英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜旧校舎・終点〜
「いや〜、やっぱり最後は友情とチームワークの勝利よね。うんうん。お姉さん感動しちゃったわ♪後そこの二人。少しは空気を読んでもっと早く駆けつけてあげなさいよ。だったら、その後現れた3体もわざわざ”助っ人”を呼ばなくても難なく倒せたのじゃないかしら?」
「アハハ……すみません。」
「次からはかけつけるように頑張ります……」
サラ教官に視線を向けられたプリネとツーヤはそれぞれ苦笑し
「俺は先程の二人の判断が正しいと思うが。残りの者達は一部を除けば既に余力を残していなかったからな。」
「うっさいわね〜。可能性は0じゃないからいいじゃない。」
呆れた表情で指摘したレオン教官をサラ教官はジト目で睨んだ。そして二人はリィン達に近づいてきた。
「これにて入学式の特別オリエンテーリングは全て終了なんだけど……何よ君達。もっと喜んでもいいんじゃない?」
全員が注目している中、何の反応もしないリィン達を見回したサラ教官は首を傾げ
「…………………」
その様子を見ていたレオン教官は呆れた表情で黙り込んでいた。
「よ、喜べるわけないでしょう!」
「正直、疑問と不信感しか湧いて来ないんですが……」
「あら?」
「当然の反応だな。」
そしてマキアスとアリサの苦言にサラは首を傾げ、レオン教官は冷静な様子で呟いた。
「―――単刀直入に問おう。特科クラス”Z組”………一体何を目的としているんだ?」
「身分や出身に関係ないというのは確かにわかりましたけど……」
「なぜ我らが選ばれたのか結局のところ疑問ではあるな。」
ユーシスの質問をきっかけにエマとラウラも次々と疑問を口にした。
「ふむ、そうね。君達が”Z組”に選ばれたのは色々な理由があるんだけど……一番わかりやすい理由はその”ARCUS”にあるわ。」
サラの答えを聞いたリィン達はそれぞれが装着している戦術オーブメントを取り出してオーブメントを見つめた。
「この戦術オーブメントに……」
「エプスタイン財団とラインフォルト社が共同開発した最新鋭の戦術オーブメント。様々な魔法(アーツ)が使えたり通信機能を持っていたりと多彩な機能を秘めているけど……その真価は”戦術リンク”――――先程君達が体験した現象にある。」
「”戦術リンク”……」
「さっき、みんながそれぞれ繋がっていたような感覚……」
サラ教官の説明を聞いたアリサとエリオットはそれぞれ呆けた様子で戦術オーブメントを見つめた。
「ええ、例えば戦場においてそれがもたらす恩恵は絶大よ。どんな状況下でもお互いの行動を把握できて最大限に連携できる精鋭部隊……仮にそんな部隊が成立すればあらゆる作戦行動が可能になる。まさに戦場における”革命”と言ってもいいわね。」
「ふむ、確かに。」
「理想的だね。」
サラ教官の話にラウラとフィーはそれぞれ納得した様子で頷き
「―――だが、欠陥もある。」
「欠陥、ですか?」
レオン教官が呟いた言葉を聞いたリィンは首を傾げた。
「現在エプスタイン財団が新開発を終え、軍や遊撃士協会等に提供している戦術オーブメント―――”ENIGMA(エニグマ)U”と比べると個人の適性差が激しい。」
「個人の適性差………それはもしかして人によっては使えないという事ですか?」
レオン教官の説明を聞いて考え込んだ後何かに気付いたツーヤは尋ね、ツーヤの質問にサラ教官は頷いて答えた。
「その通りよ。現時点で、ARCUSは個人的な適性に差があってね。新入生の中で、君達は特に高い適性を示したのよ。それが身分や出身に関わらず君達が選ばれた理由でもあるわ。」
「………なるほど。」
「な、なんて偶然だ……」
サラ教官の口から出た驚愕の事実にガイウスは冷静な様子で頷き、マキアスは信じられない表情をした。
「さて――――約束どおり、文句の方を受け付けてあげる。トールズ士官学院はこのARCUSの適合者として君達11名を見出した。でも、やる気のない者や気の進まない者に参加させるほど予算的な余裕があるわけじゃないわ。それと、本来所属するクラスよりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟してもらった上で”Z組”に参加するかどうか――――改めて聞かせてもらいましょうか?」
サラ教官に見回されたリィン達はすぐには答えを用意できず、互いの顔を見合わせた。
「あ、ちなみに辞退したら本来所属するはずだったクラスに行ってもらうことになるわ。貴族、皇族出身ならT組かU組、それ以外ならV〜X組になるわね。今だったらまだ初日だし、そのまま溶け込めると思うわよ〜?」
「…………………」
サラ教官の忠告を聞き、全員が考え込んでいる中リィンは目を伏せて幼い頃のある出来事を思い出した後決意の表情で一歩前に出て宣言した。
「リィン・シュバルツァー。――――参加させてもらいます。」
「あら……」
「え……」
「ほう……?」
「リ、リィン……!?」
リィンの宣言にプリネは目を丸くし、アリサは呆け、レオン教官は意外そうな表情をして戸惑いの表情のエリオットと共にリィンを見つめた。
「一番乗りは君か。何か事情があるみたいね?」
「いえ…………自分は本来学院に通えない立場でありながらもある方のお蔭で、学院に通えるようになったのです。その方の期待を裏切らない為にも自分を高められるのであればどんなクラスでも構いません。」
「……………」
「リィンさん……」
リィンの話を聞いたプリネは目を伏せて黙り込み、ツーヤは驚き
「ふむ、なるほど。」
サラ教官は納得した様子で頷いた。
「―――そういう事ならば私も参加させてもらおう。元より修行中の身。此度のような試練は望む所だ。」
「―――オレも同じく。異郷の地から訪れた以上、やり甲斐がある道を選びたい。」
「―――それでは私も。今後の自分が進むべき未来の糧とする為にもやり甲斐のある授業を受けたいですし。」
「―――あたしもです。ずっと無理だと思っていた学院に通えるのですから、在学中はやり甲斐のある事をしたいですし。」
するとリィンの決意をきっかけにラウラ、ガイウス、プリネ、ツーヤがそれぞれ申し出た。
「新入生トップクラスの使い手にノッポの留学生君と学院最強の留学生コンビも参加と。さあ、他には?」
4人の申し出を聞いたサラ教官は笑顔で頷いた後残りの人物達を見回した。
「私も参加させてください。奨学金を頂いている身分ですし、少しでも協力させていただければ。」
するとその時エマが一歩前に出て申し出
「ぼ、僕も参加します……!これも縁だと思うし、みんなとは上手くやって行けそうな気がするから。」
続くようにエリオットもおずおずと前に出て申し出た。
「魔導杖のテスト要員も参加と。ARCUSと同じくまだテスト段階の技術だから運用レポート、期待してるわよ。」
「ふふっ、了解しました。」
「ううっ……早まっちゃったかな……」
「―――私も参加します。」
(え……)
アリサが申し出るとリィンは驚いた様子でアリサに視線を向けた。
「あら、意外ね。てっきり貴女は反発して辞退するかと思ったんだけど?」
「……確かに、テスト段階のARCUSが使われているのは個人的には気になりますけど……この段階で腹を立てていたらキリがありませんから。」
「フフ、それもそっか。これで8名――――フィー、あんたはどうするの?」
「別にどっちでも。サラと”剣帝”が相談して決めていいよ。」
「”剣帝”………?」
「あら……」
(フィーさんの出身を考えるとレーヴェさんの事を知っていてもおかしくないですね……)
サラ教官に尋ねられたフィーはサラ教官とレオン教官に視線を向けて呟き、フィーの呟いた言葉を聞いたラウラは不思議そうな表情でレオン教官を見つめ、プリネは目を丸くし、ツーヤは真剣な表情でフィーを見つめていた。
「駄目、あんたが決めなさい。自分の事は自分で決める。そういう約束でしょ?というかそいつと相談なんて、こっちから願い下げよ。」
「フッ、随分な嫌われようだ。」
ジト目のサラ教官に視線を向けられたレオン教官は静かな笑みを浮かべ
「めんどくさいな。じゃ、参加で。」
サラ教官の答えを聞いたフィーは呆れた表情で答え、周囲の人物達を呆れさせた。
「それとフィー・クラウゼル。今後先程の名で俺を呼ぶのは止めてもらおう。メンフィル帝国軍人となった今の俺は既にその名は捨てている。」
「ふーん。……わかった。じゃ、”レーヴェ”で良いの?わたしが知っているそっちの名前は後はそれだけだし。」
レオン教官―――レーヴェに指摘されたフィーはレーヴェを見つめて尋ね
「好きにしろ。」
尋ねられたレーヴェは静かな表情で答えた。
「レ、”レーヴェ”??」
「もしかしてレオン教官の愛称でしょうか……?」
レーヴェの名前を聞いたアリサは戸惑い、エマは不思議そうな表情でレーヴェを見つめ
「”レーヴェ”―――帝国では”獅子”を意味する言葉だが……レオン教官はもしかしてエレボニア帝国人なのでしょうか?帝国では”レオン=ハルト”は”獅子の果敢”を意味していますが……それに”剣帝”とは一体……」
「……………」
レーヴェの名前を聞いて何かに気付いたラウラに尋ねられたレーヴェは何も語らず黙り込み
「というかフィー、だっけ。何だかレオン教官の事を知っているようだけど……もしかして知り合いなの?」
「……………」
エリオットに尋ねられたフィーも何も語らず黙り込んだ。
「はいはい、そう言う事は後々わかるから後にしなさい。―――それで残りの二人はどうするつもりなのかしら?」
その時話を変えるかのようにサラ教官は手を叩いて自分を注目させた後マキアスとユーシスに視線を向けて尋ねた。
「………………………」
「………………………」
サラ教官に尋ねられた二人は何も返さず黙り込んでいたが
「まあ、色々あるんだろうけど深く考えなくてもいいんじゃない?一緒に青春の汗でも流していけばすぐ仲良くなれると思うんだけどな〜。」
「そ、そんな訳ないでしょう!?」
からかい半分のサラの言葉にマキアスが声を上げて指摘した後腕を組んで厳しい表情で語り始めた。
「帝国には強固な身分制度があり、明らかな搾取の構造がある!その問題を解決しない限り、帝国に未来はありません!」
「………」
「うーん、そんな事をあたしに言われてもねぇ。」
マキアスの反論にユーシスは何も答えず、サラ教官は苦笑していたが
「―――ならば話は早い。ユーシス・アルバレア。”Z組”への参加を宣言する。」
突如ユーシスが一歩前に出てその場にいる全員が驚く宣言をした。
「あ……」
「な、何故だ………!?君のような大貴族の子息が平民と同じクラスに入るなんて我慢できないはずだろう!?」
ユーシスの宣言にリィンは呆け、マキアスは理解できないような物を見るような目でユーシスを見つめて叫んだ。
「勝手に決めつけるな。アルバレア家からしてみれば他の貴族も平民も同じようなもの。勘違いした取り巻きにまとわりつかれる心配もないし、アルバレア家よりも”格”が上のメンフィル皇家やメンフィル帝国の大貴族の一人である”蒼黒の薔薇”―――ツーヤが”Z組”に参加するのならば、アルバレア家に取り入ろうとする取り巻き達の注意が逸れて好都合が重なるというものだ。」
「…………………」
ユーシスの答えを聞いたマキアスは口をパクパクさせ
(アハハ……私達、さりげなくユーシスさんの”盾”扱いされているわね……)
(よくプリネさん―――メンフィル皇家に対して恐れを抱かず、あんな言葉を口にできますね……)
(フッ、貴族―――それも”四大名門”の出身の子息にしては随分と度胸のある者だな……)
プリネとツーヤはそれぞれ苦笑し、レーヴェは静かな笑みを浮かべていた。
「かと言って無用に吠える犬を側に置いておく趣味もない……ならばここで袂をわかつのが互いのためだと思うが、どうだ?」
そしてユーシスはマキアスを見つめて挑発し
「だ、誰が君のような傲岸不遜な輩の指図を聞くものか!―――マキアス・レーグニッツ!特科クラス”Z組”に参加する!古ぼけた特権にしがみつく時代から取り残された貴族風情にどちらが上か思い知らせてやる!」
ユーシスの挑発に怒鳴って答えたマキアスはサラ教官を見つめて宣言した後ユーシスを睨み
「……面白い……」
対するユーシスは口元に笑みを浮かべた後マキアスと睨み合い始めた!
(はあ……先が思いやられるな……)
二人の様子を見たリィンは溜息を吐いた後隣にいるアリサに小声で話しかけ
(そうね……何だか相当相性が悪いみたいだし。!……)
リィンに話しかけられたアリサは反射的に答えたがすぐに先程の出来事を思い出してリィンに背を向けた。
(あ……)
アリサの様子を見たリィンは肩を落とし
(あはは……そっちはそっちで大変だね。)
(笑いごとじゃないんだが……)
二人の様子を見て苦笑するエリオットをリィンは恨みがましそうな目で見つめた。
「これで11名――――全員参加ってことね!――――それでは、この場をもって特科クラス”Z組”の発足を宣言する。この一年、ビシバシしごいてあげるから楽しみにしてなさい―――!」
そしてサラ教官はリィン達を見回して宣言した後笑顔になった。
「やれやれ、まさかここまで異色の顔ぶれが集まるとはのう。これは色々と大変かもしれんな。」
一方その様子を上層階で真紅のコートを身に纏った金髪の青年と共に見つめていたヴァンダイク学院長は苦笑し
「フフ、確かに。―――ですがこれも女神の巡り合わせというものでしょう。」
「ほう……?」
「ひょっとしたら、彼らこそが”光”となるかもしれません。動乱の足音が聞こえる帝国において対立を乗り越えられる唯一の光に――――」
ヴァンダイク学院長の隣にいる金髪の青年は静かな笑みを浮かべてリィン達を見つめていた。
こうして……平民と貴族が混じり合う前代未聞のクラス―――特科クラス”Z組”が発足された……!
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第12話(序章終了) | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます 本郷 刃様 そうですねえ!?ロイド以上にモテるみたいですから!!(激怒) ジン様 そりゃ降伏させた上、家族と引き離した原因の一族ですから(苦笑)(sorano) プリネは何気にリィンに負い目を感じている感じなんですね。(ジン) 主人公であるリィンが一番の苦労人になるのは違いありませんが、モテるので我慢してくださいww(本郷 刃) |
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