英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 |
〜トールズ士官学院〜
「よ、後輩君。」
声が聞こえた方向に振り向くとバンダナの青年がリィンに近づいてきた。
「えっと……?」
「お勤めゴクローさん。入学して半月になるが調子の方はどうよ?」
「あ、ええ……(どうやら先輩のようだな。)―――正直、大変ですけど今は何とかやっている状況です。授業やカリキュラムが本格化したら目が回りそうな気がしますけど。」
「はは、わかってんじゃん。特にお前さん達は色々てんこ盛りだろうなからなー。ま、せいぜい肩の力を抜くんだな。」
「は、はあ……えっと、先輩ですよね。名前を伺っても構いませんか?」
なれなれしい態度で話しかけてくる青年にリィンは戸惑いながら名前を尋ねた。
「まあまあ、そう焦るなって。まずはお近づきの印に面白い手品をみせてやるよ。」
「手品……?」
「んー、そうだな。ちょいと50ミラコインを貸してくれねえか?」
「え、ええ。(確かあったよな……)」
青年に言われたリィンは戸惑いながら50ミラコインを青年に手渡した。
「お、サンクス。そんじゃあ―――よーく見とけよ。」
「え……」
そしてリィンが50ミラコインに集中すると青年はコイントスをし
(……っ……)
リィンが見守る中、素早く両手を出して落ちてきた50ミラコインを握った。
「―――さて問題。左手と右手。どっちにコインがある?」
「それは――――左手です。」
「残念、ハズレだ。」
リィンの答えを聞いた青年は静かな笑みを浮かべて握っていた左手を開けるとそこには何もなかった。
「……参りました。動体視力には結構自信があったんですけど。って、あれ?手品っていうことは―――」
「こういうことさ。」
「え。」
更に青年が両手を開けるとそこには何もなく、それを見たリィンは目を丸くした。
「フフン、まあその調子で精進しろってことだ。せいぜいサラのしごきにも踏ん張って耐えて行くんだな。――そうそう生徒会室なら2階の奥だぜ。そんじゃ、よい週末を。」
そして青年はその場から去って行き
「……あ、50ミラ……」
青年が去った後青年に貸した50ミラが帰ってきていない事に気付いたリィンは肩を落とした。
(ふう、完全に一本取られたなあ。俺が生徒会室に行く事も何故か知っていたみたいだし。どうやら2年生も結構クセモノ揃いみたいだ。)
その後リィンは生徒会室の前に到着し、扉にノックした。
〜学生会館・生徒会室〜
「はいはーい。鍵はかかってないからそのままどーぞ。」
「(あれ、この声……)―――はい、失礼します。」
扉の奥から聞こえてきた聞き覚えのある声に目を丸くしたリィンが扉を開けて中に入ると入学式の際、校門で出会った女子生徒がリィンに近づいてきた。
「あ……あの時の。」
「えへへ、2週間ぶりだね。生徒会室にようこそ。リィン・シュバルツァー君。サラ教官の用事で来たんでしょ?」
「え、ええ。生徒会の方だったんですね。(飛び級なのか……?改めて見るとフィーよりも歳下みたいだけど……)」
「???どうしたの?」
不思議そうな表情で自分をジッと見つめるリィンの行動に女子生徒は首を傾げて尋ねた。
「いえ、その、やっぱり2年の方なんですよね?」
「あはは、そんなにかしこまらなくていいよー。この学院の生徒会長のトワ・ハーシェルっていいます。改めてよろしくね、リィン君。」
「せ、生徒会長ッ!?」
目の前の小柄な女子生徒―――トワが生徒会長だと知ったリィンは信じられない表情で声を上げた。
「うん、そうだけど?これから、君達新入生に関わることも多いと思うんだ。困っていることや相談したいことがあったらぜひ生徒会室まで来てね?いっしょうけんめいサポートさせてもらうからっ。」
「は、はい……よろしくお願いします。(信じられないけどどうやら本当みたいだな……)……コホン。それでサラ教官の用事ですが。自分達”Z組”に関する何かを預かってもらっているとか?」
「あ、うんうん。これなんだけど……はい、どうぞ。一番上のがリィン君のだよ。」
トワは机に置いてある手帳の束を取ってリィンに手渡した。
「これは……学生手帳―――そう言えばまだ貰っていませんでしたね。」
手渡された手帳の束―――学生手帳を見たリィンは目を丸くした。
「ごめんね、君達”Z組”はちょっとカリキュラムが他のクラスと違ってて……”戦術オーブメント”も通常とは違うタイプだから別の発注になっちゃったんだ。」
「戦術オーブメント……”ARCUS”のことですね。」
「うん、学生手帳には戦術オーブメントの説明者も載っているんだけど……他の一年生の子は今までと同じ標準タイプだから同じレイアウトが使えたんだ。でも君達のは特注品で、かなり操作説明も違うから少し時間がかかっちゃったの。」
「そうだったんですか……って、もしかしてそういった編集まで会長が。」
トワの説明を聞いたリィンは驚いた後ある事に気付いてトワを見つめて尋ねた。
「うん、サラ教官に頼まれて。ごめんねー?こんなに遅れちゃって。」
「いえ、とんでもないですよ!むしろ恐縮というか……そもそも、それって生徒会の仕事なんですか?明らかに教官が手配するべき仕事のような気が……」
トワに謝られたリィンは謙遜した後本来ならサラ教官がやるべき事である事に気付いてこの場にはいないサラ教官を呆れるかのようにジト目になって尋ねた。
「うーん、サラ教官もいっつも忙しそうだし……かと言って副担任のレオン教官もサラ教官の補佐の形で動いているから忙しそうだし……他の教官の仕事を手伝うことも多いから、今更って感じかなぁ?」
「(いい人だ……途方もなく。)――えっと、それでは他の手帳を”Z組”のみんなに私ておけばいいんですね?」
トワの人柄に冷や汗をかいて驚いたリィンはすぐに気を取り直して尋ねた。
「うん、よろしくねー。うーん、でもリィン君たちも一年なのに感心しちゃうな。」
「……?えっと、何がですか?」
「えへへ、サラ教官からバッチリ事情は聞いてるから。何でも生徒会のお仕事を手伝ってくれるんでしょ?うんうん。さすがは新生”Z組”だねっ。」
「その……一体何の話ですか?」
トワの口から出た予想外の話に冷や汗をかいたリィンは戸惑いの表情で尋ねた。
「えっと、生徒会で処理しきれないお仕事を手伝ってくれるんでしょう?『特科クラス』の名に相応しい生徒として自らを高めようって――みんな張り切っているから生徒会の仕事を回してあげてってサラ教官に頼まれたんだけど……」
「…………………」
トワの説明を聞いたリィンはサラ教官が生徒会室の場所を教えた後にウインクをした意味をようやく悟った。
(あの表情はそう言う事か……)
「ひょ、ひょっとしてわたし、何か勘違いしちゃってた……?入学したばかりの子達に無理難題を押し付けようとしてたとかっ……!?」
固まっているリィンの様子を見たトワは慌て出し
「(うっ……)――いえ。その、サラ教官の話通りです。随分お忙しそうだし、遠慮なく仕事を回してください。」
トワの様子を見たリィンは唸った後すぐに気を取り直すと共に覚悟を決めて答えた。
「そ、そっかぁ……ビックリしちゃった。えへへ、でも安心して。あまり大変な仕事は回さないから。えっとね。大抵のものは士官学院や町の人達からの『依頼』になると思うんだ。」
「『依頼』……ですか?」
「うん、生徒会に寄せられた色々な意見要望ってところかな。今日中にまとめて、朝までに寮の郵便受けに入れておくから。とりあえずリィン君のポストに入れてもいいかな?」
「ええ、お願いします。」
その後トワに夕食を奢られる事となったリィンがトワに別れを告げて、建物を出ると既に夜になり、寮に帰ろうとしたときアークスに通信が入り、リィンは通信を開始した。
「えっと……リィン・シュバルツァーです。」
「グーテンターク。わが愛しの教え子よ。どうやら会長に夕食を奢ってもらったみたいね?」
「……その愛しの教え子をだまし討ちしてくれましたね。どういうつもりなんですか?」
声を聴いて通信相手がサラ教官だとわかったリィンは呆れた表情で尋ねた。
「―――詳しくは言えないけど来週伝える”カリキュラム”にもちょっと関係してるのよ。誰か一人にそのリハーサルをやってもらおうと思ってね。生徒会が忙しすぎるのも確かだし、一石二鳥の采配だと思わない?」
「会長の仕事を増やしているのは教官たちな気もするんですが……まあ、趣旨はわかりました。明日の自由行動日に生徒会の手伝いをすればいいんですね?」
「あくまで君の判断に任せるわ。特定のクラブに入るつもりなら無理にとは言わないよ?」
「いえ、ピンと来るものがまだないので問題ありません。ですが―――1つだけ。どうして”俺”なんですか?」
「…………………」
リィンの問いかけに対し、サラ教官は何も答えず黙り込んでいた。
「クラス委員長はエマだし、副委員長はマキアスですよね?身分で言うなら、ユーシスやラウラは勿論、プリネさんやツーヤさんのような真っ当な貴族、皇族出身者までいる―――なのに何故、俺なんですか?」
「ふふっ……それは君が、あのクラスの”重心”とでも言えるからよ。」
「え……」
「”中心”じゃないわ。あくまで”重心”よ。対立する貴族生徒と平民生徒、留学生、そしてかつての敵国の皇族、貴族生徒までいるこの状況において君の存在はあらゆる意味で”特別”だわ。それは否定しないわよね?”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”の”3人目の護衛”君?」
「!それは……………………」
サラ教官に驚いたリィンは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「そしてあたしいは、その”重心”にまずは働きかけることにした。”Z組”という初めての試みが今後どうなるかを見極めるために。それが理由よ。」
「…………………」
サラ教官の話を聞いて黙り込んでいたリィンだったが通話越しに聞こえてくる何かを飲む音を聞き、苦笑しながら指摘した。
「って教官。何を飲んでいるんですか?」
「ビールよ、ビール。週末なのに部屋で寂しく一人酒に決まってるじゃないの。まったくもう、ダンディで素敵なオジサマの知り合いでもいたら一緒に飲みに行ってるんだけど。」
「あのですね……」
「――ま、あんまり深く考えずにやってみたら?どうやら”何か”を見つけようと少し焦ってるみたいだけど……まずは飛び込んでみないと”立ち位置”も見出せないわよ?」
「!」
「ふふっ、それじゃあね。寮の門限までにはちゃんと帰ってくるのよ〜?」
そしてサラ教官は通信を切り、リィンはアークスを元の位置に戻し
「”立ち位置”か……そうだな―――まずは動いてみるか。」
やがて夜空を見上げて呟いた後寮に向かって歩き出した。
その後エリオット達に学生手帳を配り終えたリィンは翌日の”自由行動日”に備えて床についた。
次回は旧校舎まで飛ばします。それと次回にてリィンの使い魔一人目となるキャラが登場します!!なお、そのキャラはオリジナルですが、普通に考えたらそいつ一人で充分だろ!?と思うほどのチートな設定キャラにしています(ニヤリ)あ、もちろん性別は女性ですよ。なので既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが1章早々展開が………
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第15話 | ||
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コメント | ||
感想ありがとうございます 本郷 刃様 確かにそうですね。ワジが守護騎士というオチだったのですから、トワも何らかの秘密を抱えている可能性大ですね。第一バトルメンバーでもないのに絆イベントがある時点で、閃Uではバトルメンバー化してもおかしくないですし(sorano) 原作でも色々と怪しいと噂のトワ会長、この作品ではどうなのか彼女が気になるところです(本郷 刃) |
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