恋姫英雄譚 鎮魂の修羅4
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華佗「ここは、だいぶ賑わっているみたいだな♪」

 

徐州、東海の港町、ここを一刀達は訪れていた

 

もともとこの町に用事があったわけではなかったが、賊や賞金首の情報を調べ捕まえているうちにここに行き着いたのだ

 

風「漁港があるせいでしょうね〜」

 

禀「はい、外海からの資源にかけては、ここは大陸でも五指に入りますから」

 

星「ふむ、メンマと合う魚は何処♪」

 

稟「星、あなたの頭にはそれしかないのですか・・・・・」

 

活気溢れる港町の雰囲気を堪能する一同

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

そんな中で一刀は、海原を見て潮風に髪を撫でられ黄昏ていた

 

風は、潮の匂いを運び、ここがまぎれもない海であることを思わせる

 

この海を渡れば自分の国があるのであろうが、今はまだ邪馬台国のはずだから自分の見知った日本は存在しない

 

星「どうされました一刀殿、何やら寂しそうですが」

 

一刀「いや、なんでもない・・・・・それじゃあ各自、買い物を済ませたらここに集合、荷物が増えすぎると困るから、買い過ぎないように」

 

星「承知しました」

 

禀「珍しい書物があればいいですが」

 

風「あまり期待しない方がいいかもしれませんね〜、なんせ大陸の片隅ですので〜」

 

華佗「分かった、青嚢書にある珍しい薬の材料があればいいんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星「鍛冶屋はここの角を曲がって・・・・・あそこだな」

 

自分の愛槍、龍牙の手入れをしてもらうために星は鍛冶屋を訪れていた

 

星「だいぶ時間が経ってしまったな、急いで頼もう」

 

港からの潮風に当たらないように、鍛冶屋は内陸の方にあったため探すのに時間がかかってしまっていた

 

星「一刀殿から予算はたっぷり貰っているからな♪」

 

懐に入ったお手持ちを軽く叩きながら店内に入ろうとすると

 

???「すみません!!ここにこんな形をした剣が売られませんでしたか!!?」

 

星「?」

 

鍛冶屋の中から聴こえてくる可愛い声

 

職人「すまないが、そんな剣は見たこともないな」

 

???「・・・・・そうですか」

 

???「桃香様、もう諦められては・・・・・」

 

???「そうなのだ、ここまで探して無かったらもう見つかりっこないのだ」

 

桃香「そんなの駄目!あの靖王伝家は、私の家に伝わる家宝だもん!あれを盗まれたなんてお母さんに知られたら・・・・・ひい〜〜〜!!!」

 

星「・・・・・なにやら、ややこしいことが起きているようだな」

 

巻き込まれそうで少し気が引けるが、それでも龍牙は手入れしてもらわなければならないので、店内に入る

 

星「もし店主、私の槍の手入れをお願いしたいのだが」

 

店主「まいど、今日は空いてますから、今日中に出来ると思いますよ」

 

星「そうか、では明日の朝取りに伺おう、料金は先払いでよろしいか?」

 

店主「おお、気前がよくて助かります、これなら・・・・・千銭(10万円)といったところでしょうか」

 

星「分かった、ではここに」

 

懐から五銖銭の束を取り出し、机の上に置く

 

店主「あ、ああ・・・・・ありがとうございます(ちぇっ、もう少し値段を吊り上げても良かったか)」

 

星「では、よろしくお願いする」

 

そう言いながら踵を返し、店を出ていこうとする星だったが

 

???「もし、そこのお方」

 

星「?・・・・・なんでしょう?」

 

???「見たところ、かなりの武をお持ちのようですな」

 

???「うんうん、鈴々も凄いのが来たと思ったのだ♪」

 

星「そういうお二人も、相当な腕の持ち主のようですな」

 

桃香「うんうん♪愛紗ちゃんも鈴々ちゃんもすっごく強いんだよ♪」

 

愛紗「先ほどの銭の量からして、あなたはどこかの士官殿ではありませんか?」

 

星「いや、私は未だ流浪の身、あれは賞金首の賞金だ」

 

鈴々「にゃっ!?それであんなに貯められるのか!?」

 

星「ええ、まだまだ預金がございますので」

 

桃香「私達も賞金首を捕まえたりしてるけど、そんなに貯まらないよ!」

 

星「私だけではなく、他に連れがいますので、その者達の協力があればこそ、ですな」

 

愛紗「・・・・・初対面の身で申し訳ないが、貴殿を一流の武人と見込んで頼みがある!」

 

星「その前に、お互いに自己紹介をしてからでは?」

 

愛紗「これは失礼した、私は関羽、字は雲長」

 

鈴々「鈴々は張飛、字は益徳なのだ」

 

桃香「私は劉備、字は玄徳です」

 

星「趙雲、字が子龍と申す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「へぇ〜〜〜、こんな物まで薬の材料になるのか」

 

華佗「ああ♪これだけ揃えば大抵の病に対処ができるぜ♪」

 

風「あまり目ぼしい書物はありませんでしたね〜」

 

禀「ええ、これなら一刀殿の話を聞いている方が百万銭の益になります・・・・・それにしても遅いですね、星は」

 

風「う〜〜〜〜ん、星ちゃんにしては珍しいですね〜」

 

華佗「鍛冶屋に行くと言っていたからな、今頃こっちに向かってるんじゃないか?」

 

禀「そうですね、こんな潮風が当たる所で鍛冶屋は開けませんから」

 

一刀「・・・・・これは、この先のことを考えると荷物持ちの馬がもう一頭いるかな」

 

通りの茶屋の前で、残る一人の星が帰ってくるのを待つ四人

 

星「すまない、待たせたな」

 

禀「来ましたか、ではこれで・・・・・後ろの三人は誰ですか?」

 

桃香「趙雲さんのお連れの人達ですね・・・・・私は劉備玄徳といいます」

 

愛紗「関羽雲長だ」

 

鈴々「鈴々は張飛、字は益徳なのだ♪」

 

一刀「えっ!!!??」

 

星「?・・・・・どうかされましたか?一刀殿」

 

一刀「(はぁ〜〜〜〜〜、頭が痛い、本当にこの世界はどうなってるんだ)」

 

覚悟はしているが、いきなり来ると流石の一刀も心臓に悪い

 

一刀「いや、なんでもない・・・・・ただ聞いたことがあったから」

 

桃香「え!?私達のことを知っているんですか!?」

 

風「風は聞いたことありませんが〜」

 

禀「私も、一体どこで聞いたのですか?」

 

一刀「さっき憲兵所で情報収集していた時にね」

 

本当のところは違うが、説明するのは面倒なので止めておこう

 

華佗「で、どうして星はその三人を連れてきたんだ?」

 

星「ふむ、説明してくれるか」

 

桃香「はい・・・・・実は、私達は探し物をしているんです」

 

風「探し物ですか〜」

 

桃香「私の家に伝わる宝剣なんですけど・・・・・この東海の森の中で野宿をしている時に盗まれてしまったのです」

 

鈴々「盗まれたことにはすぐ気付いたけど、逃げられてしまったのだ・・・・・」

 

愛紗「憲兵にも聞いてみたのだが、知らぬ存ぜぬで・・・・・」

 

禀「それはそうでしょう、盗賊はこの大陸に山のようにいますし、一つの剣を探し当てるなど、砂の山から針を探すようなものです」

 

華佗「盗賊の特徴はわかるか?」

 

桃香「はい・・・・・紫の帽子を被っていて、それ以外は特に・・・・・」

 

華佗「それは、この東海の賊の特徴だな」

 

星「ええ、今までも何人も捕まえてきましたので」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

風「お兄さん〜、憲兵所でなにか聞いていませんか〜?」

 

一刀「・・・・・ああ・・・・・賞金首の似顔絵を何枚も貰ってきているし、その賊がどの山域に現れるかも聞いているから、特定は難しくない・・・・・ただ、劉備の剣を必ずその賊が持っているとは限らない」

 

風「そうですね〜、いくつか盗賊の住処を暴いていけば見つかるかもしれませんけど〜」

 

禀「我々も、この東海にいつまでもいる訳にはいきませんので」

 

桃香「はい、そこまでは頼みません」

 

愛紗「どうか、この一回だけ協力をしていただけませんか?」

 

鈴々「お願いするのだ!」

 

一刀「・・・・・わかった、とりあえずその剣を盗まれたところに案内してくれるか?」

 

桃香「ありがとうございます!」

 

愛紗「ご協力、感謝します!」

 

鈴々「ありがとうなのだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「この辺で一番の大物は・・・・・あの盗賊団だな」

 

風「はい〜、街で集めた情報と劉備さん達のお話を照らし合わせると、あそこが最も可能性が高いかと〜」

 

森の木の影から盗賊団が出入りする洞窟を見下ろす一刀達

 

桃香「あ!はい!あの格好、あの紫色の帽子、確かに似ています!」

 

愛紗「桃香様の剣、なんとしてもここで取り返す!」

 

鈴々「やってやるのだ!」

 

星「待て待て早まるな、あそこに劉備殿の剣があると決まったわけではないのだ」

 

華佗「そうだ、まずは作戦からだ」

 

禀「この手の盗賊団は何度も相手にしていますので、任せてください」

 

風「まずは、あそこにいる二人の見張りをなんとかしないといけませんね〜、お兄さん、お願いできますか〜」

 

一刀「分かった」

 

桃香「え!?大丈夫なの!?」

 

星「ええ、一刀殿はこの中で一番の武を持っている、任せて問題はない」

 

愛紗「その腰の物で戦うのですか?」

 

一刀「いや、これはただの飾りだ、俺はあくまで素手でやる」

 

鈴々「大丈夫なのか?」

 

華佗「大丈夫もなにも、一刀は今までずっと素手でやってきたんだ、何も問題はない」

 

禀「次は、中に突入する班と入口で見張る班とに分けます」

 

桃香「見張るって、全員入らないの?」

 

一刀「おいおい、中がどんな構造になっているか分からないんだぞ」

 

星「おまけに中に何人の賊がいるのかわかりませんから、あまり大人数で踏み込んでも危険です」

 

風「それにここの群れの全てが洞窟の中にいるとは限りませんから〜」

 

禀「ええ、他の賊達が帰ってきて狭い通路で挟み撃ちにされてしまっては目も当てられません・・・・・それでは、突入する班は・・・・・」

 

桃香「あ、私は行きます!」

 

愛紗「桃香様!危険です!」

 

桃香「ううん!私が盗まれたんだから、自分で取りに行きたいの!」

 

愛紗「・・・・・わかりました、この関羽、この身に替えても桃香様をお守りいたします」

 

鈴々「鈴々もお姉ちゃんを守るのだ」

 

禀「勝手に決めてくれましたね・・・・・一刀殿」

 

一刀「分かってる、俺も一緒に行くから」

 

禀「お願いします」

 

風「残りは、外で見張り番ですね〜」

 

星「私も行きたいのだが」

 

一刀「星は龍牙を持ってないだろう!」

 

禀「そうですよ!華佗殿だけでは心もとないです!星もいてください!」

 

星「・・・・・仕方ない、ここは我慢するか」

 

一刀「それと、賊は全員殺すんじゃないぞ」

 

愛紗「な、何を言い出すんですか!!?」

 

鈴々「そんなの無理なのだ!!」

 

星「また始まった・・・・・」

 

風「お兄さんにも困ったものです〜、風は散々悩まされて、もう慣れちゃいました〜」

 

禀「一刀殿、あなたのそれはもはや悪病です・・・・・」

 

華佗「何を言う、これが一刀のいいところだ♪」

 

一刀「賊は、全て峰打ちで仕留める事・・・・・もしこれが守れないなら、君達を行かせるわけには行かない、俺一人で行く」

 

愛紗「・・・・・了解しました」

 

鈴々「・・・・・わかったのだ」

 

何とも言えない一刀の凄みに負け、二人は渋々了解した

 

一刀「作戦は決まったな・・・・・それじゃあ、行ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ〜〜〜〜、見張りは退屈だな、早く交代の時間にならねーかな〜」

 

「我が儘言うな、もう少しで交代の時間だ、我慢しろ」

 

「早くさっき捕まえた女とやりたいぜ〜♪」

 

「お前も好きだね〜、まずは親方が味見をしてからだろうがな」

 

「また中古品かよ、いつになったら新品を味わえるのかね〜・・・・・あ〜〜〜〜あ、早く独り立ちしたいぜ〜」

 

「おいおい、お前ここを抜けて賊の頭にでもなるとか言うんじゃないだろうな」

 

「あったりめ〜よ!いつまでも誰かの駒でいてたまるかってんだ!」

 

「気をつけろよ、最近世の中はかなり物騒だ、俺達もいつ死んでもおかしくないかも知れないんだぜ」

 

「物騒といえば、最近俺達と同じ同業の奴らがどんどんパクられているらしいな」

 

「・・・・・ああ、なんでも二人組の医者と三人の女だったっけか?」

 

「なっさけね〜な〜〜、たかが医者相手にいちいち捕まってんじゃね〜よ」

 

「普通の医者じゃないかもしれないぜ、ここまで来るとがっ!!」

 

「なにがうっ!!」

 

首筋からの強烈な衝撃により見張りの二人組は気を失った

 

一刀「・・・・・・・・・・」(グッ)

 

隠れている仲間に合図を送り、見張り二人に猿轡と縄をかけ茂みに隠す

 

一刀「よし・・・・・さっきあいつらから聞いたんだが、中に攫われた人がいるらしい」

 

桃香「え!?」

 

愛紗「そのような蛮行、許すまじ!」

 

鈴々「ブチのめすのだ!」

 

一刀「そのことを念頭に入れて行動してくれ・・・・・行くぞ!」

 

そして、突入する四人

 

桃香「私の剣を返してください!!」

 

「な、なんだてめーら!!?」

 

「おお♪いい女じゃないか♪」

 

「俺達に可愛がられに来たのか、お嬢ちゃん達♪」

 

愛紗「桃香様お下がりください!!我が冷艶鋸の錆となりたい者は掛かってくるがよい!!」

 

鈴々「身の丈八尺の蛇矛をくらうのだ!!」

 

二人は、自らの槍を構え賊に突貫しようとするが

 

ドガドガドガドガドガドガドガドガ!!!!

 

「「「「「ごっはああああああああああああ!!!」」」

 

いきなり目に映る全ての賊達が吹っ飛んだ

 

愛紗「え!!?」

 

鈴々「何が起こったのだ!!?」

 

一刀「喋っている暇があったら、盗まれた剣でも探してろ!はあっ!!」

 

ドカドカドカドカドカ!!!

 

その後も一刀は湧いてくる賊達を次々とねじ伏せていった

 

鈴々「あのお兄ちゃん、本当に強いのだ」

 

愛紗「ああ・・・・・」

 

桃香「・・・・・凄い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地上では

 

星「はあっ!!」

 

ドカッ!!バキッ!!ガスッ!!

 

星「くそっ!!なんだこの人数は!!」

 

禀「どうやら、辺りを荒らしていた仲間が戻ってきたようです」

 

風「む〜〜〜〜、お兄さん達を呼び戻しますか〜〜」

 

星「それは拙い!中にも賊はいるはずなんだ!こっちでなんとか・・・・・」

 

華佗「武澪区御!!!あたたたたたた!!!眼才八拳おおおおおおお!!!」

 

ズガガガガガガガガガガ!!!!

 

「「「「「ぎゃはあああああああああ!!!!」」」」」

 

華佗「はああああああああ!!!!紗医任倶拳ううううううう!!!」

 

ドガガガガガガガガガガ!!!!

 

「「「「「ぐぎゃあああああああああ!!!!」」」」」

 

華佗「五留出御反魔あああああああああああ!!!」

 

ドッゴーーーーーーーーーン!!!!!

 

「「「「「ぎゃああああああああああ!!!!」」」」」

 

華佗「竜巻亜羽あああああああああああああ!!!」

 

シュバアアアアアアアアアア!!!

 

「「「「「ばはああああああああああ!!!!」」」」」

 

華佗「来たれ!!舞斗凱いいいいいいいいん!!!!」

 

ズッガーーーーーーーーーン!!!!

 

「「「「「ぐっはあああああああああ!!!!!」」」」」

 

星&風&禀「「「・・・・・・・・・・」」」

 

絶句する三人

 

どんな技かは想像にお任せしよう、とにかく凄いとだけは言っておく

 

風「・・・・・忘れがちですけど、華佗さんもお兄さんと同じくらい強いんですよね〜」

 

星「ああ、医者にしておくのが勿体ないくらいだ・・・・・」

 

禀「これだけのことをしているのに、どうして死人が一人も出ないのでしょうか・・・・・」

 

華佗「医は仁術なり!世界の全てにあまねく平和をもたらす為、俺は戦う!でやああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「お前がここの頭か・・・・・ふっ!!」

 

ドカドカドカドカ!!!

 

「ぐああああ!!!」

 

そして、ここの盗賊団の頭はあっさり討ち取られてしまった

 

桃香「すっご〜〜い一刀さん、愛紗ちゃんと鈴々ちゃんより強いかも♪」

 

愛紗「むぅ、私達の出番が殆ど無かった・・・・・」

 

鈴々「強いのは認めるけど、鈴々達にも残しておいて欲しいのだ・・・・・」

 

一刀「これでここの群れは壊滅か、後は・・・・・」

 

???「誰か助けに来てくださったんですか!?出してください、ここから出してください!」

 

愛紗「っ!!こっちか!!」

 

急いで声のする方向へ駆けつけると、そこには檻に入れられたボロボロの服を纏った薄紫色の髪の女性がいた

 

桃香「大丈夫ですか!!?すぐに出してあげますから!!」

 

愛紗「見張りが言っていた攫われた人というのはあなたか」

 

鈴々「鈴々に任せるのだ!はあああああ!!!」

 

ガチャン!!!

 

蛇矛を錠に叩きつけ破壊する

 

???「ああ、助けていただいてありがとうございます・・・・・私は、姓が孫、名を乾、字は公祐と申します」

 

一刀「っ!!?(それって確か、劉備が陶謙の跡を受けて徐州の刺史になった時に従事となった人じゃ!?)」

 

何故にそんな人物がこんなところで賊に捕まっているのか不思議でたまらない一刀であった

 

美花「私の真名は美花と申します、以後お見知りおきを」

 

桃香「え!!?いきなり真名を預けちゃっていいの!!?」

 

美花「はい♪私の命と貞操を救ってくださったんですから、当然です♪」

 

桃香「私は劉備、字は玄徳、真名は桃香だよ」

 

愛紗「関羽、字は雲長、真名は愛紗だ」

 

鈴々「鈴々は、張飛、字は翼徳なのだ♪真名は・・・・・」

 

一刀「おい、劉備の言っていた剣ってこれのことか?」

 

桃香「え?・・・・・ああ!!!」

 

一刀の手には紛れもない自分の家の家宝、靖王伝家が握られていた

 

桃香「そうですそれです!!・・・・・ああ、よかった〜〜〜」

 

深い安堵に浸りながら、靖王伝家を抱きしめる桃香

 

愛紗「よかったですね、桃香様♪」

 

鈴々「見つかってよかったのだ♪」

 

一刀「いきなり当たりを引けてよかったな・・・・・これでここには用はない、華佗達が心配だ、自己紹介は町に戻ってからだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・よしっ、これで最後か」

 

賊達を全員縛り上げ、一箇所に集める

 

一刀「それじゃあ、このアホンダラ共に人の道を説いてやるか」

 

いつもの長〜〜〜〜い説教が始まろうとするが

 

風「お兄さん〜、今回はお説教は無しにしてもらえませんか〜」

 

一刀「おいおい、これからこいつらに再教育を施さないといけないのに」

 

禀「劉備さん達もいらっしゃることですし、あまりこんなところで待たせるのは失礼だと思いますよ」

 

一刀「・・・・・わかった、今回は止めておこう」

 

桃香「?・・・・・お説教って何?」

 

華佗「ああ、一刀はこうやって賊を捕まえた後、人として真っ当な道に戻すために必ず説教をするんだ」

 

鈴々「そういえばお兄ちゃん、本当に腰の剣を使わないで素手だけで倒していたのだ」

 

星「一刀殿は武闘家だが、ああいった人の道を踏外した者共であろうと決して殺生をしないと心掛けているからな」

 

愛紗「それは危ういな、そのうち足元を掬われかねんぞ」

 

美花「うふふ、お優しいんですね♪」

 

一刀「俺はこいつらとは違う、人殺しや強盗に手を染めるなんて冗談じゃないからな・・・・・さて、とっととこいつらを憲兵に突き出しに行くか」

 

賊の縄を引き、街へ連れて行こうとする一刀だったが

 

キリキリキリキリ

 

一刀「・・・・・っ!?」

 

突然耳に嫌な紐の音が届く

 

シュバッ!!

 

一刀「おい!!」

 

言うより早く、その刺突は空を切り裂く

 

ドスッ!

 

愛紗「ぐあっ!!!??」

 

桃香「あ!愛紗ちゃん!!?」

 

鈴々「愛紗!!?」

 

突然愛紗の左肩に一本の矢が突き刺さった

 

一刀「ちっ!」

 

シュバババ! ズドンッ!!

 

ドゴーーーーーーン!!!

 

「ごっはあああああああああ!!!!」

 

岩陰に隠れる賊を氣弾、雷針砲で吹っ飛ばす一刀

 

華佗「まだ残っていたか!!?」

 

星「任されよ!!」

 

吹っ飛ばした賊を確保しに星は駆け出した

 

桃香「大丈夫!!?愛紗ちゃん!!?」

 

鈴々「愛紗ぁ!!しっかりするのだ!!」

 

愛紗「くっ!私としたことが、これでは人のことは言えぬな・・・・・」

 

矢を引き抜き、自身で持っていた布で傷口を縛った

 

美花「だ、大丈夫ですか!?」

 

桃香「華佗さんに見てもらったほうが良くない?」

 

愛紗「なんのこれしき、これくらいの傷、三日もすれば・・・・・うっ!?」

 

しかし、いきなり視界が歪みだし、その場で片膝をついてしまった

 

華佗「・・・・・これは」

 

引き抜かれた矢尻を調べる華佗

 

華佗「・・・・・かなり強力な毒が塗られているな、すぐに処置を施さないと後々面倒なことになるぞ!」

 

桃香「お願いします華佗さん!!愛紗ちゃんを助けてください!!」

 

華佗「ああ、分かっている・・・・・それでは、これからその毒を抜く治療をするんだが・・・・・」

 

愛紗「ああ・・・・・頼む・・・・・ぐぅぅっ・・・・・」

 

華佗「その為には左腕の傷口を切り開かないといけないんだ」

 

星「いつものように鍼では駄目なのか?」

 

華佗「ああ、鍼じゃ毒は抜けないからな」

 

鈴々「切り開くってどういう意味なのだ?」

 

一刀「なるほど、施術か」

 

華佗「なに!!?どうして一刀がそれを知っているんだ!!?施術は五斗米道秘伝の技なのに!!」

 

一刀「俺が前居たところでは、施術は珍しいものじゃなかったからな」

 

華佗「まさか・・・・・お前の居た所はどれだけ進んでいるというんだ!?・・・・・ということは、一刀も施術ができるのか!?」

 

一刀「いや、流石にそこまでの技術は俺も持っていないが・・・・・」

 

愛紗「お、おい・・・・・華佗殿、それは、毒を抜いた後は・・・・・ぐぅぅ・・・・・元通り、刀は振るえるのか?・・・・・」

 

華佗「あ、ああ・・・・・そうでなければ意味がないだろ?任せておけ」

 

愛紗「当然だ・・・・ぐぅぅっ!・・・・」

 

華佗「まずは、この麻沸散を飲んでもらって、少しの間眠ってもらうことになるんだが」

 

愛紗「っ・・・・・少しとは、どの、くらいだ・・・・・」

 

華佗「強い薬だからな、効き具合にもよるが、一日か二日くらいだと思う」

 

愛紗「それは駄目だ、私のせいで・・・・・そんな足止めをくらうわけには・・・・・いかない・・・・・その毒抜きは、どれくらいで終わるんだ・・・・・ぐぅぅっ!」

 

華佗「そうだな、毒の種類にもよるが、一刻ほどだ」

 

愛紗「それなら飲まなくてもいい・・・・・それでも問題は・・・・・ないのだろう・・・・・ぅぅ・・・・・」

 

一刀「おいおい!施術自体はそれで問題はないが、麻沸散無しでやると物凄く痛いんだぞ!」

 

愛紗「構わん・・・・・望むところだ!」

 

一刀「・・・・・はぁ・・・・・なら華佗、これを使ってくれ」

 

腰の脇差を抜く一刀

 

華佗「おいおい、それはいくらなんでも長過ぎるぞ」

 

一刀「いや、これを使った方が仕事が早いはずだ・・・・・ちょっと待ってろ、今殺菌するから」

 

脇差の刀身を露にし、鍔元に左手を沿え集中する

 

一刀「すぅ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・ふっ!」

 

一気に氣を最大に引き上げ羽のような氣の粒子が舞い落ちる

 

「!!!??」

 

華佗以外の者達がその光景に目を見開く

 

一刀「・・・・・天地陰陽」

 

そして、右手を鍔元から切っ先に移動させ回天丹田の力を刀身へと注ぐ

 

刀身から白い羽の粒子が舞い落ち、地面に落ちては消えていく

 

愛紗「(これは、なんと強く暖かい氣だ)」

 

桃香「(・・・・・綺麗〜〜)」

 

鈴々「(凄い氣なのだ〜)」

 

星「(ここまで強力な氣を出せたのか、一刀殿は)」

 

風「(ほわ〜、まるで飛天のようですね〜)」

 

禀「(天の御遣い・・・・・また一つ納得してしまいそうです)」

 

美花「(なんて神々しいのでしょう)」

 

一刀「・・・・・よし、これでいいぞ」

 

天地陰陽によって脇差に注がれた氣を振って落とし、刀身に布を巻き付け華佗に手渡した

 

華佗「大丈夫なのか?一刀」

 

一刀「安心してくれ、この兼元の切れ味はおそらく、この世一だ」

 

風「その刀をどうするのですか〜」

 

華佗「どうって、傷口を切開するのに使うんだ、こうすぅっと」

 

桃香「・・・・・・・・・・っ!」

 

美花「はうぅ・・・・・」

 

鈴々「お、お姉ちゃん!!?」

 

想像してしまったらしく、桃香と美花はその場で気を失い倒れてしまった

 

一刀「みんな向こうに行っていた方がいいぞ、見ていて気分のいいものじゃないからな」

 

星「いえ、また面白そうなものが見れそうですからな、ここにおりまする」

 

風「風もです〜、こんな機会は滅多になさそうなので〜」

 

禀「これも一つの経験でしょう」

 

華佗「それじゃあ、始めるぞ・・・・・っ」

 

そして、愛紗の傷口に兼元の切っ先を当てる華佗

 

すると

 

華佗「っ!?・・・・・(なんなんだこれは、滅茶苦茶な切れ味だぞ!)」

 

愛紗「っ?・・・・・(どういうことだ、あまり痛みを感じない)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

華佗「よし、これで完了と・・・・・」

 

風「ふぅ〜〜〜〜〜、痛そうでしたねぇ〜〜」

 

禀「はい、見ているこっちがフラフラしてしまいます」

 

愛紗「い、いや・・・・・そうでもなかったぞ」

 

華佗「それにしても驚いたな、この刀の恐ろしい切れ味はなんだ?半刻で済んでしまったぞ」

 

一刀「こういった刃物の技術に掛けては、俺の国は群を抜いていたからな」

 

兼元を華佗から受け取った一刀は、腰に戻した

 

禀「それにしても華佗殿、今日は叫びはありませんでしたね」

 

華佗「あれは病魔を見つけるのと鍼に氣を込める為の動作だからな、傷口の切開は氣を落ち着ける方が重要なんだ」

 

風「ふ〜〜〜ん、なかなかに奥が深いんですね〜」

 

華佗「っと、よく頑張ったな」

 

愛紗「そうか・・・・・もう動かしても構わんか?」

 

華佗「無茶を言うな、鍼を打てば回復は早まるだろうが、それでも三日は動かすのは厳禁だ」

 

愛紗「三日か・・・・・まぁ動けないよりはマシか、ならばその回復が早まる鍼とやらも頼めるか」

 

華佗「そうか、ならばいくぞ・・・・・はあああああああああああああああ!」

 

愛紗「な、なんだ!!?」

 

華佗「血の流れを正し、回復を早めるツボは、ここだあああああああ!!いっけええええええええ!!」

 

愛紗「わああああああああああああ!!!」

 

ドカッ!!

 

華佗「五斗米ぐはあっ!!?」

 

一刀「うおっ!!?華佗!!大丈夫か!!?」

 

氣を打ち込む寸前で華佗は愛紗に殴り飛ばされてしまった

 

愛紗「す、すまん!闘気を当てられて、つい!」

 

華佗「さ、流石・・・・・一流の武人・・・・・いい拳だったぜ・・・・・一刀、後は頼む・・・・・がくっ」

 

一刀「華佗、しっかりしろ!!死ぬな!!華佗、華佗ああああああああああああ!!!!」

 

風「・・・・・まだ息はありますよ〜」

 

一刀「分かってるよ、ただ言わなきゃいけないと思ったんだ・・・・・」

 

自分でも何を言っているのか訳が分からない一刀であった

 

一刀「それじゃあ、俺がやるから・・・・・殴りかからないでくれよ」

 

愛紗「す、すまない・・・・・よろしくお願いする・・・・・」

 

一刀「・・・・・はあああああああああああ!・・・・・っ!」

 

以前華佗から貰った予備の鍼を愛紗のツボに刺し氣を送る一刀

 

愛紗「(なんて暖かく、優しい氣なんだろう)///////////」

 

体の無駄な力が抜けていくような感覚に愛紗は自然と身を委ねていた

 

一刀「・・・・・よし、これでいいと思うが」

 

愛紗「ありがとう・・・・・これはいい、怪我をした前よりむしろ調子がいいくらいだ♪」

 

桃香「・・・・・すみません、ちょっと一刀さんに聞きたいことがあるんですが」

 

一刀「なんだ?」

 

鈴々「うんうん、お兄ちゃん、さっきのはなんだったのだ?」

 

一刀「さっきの?」

 

星「あのいつもとは違う強力な氣ですよ」

 

禀「私も聞きたいです、なんなのですか、あれは?」

 

一刀「ああ、あれか・・・・・あれは回天丹田と天地陰陽といって、北郷流禁忌の奥義だ」

 

星「禁忌ですか?」

 

一刀「ああ、あまり使い過ぎると寿命が縮まってしまうから、一日に一回が限界なんだ」

 

愛紗「え!!?私はそんなものを使わせてしまったんですか!!?」

 

一刀「乱用さえしなければ寿命が削れることはないから、安心してくれ」

 

愛紗「ほっ・・・・・よかったです・・・・・」

 

美花「それにしても綺麗でしたね、まるで天使様みたいでした」

 

風「それはそうですよ〜、なんせお兄さんは天の御遣いなんですから〜」

 

桃香「え!!?天の御遣い!!?」

 

愛紗「あの管輅の占いの!!?」

 

鈴々「納得なのだ!!」

 

美花「天の・・・・・御遣い様・・・・・」

 

一刀「またそれかよ、何度も言っているけど、俺はそんな御大層なものじゃない」

 

桃香「一刀さんは絶対天の御遣いだよ!この乱世の大陸を平和にするために舞い降りた愛の天使様なんだよきっと!さっきだって、一刀さんすごく綺麗な羽を落としていたし!」

 

一刀「あれはそう見えているだけの氣の粒子だって!」

 

桃香「・・・・・一刀さん!!折り入ってお話があるんですが!!」

 

一刀「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後町に戻ってきた一刀達だったが、まずは捕まえた盗賊を憲兵に引渡し、その後茶屋で全員腹ごしらえをした

 

その間に真名の交換を済ませ、意気投合した一同

 

そしてその後、他の人達に退席してもらい、茶屋には一刀、桃香、愛紗、鈴々が残された

 

 

 

 

桃香「それでね一刀さん、私達はか弱い人達が傷つき無念を抱いて倒れることに我慢ができなくて、少しでも力になれるのならって、そう思って旅を続けていたの・・・・・でも、三人だけじゃもう、なんの力にもなれない・・・・・そんな時代になってきてる・・・・・」

 

愛紗「しかし、我らはそんなことで挫けたくないのです、無力な私達にだって出来ることはあるはず・・・・・ですから、私達に力を貸してください!天の御遣いであるあなた様が力を貸してくだされば、もっともっと弱い人々を守れると思うんです!」

 

鈴々「戦えない人達を、力なき人達を守るために、力があるからって好き放題暴れて、人のことを考えないケダモノみたいな奴らを懲らしめてやりたいのだ!」

 

一刀「・・・・・確かに、俺はこの大陸の人間じゃないし、今まで華佗達と一緒に数え切れないほどの賊を捕まえてきたけど、結局出来たことは高が知れているし、俺自身が自分を天の御遣いだなんて思っていない」

 

愛紗「あなたの言っていることも正しい、しかし正直に言うと、あなたが天の御遣いでなくとも、それはそれで良いのです」

 

一刀「・・・・・そうか、天の御遣いかもしれないということが重要ということか」

 

愛紗「はい、我ら三人、憚りながらそれなりの力はあります、しかし我らに足りないものがある・・・・・それは・・・・・」

 

桃香「名声、風評、知名度・・・・・そういった、人を惹き付けるに足る実績がないの」

 

鈴々「鈴々達も山賊を倒したり賞金首を捕まえたりしてきたけど、それは一部の地域での評判しか得ることができないのだ」

 

愛紗「そう、本来ならば、その評判を積み重ねていかなければならない、しかし大陸の状況はすでにその時間を私達にくれそうもないのです」

 

桃香「一つの村を救えても、その間に他の村の人達が泣いている・・・・・もう私達だけの力じゃ限界が来ているんです、それは一刀さんだって分かっているはずです」

 

一刀「だからこそ、天の御遣いという虚名を利用して大きく乱世に羽ばたく必要がある・・・・・と考えているのか・・・・・」

 

桃香「はい」

 

愛紗「その通りです」

 

鈴々「力を貸して欲しいのだ」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

彼女達のその真っ直ぐな瞳は、僅かに潤み真剣さを滲ませる

 

そこには確かに真心というものがあり、本心から誰かの力になりたいと考えている事が分かる

 

言葉の一つ一つには確かな気迫があり、歴史の偉人が嫌いな一刀でさえも魅力を感じてしまいそうなほどだった

 

しかし

 

一刀「・・・・・なるほど、君達の気持ちは分かった」

 

桃香「それじゃあ私達のご主人様に「だが断る!!」・・・・・え?」

 

その拒絶の言葉を皮切りに、一刀は席を立ち店を出ていこうとする

 

桃香「ま、待って下さい!せめて理由を教えてください!」

 

愛紗「そうです!それだけでもお願いします!」

 

鈴々「そんな一方的に断られても困るのだ!」

 

一刀「それは自分自身で考えるんだ、答えは君達自身の中にある」

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

愛紗「・・・・・・・・・・」

 

鈴々「・・・・・・・・・・」

 

一刀「・・・・・おじさん、勘定をお願いします」

 

店主「まいど!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、店から出る一刀

 

星「随分と容赦なく切り捨てられましたな」

 

一刀「・・・・・いるのは分かっていたけど、盗み聞きは趣味がいいとは言わないぞ」

 

星「おっと、これは失敬」

 

店の前に置いてある椅子に腰掛け、優雅に茶を飲んでいる星の姿があった

 

一刀「旅の準備は終わったから、今日はこの街で一晩明かして明日の朝出発しよう」

 

星「桃香殿のどこが気に入らないのですかな?私はあのお方の中にかなり魅力的な徳を感じましたが」

 

一刀「・・・・・確かに、星の言っていることも合っているんだろう・・・・・だけど俺は、誰かの主になる気は、さらさらない」

 

星「惜しいですな、一国の主となった一刀殿の姿を是非この目で見てみたかったのですが・・・・・それに、こんな人数で賊を捕らえるような効率の悪いやり方より、一刀殿と桃香殿の人徳を合わせれば、より多くの民草を救うことができるのではありませんか?」

 

一刀「よしてくれよ・・・・・その果てに待っているのは・・・・・・・・・・地獄だ・・・・・」

 

星「・・・・・・・・・・」

 

まるで般若のような形相で、哀しい声を出す一刀を星は黙って見送るしかなかった

 

星「(一刀殿の目には、一体何が映っているというのですか?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

大通りの人混みを巧みに躱しながら宿に向かう一刀は、物思いに耽っていた

 

一刀が桃香達の申し出を断った理由は、三国志の劉備にあった

 

三国志物語の中で一刀が最も気に入らなく、分からない事がある

 

それは、なぜに曹操が悪役なのかである

 

もちろん、戦争している以上どいつもこいつも悪党でしかないのだが、それでも曹操が一方的に悪役である事が気に入らない

 

一刀からすれば、劉備や諸葛亮の方がよっぽどの悪党なのだ

 

後の世では劉備は人徳の名君として名高いが、人々に刀槍を持たせ戦場に向かわせ殺し合いをさせている時点で、すでに人徳もクソもない

 

長い目で見れば、この大陸は曹操が統一すればよかったのである、それを無駄に妨害した結果どうなった?

 

蜀漢はすぐに滅亡し乱世は無駄に長くなるだけに終わり、結局何がしたかったんだ?という話である

 

もちろん、あの三人が一刀の知っている劉備、関羽、張飛と同一人物であるはずがないが、既に一刀には孫堅という一例が刻みつけられてしまっている

 

一刀「(冗談じゃない、俺は誰かの巨大な欲望や権力に振り回されて、生き死にのやり取りをさせられるなんて・・・・・御免被りだ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「・・・・・・・・・・」

 

愛紗「桃香様、お気を落とさずに」

 

鈴々「そうなのだ、断られてしまった以上、しょうがないのだ」

 

愛紗「それにしても、なんて失礼な人だ、桃香様がここまで頼み込んでいるというのに」

 

桃香「愛紗ちゃん、そんなこと言っちゃ駄目!一刀さんは、私の靖王伝家を探すのを手伝ってくれたんだから!それに愛紗ちゃんも一刀さんに助けてもらってるでしょ!」

 

愛紗「むぅぅ・・・・・」

 

桃香「・・・・・でも、どうして断られちゃったんだろう、私の頼み方が悪かったのかな」

 

鈴々「答えは、鈴々達の中にあるって言ってたけど、どういう意味なんだろうな?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

自分達の中の答えなんていう抽象的な表現をされてもチンプンカンプンな桃香達

 

そこに

 

美花「桃香様!!」

 

桃香「え!?美花ちゃん!?」

 

愛紗「美花殿!?」

 

鈴々「にゃにゃ!?美花お姉ちゃん!?」

 

突然、店の奥から美花が現れて桃香達の前に跪いた

 

美花「私、桃香様のお話を聞いて感激しました!ぜひぜひ、私を桃香様の配下にお加えください!」

 

桃香「ええ!?聞いていたの!?」

 

美花「はい、ご無礼をお許し下さい・・・・・ですが、桃香様の志の高さに胸を打たれたのは事実です、どうか私を連れて行ってください!」

 

桃香「美花ちゃん・・・・・うん♪一緒に行こう♪美花ちゃん♪」

 

美花「ありがとうございます、これからはご主人様と呼ばせていただきますね♪」

 

桃香「ご、ご主人様!!?」

 

美花「はい・・・・・いけなかったですか?」

 

桃香「ううん!呼びたいように呼んでくれればいいよ!・・・・・あははぁ・・・・・」

 

自分がそう呼ぼうと思っていたのに自分自身がそう呼ばれている状況に若干戸惑う桃香であった

 

鈴々「なあなあ美花お姉ちゃん、お兄ちゃんの言っていた鈴々達の中の答えってなんなのだ?」

 

美花「それは、これから考えていけばいいのではありませんか?」

 

桃香「え?それってどういう事なの?」

 

美花「一刀さんも鬼じゃありませんし、根気よくこちらが頼み込めばそのうち私達のご主人様になってくれると思いますよ♪」

 

桃香「・・・・・そうだよね・・・・・よし、諦めないぞ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌朝

 

一刀「・・・・・なんだか、また人数が増えているような気がするんだけど」

 

禀「気がするのではなく、実際に増えているんですよ」

 

一刀「だよな・・・・・」

 

新しく馬を買ったはいいが、もともと荷物持ちとして買ったはずの馬に人が乗る始末

 

いや、お金に困っていたわけではないので、それはそれでいいのだが

 

一刀「しかも何なんだ?この状況は?」

 

桃香「早く行こ♪一刀さん♪」

 

美花「参りましょう、ご主人様♪」

 

そう、一刀の前には今度は美花が居座り、後ろには桃香が抱き付いてきていた

 

風「む〜〜〜〜、そこは風の席ですよ〜〜」

 

星「くじで負けてしまったんだ、ここは引き下がるところだぞ、風よ」

 

風「む〜〜〜〜、風の特等席が〜〜」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

愛紗「桃香様!そんなに抱きつかれては桃香様の威厳に関わります!」

 

鈴々「愛紗が嫉妬してるのだ♪」

 

愛紗「な!!?嫉妬などしていない!!//////////」

 

桃香「さあ、出発進行〜〜〜♪」

 

美花「皆さん、宜しくお願いします♪」

 

一刀「(だから胸を押し付けてこないでってば〜〜〜〜!!)」

 

華佗「はははは♪うちもかなりの大所帯になってしまったな♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、Seigouです

 

今度は英雄譚の新キャラ、美花(ミーファ)が出てきました

 

多分ですが、二次創作で英雄譚のキャラが登場したのは、この鎮魂の修羅が初めてなのではないでしょうか?

 

そういう意味では、恋姫を先取りしてしまったのかもしれませんね、BaseSonさんから苦情が来ないでしょうか?心配です・・・・・

 

という訳で、かなり人数が増えてしまって今後ますます書き難くなっていきそうですが・・・・・待て!!!次回!!!

 

説明
拒絶の修羅
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
8925 6928 34
コメント
スターダストさんへ、上からブレイクオン、メサイヤフィスト、シャイニングナックル、ゴルディオンハンマー、ハリケーンアッパー、マイトガインです(Seigou)
え〜と・・・そう読むんですか? ありがとうございます。 実を言うと・・・殆んどの当て字が読めてません;出来れば教えてください。(スターダスト)
スターダストさんへ、メサイヤフィストですよ(ビートエックス、檜山ラッシュ)(Seigou)
・・・・当て字が読めない; 一応「州斗」でシュートは何とかわかったけど・・・他が読めない;(スターダスト)
h995さんへ、それについてはおいおい語っていこうと思います、今ここで言ってしまうとつまらなくなってしまうんで(Seigou)
全てを背負って時代を切り開いた英雄を全否定する一刀が尊敬する人物を知りたいと思います。……非暴力不服従で有名なガンジーの可能性が高そうですが。(h995)
早く見たいです 恋姫英雄譚 鎮魂の修羅 6(ているず)
ているずさんへ、この鎮魂の修羅には登場させるつもりですよ(Seigou)
呉に行ったらどんな話になるんだろ?(mana)
恋姫英雄譚は張三姉妹を出演しますか(ているず)
あれ?なんで付いて来たww一刀だいぶ主義主張の押し付けが激しく見える(´・ω・`)(スネーク)
華佗が戦闘中ぶっ壊れてたんですがwそして断ったのについてきとるしw(nao)
他人に答えを求めて自分で答えを考えることをやめる時点で桃香は王には向いていないと取れてしまうんですよね・・・まぁ桃香だけでなくこの一刀も一方的に自分の考えを押しつけている面もありますが(本郷 刃)
誰にも未来が見える訳でもないし、人の抱える物がわからないからこそ人間不安を覚えるもんだ……それがわからないからこそ戦争は起きるんだろうね〜(笑い猫)
一刀、お前は解ってない、解ってない!『だが断る!』の後の台詞を言って初めて完成だろうがぁあああ!!   え?見るとこそこじゃない?・・・き、気にすんな(^-^;(ユウヤ)
忘れちゃいけないが言い方は悪いですが所詮彼は一高校生でした、北の辺境で「義務、責任、仕事、上司と部下、御上」等の現実を見聞すれば…(禁玉⇒金球)
有り余る人徳があるから、人々が自ずから武器を手にすることもあるんだろうけど…一刀くんは常に最弱者の立場で考える癖があるんだろうか?あと、かなりうろ覚えで申し訳ないですが、BaseSonは金銭やり取りが発生しない限り、二次創作容認してませんでしたっけ?なので恐らく大丈夫かと(ムカミ)
この流れだと次は曹操の所かな?(夜桜)
おぉ、本当に大所帯wwこんなことになるとは、まったく想像してませんでした。もう、前回から想像を超えていきますねww・・・ではでは・・・・待つ!!!次回!!!(一丸)
まず寝食を忘れてでも考えて、考えて、考え抜いたあげくわからなかったら考える。他人に、しかもその言葉を放った人物に訊ねるなど駄目過ぎる。確かに蜀漢は負け惜しみで出来た国ですし、乱世は無駄に長引きました。それを知っている一刀からすれば、今の桃香の行いもいずれ必ずそこに繋がるものにしか見えないのでしょうね。(Jack Tlam)
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鎮魂の修羅 北郷一刀 恋姫英雄譚 

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