お泊まり獣語り
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 先輩は布団とベッド、どっちが良いですか?

 ベッドですね。

 じゃ、すぐに用意しますんで、待ってて下さい。

 

 シーツと掛け布団は新しいのがあるんで、それを使って……。

 はあ。

 このままで良い?

 そうは言われましても、俺が普段使ってるヤツですよ、気になりませんか?

 

 別に気にならない、ですか。

 そんなに汗臭いのかって、いや、そんなことはないですよ。布団は今朝、乾したところですし、シーツも新しいですから。

 なら良いじゃないって、まあ、先輩がそう言うんでしたら良いですけども。

 

 あの、先輩?

 俺のベッドの布団とシーツにくるまって、何で、にやにやしてるんですか。

 

 はあ、汗臭くないかチェックしてる?

 だから臭くないですって。

 ちょっ、くんくんしないで下さいよ、何か気恥ずかしいじゃないですか。

 

 ほんとに、もう、先輩はいい大人なんですから、中学生と同じ事をしないで下さい。

 え?

 ああ、さっきも話しましたけど、以前に田舎の子が泊まったときに、やっぱり俺のベッドで寝たんですね。で、その時に今の先輩と全く同じ事をしたんですよ。

 

 おおう、先輩が凄い怖い眼で俺を見ている……。

 な、何でしょうか?

 

 はあ、その子の着替えはどうしたのか、ですか? 持ってきてましたよ。パジャマでしたけど。

 え……?

 着替えを持ってこい、ですか。

 この時間にやってる服屋なんかないと思うんですが。

 

 そうじゃなくて?

 俺の服を貸せ?

 別に構いませんが、ジャージぐらいしかありませんよ、あずき色した。

 

 はあ、分かりました。ちょっと待ってて下さいね。

 ……っと、これです。

 それじゃあ、俺は向こうの床で寝てますから。お茶とかは奥の冷蔵庫に入ってるんで、咽喉が渇いたら好きに飲んで下さい。

 

 え?

 ここで寝ないのか?

 や、寝ないですよ。流石に同じ部屋ってのは問題あるでしょう。

 

 はあ、別にやましいことは考えてないですよ。

 なら構わないだろうと言われましても、先輩は良いんですか。

 

 大丈夫? 信用してるから?

 第一、俺が本気になったら抵抗のしようがないし?

 いやいや、本気も何も、妙なことはしませんよ。

 

 ?

 何してるんですか、ベッドの中に潜り込んで?

 あー、中でジャージに着替えたんですね。

 脱いだものですか?

 あっちのクローゼットにハンガーがあるんで、そこに掛けておいて下さい。

 

 やっぱり俺のジャージだと大きすぎますね。

 袖とか裾とか余りまくってますよ。

 

 え?

 まあ、普通、女性に自分のジャージを貸す経験が豊富な男って、そんなに居ないんじゃないですかね。

 はあ、自分は先輩が初ですけども。

 

 ……?

 何で小さくガッツポーズなのかよく分からないんですが。

 気にするな、何でもない、ですか。

 はあ、分かりました。

 

 しかし、よく考えたら俺に布団とか要らない気がしてきたな。

 ええ、まあ、全身獣毛で覆われてますしね。

 肉の量も単純に増えますから、体温が下がらないんですよ。

 

 じゃあ、俺は部屋の隅っこで丸まってますんで、邪魔だったら言って下さい、どきますんで。

 邪魔じゃないから近くで寝てろ、ですか。

 はあ、分かりました。

 

 じゃあ、電気消しますよ。

 ほい、と。

 

 え、もうちょっとこっち、ですか?

 では、寄りますね。

 

 しかし、あれですね、先輩は獣化しても細いですね。

 俺は矢鱈とでかくなりますが、この辺り、狐の先輩と狼の俺との差なんですかね。

 そもそも、俺の獣化は身体変化の配分が獣に傾いてますからね、ちょっと系統が違うのかも知れません。

 

 まあ、人間の時でも俺は厳ついですからねえ、目付きも悪いし。

 いやいや、そんな風に言ってくれるのは先輩だけですよ。

 

 大体が、おっかないとか、悪人面とか、眼に殺獣光線を仕込んでるとか、マフィア映画のボスの後ろに立ってる左から三人目とか、学生の頃から散々でしたからねえ。

 あれ、何か哀しくなってきた……。

 

 いや、もうほんと、外見に関しては碌な思い出が無いんですよ。

 昔、告白したときも泣かれましたからね。

 

 え?

 ああ、中学の頃の話ですよ。

 その後に自分が獣人だと分かって、妙に吹っ切れたんですよね。

 怖がられるのも無理ないわ、だって俺、人間じゃないんだものって感じです。

 まあ、今も人好きはしないですし、これは一生ものなんですかねえ。

 

 うぼっ。

 

 な、何ですか先輩、ベッドから軽く跳んでニードロップとか、ちょっと衝撃が来ましたよ。

 別に俺なんか怖くない? そりゃあ、先輩はそうでしょうけれども。

 

 う、膝で腹筋をぐりぐりするのは止めて下さいよ、こそばゆいです。

 ほら、怖くないって、風の谷っぽいですね。

 いやいや、俺は噛んだりしませんよ、寧ろ先輩が噛む側じゃないですか。

 

 むむ。

 

 ほんとに噛んでどうするんですか、まあ、別に痛くはないんですが。

 と言うか、俺の上に被さったまま、首筋を甘噛みするのは余り宜しくないんじゃないですかね、体勢的に。

 

 はあ、気にするな、ですか。

 そんなことより眠くなってきた?

 や、先輩、幾ら何でも俺の上に乗っかったまま寝るのは勘弁して下さいよ。

 

 ほら、起きて下さいよ、ベッドはすぐそこですよ。

 動かない……。

 

 いや、先輩、まだ起きてますよね? 首に腕を回して、脚を俺の脚に絡めてますけど、凄い力が籠もってますよ?

 ほら、離れて下さいよ。

 ちょ、ぎりぎり締まってますよ? 何やら総合の技みたいになってますよ?

 

 しかも同時に俺の首筋やら顎を噛むのは何なんですか。

 さっきも言いましたが、痛くはないんですよ。ただ、ちょっと宜しくないですよね?

 

 や、あのですね、うっさい黙ってろではなくてですね、と言うか完全に起きてますよね?

 何で今更、あらぬ方向を向いてるんですか、意味ないですよ。

 ぐーぐーって、態とらしいのにも程があります。

 

 これは寝言だ?

 明らかに会話が成立してるじゃないですか。

 はあ、兎に角、このまま寝てろ? 勿論これは寝言だから返事は聞いてないから?

 無茶苦茶ですよ。

 

 言っておきますが、俺が寝返り打って潰れても知りませんからね。

 それはダメだ、動くな?

 いやいや、俺だって寝返りぐらい打ちますよ。そもそも寝言なんですよね? 返事とかしないですよね?

 

 むー、じゃないですよ。

 意地悪でもないですよ、寧ろ困らされてるのは俺じゃないですか。

 と言うか、またしても会話が成り立ってますよね? 寝てないですよね?

 

 ぐーぐーって、またですか!

 ああ、もう、分かりましたよ! 取り敢えず、甘噛みは禁止の方向でお願いしますよ!

 えへへー、じゃないですよ。起きてますよね、明らかに?

 

 ぐーぐーってそれはもう良いですから!

 何これ、朝までこんな感じなんですか?

 先輩? せんぱーい!

 

説明
宅?みのすぐ後の話です。最後まで馬鹿な話です。
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コメント
続きが、非常〜に楽しみです!(いた)
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