う、二つのハートの絵柄。それは、まるで目の前にいる二人のような。
仮面の下で、士は小さく笑った。
「いくぞ、プリキュア、それにユウスケ!」
-Final Attack Ride!-
そのカードを、腰の側面につけられたディケイドドライバーへと差し込む。
-HUTARI HA PRECURE!!-
ディケイドライバーに浮かび上がる文字「DIMENSION MARBLE SCREW KICK」の文字。ディケイドライバーからマゼンタの色が放たれ、キュアブラック・ホワイト両名のブレスレットへと灯る。
「行くぞ、皆!」
「おう!」
「「ええ!」」
「ブラック・サンダァー!」
「ホワイト・サンダァー!」
キュアブラック・ホワイトの腕に黒と白の稲妻が走り、彼女達の体を七色の光へと包み込んでいく。それと同時に、ディケイドとクウガが真上へと飛び上がる。
「プリキュアの、美しい魂が!」
「邪悪な心を、打ち砕く!」
「「プリキュア、マーブルスクリュー!!」」
放たれた一撃の必殺は、交じり合うことなく黒の光と白の光となって、上空に舞い上がったディケイドとクウガへと向かって走る。ディケイドが黒の光を、クウガが白の光を受け止めると、そのエネルギーが二人を包み込む。
「「うおおおおおお!」」
そして、ディケイドとクウガが螺旋に交じり合い、巨大な渦を巻きながらサザンクロスザケンナーへと強力な蹴りを放つ。
「ザケンナァアアアアア」
サザンクロスザケンナーは光の砲撃でそれを打ち落とさんとするも、その巨大な渦の前には無駄であった。
「「「「いっけぇえええええ!」」」」
四人の叫びとともに、巨大な渦がサザンクロスザケンナーを、穿ち、貫く!
「ザケン……ナァアアアアアア?!」
打ち抜かれ、散っていく闇の力の中からサザンクロスの体が姿を見せる。だが、コアである彼も同じように貫かれ、致命傷を負っている。
「たとえ、暗闇死すとも……バダンは死なず!」
最後の力を振り絞り、彼は叫ぶ。
「スーパーショッカーに、栄光あれぇええええええ!!」
それが、暗闇大使の最後の言葉となった。ディケイド、クウガが地面に着地すると同時に、彼の体が爆ぜ、暗闇の中に光を灯すのであった。
「それだけじゃ、ないと思うんだけどさ」
戦いが終わり、夕暮れが街に差し込む中で、なぎさは呟くように言った。
「何?」
「なんていうかさ……大切な人を大事に思う。そんな気持ちを大事にしていこうかなって……そう思うの」
そんななぎさの言葉を、ほのかは笑顔で受け止める。
「そうね……私も、そう思う」
互いに笑いあう少女達の姿を、士は胸からかけられているカメラで映した。士の前で、彼女達は仲良く笑い合いながら、手を握り合っている。そんな姿を、いつの間にか士も微笑んで見つめていた。
「結局、俺たちが何もしなくても、あいつらは大丈夫だったのかもしれないな」
「そうですね、あんなに仲がいいんですもの」
ユウスケの言葉に、夏海が同意する。
「あいつらなら、もう大丈夫だ……きっとな」
士はそういうと、彼女達に背を向ける。彼のたびはまだ終わってはいない。次の世界が彼を待っているからだ。
「そうだ―――?」
同意しようとしたユウスケは、違和感を感じで自分の腕を見る。だが、そこにはいつもどおりの自分の腕しかない。首をかしげる。
「どうしたユウスケ! 置いていくぞ!」
「あ、ごめんごめん! すぐ行くー!」
走り出すユウスケ。だが、彼は気づいていなかった。
自分の腕に一瞬走った、雷の力のことを。
「へぇ、なんかいい感じじゃん」
ユウスケが呟くように言うと、士も得意げな顔をする。彼が持っているのは、先ほど取った写真だ。
そこには、夕日に照らされながら歩いている二人の背中。その上には、二人の笑い顔が大きく写っている。
「ふ……まぁな」
「ちょっと待って、集合集合集合ぉー!」
士が満足そうに呟くと同時に飛び込んできたのは何かをあせっているかのような小さな蝙蝠……キバーラだ。
「なんだ、急に」
「なんで、なんでユウスケがあんなに活躍したのに私だけ出番がまったくないの?!」
「何をわけのわからないこと言ってる。邪魔だ」
「キャア?!」
よくわからないことを口走っているキバーラを士はうるさそうに跳ね除ける。跳ね除けられたキバーラは写真館の柱へとぶつかるのだが、すると、次の世界を現す絵が降りてくる。
「これは……」
降りてきた絵は、綺麗な花を咲かせている大樹の側にたっている二人の少女。一人は花を思わせるようなピンク色で、もう一人は海を思わせるような青色。
「これが……次の世界か」
士は、小さく呟いた。
続く。
次回の仮面ライダーディケイドは!
「プリキュア、オープンマイハート!」
新たなる世界で士たちを待っていたのは、新しいプリキュア。
「キュアブロッサム!」
「キュアマリン!」
新たなるショッカーの魔の手。
「これは……ワームか?!」
混乱を呼ぶディエンドの行動。
「ココロパフィームにココロポッドか、この世界にもお宝が多いね」
目覚め始める、ユウスケの力。
「何かが……俺を呼んでる?」
そして、プリキュアたちは最大の危機を迎える。
「……私は、マリンに相応しくない」
三話「ハートキャッチの世界! プリキュア解散ですか?!」
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pixivに投稿している作品です。 ふたりはプリキュアの世界、後篇です。 |
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